乳歯・永久歯
Q11 | 子どもの永久歯が生えたのですが、本数が少ないです。まだ歯を抜いたこともないのにどうして? |
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A11 | 「永久歯は、28本全部生えてくるのが当たり前(親知らずを除く)」と思っていませんか? 実は、日本小児歯科学会が2007~2008年に1万5000人余りのお子さんを調査したところ、その10.1%が、生まれつき永久歯の本数が少ない、先天性欠如歯だったことがわかりました。 つまり、先天性欠如歯は、誰に起きても不思議のない疾患なのです。あせらず、治療が必要か、経過観察でよいかを、お子さんの治療に慣れた歯科医師に診てもらいましょう。 乳歯がよい状態で残っているのなら、むし歯を予防して乳歯を大事にもたせ、経過観察して、大人になって乳歯がダメになってからブリッジやインプラントを入れるという方法をとります。成人になっても乳歯がもつケースも珍しくありません。 乳歯が抜け、治療が必要な場合、お子さんの歯や顎はこれから成長するので、成長変化を阻害するブリッジやインプラントは選択できません。矯正治療で歯を並べたり、場合によっては自分の歯を移植する(生え代わり時期で成長途中の永久歯は生命力が強く、移植の成功率はおとなの歯よりも高い)など、治療方法は患者さんによってさまざまです。 欠如歯の治療は、将来を見越しながら進めていくことが大事。ぜひ気長にお付き合いください。 そのような症状を「歯数不足症」ともいいます。 歯数不足症の発現率民族の分布と性別で分析すると、白人女性が最も高く155人中14人(9.03%)、ラテン系米国人男性が最も低く47人中2人(4.26%)であり、部位別では下顎第二小臼歯が最も多く、次いで上顎第二小臼歯、上顎側切歯の順に多く先天性欠如が認められたという報告があります。 病因歯数不足症の原因は、さまざまなものが考えられます。 ■遺伝要因 ■環境要因
※参考書籍 「nico 2015.9 クインテッセンス出版株式会社」 「nico 2017.8 クインテッセンス出版株式会社」 |
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Q12 | うちの子の前歯の生え代わりが遅いので歯科医院に相談したら今度レントゲンを撮りましょうとすすめられました。なぜレントゲンが必要なのですか? |
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A12 | 余分な歯ができ前歯が生えるのを邪魔していないか、あごの骨のなかで永久歯がうまく育っているかを確認する必要があるからです。あごの骨のなかで起きていることは外側から診てもわからないのでレントゲンを撮ってよく調べてもらいましょう。 ※参考書籍 「nico 2017.8 クインテッセンス出版株式会社」 |
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Q13 | 乳歯が抜けても前歯がなかなか生えてこないなあと心配で、歯科で検査を受けたら余分な歯ができていて、それが前歯の邪魔をしているとのことなんです。驚きました。どんな治療をするのですか? |
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A13 | 手術をして前歯が生えるのを妨げている余分な歯を取り除きます。放っておくと、余分な歯が大切な永久歯の生える力を奪ってしまうことがあるので早めに発見できて本当によかったですね。 ※参考書籍 「nico 2017.8 クインテッセンス出版株式会社」 |
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Q14 | 左の永久歯は出ているのに、右の同じ部位の歯が出てこないんですが? |
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A14 | 歯種にかかわらず、平均的な歯の萌出時期より10~12カ月以上遅延が認められている場合や萌出時期の左右差が6カ月以上ある場合は、萌出遅延があると考えるべきです。(前述の通り、正常あるいは平均的な萌出時期から遅れているだけでは埋伏歯の診断は困難ですが、“埋伏歯の疑いがある”とは考えるべきです)。 なお、10歳を過ぎても上顎乳犬歯が動揺もなく残存し、頬側の膨隆が触知されなければ、犬歯が埋伏している可能性があり、さらなる検査が必要となります。 診査については、視診・触診・レントゲン診が行われます。 永久歯の先天欠如の可能性もあります。そのため、レントゲン診が必要となります。 先天欠如は系統発生学的原因などによって起こる歯の発育異常です。 日本小児歯科学会が行った全国調査によると、「第三大臼歯を除く、永久歯の先天欠如の発現頻度は10.09%であった。また、永久歯先天欠如は上顎より下顎に多く、歯種別では、下顎第二小臼歯がもっとも多く、次いで下顎側切歯、上顎第二小臼歯、上顎側切歯の順に認められるということであった。」ということです。 永久歯先天欠如の歯種別発現頻度(上下顎上位4歯)
※参考書籍 「生きる力をはぐくむ口腔機能」 |
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Q15 | 子どもはまだ歯医者に行ったことがありません。永久歯が生えてきましたが、まだ乳歯が少しグラグラするものの、もう1カ月抜けない状態です。抜きに行ったほうがよいでしょうか? |
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A15 | 乳歯があるために永久歯が本来生える場所からずれてしまうことがありますので、よかったらお越しになって見せてください。 |
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Q16 | 先天性欠如歯の原因は何ですか? |
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A16 |
先天性欠如歯とは、本来なら顎の中にできるはずの歯の芽(歯胚)ができなかったり、できても育たなかったことによって起こります。特定の病気や障害、放射線治療の影響などが原因の場合もなかにはありますが、ほとんどのケースでは原因は不明です。歯がないために噛み合わせや噛む効率が悪くなったり、見た目によくないなど、さまざまな問題が起こりがちなので注意が必要です。
※参考書籍 「nico 2015.9 クインテッセンス出版株式会社」 |
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Q17 | 10歳の子どもがいます。下の乳歯が1本残ったままでなかなか抜けてくれません。おかしいなと思い、歯医者に行くと、先天的に大人の歯がないと言われました。そんなことあるんですか? |
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A17 | 小児の先天性欠損の割合は10.1%であり、先天性欠損が1番多いのが第二小臼歯、2番目は側切歯です*)。先天性欠損は、むし歯や歯周病などの疾病による欠損と違い、生まれつきのものであるため、防ぎようがありません。 *)日本小児歯科学会学術委員会, 山崎要一, 岩﨑智憲、早﨑治明、齋藤一誠、徳冨順子、八若保孝、井上美津子、朝田芳信、田村康夫、嘉ノ海龍三、牧憲司、吉原俊博、船津敬弘、手島陽子、上里千夏、山下一恵、井出正道、栗山千裕、近藤亜子、嘉藤幹夫、渡邉京子、藤田優子、長谷川大子、稲田絵美. 日本人小児の永久歯先天性欠如に関する疫学調査. 小児歯誌. 2010; 48: 29-39. ※参考書籍 |
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Q18 | うちの子が先天性欠如歯でないかどうか歯科医院で調べてもらいたいです。何歳くらいに調べるとよいですか? |
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A18 |
永久歯の歯胚のあるなしは、パノラマエックス線写真を撮影すると、早くも3歳ぐらいからわかり、6歳後半になれば確実といってよいレベルの診断ができます。先天性欠如歯は、早期に発見できると、その後の治療に有利です。これは先天性欠如歯の場合、乳歯のむし歯予防がとても大切なためです。永久歯が下から生えてこない場合、乳歯は抜けずに残ります。定期的にメインテナンスを受けて大事に使っていけば、この乳歯を30歳、40歳と使い続けることもできます。お子さんが小学校に上がる前に、歯科医院でパノラマエックス線写真を撮り、永久歯の歯胚について調べてもらいましょう。
※参考書籍 「nico 2015.9 クインテッセンス出版株式会社」 |
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Q19 | 先天性欠如歯はどのように治療するのですか? |
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A19 |
いくつか治療方法がありますので、以下を参考にしてください。 1.乳歯を残す先天性欠如歯の治療の選択肢として、欠如歯の代わりに、残った乳歯を大事に使う方法があります。少なくとも成長期が終わるまでは、あごが成長し噛み合わせも変化するため、インプラントなどの本格的な治療は成長期が過ぎてからになります。歯科医院で乳歯の予防管理や余分な力が加わらないように噛み合わせのチェックを受けながら、乳歯を長持ちさせ、成長期を乗り切りましょう!
2.矯正で治す出っ歯や乱ぐい歯の方の先天性欠如歯の治療は、基本的には隙間を詰め、必要な場合に抜歯をして、口元を引っ込め歯を並べます。成長期前でこれから背が伸びるというお子さんの場合、歯を動かすだけでなく、あごの骨格の成長を誘導して上下のあごのバランスを根本的に改善することができるので、おとなになってから治療するより断然有利です。早期発見していきましょう。
3.自家移植で治療する自家移植とは、ご自身の歯を別のところに移植する方法です。先天性の欠如があるところに歯を移植して噛み合わせのアンバランスを改善します。すべてのケースで移植できるわけではありませんが、有効な治療方法です。
4.入れ歯を使う先天性欠如歯の場合、左右がアンバランスになり、放っておくとあごの骨格がゆがんでくることもあります。入れ歯を使って骨格のゆがみを防ぎ、成長期が終わるとインプラントを入れるなどの治療が可能です。入れ歯といえば年配の方だけというイメージがあるかもしれませんが、小児用の入れ歯もあります。お子さんに頑張って入れ歯を使い続けてもらい、骨格の大きなゆがみを防ぐことが大切です。
※参考書籍 「nico 2015.9 クインテッセンス出版株式会社」 |
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Q20 | 永久歯が歯ぐきから出てくるスピードってどのくらいなんですか? |
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A20 | 歯が歯肉を破って口腔内に萌出を始めてから咬合面に到達するまでの時間的経過を、ヒトの小臼歯について計測した報告があります。 ・歯の萌出スピードは午後の6時以降から夜中までの間で最も速く、平均時速13ミクロン程度である。この時間は成長ホルモンの分泌レベルの高い時間帯である。 Risinger RK & Proffit WR. Continuous overnight observation of human premolar eruption. Archs oral Biol 1996; 41: 779-789.・平衡期においては、口唇・頬や舌から安静時に加えられているような弱いが持続的な力が萌出を妨げ、咀嚼力のように強いけれども極端に短い時間しか働かない力は、歯の位置を変化させる要素とは考えにくい。 Gierie WV, Patterson RL & Proffit WR. Response of erupting human premolars to force application. Archs oral Biol 1999; 44: 423-428.
※参考書籍 |
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