他疾病の治療中の方
Q81 | 歯科医院に行ったら、持病の薬について問診票に書くようにしつこく言われました。なぜそんなことが必要なんでしょう? |
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A81 | 歯科治療を受けていただく際、持病のお薬によっては、重大な副作用を患者さんがこうむってしまうことがあるからです。 |
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Q82 | OSASといわれましたが、何か問題ありますか? |
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A82 | OSAS患者では、無呼吸により低酸素、高炭酸ガス血症の状態になります。体内の酸素が少なくなり、それを補うように、心臓や血管など循環器が過剰に働き、負担が増えます。毎晩の積み重ねにより、高血圧症、動脈硬化症、心不全、不整脈などの合併症へつながり、それら合併症により血栓が詰まりやすくなるため、虚血性心疾患、脳血管障害など死につながるような重篤な合併症にかかる危険性も高くなります。 また、無呼吸により睡眠が障害されるため、ストレスや睡眠中に分泌されるホルモンバランスが崩れ、インスリン抵抗性が発現します。その結果、糖尿病、脂質異常症、肥満などの合併症へとつながります。最終的に、これら合併症により心血管障害の発症率・死亡率が高くなり、生命予後にも影響を及ぼすと報告されています。 OSASを治療するということは、患者のいびき・眠気を治療するだけではなく、合併症の治療・予防につながり、生命予後にも関わる治療といえます。
※参考書籍 |
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Q83 | 抗血小板薬を服用していますが、抜歯するときは薬をやめないといけないのですか? |
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A83 | これまで、ワルファリンや抗血小板剤などを服用している患者の抜歯について多くの研究が行われています。いずれの研究も抜歯に際してそれらの薬剤の服用を中止しないことを推奨しています1-10)。 抗血液凝固剤を中断したために生じる血栓問題のリスクは、中断しないために生じる出血のリスクを上回ることが報告されています11)。 抗血液凝固剤を服用している患者の歯科外科手術後に局所的止血法以上の手段が要求された症例は、極めて稀であることを示す論文もあります12-13)。 950人の患者に対する2,400の歯科外科手術のうち12人の患者(1.3%以下)だけが、局所的止血法以上の手段が要求されたとのことです11)。 また、抗血液凝固剤服用患者で歯科外科手術後に入院したり輸血を受けた患者は非常に稀であるという報告もあります14)。 その他の多くの論文も、抗血小板剤を服用している患者の歯科外科分野での出血は、局所的止血処置で処理できることを示しています15-19)。 他方、歯科外科手術のために抗血液凝固剤の服用を止めたり減量したりすると、致命的な血栓症が生じることが時々あります。 抜歯のためにワルファリンを中止した場合、高度の血栓症の発生率は0.95%であり、その場合大多数の患者が死亡したことを報告しています12)。 ワルファリンを減量したり服用を中止したりして行った2,673人の患者の2,775回の歯科外科手術のうち、血栓問題が22回(0.8%)生じ、そのうち6人(0.2%)が死亡したことを報告しています11)。 そのほか歯科外科手術症例ではありませんが、ワルファリンの使用を中止したり減量させたりした後に内視鏡検査を行うと高度の血栓症が1.2%発生し、その場合大多数の患者が死亡するか不具になることが報告されています20)。
1) Souto,J.C. et al. : Oral surgery in anticoagulated patients without reducing the dose of oral anticoagulant. A prospective randomized study. J. Oral Maxillofac. Surg., 54: 27, 1996 2) Devani,P. et al. : Dental extractions in patients on warfarin :Is alteration of anticoagulant regime necessary? Br. J. Oral Maxillofac. Surg., 36:107, 1998 3) Campbell,J.H. et al.: Anticoagulation and minor oral surgery: Should the anticoagulation regimen be altered ? J. Oral Maxillofac. Surg., 58 :131, 2000 4) Blinder,D. et al. : Dental extractions in patients maintained on oral anticoagulant therapy: Comparison of INR value with occurrence of postoperative bleeding. Tnt. J. Oral Maxillofac Surg., 30 : 518, 2001 5) Evans,I.L.et al. : Can warfarin be continued during dental extraction ? Results of a randomized controlled trial. J. Oral Maxillofac. Surg., 40: 248, 2002 6) Sacco,R. et al. : Oral surgery in patients on oral anticoagulant therapy – A randomized comparison of different intensity targets. OS.OM.OP.OR.Endod., 104: e18, 2007 7) Al – Mubarak,S. et al. : Evaluation of dental extrations, suturing and INR on postoperative bleeding of patients maintained on oral anticoagulant therapy. Br. Dent. J., 203 : E15, 2007 8) Salam,S. et al. : Bleeding after dental extractions in patients taking warfarin. Br. J. Oral Maxillofac. Surg., 45 : 463, 2007 9) Perry,D.J. et al. : Guidelines for the management of patients on oral anticoagulants requiring dental surgery. Br. Dent. J., 203: 389, 2007 10) Aframian,D.J. et al. : Management of dental patients taking common hemostasis – altering medication. 11) Wahl,M.J. et al. : Dental surgery in anticoagulated patients – stop the interruption. OS.OM.OP.OR., 119:136 – 157, 2015 12) Wahl.M.J. : Dental surgery in anticoagulated patients. Arch. Intern. Med., 158:1610 – 1616, 1998 13) Wahl,MJ. : Myths of dental surgery in patients receiving anticoagulant therapy. J.A.D.A.,131 : 77-81, 2000 14) Wahl,M.J. et al.: Anticoagulants are dental friendly. OS.OM.OP.OR., 125:103-106, 2018 15) Cardiac Society of Australia and New Zealand : Guidelines for the management of antiplatelet therapy in patients with coronary stents undergoing non – cardiac surgery. Heart Lung Circ., 19 : 2-10, 2010 16) Kristensen,S.D. et al. : 2014 ESC/ESA Guidelines on non – cardiac surgery : cardiovascular assessment and management : the Joint Task Force on non – cardiac surgery – cardiovascular assessment and management of the European Society of Cardiology (ESC) and the European Society of Anaesthesiology (ESA), Eur. Heart J., 35 : 2383-2431, 2014 17) Grines,C.L. et al. : Prevention of premature discontinuation of dual antiplatelet therapy in patients with coronary artery stents : a science advisory from the American Heart Association, American College of Cardiology, Society for Cardiovascular Angiography and Interventions, American College of Surgeons, and American Dental Association, with representation from the American College of Physicians. J.A.D.A., 138 : 652-655, 2007 18) Jeske,A.H. and Suchko,G.D. : Lack of a scientific basis for routine discontinuation of oral anticoagulation therapy before dental treatment. J.A.D.A., 134:1492 – 1497, 2003 19) Roberts,H.W. and Redding,S.W. : Coronary artery stents : review and patient – management recommendations. J.A.D.A., 131 : 797-801, 2000 20) Blacker,D.J. et al. : Stroke risk in anticoagulated patients with atrial fibrillation undergoing endoscopy. Neurology, 61: 964, 2003
※参考書籍 |
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Q84 | 歯の根がダメになっていてうずきます。抜歯してブリッジにしたいのですが、血液サラサラの薬を飲んでいます。抜歯は無理でしょうか?それとも抗血小板薬・抗凝固薬は抜歯前に休薬すべきでしょうか? |
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A84 | 大丈夫、休薬せずに抜歯も治療もできます。お医者さんと連携して進めますのでご安心ください。 抗血小板薬は休薬の必要性が小さく、抗凝固薬はPT-INR値が3.0以内であれば、休薬の必要性は小さいでしょう。 観血処置に際して、薬剤の休薬が必要と判断されるのであれば、処方医に相談することが必要です。抗血小板薬・抗凝固薬を使用していても、その止血処置は、局所的な止血方法によって十分にコントロール可能な場合が多いです。 抗凝固療法あるいは抗血小板療法を受けている患者の歯科治療についての非システマティックレビュー ワーファリン®使用患者に対する歯科外科処置についてのシステマティックレビュー
※参考書籍 「nico 2011.11 クインテッセンス出版株式会社」 |
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Q85 | ビスフォスフォネート系薬剤を使っていても全員に顎骨壊死が起こるわけではないそうです。どんなきっかけで起きるのですか? |
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A85 | あごの骨が壊死、つまり死んでしまうのです。発症のきっかけは、抜歯などの外科処置が多いです。むし歯・歯周炎の放置や、お口の不衛生、口内炎、骨隆起、入れ歯の圧迫などがあるとより起こりやすくなります。 ※参考書籍 「nico 2010.10 クインテッセンス出版株式会社」 |
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Q86 | なかなか寝つけません。どうしたらいい? |
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A86 | 睡眠障害対処12の指針というものがありますので、ご紹介します。 (内山 真編. 睡眠障害の対応と治療ガイドライン. じほう. 2002)
1.睡眠時間は人それぞれ、日中の眠気で困らなければ十分
2.刺激物を避け、寝る前には自分なりのリラックス法
3.眠たくなってから床に就く、就寝時刻にこだわりすぎない
4.同じ時刻に毎日起床
5.光の利用でよい睡眠
6.規則正しい3度の食事、規則的な運動習慣
7.昼寝をするなら、15時前の20~30分
8.眠りが浅いときは、むしろ積極的に遅寝・早起きに
9.睡眠中の激しいイビキ・呼吸停止や足のぴくつき・むずむず感は要注意
10.十分眠っても日中の眠気が強いときは専門医に
11.睡眠薬代わりの寝酒は不眠のもと
12.睡眠薬は医師の指示で正しく使えば安全
(参考)睡眠中の無呼吸が身体に及ぼす影響(危険率)AHI:1時間に10秒以上呼吸が止まったり低呼吸になった回数 *)日本デバイス治療研究所. 循環器領域における睡眠呼吸障害の診断・治療に関するガイドライン.
※参考書籍 『実践!「効果のあがる」スプリント治療の進め方』 |
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Q87 | ワルファリンを服用しています。抜いた後の止血処置ではどんなことをするのですか? |
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A87 | 抜歯した穴に止血用スポンジなどを詰め歯ぐきを縫合して傷をふさぎます。手厚い処置がさらに必要な患者さんには縫った上から止血パックで圧迫・保護したり、樹脂製のカバーで圧迫・保護することもあります。 |
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Q88 | なぜあごの骨にばかり骨壊死が起きるのでしょう?不思議です。 |
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A88 | あごの骨本来の活発な骨代謝の回転を薬で止めるために起こる副作用だからです。薬の使用期間が長くなるほどあごの骨に薬の成分が溜まり発症のリスクも高くなっていきます。 ※参考書籍 「外来・訪問診療のためのデンタル・メディカルの接点」 |
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Q89 | 現在ワルファリンを服用しています。歯科治療で次回外科処置をすると言われました。一時服薬をやめた方がいいですか? |
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A89 | ワルファリンカリウム内服中の患者さんに対し、休薬を行った結果1%に重篤な血栓症を生じたとする報告があります。口腔内は直視下に止血ができるため、原則として休薬は行いません1)、2)。必ず飲まれてお越しになってください。 1)日本循環器学会、日本不整脈心電学会合同ガイドライン. 2020年改訂版 不整脈薬物治療ガイドライン. 2)日本有病者歯科医療学会、日本口腔外科学会、日本老年歯科医学会編. 抗血栓療法患者の抜歯に関するガイドライン 2020年版.
※参考書籍 |
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Q90 | 抜歯前にどんなことに注意すればよいですか? |
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A90 | 抜歯を受ける前にいくつかご協力いただきたい重要事項があります。 1.決して抗血栓薬を中断しないでください。抜歯の際に止血しにくいだろうと心配なさり、自己判断で服用を中断してしまう患者さんがときどきおられます。が、これはたいへん危険ですので、中断しないようにお願いします。 2.ふだんのINR値を教えてください。ワルファリンを飲んでいる患者さんには、血液のINR値(凝固指数)を、ふだんどれくらいの値にコントロールしているかをお教えいただいています。INR値3.0以下であれば、基本的には服用を継続したままで抜歯が可能です。 3.抜歯直前のINR値をお持ちください。ワルファリンを服用している患者さんのINR値は、食事や薬の飲み合わせ、体調などによって比較的短時間で変動しがちです。 4.持病の治療の担当医をお教えください。抗血栓薬を継続しつつ、なおかつ抜歯も安全に行われるよう、歯科医師と医師が直接コンタクトをとり、連携して治療を進めます。ときには歯科医師から医師にINR値のコントロールをお願いし、可能な範囲でINR値を下げ、抜歯の準備を整えることもあります。 5.止血対策の準備が必要です。歯石やプラークが溜まったお口では、炎症が起きやすく出血のリスクが高まってしまいます。そこで、事前にお口のなかのクリーニングをさせていただくことがあります。 6.抜歯の延期や、大きな病院をご紹介することも。INR値が高く止血の困難が予想される場合、医師との連携でINR値のコントロールを安全な範囲で行い、数値の安定が確認できるまで治療を延期することがあります。 ※参考書籍 「nico 2011.11 クインテッセンス出版株式会社」 |
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