他疾病の治療中の方

Q71 睡眠時無呼吸症候群だと緑内障になりやすいって本当ですか?
A71

本当です。

他にリスク要因として、低血圧・高血圧・糖尿病・近視・偏頭痛・遺伝(学族歴)や、40才以上の冷え症も悪いと言われています。

原因は血液の量と質の悪化、すなわち目の血流低下による栄養である酸素の不足により引き起こされるということです。

 

※参考
 「ためしてガッテン」

Q72 歯医者で抜歯することになりました。糖尿病でタバコも吸っています。注意点はありますか?
A72

手術が決まったら、手術をする外科領域の医師は、術前にさまざまな検査をします。その中には糖尿病があるかどうかの検査、すなわちヘモグロビンA1cや血糖値の測定も含まれています。

ただし、歯科医院内で血液検査をすることはできません。もし正確な数値が分かれば申告してください。

なぜなら、糖尿病があるかどうかは手術成績(結果)を大きく変えるからです。高血糖状態では、体内にウイルスや細菌が侵入したときに、それを取り囲んで食い殺す白血球の機能が低下します。免疫反応すなわち一度感染した病原体に対し、体内でその抗体が作られ、次に同じ病原体が体に侵入しようとしたときに、それを防ぐはたらきも低下しているため、細菌やウイルスに感染しやすくなるのです。

また、合併症が進行していて、細い血管で血液の流れが悪くなっていると、創傷治癒のための栄養や酸素、さらに薬物の局所への供給が阻まれます。神経障害により痛みなどの症状が分かりにくくなっていることで、さらに感染が重症化することなども考えられます。

一度、細菌などに感染すると、インスリンを効きにくくする物質(サイトカインなど)が多くなって、血糖値はさらに高くなり、感染を進行させてしまうという悪循環が生まれます。また、手術の傷(縫合部)の感染は、傷の縫合がうまくいかない縫合不全につながり、さらに全身状態の悪化などで手術後の回復が大きく遅れます。

このような背景からも糖尿病のコントロールは日ごろから良好にしておく必要があります。

喫煙している方については、たばこにより、種々の周術期合併症が増加し、術後の回復が遅延するため、手術前のいつの時点からでも禁煙を開始することには意義があるとされています。禁煙は糖尿病の合併症予防の点でも有益ですので、この機会にぜひチャレンジしましょう。

 

※参考書籍
 「月刊 糖尿病ライフ さかえ 2021年3月号」
 公益社団法人 日本糖尿病協会

Q73 インプラント治療後、糖尿病が発覚しました。影響ありますか?
A73

糖尿病の患者さんのインプラントメインテナンスで大きな問題となるのは、感染のコントールです。糖尿病の患者さんにインプラント周囲炎の発症が多いという根拠は今のところ示されていません。しかし、高血糖のため感染に対する抵抗力が弱く、健常者と比較して歯周病の有病率が高く、より重症化していることが明らかになっています。

Khader YS, et al: Periodontal status of diabetics compared with non-deiabetics: a meta-analysis. J Diabetes Complications, 20: 56-68, 2006.

Tsai C, et al: Glycemic control of type 2 diabetes and severe periodontal disease in the US adult population. Community Dent Oral Epidemiol, 30: 182-192, 2002.

 

※参考書籍
 「65歳以上の患者へのインプラント治療・管理ガイド」
 編著 窪木拓男、菊谷 武
 株式会社ヒョーロン・パブリッシャーズ

Q74 睡眠時無呼吸症候群と動脈硬化は関係ありますか?
A74

閉塞性睡眠時無呼吸は動脈硬化性疾患の独立した危険因子であるとされています。

※参考書籍
 「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版」
 一般社団法人 日本動脈硬化学会

Q75 歯周病は治癒する病気でないって本当ですか?
A75

歯肉炎の段階であれば健口に戻ることができますが、ひとたび歯周炎を発症し歯周組織の破壊が起きると、もはや歯肉炎に戻ることはできません。すなわち、健口と歯肉炎は“可逆的”な関係にありますが、歯肉炎から歯周炎への進行は一方通行であり“不可逆的”なのです。

海外の学術団体であるEFPとAAPは、まさしく糖尿病と同じように、“歯周病は治癒する病気ではない”ことを宣言しています。「歯周炎患者は生涯にわたり歯周炎患者であるのだから、いくら状態が安定していても、隠れたリスクを過小評価してはいけない」と警鐘を鳴らしています。

※参考書籍
 「内科医から伝えたい 歯科医院に知ってほしい糖尿病のこと その2」
 にしだわたる糖尿病内科 西田 亙 著
 医歯薬出版株式会社

Q76 「血液サラサラ」の薬ってなんですか?
A76

「血液サラサラ」の薬とは、血栓ができやすく、血管がつまりやすいかたの血液を、固まりにくくサラサラにする抗血栓薬のことです。
高血圧や高脂血症などの生活習慣病や、高齢になると進みやすい動脈硬化などの影響で血管に血栓ができると、脳梗塞、心筋梗塞、心不全などの重篤な病気を発症しかねません。血管を詰まらせないためには、薬を欠かさずに飲むことが肝心です。現在日本で認可されている抗血栓薬は、代表的なものだけで数十種類。
たいへん多くのかたに飲まれているポピュラーな薬です。

※参考書籍 「nico 2011.11 クインテッセンス出版株式会社」

Q77 骨粗しょう症の薬を服用していますが何か問題がありますか?
A77

「からだの治療と、歯の治療は別物」と思っていませんか?ところが、からだの治療との治療にはとても深い関係があります。
全身疾患の治療のために飲んでいる薬が、歯科の治療に影響を与えることは、じつはしばしばあるのです。
ごく最近「重大な副作用を招くことがある」と明らかになった薬に、「ビスフォスフォネート系薬剤」があります。これは、骨粗しょう症の治療薬としてたいへんポピュラーで、また、がんの骨転移の治療にも使われているすぐれた薬です。
ところが、これを継続的に使っている患者さんが歯科の外科的な治療(たとえば抜歯など)を受けると、それをきっかけに、あごの骨が部分的に死んでしまい(壊死)、そのまま放っておくと、ばい菌が入って骨が腐ってしまうという重大な副作用を起こすおそれのあることが、最近明らかになりました。
歯科医院においでになったら服用しているお薬についてかならずお教えください!

※参考書籍 「nico 2010.10 クインテッセンス出版株式会社」

Q78 OSASって何ですか?
A78

閉塞性睡眠時無呼吸症候群(Obstructive Sleep Apnea Syndrome : OSAS)は、睡眠中に呼吸が弱くなる、あるいは停止し、体内の酸素濃度が下がり、睡眠が障害されることにより、日中の眠気や頭痛、集中力の低下などの症状により生活の質(QOL)を低下させ、高血圧症や糖尿病、メタボリックシンドロームの発症に関与し、重症例では心血管障害や脳血管障害の危険因子となる全身性の疾患です。

要するに、寝ているときに息が止まり、いびきをかくことによって睡眠の質が悪くなり、昼間に眠くなったり、血圧が上がったり、心臓・血管に負担がかかる病気です。

OSAS患者は、長くて2分間息が止まっている方もおられ、そのときの経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)は60%まで低下し、脈拍は200回近くまで上昇します。一度、2分間息を止めてみてください。かなり苦しく、心臓がドキドキするのを感じると思います。OSAS患者では、このような状態が寝ている間ずっと繰り返されます。多くの患者は寝ているため気づいていません。しかしながら、これだけ酸素が足りない状況が続くと、身体に負担がかかり、熟睡できるはずがありません。

このような理由から、OSAS患者は睡眠の質が低下し、昼間に強い眠気を感じます。例えるならば、毎日徹夜が続いているような状態です。

OSASの判定の仕方

1.AHI:止まった呼吸数で判定

AHI:1秒間に10秒以上呼吸が止まったり低呼吸になった回数

5未満 ごく軽度
5~15 軽度
15~30 中度
30以上 重度
 
2.ODI:動脈血酸素飽和度(SpO2)で判定

ODI3:1時間でSpO2がその患者の平均から3%以上下降した回数

5未満 ごく軽度
5~15 軽度
15~30 中度
30以上 重度

 

*呼吸が止まれば動脈血酸素飽和度は低下する

 

※参考書籍
 「睡眠時無呼吸症候群の口腔内装置治療」
 阪井 丘芳 監修  医師薬出版株式会社

 『実践!「効果のあがる」スプリント治療の進め方』
 著 今井俊広・今井真弓 インターアクション株式会社

Q79 糖尿病の患者さんが歯周病の治療を受けると、検査値が改善されるって本当ですか?
A79

本当です。

現在では、「糖尿病患者さんが歯周病の治療を受けると、ヘモグロビンA1cは0.4%~0.7%改善する」ことが明らかになっています(1)。例えば、ヘモグロビンA1c7.0%の日とは歯周病を治療すると6.3%まで低下する可能性があります。糖尿病の飲み薬でも、ヘモグロビンA1cを0.7%低下させることは、なかなか難しいことですから、歯周病の治療は糖尿病患者さんにとって素晴らしい福音となることでしょう。

18年6月、オランダのアムステルダムで開催された欧州歯周病学会にて、米国と欧州の歯周病学会は共同で19年ぶりに新しい歯周病の分類を発表しました。そして、この新分類の中に糖尿病患者さんの危険因子として、糖尿病が登場したのです。「ヘモグロビンA1c7.0%以上の場合は、歯周病が進行しやすいので、特に注意が必要」と明記されました。歯周病専門医が、本気で糖尿病のことまで注意を払う時代がやってきたのです。

(1)西田亙:糖尿病療養指導士に知ってほしい 歯科のこと、医歯薬出版株式会社、東京、2018

※参考書籍
 「月刊 糖尿病ライフ さかえ 2019年6月号」
 日本糖尿病協会

Q80 薬を止めないと抜歯できないってホントですか?
A80

抗血栓薬を飲んでいる患者さんの血液は、サラサラで止まりにくいという特徴があります。そのため、「抜歯を安全に進めるためには一定期間服用を休まざるを得ない」と、歯科でも医科でも以前は考えられていました。
でも、もしも休薬のために血栓ができてしまったら?!
そこで近年では、適切な検査を行って休薬せずに抜歯し、しっかりと止血処置をするガイドラインが確立され、推奨されています。
歯科と医科の連携のなかから生まれた、安心・安全な治療をご提供することができるようになりました。

※参考書籍 「nico 2011.11 クインテッセンス出版株式会社」

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