他疾病の治療中の方
Q61 | BP製剤(ビスホスホネート製剤)と歯科治療の関係について教えてください。 |
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A61 | 骨粗鬆症やがんの骨転移の治療に使う「ビスホスホネート製剤」という薬の副作用によって、顎の骨が壊死する患者さんが増えています。 歯科治療のためにビスホスホネート製剤を休薬したほうがよいのでしょうか? これまでは歯科治療をする場合には休薬をして治療をすべきであるという見解がありましたが、2016年の夏に学会で次のような報告がありました。
命に関わる疾病に使う薬のため服用をやめるのは難しく、治療を進める上では医師と歯科医師の連携は欠かせません。 また、2016年9月にポジションペーパーが刊行され、次のように見解の変更がありました。 発生原因の差異について発症は注射薬が多いとされてきましたが、経口薬も注射薬と同等の発症とされました。 歯科処置時に休薬が必要な投与期間について経口投与3年以上から4年以上に変更されました。 休薬期間について3ヵ月から2カ月に短縮されました。 参考 これまでの見解ビスホスホネート系薬剤(ビスフォスフォネート)は、破骨細胞の活動を阻害させ、骨の吸収を防ぐ薬剤です。骨粗鬆症、変形性骨炎、腫瘍の骨転移、多発性骨髄腫、骨形成不全症などの疾患の予防と治療に用いられています。このお薬を継続的に服用している患者さんが歯科の外科的処置を受けると、顎の骨の壊死が起こることがわかっています。 しかし、ビスホスホネート製剤を使っている人は歯科治療を受けることができないかというと、必ずしもそうではありません。問診時に使用状況などを詳しくお聞きし総合的に判断します。 1. 病院で注射をしていますか?ビスホスホネート製剤は経口剤と注射剤のものがあります。経口剤は病院から処方される薬ですので、ご自身で服用しているという自覚があります。ところが、注射剤になるとビスホスホネート製剤を服用していると気づいていない患者さんもおられます。適切な判断をするためにビスホスホネート製剤の注射剤を投与しているかどうかを確認することは大切です。 2. どのような疾患でこのお薬を服用していますか?骨粗鬆症または腫瘍の骨転移予防等で内服します。腫瘍の骨転移予防等で内服している場合は、抗腫瘍薬の影響も考慮する必要があります。 3. いつ頃から服用していますか?骨吸収抑制薬のBP製剤は、骨密度増加効果と骨折抑制効果に関する長期間のエビデンスが多く、骨粗鬆症治療薬の主流となっています。閉経前の患者さんから高齢の重症な患者さんまで、幅広い骨粗鬆症患者さんに処方されています。 A) 『投与期間が3年未満』でかつ『他にリスクファクターがない』侵襲的歯科治療を行なっても差し支えはありません。 B) 『投与期間が3年以上』または『3年未満でもリスクファクターがある』判断が難しく、処方医と歯科医で、主疾患の状況と侵襲的歯科治療の必要性を踏まえた対応を検討する必要があります。 4. 併用しているお薬はありますか?併用薬(ステロイド、シクロフォスファミド、エリスロポエチン、サリドマイド等)がある場合は、免疫機能の低下などにより顎骨壊死(BRONJ)が発生するリスクが高まります。 ※BP製剤投薬中の患者さんの休薬についてまた、抜歯など侵襲的歯科治療後のBP製剤の投与再開までの期間は、術創再生粘膜上皮で完全に覆われる2~3週間後、または十分な骨性治癒が期待できる2~3ヶ月後が望ましいでしょう。 ※参考書籍 「外来・訪問診療のためのデンタル・メディカルの接点」 |
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Q62 | BP製剤(ビスホスホネート製剤)を飲むことを勧められています。しかし、色んなリスクがあるんですよね?飲むべきなのでしょうか? |
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A62 | BP製剤(ビスホスホネート製剤)は、骨粗鬆症や骨転移を有する悪性腫瘍のある患者さんに使用される骨吸収抑制薬です。副作用としては、骨吸収抑制薬関連顎骨壊死(ARONJ)が知られています。骨吸収抑制薬を投与している患者さんは、抜歯などの侵襲的な歯科処置にあたって注意が必要です。 ただし、必要とされて医科で勧められているので、中止されることなく飲んでください。 ※参考文献 |
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Q63 | 歯科治療と糖尿病の関係って? |
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A63 | 糖尿病になると、免疫反応が低下して炎症が起きやすくなったり、血流が悪くなって傷の治りが悪くなってしまいます。そのため歯科治療のなかでも、とくに抜歯、歯ぐきの手術などの外科処置をする際に、特別な配慮が必要となります。 |
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Q64 | 糖尿病になっていますが、歯周病による口腔機能低下が及ぼす影響について教えてください。 |
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A64 | 歯周病の進行による歯の喪失は、咀嚼機能を低下させます。また、重度の歯周病では、味覚障害の症状が出現します。それらの口腔機能の異常は、糖尿病や糖尿病合併症の悪化に関与します。詳細は下記をご確認ください。 1.歯の喪失が引き起こす食後高血糖家族歴のある非肥満糖尿病や高齢者の糖尿病には食後高血糖が多くみられることは広く知られています。食後高血糖は、食事を摂取してすぐに分泌されるインスリン追加分泌が遅延するのが原因と考えられています。食事の際に、野菜やきのこ、海藻などの食物繊維を先に食べ、糖の吸収を緩徐にすることで、食後高血糖を抑えることができます。 歯周病によって残存歯の減少に伴う咀嚼障害を来たすと、硬めの食物である食物繊維や魚や肉の摂取が困難になるため、それらを最初に食べることが難しくなり、その結果、食後を中心とした血糖悪化を来しやすくなります。また、摂取できる食べ物も、容易に咀嚼できるうどんやおかゆなど炭水化物に偏るため、さらなる食後高血糖を惹起しやすくなります。食後高血糖は動脈硬化性疾患を促進することにも関与しているため、結果として心筋梗塞や脳梗塞の発症リスクを増加させることにもつながってしまいます。 2.歯の喪失が引き起こす味覚障害と低栄養亜鉛欠乏が味覚障害を引き起こすことは広く知られています。動物性たんぱく質には、味蕾の再生の原料となる亜鉛が多く含まれています。残存歯の減少で、それらの食物の摂取が減少することは味覚障害が引き起こされる一因となる可能性があります。また、たんぱく質の摂取が不足することで、フレイル、サルコペニアを引き起こし、筋肉量低下や運動量低下に伴う血糖上昇を引き起こします。 3.味覚異常が及ぼす糖尿病合併症への影響歯周病の悪化に伴う味覚障害が高度になると、食事の味付けを濃くし、塩分摂取量を増加させてしまいます。塩分摂取量の増加は糖尿病性腎症の悪化を引き起こし、透析増加のリスクにもつながります。塩分摂取量の増加は高血圧も助長するため、心筋梗塞や脳梗塞の発症リスク増加にも関係します。
※参考書籍 |
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Q65 | 最近メタボリックシンドロームと糖尿病の関係性をよく聞きますが、詳しく教えてください。 |
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A65 | メタボリックシンドロームの起こり方
メタボリックシンドロームと内臓脂肪肥満でメタボリックシンドロームに該当する人の体重を6か月間で3%減らすと、腹囲は2cmほど減るだけでなく、内臓脂肪が減るために血糖値や血圧、中性脂肪などの値が低下します。これが内臓脂肪減少の効果です。
メタボリックシンドロームと糖尿病メタボリックシンドロームは心筋梗塞の危険因子ですが、糖尿病の危険因子でもあります。日本人の糖尿病の発症率は、メタボリックシンドロームであれば、そうでない場合より男性で約2.5倍、女性で約3.7倍高いとされています。
メタボリックシンドロームの治療法メタボリックシンドロームの治療方針は、「1に運動、2に食事、3に禁煙、最後に薬」とされています。一口で言えば生活習慣の改善です。
※参考書籍 |
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Q66 | メタボリックシンドロームについて教えてください。 |
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A66 | メタボリックシンドロームは一般に、肥満・高血糖・高中性脂肪血症・高コレステロール血症・高血圧の危険因子が重なった状態と定義されています。放置することで糖尿病・心筋梗塞・脳卒中などの発症リスクが高まります。高カロリー・高脂肪の食事と運動不足が原因といわれています1,2)。 厚生労働省によると、日本ではウエスト周囲径が男性85cm・女性90cm以上で、かつ血圧・血糖・脂質の3つのうち2つ以上が基準値から外れると、「メタボリックシンドローム」と診断される3)とされています。ただこの診断基準は国によって異なり、科学的根拠は薄いという意見もあり、さまざまな議論があります2)。 1)スーパー大辞林. 三省堂 2)デジタル大辞泉. 小学館 3)厚生労働省. e-ヘルスネット [accessed 20.04.24]
※参考書籍 |
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Q67 | 歯周病とメタボリックシンドロームに関連性はあるのですか? |
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A67 |
メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)とは、内臓脂肪型肥満に加えて、高血糖、高血圧、脂質異常のうちいずれか2つ以上をあわせもった状態のことです。 糖尿病などの生活習慣病は、それぞれの病気が別々に進行するのではなく、おなかのまわりの内臓に脂肪が蓄積した内臓脂肪型肥満が大きくかかわるものであることがわかってきました。 メタボリック症候群の診断基準は2005年4月に作られました。 ウエスト周囲径が男性で85cm以上、女性で90cm以上を基盤とし、さらに、下の3つの症状のうち2つ以上該当した場合、メタボリックシンドロームと診断されます。 1.中性脂肪150mg/dl以上、HDLコレステロール40mg/dl未満のいずれかまたは両方2.血圧が上で130mmHg以上、下で85mmHg以上のいずれかまたは両方3.空腹時血糖が110mg/dl以上大きな特徴は内臓脂肪を基盤とすることであり、高血圧、高血糖、脂質異常の値がさほど高くなくても脳卒中や心筋梗塞の危険性が高くなります。 歯周病とメタボリックシンドロームの関連性が注目されています。 詳しいメカニズムは解明されていませんが、歯周病の病巣から放出されるLPS(歯周病菌由来の毒素)やTNFαは脂肪組織や肝臓のインスリン抵抗性を増加させ、血糖値を上昇させます。また、重度歯周病患者では血中CRP値が上昇し、動脈硬化や心筋梗塞発症のリスク亢進と密接に関与すると考えられています。さらには、この慢性炎症が個体の老化を促進するという論文も出てきました。 ※参考サイト 「日本臨床歯周病学会」 |
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Q68 | 新型コロナウイルスに感染すると糖尿病も悪化するって本当ですか? |
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A68 | 新型コロナウイルスが流行して数年が経過しましたが、様々なデータが出てきました。 そのなかで、糖尿病のコントロールが悪いと重症化しやすいということが分かってきています。
※参考書籍 |
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Q69 | 旦那がタバコをやめてくれません。受動喫煙が体によくないということは聞いたことがありますが、糖尿病にも関係してるって本当ですか? |
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A69 | タバコを吸う人は吸わない人に比べて糖尿病のリスクが1.44倍、さらに1日1箱以上のタバコを吸うヘビースモーカーの人では、1.61倍まで上昇することが報告されています。 JAMA2007; 298: 2654-64. また、喫煙によりインスリン抵抗性が高まって、自ら分泌したインスリンの効果が十分に発揮できない状態になったり、その状態を補うだけのインスリンが分泌されない状態になったりすることが知られています。 受動喫煙がある女性は、受動喫煙がない女性に比べて、糖尿病の発症リスクが1.23倍上がることが示されました。 J Diabetes Investing.2020; 11: 1352-8.
これらのデータが示す通り、喫煙は旦那さんだけでなく、受動喫煙によって家族の健康に影響を及ぼすことになります。しっかり旦那さんにアピールして禁煙してもらいましょう。
※参考書籍
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Q70 | 睡眠時無呼吸症候群について教えてください。 |
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A70 | 睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは、睡眠中に無呼吸が繰り返される病気で、体に様々な障害を起こします。 ■原因喉の辺りの空気の通り道が閉塞することが原因で、その原因となるのは、首周りの脂肪の沈着、扁桃肥大、アデノイド、舌根沈下、舌が大きい(巨舌症)ことがあります。鼻中隔湾曲では、鼻の空気の通りが閉塞しているSASの原因になることがあります。顎が小さいため、やせているのにSASである方もおられます。 ■症状・合併症いびき、睡眠の途中で目が覚めてしまうことや、日中の眠気、起床時の頭痛、などがあります。昼間の眠気は、居眠り運転事故や労働災害などにつながり、社会的にも悪影響を及ぼします。
■治療経鼻的持続陽圧呼吸療法(Continuous Positive airway Pressure:CPAP)があります。マスクを介して空気を送り気道を広げる治療法で、中等症以上(AHIが20回以上)のSASで保険適用です。軽症のSASには歯科に依頼してマウスピース療法が行われます。手術療法はSASの責任部位が明確な場合に適応され、小児でのSASは大半は扁桃肥大が原因で、扁桃摘出術が有効です。成人の場合は、責任部位が明確でないことが多く、手術療法は慎重な判断が必要です。 ※参考サイト ※参考書籍 |
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