他疾病の治療中の方
Q31 | 歯周炎は肝疾患の発症リスクと関連がありますか? |
---|
A31 | 「4mm以上の歯周ポケットが多く存在する場合、将来的に重度の肝疾患発症リスクが高まる。」という研究報告があります。 Jaana Helenius-Hietala, Anna Liisa Suominen, Hellevi Ruokonen, Matti Knuuttila, Pauli Puukka, Antti Jula, Jukka H Meurman, Fredrik Åberg: Periodontitis is associated with incident chronic liver disease-A population-based cohort study. Liver International, 39(3): 583-591, 2019.
※参考書籍 |
---|
Q32 | 歯周病の人は脳梗塞になりやすいのですか? |
---|
A32 |
脳梗塞とは、脳や頸動脈、心臓から血の塊やプラークが飛んで来て脳血管が詰まる病気です。歯周病の人はそうでない人の2.8倍脳梗塞になりやすいと言われています。 血圧、コレステロール、中性脂肪が高めの方は、動脈疾患予防のためにも歯周病の予防や治療は、より重要となります。 ※参考サイト 「日本臨床歯周病学会」 |
---|
Q33 | 歯周病の人は関節炎・腎炎を発症しますか? |
---|
A33 |
関節炎や糸球体腎炎が発症する原因のひとつとして、ウイルスや細菌の感染があります。関節炎や糸球体腎炎の原因となる黄色ブドウ球菌や連鎖球菌の多くは、歯周病原性細菌など口腔内に多く存在します。 これらのお口の中の細菌が血液中に入り込んだり、歯周炎によって作り出された炎症物質が血液に入り込むことで、関節炎や糸球体腎炎が発症することがあります。 ※参考サイト 「日本臨床歯周病学会」 |
---|
Q34 | 歯科治療を受けたいのですが、高血圧を患っており降圧薬を服用しています。いつ歯科治療を受けたらいいですか? |
---|
A34 | 降圧薬内服1時間以降の午前予約が理想的です。 ※参考書籍 |
---|
Q35 | 脳卒中を発症し、3カ月が経過しました。歯がとても痛いのですが、どうしたらいいですか?原則6ヶ月は歯医者での処置は控えたほうがいいと聞いていますが…。 |
---|
A35 | 脳卒中の患者さんへの歯科治療は、原則発症後6ヶ月間は局所麻酔を要する歯科治療を避けるべきとされていました。 しかし、近年では決して安静が脳卒中の患者さんに良い影響を与えるわけではないことが指摘されており、全身状態が安定した場合には早期のリハビリ開始が推奨されています。歯科治療についても、必要があれば早期に歯科治療を開始すべきとされていますが、血圧や服用薬剤、後遺障害に対する配慮が必要になるため、脳卒中発症後1カ月以内の急性期に抜歯などの観血的歯科治療を要する場合は、病院歯科での受診・治療が望ましいでしょう。
※参考書籍 |
---|
Q36 | インプラント治療後、腎疾患が発覚し、透析することになりました。影響ありますか? |
---|
A36 | 進行した骨・ミネラル代謝異常(CKD)や人工透析の患者さんは、尿毒症環境と透析による細胞性免疫異常によって易感染性状態になっています。 そして、ステロイド薬を長期服用していることも多く、さらなる免疫力の低下と骨粗しょう症の発症もみられ、これがインプラントの脱落やインプラント周囲炎のリスクファクターとなることが予想されます。 さらに、骨量減少に対する治療としてビスフォスフォネート製剤が投与されていることもありますので、顎骨壊死や骨髄炎の発症にも十分な注意が必要です。 ステロイド薬を3カ月以上投与されている患者さんは、骨代謝学会のガイドラインの推奨によって、ビスフォスフォネート製剤が併用されている可能性が高いことに留意しなければなりません。 インプラントの患者さんは、定期的な歯科医院における専門的口腔ケアを、健常者よりも厳重に行いましょう。
※参考書籍 |
---|
Q37 | インプラント治療後、肝炎を発症しました。影響ありますか? |
---|
A37 | ウイルスに感染して急性肝炎を発症した場合、食欲不振や悪心・嘔吐の症状が出る可能性があるため、口腔清掃が不十分になります。 悪心・嘔吐によりブラッシングが困難となることに加え、治療は安静と肝庇護剤の点滴や栄養補給であるため多くは入院加療となることから、入院中は院内の歯科にブラッシングを含めた口腔管理を依頼するのが一番よいと考えられます。劇症肝炎にまで進行した場合は、もちろん入院加療が必要となりますが、急性の重篤疾患ですので、安定するまでは歯科のアプローチは困難となります。回復してから口腔の再評価を行い、その評価を基に口腔管理を行わなければなりません。 一般的に、B型急性肝炎は慢性化せずに治癒しますが、C型肝炎は大部分が慢性肝炎に移行します。治癒すればもちろん問題はなく、慢性肝炎になったとしても埋入されたインプラントに対して何か特別な対応を直ちに行う必要はありません。これまでどおり毎日のブラッシングと、インプラント治療を受けた歯科医院での定期的な診察を受けるようにしてください。
※参考書籍 |
---|
Q38 | インプラント治療後、肝硬変が発覚しました。影響ありますか? |
---|
A38 | 肝硬変になった場合、注意が必要です。 進行するまでは慢性肝炎と同じような対応を行うことができますが、進行した肝硬変(肝がんを含め)では、肝臓で合成される凝固因子の低下を招いて出血傾向がみられるようになり、歯肉出血が起こりやすくなります。すなわち、肝硬変によって肝組織の線維化が進み、門脈血流のうっ血により門脈圧亢進が起こり、脾腫が生じるようになります。 その結果、血小板減少や肝細胞によるタンパク合成能の低下のため血液凝固因子の産生量の低下を起こし、一次止血・二次止血が障害され易出血性となります。 ブラッシングなどの刺激によっても出血するようになるため、出血を恐れてブラッシングを含めた口腔ケアが消極的になりがちです。 このような状態になるとインプラント体に付着したプラークの除去が困難となり、周囲歯肉に炎症を惹起して歯周炎を発症したり歯周炎を悪化させたりし、より出血しやすくなるという悪循環に陥ります。こうして口腔のケアはさらにおろそかになり、インプラント周囲炎を発症する危険性が高くなります。
※参考書籍 |
---|
Q39 | インプラント治療後、関節リウマチを発症しました。影響ありますか? |
---|
A39 | 関節リウマチは日本人においては0.5~1%に発症することが知られています。 疾患の進行により関節痛が生じるようになりますが、痛みは初期には手足の指の関節(特に近位指節間関節)に生じ、次第に手首、肘、膝などの体幹に近い大きな関節の痛みを感じるようになり、その痛みは動作により増強するため、無意識にその関節を動かさなくなる傾向にあります。 さらに関節炎が進行すると関節自体が変性し、滑膜細胞の増殖、軟骨の破壊と骨のびらん形成が進行して、最終的には関節という構造物が破壊されて骨と骨が直接接した「強直」という状態になります。指の骨が強直することで変形が生じ、関節リウマチの患者さんに典型的な手の形を呈するようになります。 このように関節リウマチの病状が進行すればするほど、患者さん自身でのブラッシングを含む口腔清掃の実施が困難になることは、想像しやすいでしょう。 リウマチ治療の第一選択として用いられる抗リウマチ薬は、その作用機序から「免疫調整薬」と「免疫抑制薬」に分類されます。すべての免疫機能を非特異的に抑制する免疫抑制薬は、免疫低下に伴う易感染の状態に繋がる可能性があるため、インプラント治療後にこのような薬剤の服用が原因で、インプラント周囲の感染、炎症が惹起される可能性もあります。さらに抗リウマチ薬の中には、副作用として骨髄障害を有するものもあり、インプラント周囲の骨代謝に影響を与える可能性もあります。 また、抗リウマチ薬は遅効性であり、多くの効果発現まで2~3カ月を要することから、その期間の関節内の炎症のコントロールや炎症増強時にはステロイド薬が用いられることも珍しくはありません。このステロイド薬も免疫抑制による易感染の状態を惹起するため、長期服用により感染のリスクは増大します。 さらに、ステロイドの副作用としてもう一つ重要なものに骨粗しょう症があります。高用量、長期間の服用によりステロイド性骨粗しょう症の発症リスクが増大し、それに対してビスフォスフォネート系製剤(BP製剤)の処方を受けている患者さんも少なくありません。 関節リウマチが発症・進行して、手指の拘縮などにより細かな動きを伴う通常のブラッシングが困難な患者さんは、口腔内の状況が天然歯、インプラントにかかわらず、音波ブラシを用いた清掃も考えていただきたいと思います。
※参考書籍 |
---|
Q40 | インプラント治療後、全身性エリテマトーデスを発症しました。影響ありますか? |
---|
A40 | 重度の口腔乾燥と口腔病変のある全身性エリテマトーデス疾患の患者さんは、入れ歯の安定性が損なわれるため、インプラント治療が推奨されています。 Ergun S, Katz J, Cifter ED, Koray M, Esen BA, Tanyeri H: Implant-supported oral rehabilitation of a patient with systemic lupus erythematosus: case report and review of the literature. Quintessence Int, 41(10): 863-867, 2010. しかしながら、本疾患に対してはステロイド薬服用が必須となること、さらにループス腎炎を歯証している場合は免疫抑制薬の服用も必要であるため、易感染の状態になりやすいといえます。疾患自体だけでなく、服用薬剤の影響も考慮にいれて対応する必要があります。
※参考書籍 |
---|