他疾病の治療中の方
Q161 | 歯科で薬をもらいました。スポーツドリンクで飲んでもいいですか? |
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A161 | 特に水分摂取を制限されていなければ、コップ1杯(150ml程度)の水、またはぬるま湯で飲むようにしましょう。 薬は解けた状態で吸収されますが、水がなければ溶けにくいので吸収が遅れ、効果も現れにくくなります。水なしで飲むと、薬が喉や食道に引っ掛かり、そこで溶けてしまい、食道が炎症を起こすことがあります。また、水の量が少なくても、薬の吸収がスムーズにいかず、効き目が低下する場合もあります。 スポーツドリンクは体にわるくなさそうな印象がありますが、カルシウムなどのミネラルを多く含んでおり、薬の吸収や作用を低下させるといわれています。 さらに、スポーツドリンクは、糖質が含まれていることから、血糖値に影響を及ぼすので、糖尿病患者さんには不向きです。 ※参考書籍 |
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Q162 | 糖尿病になると口の状況も10年早く年を取ると聞きました。本当ですか? |
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A162 | 本当です。現在は、ちょっと早めの診断・治療が有効です。 糖尿病と口のなかの状況には、次の関係性があります。 1.歯が悪くなりやすいむし歯や歯周病にも注意が必要です(痛みが出るだけではなく、抜歯も多いです)。 8020運動(80歳で20本の歯を残す)を目指しましょう。
他にも口以外との関係性には、次のようなものがあります。 2.脳卒中(脳梗塞)や認知症になりやすい軽症糖尿病といえども侮れません。初めは誰でも軽いと思いがちです。 3.目が悪くなりやすい網膜症だけではなく、白内障や黄斑浮腫も早く起きやすいです。眼科受診を忘れないようにしましょう。 4.狭心症や心筋梗塞になりやすい無痛性のこともあります。定期的に心電図検査を受けよう。未然の発見に運動負荷心電図検査が有効です。 5.感染症にかかりやすいかぜのときには急性肺炎に厳重注意です。かつては肺結核の合併症も多かったです。 6.腎臓がわるくなりやすい新規透析導入患者さんの原疾患のほぼ半数を糖尿病腎症が占めています。血圧管理・食事療法が重要です。 7.骨がもろくなりやすい(骨粗しょう症)骨折にも要注意です。肥満があると運動器疾患(腰痛や膝の痛み)も多いです。 8.神経障害しびれ(ビリビリ、じんじん)や感覚鈍麻があります。知らぬうちに足にけがややけどを負うこともあります(普段のフットケアが重要です)。神経痛(三叉<さんさ>神経痛・坐骨神経痛)や顔面まひ・運動神経まひ(複視)などもあります。自律神経障害(頻脈、胃拡張、便秘、勃起不全など)も少なくありません。筋肉の衰えも招きやすいです。 9.皮膚疾患角化しやすく(うおのめ、たこ)、一方で皮膚が薄くなります。足感染症(おできなど)や足・爪白癬(はくせん)にも注意が必要です。水疱(すいほう)や潰瘍などができることもあります。皮膚掻痒(そうよう)症や帯状疱疹(たいじょうほうしん)も少なくありません。足のおできや丹毒も早めに治療しましょう(下肢全体に広がることも)。 10.間欠性跛行(かんけつせいはこう=歩行時の下肢の痛み)や壊疽(えそ)になりやすい世界的には、下肢切断などもまだまだ多いようです。我慢せず、すぐに検査を受けましょう。
【注意事項】1.治療の鉄則は「ウサギよりカメ」と心得よう。 ※参考書籍 |
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Q163 | 糖尿病はむくみに関係しますか? |
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A163 | 糖尿病はむくみに関係します。 インスリンは、単に血糖値を下げるはたらきだけではなく、腎臓にはたらき、尿中に出ていくナトリウム(塩分)を排泄しにくくしてしまいます。 そのため、血糖コントロールのわるい患者さん、高インスリン血症状態にある患者さんは、むくみやすいといえます。
※参考書籍 |
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Q164 | シックデイって何? |
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A164 | シックデイの直訳は“病気の日”、つまり糖尿病患者さんが別の病気にかかって食事がとれず、血糖値が乱れやすくなった状態を指します。具体的には、下に挙げた感染症などによる発熱、下痢、嘔吐や食欲不振のために、食事がとれない状態を“シックデイ”と呼びます。1) 1)日本糖尿病学会 ホームページ 糖尿病診療ガイドライン2019 日本糖尿病学会編・著.糖尿病診療ガイドライン2019.南江堂; 2019: 340 シックデイが起こりやすい病気の種類1.呼吸器感染症
2.尿路系疾患
3.皮膚感染症
4.消化器疾患
5.外傷、火傷、凍傷など日本糖尿病学会 編・著. 糖尿病 治療の手引き 2017(改訂第57版) P96. 南江堂; 2017 ※参考書籍 |
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Q165 | 咬合違和感症候群って何? |
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A165 | 日本補綴歯科学会では、「咬合の異常の有無にかかわらず、咬合の違和感を訴える病態の包括的症候群」と定義しています。 咬合違和感症候群の特徴1.年齢は20~80歳である 2.発症後の経過は長く、おおむね10年以上である 3.男女比はほぼ同じである 4.歯科治療後の咬合の微妙な変化による顎の動きの変化を受け入れられない 5.正常な咬合感覚を誤って、ないしは過度に認識したりする 6.必ずしも咬合に関する治療が行われていなくても発症する 7.すべての身体症状が咬合に起因していると信じて疑わない 8.ドクターショッピングを繰り返し、心理的、社会的そして職業的損失を受けている 9.頻繁に自分の咬合や顎位のチェックを行う 10.他覚的にみて咬合に異常が認められない場合でも「自分のかみあわせは異常である」と信じて疑わず正常咬合へ執拗にこだわる 11.新たな歯科医院を受診するとき、過去の治療装置(補綴装置やテンポラリークラウン(仮歯)など)、長い手紙や自分で描いた絵などを持参する 12.精神疾患を認める場合でも、精神科の受診を強く拒否することが多く、薬も服用してくれないことが多い
玉置勝司ほか:咬合違和感症候群. 日補綴会誌, 5(4): 369-386, 2013.
この病態の患者さんには原因が未だ不明の点も多く、脳機能との関連性等が報告されています。 豊福 明:歯科心身症への新しいアプローチ. 口病誌, 74(3): 161-168, 2007.
※参考書籍 |
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Q166 | シックデイと血糖コントロールの関係について教えてください。 |
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A166 | 通常、運動やインスリンは血糖値を下げます。また、食事やアドレナリンなどのホルモンは血糖値を上げます。このバランスが保たれることで、血糖値が一定に保たれます。 ところがシックデイのときは、病気によるストレスでアドレナリンやコルチゾールなどのホルモンが体内で分泌されます。これらのホルモンはインスリンとは反対の作用を持つため、高血糖になりやすくなります。また、通常の食事が出来ないときに、いつもどおりに薬を飲んだりインスリン注射をしたりすると、糖質をとる量がいつもよりも少なくなっているため、低血糖を起こすことがあります。 このようにシックデイは通常の血糖コントロールが難しくなって高血糖や低血糖を起こしやすくしてしまう状態なのです。 ※参考書籍 |
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Q167 | シックデイの対策について教えてください。 |
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A167 | 1. 軽症時の飲水・食事シックデイで血糖コントロールがうまくいかなくなる原因として、発熱、下痢、嘔吐、食事がとれなくなることが挙げられます。このうち、発熱・下痢・嘔吐は脱水が問題になり、食事がとれないことは脱水に加えて糖分不足につながります。つまり、シックデイが軽症で食事ができる場合、水分補給と糖分の摂取が大切になります。 【水分摂取】1日に1~2リットルはとりたいところです。野菜スープやみそ汁などで水分を補うと、水分と一緒にミネラル分もとることができます。 【糖分=炭水化物】うどん、おかゆ、雑炊、果物など、すぐにエネルギーになるようなものを食べると効果的です。 2. 安静と保温シックデイのときは病気になっているわけですから、安静と保温を心掛けてください。体力の回復と維持が重要です。 このような時は、出来るだけ早く医療機関を受診してください。
日本糖尿病学会 ホームページ 糖尿病診療ガイドライン2019 重度の低血糖により糖尿病昏睡を起こすこともありますので、ご注意ください。 ※参考書籍 |
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Q168 | 糖尿病と骨密度の関係について教えてください。 |
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A168 | 骨は体内でも、最も硬い臓器であり、じっと固定しているもののようにみえますが、骨芽細胞という骨を作る細胞と、破骨細胞という骨を壊す細胞のはたらきにより常に新陳代謝しています。健康な状態では、これらがうまくバランスを取って新たな骨組織に置き換わることで、強さやしなやかさを保っています。しかし、糖尿病によりインスリン作用が欠乏する(インスリンがうまくはたらかない)と、この骨を形成する骨芽細胞の数や機能が低下してしまい、骨を作る作用より壊す作用が増え、骨の量が減ってしまいます。 また、インスリンはビタミンDを活性型にするはたらきに関与しています。全身のカルシウム代謝は主に副甲状腺によって制御されています。腸管からのカルシウム吸収には活性型ビタミンDが欠かせませんが、副甲状腺ホルモンがビタミンDを活性型にする酵素を刺激する際にインスリンが重要な役割を果たしています。そのためインスリンが不足すると、せっかく食べたカルシウムもうまく吸収できず、骨を作る材料が減ってしまい、十分な骨密度を保った骨を作ることが困難になります。 糖尿病は骨の質に影響します。骨には硬いミネラル成分だけではなくコラーゲンが豊富に存在して、しなやかさを保っています。高血糖状態に長期間さらされることで、たんぱく質に糖が結合した終末糖化物質(AGEs)という物質が作られます。これは骨芽細胞の分化や機能を阻害するだけではなく、コラーゲン繊維の間に本来はない結合を作ってしまいます。その結果、骨本来のしなやかさが損なわれ、外からの力にもろい、折れやすい骨になってしまいます。 このように糖尿病においては、骨密度の低下だけでなく、骨質の低下により骨粗しょう症になりやすい傾向があるのです。 ※参考書籍 |
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Q169 | 糖尿病で骨が弱くなるのはなぜですか? |
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A169 | 糖尿病の患者さんではどうして骨が脆くなるのでしょうか?キーワードとして「骨質の低下」があります。 骨密度検査では、骨の中のカルシウムの骨を測定しますが、骨はカルシウムだけでできているわけではありません。骨を形作る細胞やたんぱく質、ミネラルなどの無機質が十分に蓄えられ、また骨の細かい構造が健全な状態に保たれていることが、骨の強さにつながります。また、骨のしなやかさを保つためには、古い骨が取り去られ、新しい骨が作られるという、いわゆる骨の新陳代謝が行われなければなりません。 ところが、血糖値が高い状態が続くと、骨を新しく作る力が落ちてしまい、骨の新陳代謝を起こしにくくなります。また、骨の中に最も多く存在するコラーゲン線維が、高血糖により不健康になることが知られています。(表参照)
通常は、不健康なコラーゲン線維を含む骨は、新陳代謝の中で取り除かれますが、糖尿病の患者さんでは骨の新陳代謝が落ちているので、古くて質のわるい骨が長く残ってしまうことになります。これを糖尿病による骨質の低下と呼んでいます。骨質の低下した骨は、骨にカルシウムが十分に保たれていても(つまり骨密度が高くても)、外から加わる力に対して弱く、外から加わる力に対して弱く、簡単に骨折してしまいます。これが、糖尿病患者さんで骨折が増える大きな原因と考えられています。
表:糖尿病患者さんで骨折の危険が高くなる条件
(日本骨粗鬆症学会「生活習慣病骨折リスクに関する診療ガイドライン」2019年版より作成)
※参考書籍 |
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Q170 | インスリン療法での注意事項を教えてください。 |
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A170 | 低血糖時とシックデイ時についての理解と対策が必要となります。 低血糖低血糖はインスリン作用が相対的に過剰になったときに生じるもので、その症状は自立神経の活動の亢進による手足の震え、発汗、動悸、不安感、空腹感などがあり、血糖値の低下への警告症状ともいえます。人によってその症状は異なります。症状が進むと中枢神経症状が発現し頭痛、かすみ目、めまい、眠気、思考困難などがみられ、さらに異常行動、意識低下、傾眠を起こし最終的には昏睡となります。
シックデイシックデイとは、糖尿病患者さんが、糖尿病以外の病気にかかることを指します。発熱、かぜ(感染症)、下痢、嘔吐、外傷、骨折などの病気や食欲不振、食事摂取不足により血糖変動がみられます。インスリン注射での調整も難しくなり、血糖値が乱高下しやすくなります。 シックデイのとき、食事がとれなくても自己判断でインスリン注射を中断してはいけません。発熱、消化器症状が強いときや症状が改善する気配が感じられないときは必ず医療機関を受診しましょう。
ポイント低血糖、シックデイのときの対策については事前に主治医から指導を受けておき(インスリンや薬の量の調整なども)、その内容を糖尿病連携手帳やお薬手帳に記載し、医療関係者や家族などと情報を共有することが重要です。
※参考書籍 「月刊 糖尿病ライフ さかえ 2018年1月号」 日本糖尿病協会 |
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