他疾病の治療中の方
Q131 | 今、がん治療中ですが、極度の口腔乾燥に悩んでいます。どうしたらいいでしょう? |
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A131 | 特にがん患者には重篤なものが多いです。理由として、以下の4つがあります。 1.唾液分泌量の減少
2.唾液粘稠度の増加
3.唾液蒸発量の増加
4.脱水
口腔乾燥症への考え方・対策1.唾液量を増やす(原因療法)①唾液分泌抑制の原因を除去する ②唾液分泌促進薬の使用 ③よく噛んで食べる ④唾液腺をマッサージする ⑤すっぱいものを食べる ⑥10%キシリトール水のスプレー 2.蒸発量を減らす(原因療法)①マスクの着用 ②水で湿らせたガーゼを口にあてる 3.口腔内の保湿(対症療法)①保湿方法
※1つの方法だけを漫然と続けるのではなく、色々な方法を行ってみましょう。
②保湿剤
※保湿剤の選択方法
4.疼痛のコントロール約70%に表在性疼痛があります。 ①保湿
②局所麻酔薬
③NSAIDs
※参考 |
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Q132 | がん治療をはじめてから味があまり感じられず食事がおいしくありません。原因、対策を教えてください。 |
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A132 | 味覚障害の可能性が考えられます。味覚障害にはどのようなものがあるのか、そして原因と対策についてご紹介します。 味覚障害の分類1.味覚減退味の感じ方が鈍くなる 2.味覚消失味が全くわからない 3.自発性異常味覚味覚刺激がなくても嫌な味がする 4.解離性味覚障害特定の味だけがわからない 5.異味症本来の味と異なる味がする 6.悪味症どの味も嫌な味に感じる
味覚障害の原因と対策原因
対策
※参考 |
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Q133 | がん治療をはじめてから口臭が気になるようになりました。どうしたらいいですか? |
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A133 | 口臭の原因と対策には次のようなものがあります。 原因口腔清掃不良、唾液分泌の減少、歯周病などにより、揮発性硫黄化合物が発生します。 揮発性硫黄化合物含有成分により、様々な臭いが発生します。
対策口腔清掃舌苔除去、ブラッシング、歯石除去 含嗽口臭予防洗口剤、含嗽剤 保湿保湿剤
※参考 |
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Q134 | 今がんに対し化学療法を行っています。歯科治療に対し、何か気をつけることはありますか? |
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A134 | 白血球数(好中球数)と血小板数に基準があります。
上記の数値を下回る場合は、観血的歯科治療は避けるようにしましょう。検査値など、状況を歯科医師にしっかりと説明して下さい。 ※参考 |
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Q135 | がんに対する放射線治療を予定しています。口腔内に影響するとのことで歯科受診をすすめられましたが、どう影響するんですか? |
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A135 | 放射線性顎骨壊死(ORN:osteoradionecrosis of the jaw)の発症リスクは根尖病巣、重度歯周病、放射線治療後の抜歯、下顎臼歯などであることから(*)、これらのリスク因子に相当する歯は照射前に抜歯することが推奨されます。 *Kojima Y, Yanamoto S, Umeda M, Kawashita Y, Saito I, Hasegawa T, Komori T, Ueda N, Kirita T, Yamada SI, Kurita H, Senga Y, Shibuya Y, Iwai H. Relationship between dental status and development of osteoradionecrosis of the jaw: a multicenter retrospective study. Oral Surg Oral Med Oral Pathol Oral Radiol 2017; 124(2): 139-145. ※参考書籍 |
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Q136 | 放射線治療を行った後、口腔内に粘膜に炎症が起こっています。早く治すにはどうしたらよいでしょうか? |
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A136 | 薬剤以外の放射線性口腔粘膜炎の治療法は次のようなものがあります。
いくつかの対策を重ねることにより、粘膜炎の重症化を抑制できる可能性があります。 ※参考書籍 |
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Q137 | 口腔がんについて知りたいので教えてください。 |
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A137 | 口腔粘膜は組織学的に扁平上皮であることから、口腔がんの約90%は扁平上皮癌です。そのほかに唾液腺がん、悪性黒色腫、悪性リンパ腫、肉腫、転移性がんなどが発生します。 口腔は直接見て触れることができるため、比較的容易に異常を発見しやすい部位ではありますが、口腔がんの早期発見は必ずしも満足のいく結果が得られているとはいえません。 その理由として、口腔がんは病変が進行するまでの自覚症状に乏しいことがあり、また、日常の臨床でよく遭遇する歯周病や口内炎などとの鑑別が困難なことが多いためです。 よって、歯周病と診断されスケーリングや抜歯が行われたり、口内炎と診断されレーザー治療やステロイド軟膏の長期投与が行われたのち、がんが進行した状態で発見されるケースも少なくありません。 口腔がんおよび口腔粘膜疾患は、粘膜上皮あるいは粘膜固有層の病的変化によって、色調および形態は変化し、さまざまな臨床所見を呈します。 早期口腔がんの臨床所見は、粘膜の白色変化や紅色変化が主体となり、進行に伴い肉眼的にびらん、潰瘍、肉芽、白斑、乳頭、腫瘤など、さまざまな病態を呈します。 鷲津邦雄、鈴木邦夫、口腔粘膜がんの早期診断について ―とくに臨床像を中心として―、日歯評論1973;372:13-22. Symptom Differentiation and Approaches for Oral Precancerous Lesions (Oral Potentially Malignant Disorders) Department of Oral and Maxillofacial Surgery, Graduate School of Medical and Dental Sciences, Tokyo Medical and Dental University
※参考書籍 |
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Q138 | 咽頭がんにより放射線治療を受けました。症状は改善していますが、最近むし歯が増えてしまいました。因果関係はありますか? |
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A138 | 放射線治療は、機能と形態が複雑な頭頚部領域のがん治療として選択されることがよくあります。しかし、頭頚部放射線治療(以下、放射線治療)は、急性有害事象として口腔粘膜炎、口腔乾燥症などが起こるだけでなく、晩期有害事象として放射線治療後の数か月から数年経過して起こる、むし歯やそれに伴う顎骨壊死などが起こる可能性があります。これらの有害事象のうち放射線治療後のむし歯(以下、放射線性う蝕)は疼痛や咬合の崩壊により摂食機能障害を引き起こすだけでなく、顎骨感染による難治性の顎骨壊死の誘因となり1)、患者さんの生活の質(QOL)を大きく低下させます。 放射線性う蝕の原因として、放射線による歯質の変化2)~5)や、唾液分泌機能低下による口腔環境の変化と唾液生理作用の低下6)が考えられています。 現在、フッ化物応用が放射線性う蝕に対し有効であると考えられており7)~9)、頭頚部放射線治療後の患者さんに対しフッ素塗布を中心とした歯科管理が推奨されていますが、十分に満足できるものではありません10)。
1)Katsura K, Sasai K, Sato K, Saito M, Hoshina H, Hayashi T. Relationship between oral health status and development of osteoradionecrosis of the mandible: a retrospective longitudinal study. Oral Surg Oral Med Oral Pathol Oral Radiol Endod. 2008;105(6):731-738. 2)Reed R, Xu C, Liu Y, Gorski JP, Wang Y, Walker MP. Radiotherapy effect on nano-mechanical properties and chemical composition of enamel and dentin. Arch Oral Biol. 2015;60:690-697. 3)Mellara TS, Palma-Dibb RG, de Oliveira HF, Paula-Silva FWG, Nelson-Filho P, da Silva RAB, da Silva LAB, de Queiroz AM. The effect of radiation therapy on the mechanical and morphological properties of the enamel and dentin of deciduous teeth – an in vitro study. Radiat Oncol. 2014;9:30. 4)Gonçalves LMN, Palma-Dibb RG, Paula-Silva FWG, Harley de Oliveira F, Nelson-Filho P, da Silva LAB, de Queiroz AM. Radiation therapy alters microhardness and microstructure of enamel and dentin of permanent human teeth. J Dent. 2014;42:986-992. 5)Kielbassa AM, Beetz I, Schendera A, Hellwig E. Irradiation effects on microhardness of fluoridated and non-fluoridated bovine dentin. Eur J Oral Sci. 1997;105:444-447. 6)Kielbassa AM, Hinkelbein W, Hellwig E, Meyer-Lückel H. Radiation-related damage to dentition. Lancet Oncol. 2006;7(4):326-335. 7)勝良剛詞,後藤早苗,笹井啓資,佐藤克郎,富田雅彦,松山 洋,林 孝文.頭頸部放射線治療後の歯科的健康状態維持における歯科管理の効果.2009;35(3):266-272. 8)Meyerowitz C, Featherstone JD, Billings RJ, Eisenberg AD, Fu J, Shariati M, Zero DT. Use of an intra-oral model to evaluate 0.05% sodium fluoride mouthrinse in radiation-induced hyposalivation. J Dent Res. 1991;70(5):894-898. 9)Chambers MS, Mellberg JR, Keene HJ, Bouwsma OJ, Garden AS, Sipos T, Fleming TJ. Clinical evaluation of the intraoral fluoride releasing system in radiation-induced xerostomic subjects. Part 2: Phase I study. Oral Oncol 2006;42(9):946-953. 10)Katsura K, Soga M, Abe E, Matsuyama H, Aoyama H, Hayashi T. Effects of casein phosphopeptide–amorphous calcium phosphate with sodium fluoride on root surface conditions in head and neck radiotherapy patients. Oral Radiol. 2016;32:105-110.
※参考文献 NPO法人 日本歯科放射線学会 |
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Q139 | 口腔がんはどのような方が多いですか? |
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A139 | 口腔がんは40歳代から増加し始め、60歳から70歳代でピークになります。その多くは男性に発症しています。飲酒や喫煙の習慣が原因といわれています。 80歳以降になると男女の寿命の違いにより人口構成の影響を受けて、女性の割合が増加しています。 注目すべき点は、40歳以前のいわゆる思春期・若年者世代(AYA世代:15~39歳くらい)でも口腔がんが発症しているということです。そして、この世代では男性より女性が多いのが特徴です。高校生や大学生が治療しているというケースもあります。 ※参考書籍 |
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Q140 | 口腔がんの報道を見ると「怖いな」と思うんですが、お口の粘膜って傷もすぐ治るし、なって困るような異常が起きるのはごくまれなことですよね? |
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A140 | ところがそうでもないんです。 口腔がんは増加中ですし最近では持病のお薬の副作用による粘膜の病気も増えています。それに粘膜の病気には口腔がんと見た目がまぎらわしく、詳しい検査をしてみないと正確な診断がつかないケースも多々あります。油断大敵なんですよ。
※参考書籍 「nico 2020.11 クインテッセンス出版株式会社」 |
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