持病の薬

Q11 ジェネリック医薬品のメリットとデメリットを教えて下さい。
A11

ジェネリック医薬品とは、特許が切れた医薬品(先発医薬品)の有効成分を用いて、他の製薬企業が開発したものです。ジェネリック医薬品の有効性については、製薬企業でさまざまな試験が行われており、それによって先発医薬品と効き目が同等であると認められたものだけが、厚生労働省によって承認されています。

ジェネリック医薬品は先発医薬品と比べて開発費が少ないため、安いというメリットがあります。

その一方で、デメリットもあります。
ジェネリック医薬品の中身を見ると、有効成分は確かに同じですが、それ以外の成分は同じではない場合があります。薬の中身は有効成分だけでなく、薬剤を安定させたり、薬剤の匂いを改善したりするために、多くの添加物が加えられています。これらの添加物にも特許がかけられているため、これらの特許が切れていなければ、同じ添加物を加えることはできないのです。

その結果、薬が吸収される量や、効き始めの時間が変わってくることもあります。実際にジェネリック医薬品に変更したことでアレルギー反応や効き目が悪くなったという例も報告されています。

 

もちろん、ジェネリック医薬品にも、先発医薬品と変わらないような優れた薬もあります。ただし、とくに抗がん剤や抗不整脈薬など作用の強い薬については、もしジェネリック医薬品に変更ができるとしても、医師や薬剤師とよく相談した上で変更するかどうかを決めるようにしましょう。

 

※参考書籍
 「Newton 2015年8月号」 株式会社 ニュートン プレス

Q12 歯科医院の問診票には近頃持病や持病の薬についての質問がありますね。けっこう面倒なのですが、必要あるんですか?
A12

持病の治療にとって大切な薬でも、歯科治療の際、副作用が出ることがあります。安全な治療をご提供したいので服用中の薬についてぜひ教えてください。

●持病のある方の歯科治療について

1.他科で受診中の治療について教えてください

問診票や、診療中の問診で、他科で受けている治療について教えてください。また、健康状態や持病の治療に変化があったら忘れずに伝えましょう。現在の病状や受診している病院名、主治医を教えていただけると、必要に応じて医師と連携をとって治療を進めることができます。患者さんに無理のない歯科治療をご提供するため、とても大切なことです。

2.お薬手帳をお持ちください

どんな持病の薬を飲んでいますか?何種類も飲んでいると問診票に書き込むのはたいへんです。そんなときは、お薬手帳をお持ちいただくか、薬の実物をお持ちください。持病の治療薬のなかには、歯を抜いたときに血が止まりにくくなったり、細菌感染を起こしやすいなどの副作用の出るものがあります。安全に歯科治療をするために必要ですので、必ずお伝えください。

3.自己判断で薬を休むのは危険です!

たとえば血液をサラサラにする薬(抗血栓薬)を飲んで血栓を予防している患者さんが、「今度歯を抜くから血が止まりやすいように」と急に服用を中断すると、血栓ができやすくなりとても危険です。休薬の検討が必要な場合は、歯科と医科の主治医が相談しますので、それまではいつもどおりの服用をお願いします。自己判断の休薬は命に関わりますのでやめましょう!

4.医科の検査をお願いすることもあります

持病のある患者さんが安全に治療を受けられるかを診断するために、歯科治療の内容によっては、医科で血液検査などを受け、結果をお持ちいただくことがあります。また、検査データによっては、総合病院や大学病院の口腔外科など、全身管理の設備が整っており院内で他科のサポートが受けられる病院歯科をご紹介する場合もあります。ご了承をお願いします。

※参考書籍 「nico 2015.3 臨時増刊号 クインテッセンス出版株式会社」

Q13 脳梗塞を防ぐため抗血栓薬を飲んでいます。グラグラの歯を抜いてもらいたいのですが、しばらく薬を止めたほうがいいですか?
A13

絶対に薬は止めないでください!もし脳梗塞が起きたらたいへんです。血液の凝固値を確認したり止血処置をしたりして安全に抜歯しますのでご安心ください。

代表的な抗血栓薬にはワーファリン、パナルジン、プラビックス、エパデール、バイアスピリン、イグザレルトなどがあります。

抗血栓薬

●抗血栓薬を飲んでいる方の歯科治療について

1.薬は決して止めないで!

「抜歯のとき血が止まらないと困るから」と休薬するのは止めましょう!抗血栓薬を休薬した方の100人に1人が血栓を原因とする発作が起き、そのうちなんと80%が亡くなるという報告があります。しっかりと止血処置をさせていただきますので、安心していつもどおりの服用を続けましょう。

2.医科の主治医を教えてください

抗血栓薬を休薬せず、安全に抜歯ができるように、歯科医師と持病の主治医が連携をとって歯科治療を進めます。ワーファリンによりINR(血液凝固値)の数値が高い場合、そして、その他の抗血栓薬の用量が多く抜歯がむずかしい場合は、歯科医師から医師に相談し、患者さんの体調に問題がない範囲で投薬のコントロールをお願いして、安全に抜歯するための準備をすることもあります。

また、診断の結果、歯科医院での抜歯が困難と判断される場合は、総合病院や大学病院の口腔外科など、入院施設のある歯科をご紹介する場合もあります。ご了承をお願いします。

3.ワーファリンを服用中の方はINR値の検査を教えてください

INR値とは血液の凝固指数です。医師にとってはワーファリンの投薬のさじ加減を決める重要な数値です。これを歯科医師にお教えください。また、血液検査を受けて当日のデータをお持ちいただけると「思ったより薬が効いていて血が止まらない」という事態を避けることができます。血液検査でINR値が3.0以下であれば、止血処置をしっかりし、服用を継続しながら抜歯することがガイドラインに示されています。また、抗血小板薬(アスピリンなど)を服用中の患者さんの場合も止血処置をすることで薬を止めずに抜歯が可能です。

細菌の抗凝固薬の新薬に、血液の凝固指数をINR値で測定できないものがあります。これについてはまだ抜歯のガイドラインがありません。新薬をお使いの患者さんは、今のところ総合病院や大学病院の口腔外科などの専門外来での抜歯をオススメします。なお、新ガイドラインは2015年3月発表の予定です。

4.止血処置をしっかりします。

前もって「抗血栓薬を飲んでいます」とお知らせいただいていると、止血の準備を万端に整えてご来院をお待ちすることができます。止血剤を抜歯した穴に入れ、傷口を縫合します。処置後しばらくはガーゼを噛んでいただき、しっかりと止血します。

※参考書籍 「nico 2015.3 臨時増刊号 クインテッセンス出版株式会社」

Q14 骨粗しょう症の薬を飲んでいますが、歯科治療にどんな影響があるのですか?
A14

ビスフォスフォネート製剤(BP剤)は、骨粗しょう症の治療薬として大変評価の高い薬です。たとえば、閉経後の女性の骨密度アップに飲み薬、乳がんや前立腺がんなどの骨転移を防ぐ薬として注射薬などが用いられています。

ところが、この薬を継続的に使っていると(3年以上使用するとリスクが高くなります)、抜歯などのキズがきっかけであごの骨が壊死するという副作用が起きることがわかっています。

頻度としては、とある大学の調査では飲み薬で0.3%程度(オーストラリアの調査では0.01~0.04%)と、それほど高いものではありません。しかしひとたび起こると難治性で、たいへんつらい副作用です。

「BP剤を飲んでいるのを知らずに歯を抜いてしまった」というようなことがあってはいけませんので、服用している場合は必ず問診票に書き、お薬手帳をお持ちください。

代表的なBP剤には、フォサマック、アクトネルがあります。

BP製剤

 ●骨粗しょう症の薬を飲んでいる方の歯科治療について

1.原因のひとつは細菌です。お口を清潔に!

すでにBP剤を飲んでいるかたは、毎日の歯みがきをていねいに行い、歯科のクリーニングに定期的においでください。お口の中の細菌は、あごの骨が壊死するリスクになってしまいます。そこで発症の予防に効果があるのが口腔ケアです。

これから服用するという方は、その前に歯科を受診し、抜歯などの必要な治療をあらかじめ済ませましょう。服用を開始してからも定期的にお口の健康チェックを受け、お口の清潔を保っていきましょう。

入れ歯によるキズも骨壊死のきっかけになります。キズや炎症を防ぐため、入れ歯の清掃をていねいにし、調整には定期的に通いましょう。

2.抜歯をするなら休薬してから。

抜歯などの外科治療が必要な場合は、歯科医師が骨粗しょう症の治療の主治医と連携を取り、歯科治療の準備のための休薬の相談をします

医科の主治医の判断で休薬をすると、約3ヵ月後にはあごの骨の代謝が一巡し、薬の影響が減ってきます。抜歯後はしっかりと縫合して、細菌感染を防ぎます。

ただ、がんの転移を防ぐ注射薬のBP剤をお使いの患者さんは、休薬が望ましくないことも多いです。この場合は通常、抜歯よりもがん治療を優先することになります。

(別注)

近年骨粗しょう症治療薬の承認を受けた分子標的薬(デノスマブ/ランマーク)についても、抜歯のキズなどの感染をきっかけにあごの骨の壊死が起きることが報告されています。これからはこうした新薬にも注意を払う必要があります。

なお、歯科としては骨粗しょう症治療薬の有益性にかんがみ、基本的には骨粗しょう症の治療を優先させ、「BRONJに対するポジションペーパー」に基づいて治療に臨むとともに、副作用の予防に徹底した口腔ケアが重要と考えられています。

※参考書籍 「nico 2015.3 臨時増刊号 クインテッセンス出版株式会社」

Q15 ステロイド薬を使っていますが、歯科治療はできますか?
A15

ステロイド薬は、腎臓の近くにある副腎から出る副腎皮質ホルモンと同じ働きをする薬です。免疫反応を抑制し、炎症やアレルギーのかゆみを穏やかにしたり、喘息やリウマチなどのつらい症状を楽にする薬として使用されています。

長くお使いの方が多く、免疫機能が低下する副作用によりむし歯や歯周病が悪化しやすく、抜歯などの外科治療を受けると細菌感染を起こしやすくなります

また、長期間服用していると、ストレスを和らげる働きのある副腎皮質ホルモンが副腎から出にくくなります。そのため歯科治療で緊張しストレスが加わったときに、ホルモンが不足し、ショック症状を起こすことがあります。

ステロイド薬を処方している主治医と連携をとりながら、事前に抗菌薬を処方し、ステロイドの補充療法を行うなどの配慮をして治療を進めますので、必ずお知らせください。また、糖尿病、骨粗しょう症などの合併症についてもお教えください。

代表的なステロイドの飲み薬には、プレドニゾロン、プレドニンなどがあります。

 ステロイド

 ●ステロイドを飲んでいる方の歯科治療について

1.治療前から抗菌薬を処方します

むし歯や歯周病、抜歯などの治療の際、重篤な炎症を起こさないように、治療の準備のため事前に抗菌薬を処方し、お飲みいただくことがあります。忘れずに飲んでお越しください。

2.糖尿病などの合併症のある方は?

ステロイド薬の副作用で、糖尿病の合併症がある患者さんは、血糖値の検査データをお教えください。検査データの値が高い場合、まずは合併症の治療を優先していただくことがあります。日ごろから、血糖値のコントロールをお願いいたします。

骨粗しょう症の合併症がありBP剤をお飲みのかたは、歯科医師と主治医が相談し、3ヶ月ほど休薬をお願いすることがあります。

3.ショック症状の予防にステロイド薬の補充療法が必要なことも。

長期間ステロイドを使用していると、ストレスを和らげる働きのある副腎皮質ホルモンが副腎から出にくくなっています。歯科治療でドキドキしストレスが加わると、ホルモン不足になり、ショック症状を起こすおそれがあります。

そこで治療の準備のため、事前にステロイド薬を少し増やす補充療法が必要になることがあります。ステロイドを処方している主治医と連携して安全に治療を進めますので、主治医を受診して補充療法の処方を受けるなどのご協力をお願いします。

4.自己判断での中止はやめましょう!

ステロイド薬は、喘息やリウマチなどのつらい症状を抑える重要な薬です。歯科治療を受けるからと自己判断で中断すると、急に体内のステロイドが不足し危険な上、症状もかえって悪化してしまいます。

なお、口内炎の治療などの際に歯科が処方するステロイド軟膏は、短期間の使用が目的で副作用の心配はいりません。使用期間や使用量を守って処方どおりに使いましょう。

※参考書籍 「nico 2015.3 臨時増刊号 クインテッセンス出版株式会社」

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