他疾病

Q31 睡眠時無呼吸症候群と動脈硬化は関係ありますか?
A31

閉塞性睡眠時無呼吸は動脈硬化性疾患の独立した危険因子であるとされています。

※参考書籍
 「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版」
 一般社団法人 日本動脈硬化学会

Q32 OSASって何ですか?
A32

閉塞性睡眠時無呼吸症候群(Obstructive Sleep Apnea Syndrome : OSAS)は、睡眠中に呼吸が弱くなる、あるいは停止し、体内の酸素濃度が下がり、睡眠が障害されることにより、日中の眠気や頭痛、集中力の低下などの症状により生活の質(QOL)を低下させ、高血圧症や糖尿病、メタボリックシンドロームの発症に関与し、重症例では心血管障害や脳血管障害の危険因子となる全身性の疾患です。

要するに、寝ているときに息が止まり、いびきをかくことによって睡眠の質が悪くなり、昼間に眠くなったり、血圧が上がったり、心臓・血管に負担がかかる病気です。

OSAS患者は、長くて2分間息が止まっている方もおられ、そのときの経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)は60%まで低下し、脈拍は200回近くまで上昇します。一度、2分間息を止めてみてください。かなり苦しく、心臓がドキドキするのを感じると思います。OSAS患者では、このような状態が寝ている間ずっと繰り返されます。多くの患者は寝ているため気づいていません。しかしながら、これだけ酸素が足りない状況が続くと、身体に負担がかかり、熟睡できるはずがありません。

このような理由から、OSAS患者は睡眠の質が低下し、昼間に強い眠気を感じます。例えるならば、毎日徹夜が続いているような状態です。

OSASの判定の仕方

1.AHI:止まった呼吸数で判定

AHI:1秒間に10秒以上呼吸が止まったり低呼吸になった回数

5未満 ごく軽度
5~15 軽度
15~30 中度
30以上 重度
 
2.ODI:動脈血酸素飽和度(SpO2)で判定

ODI3:1時間でSpO2がその患者の平均から3%以上下降した回数

5未満 ごく軽度
5~15 軽度
15~30 中度
30以上 重度

 

*呼吸が止まれば動脈血酸素飽和度は低下する

 

※参考書籍
 「睡眠時無呼吸症候群の口腔内装置治療」
 阪井 丘芳 監修  医師薬出版株式会社

 『実践!「効果のあがる」スプリント治療の進め方』
 著 今井俊広・今井真弓 インターアクション株式会社

Q33 OSASといわれましたが、何か問題ありますか?
A33

 OSAS患者では、無呼吸により低酸素、高炭酸ガス血症の状態になります。体内の酸素が少なくなり、それを補うように、心臓や血管など循環器が過剰に働き、負担が増えます。毎晩の積み重ねにより、高血圧症、動脈硬化症、心不全、不整脈などの合併症へつながり、それら合併症により血栓が詰まりやすくなるため、虚血性心疾患、脳血管障害など死につながるような重篤な合併症にかかる危険性も高くなります。

また、無呼吸により睡眠が障害されるため、ストレスや睡眠中に分泌されるホルモンバランスが崩れ、インスリン抵抗性が発現します。その結果、糖尿病、脂質異常症、肥満などの合併症へとつながります。最終的に、これら合併症により心血管障害の発症率・死亡率が高くなり、生命予後にも影響を及ぼすと報告されています。

OSASを治療するということは、患者のいびき・眠気を治療するだけではなく、合併症の治療・予防につながり、生命予後にも関わる治療といえます。

 

※参考書籍
 「睡眠時無呼吸症候群の口腔内装置治療」
 阪井 丘芳 監修  医師薬出版株式会社

Q34 なかなか寝つけません。どうしたらいい?
A34

睡眠障害対処12の指針というものがありますので、ご紹介します。

(内山 真編. 睡眠障害の対応と治療ガイドライン. じほう. 2002)

 

1.睡眠時間は人それぞれ、日中の眠気で困らなければ十分

  • 睡眠の長い人、短い人、季節でも変化、8時間にこだわらない
  • 歳をとると必要な睡眠時間は短くなる

 

2.刺激物を避け、寝る前には自分なりのリラックス法

  • 就床前4時間のカフェイン摂取、就床前1時間の喫煙は避ける
  • 軽い読書、音楽、ぬるめの入浴、香り、筋弛緩トレーニング

 

3.眠たくなってから床に就く、就寝時刻にこだわりすぎない

  • 眠ろうとする意気込みが頭をさえさせ寝つきを悪くする

 

4.同じ時刻に毎日起床

  • 早寝早起きでなく、早起きが早寝に通じる
  • 日曜遅くまで床で過ごすと、月曜の朝がつらくなる

 

5.光の利用でよい睡眠

  • 目が覚めたら日光を取り入れ、体内時計をスイッチオン
  • 夜は明るすぎない照明を

 

6.規則正しい3度の食事、規則的な運動習慣

  • 朝食は心と体の目覚めに重要、夜食はごく軽く
  • 運動習慣は熟睡を促進

 

7.昼寝をするなら、15時前の20~30分

  • 長い昼寝はかえってぼんやりのもと
  • 夕方以降の昼寝は夜の睡眠に悪影響

 

8.眠りが浅いときは、むしろ積極的に遅寝・早起きに

  • 寝床で長く過ごしすぎると熟睡感が減る

 

9.睡眠中の激しいイビキ・呼吸停止や足のぴくつき・むずむず感は要注意

  • 背景に睡眠の病気、専門治療が必要

 

10.十分眠っても日中の眠気が強いときは専門医に

  • 長時間眠っても日中の眠気で仕事・学業に支障がある場合は専門医に相談
  • 車の運転に注意

 

11.睡眠薬代わりの寝酒は不眠のもと

  • 睡眠薬代わりの寝酒は、深い睡眠を減らし、夜中に目覚める原因となる

 

12.睡眠薬は医師の指示で正しく使えば安全

  • 一定時刻に服用し就床
  • アルコールとの併用をしない

 

(参考)睡眠中の無呼吸が身体に及ぼす影響(危険率)

AHI:1時間に10秒以上呼吸が止まったり低呼吸になった回数

全身への影響(AHIが高いほどリスクが高くなる)

*)日本デバイス治療研究所. 循環器領域における睡眠呼吸障害の診断・治療に関するガイドライン.

 

※参考書籍
 「睡眠時無呼吸症候群の口腔内装置治療」
 阪井 丘芳 監修  医師薬出版株式会社

 『実践!「効果のあがる」スプリント治療の進め方』
 著 今井俊広・今井真弓 インターアクション株式会社

Q35 歯周治療で腎臓の状態が良くなる可能性があるってホント?
A35

歯周病が慢性腎臓病の原因の一部かもしれない

慢性腎臓病を引き起こす代表的な原因は、糖尿病、加齢、喫煙で、ほかに高血圧、糸球体腎炎(腎臓の中で血液を濾過するフィルターの役目を果たす糸球体の炎症によって、タンパク尿や血尿が出る病気)、自己免疫疾患なども挙げられますが、原因がよくわからないことも多いのです。しかし、以前は原因不明とされたもののうち、一部は歯周病が関係しているかもしれないと言われるようになりました。

 

歯周病が治ると慢性腎臓病も少し改善する

歯周病の人は、血液中に炎症性物質が増加しています。つまり、全身がつねに軽い炎症の状態になっていて、歯周病が治らないかぎり長期間続いてしまいます。その状態が腎臓にも悪い影響を及ぼすかもしれないと考えられるようになりました。

慢性腎臓病と歯周病の両方にかかっている患者さんに歯周治療をしたらどうなるか調べた研究*では、歯周病が治った場合に慢性腎臓病も少し改善するという結果でした。

*Chambrone L, Foz AM, Guglielmetti MR, Pannuti CM, Artese HP, Feres M, Romito GA. Periodontitis and chronic kidney disease : a systematic review of the association of diseases and the effect of periodontal treatment on estimated glomerular filtration rate. J Clin Periodontol 2013 ; 40(5) : 443-456.

 

※参考書籍
 「歯科医院で患者さんにしっかり説明できる本」
 クインテッセンス出版株式会社

Q36 口と腸が影響し合う深い関係にあるって本当ですか?
A36

口腔と腸はただつながっているというだけでなく、どちらかの状態が悪くなると、もう一方の働きも悪くなってしまう深い関係にあります。

食べ物が口腔内へ入ると、まず咀嚼によって細かく砕かれ、唾液と混ぜ合わされて消化が始まります。飲み込んだ食べ物は食道を経て胃にたどり着き、さらに消化が進み、小腸、大腸へと進んで、消化・吸収されていきます。

口は消化器官のスタート地点であり、腸までずっとつながっています。これまでは口腔と腸は物理的につながっていても、機能的なつながりはうすく、直接影響し合うことはないと考えられてきました。

ところが、口腔の環境が悪化すると、腸内細菌のバランスが乱れ、腸内環境も悪くなるということが最近の研究で分かりました。この腸内細菌は、ある種類のリンパ球の発達にかかわっているため、腸内環境が悪化すると、免疫機能の調整が難しくなります。

一方、口腔内にある免疫細胞は、腸管で成熟したものがリンパ管を経由して、口腔に到達したものです。そのため、腸内環境が悪くなると、口腔内の免疫力もダウンしてしまいます。

※参考書籍
 「全ての病気は「口の中」から!」 森永 宏喜 著  さくら舎

Q37 口腔内の細菌は血管内に侵入しやすいって本当?
A37

「天皇陛下の執刀医」である天野先生が週刊新潮の連載「『佳(よ)く生きる』ための処方箋」第5回(2016年6月9日号)の「口は災いの元」というエッセイのなかで、

「厄介なことに口腔内の細菌は血液中に入り込みやすい傾向があるようです。(中略)こういった事態を防ごうと、心臓やがんの手術、抗がん剤による化学療法などの前に、歯科医師のもとで口腔内をきれいにする『周術期口腔ケア』が行われています」

「また最近、注目されているのが『慢性炎症』です。たとえば歯周病で歯茎に炎症があると(中略)その免疫の連鎖反応が血管内にも飛び火します。その結果、起こるのが動脈硬化の悪化。(中略)実際、歯周病の人は心筋梗塞になるリスクが高いという報告もあるほどです」

と書かれています。

 

天野先生は「口腔内の細菌は血管内に侵入しやすい」ということを、「医学の教科書には書かれていません。7200例以上の心臓手術をしてきた外科医の実感であり発見」だと書かれているのです。

 

そしてエッセイの最後は、「まさに口は病の元。下手をすると命取りになりますから、くれぐれもご用心を」と結んでいます。

 

※参考書籍
 「全ての病気は「口の中」から!」 森永 宏喜 著  さくら舎

Q38 がん患者に口腔健康管理が必要って本当ですか?
A38

がん治療による副作用やがんの合併症により口腔トラブルが起こり、経口摂取が困難になります。これが低栄養、免疫能低下を招きます。そのため、口腔健康管理が必要となります。

※参考
 「歯科医療の原点と将来を見据えて DVD」より
 【開業医にもできるがん患者の口腔健康管理 杉政和先生】

Q39 がん患者の口腔健康管理ってどんなことをするのですか?
A39

口腔健康管理は、口腔機能管理、口腔衛生管理、口腔ケアの3つに分類されますが、決して難しいものではありません。詳しくは下記をご確認ください。

1.口腔機能管理

  • う蝕処置
  • 感染根管処置
  • 口腔粘膜炎処置
  • 歯周関連処置
  • 抜歯
  • ブリッジや義歯の処置、調整
  • 摂食機能療法

 

2.口腔衛生管理

【日常的な歯科診療】

  • バイオフィルム除去
  • 歯間部清掃
  • 口腔内洗浄
  • 舌苔除去
  • 歯石除去

 

3.口腔ケア

3-1.口腔清掃

【日常的な歯科診療】

  • 口腔清掃
  • 歯ブラシの保管
  • 義歯の清掃・着脱・保管
  • 歯みがき

 

3-2.食事への準備
  • 嚥下体操指導(ごっくん体操)
  • 唾液腺マッサージ
  • 舌・口唇・頬粘膜ストレッチ訓練
  • 姿勢調査
  • 食事介助

 

櫻井 薫、日本歯科医師会雑誌、69(4)、16-17、2016より引用改変

※参考
 「歯科医療の原点と将来を見据えて DVD」より
 【開業医にもできるがん患者の口腔健康管理 杉政和先生】

Q40 がん患者にどんな口腔トラブルが起こるのでしょうか?
A40

がん患者に起こる口腔トラブルは、がん治療のステージにより異なります。

1.治療期

  • 口腔粘膜炎
  • 口腔乾燥症
  • 味覚障害
  • 感染症

 

2.再発・転移期

  • 口腔粘膜炎
  • 口腔乾燥症
  • 味覚障害
  • 感染症

 

3.終末期

  • 口腔乾燥症
  • 味覚障害
  • 感染症
  • 摂食・嚥下障害

 

※参考
 「歯科医療の原点と将来を見据えて DVD」より
 【開業医にもできるがん患者の口腔健康管理 杉政和先生】

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