他疾病

Q1 高齢者の父がいます。歯科医療を受けたほうがいいですか?
A1

75歳以上の高齢者において歯科医療機関を受診することが、肺炎、尿路感染症、脳卒中発作、急性冠症候群による急性期入院の発生予防に寄与していることが報告されています1)

日本の地域在住高齢者を対象とした横断研究では、80%異常が中等度または重度の歯周炎を有していたと報告されています2)。また、歯周病菌に関連する細菌が誤嚥性肺炎の原因となることが複数の研究で報告されています3),4)。これらのことから、歯周病に対する歯科医学的な介入は、肺炎を予防する可能性のあることが推測されます。介護施設に入所している要介護高齢者の肺炎予防に対する口腔ケアの介入効果は複数の研究で報告されています5),6),7)

 

1)Mitsutake S, Ishizaki T, Edahiro A, et al. : The effects of dental visits on the occurrence of acute hospitalization fot systemic diseases among patients aged 75 years or older: A propensity score-matched study. Arch Gerontol Geriatr, 107: 104876, 2023.

2)Yamada S, Komiyama T, Ohi T, et al. : Regular dental visits, periodontitis, tooth loss, and atherosclerosis: The Ohasama study. Journal of Periodontal Research, 57(3): 615~622, 2022.

3)Awano S, Ansai T, Takata Y, et al. : Oral health and mortality risk from pneumonia in the elderly. J Dent Res, 87 (4): 334~339, 2008.

4)Terpenning MS, Taylor GW, Lopatin DE, et al. : Aspiration pneumonia: dental and oral risk factors in an older veteran population. J Am Geriatr Soc, 49(5): 557~563, 2001.

5)Sjögren P, Wårdh I, Zimmerman M, et al. : Oral Care and Mortality in Older Adults with Pneumonia in Hospitals or Nursing Homes: Systematic Review and Meta-Analysis. J Am Geriatr Soc, 64(10): 2109~2115, 2016.

6)Yoneyama T, Yoshida M, Ohrui T, et al. Oral Care Reduces Pneumonia in Older Patients in Nursing Homes. J Am Geriatr Soc, 50(3) : 430~433, 2002.

7)Bassim CW, Gibson G, Ward T, et al. : Modification of the Risk of Mortality from Pneumonia with Oral Hygiene Care. J Am Geriatr Soc, 56(9): 1601~1607, 2008.

※参考資料
 「日本歯科医師会雑誌 2023 vol.76 No.6」

Q2 薬剤関連顎骨壊死(MRONJ)に罹患していると言われました。どんな治療法がありますか?
A2

保存療法と外科療法

治療法は大きく分けて、保存療法外科療法の2つがあります。

保存療法とは、抗菌薬により病変の拡大を防ぎながら、骨吸収抑制薬を休薬することにより骨のリモデリングの回復を待ち、腐骨分離がみられたら腐骨を除去する治療です。壊死骨部には血行がなく抗菌薬は移行しないため、抗菌薬投与のみで治癒することは稀です。

外科療法とは、外科手術を伴う治療です。

MRONJの治療法としては保存療法より外科療法のほうがすぐれていること、外科療法の術式としては壊死骨のみの切除よりも周囲骨を含めた切除のほうが治癒率が高いことが報告されています1)

保存療法は外科療法に比べて治癒率が低いだけではなく、腐骨分離まではかなりの長期間を要することから、長期間にわたり患者さんのQOLが低下すること、長期間の骨吸収抑制薬休薬による原疾患への悪影響が懸念されること、さらには保存療法中に病変の拡大を認めることがしばしばあることなど、さまざまな問題があり、外科療法を第一選択治療とするのが適切です。

外科療法を行う場合、休薬は治癒率には影響しないことが明らかになりました2)。保存療法の際の休薬には一定の効果はありますが、保存療法は一般に数カ月~数年を要することが多く、長期間の休薬が原疾患に与える悪影響を考慮すると、MRONJ治療中の骨吸収抑制薬の休薬は行わないほうがよいと考えられます。

ステージごとの治療法

ステージ1

保存的治療(抗菌性洗口液、洗浄、局所的抗菌薬の注入など)または外科的治療(壊死骨+周囲骨切除など)

ステージ2

保存的治療と外科的治療(壊死骨+周囲骨切除など)のいずれも適応されるが、外科的治療のほうが治癒率は高く、全身状態が許せば外科低治療を優先する

患者の状態や希望等により外科的治療が選択されない場合は、保存的治療(抗菌性洗口液、洗浄、抗菌薬全身投与など)を行う

ステージ3

外科的治療(壊死骨+周囲骨切除、区域切除など)

患者の状態や希望等により外科的治療が選択されない場合は、保存的治療を行う

1)Hayashida S, Soutome S, Yanamoto S, Fujita S, Hasegawa T, Komori T, Kojima Y, Miyamoto H, Shibuya Y, Ueda N, Kirita T, Nakahara H, Shinohara M, Umeda M. Evaluation of the treatment strategies for medication-related osteonecrosis of the jaws (MRONJ) and the factors affecting treatment outcome: A multicenter retrospective study with propensity score matching analysis. J Bone Miner Res 2017: 32(10): 2022-2029.

2)Hayashida S, Yanamoto S, Fujita S, Hasegawa T, Komori T, Kojima Y, Miyamoto H, Shibuya Y, Ueda N, Kirita T, Nakahara H, Shinohara M, Kondo E, Kurita H, Umeda M. Drug holiday clinical relevance verification for antiresorptive agents in medication-related osteonecrosis cases of the jaw. J Bone Miner Metab 2019; (in press).

※参考書籍
 「周術期等口腔機能管理の実際がよくわかる本」
 編著 梅田正博/五月女さき子  クインテッセンス出版株式会社

 「薬剤関連顎骨壊死の病態と管理:顎骨壊死検討委員会ポジションペーパー2023」
 顎骨壊死検討委員会

Q3 カラオケで口腔機能のトレーニングができるって本当ですか?
A3

ストレス発散にカラオケが大好きという方もいらっしゃるでしょう。カラオケはストレス解消だけではなく、口腔機能の向上や認知機能の向上にも効果があることが報告されています1)

カラオケのトレーニングで改善ができる口腔機能

1)舌圧向上

2)舌口唇運動機能改善

3)口腔乾燥改善

 

ただし、口腔機能管理で最も重要なことは、継続してもらうことです。

そのためには、患者さんにとって無理なく取り組んでいただくことができる方法として、カラオケ訓練は提案しやすいですね。

次のような口腔機能低下の兆候が認められた場合、口腔機能検査を行い、口腔機能管理につなげていきましょう。

口腔機能低下の兆候2)

  • 食べ物が口の中に残るようになった
  • 硬い食べ物が食べにくくなった
  • 食事の時間が長くなった
  • 食事の時にむせるようになった
  • 薬を飲みにくくなった
  • 口の中が乾くようになった
  • 食べこぼしをするようになった
  • 滑舌が悪くなった
  • 口の中が汚れている
  • 口臭がするようになった

 

1)Miyazaki, A.; Mori, H. Frequent Karaoke Training Improves Frontal Executive Cognitive Skills, Tongue Pressure, and Respiratory Function in Elderly People: Pilot Study from a Randomized Controlled Trial. Int. J. Environ. Res. Public Health 2020, 17, 1459.

https://doi.org/10.3390/ijerph17041459

 

2)久保慶太郎, 眞田知基, 河野立行, 齋藤壮, 堀部耕広, 荻原俊美, 竜正大, 上田貴之: 歯科医院外来患者における口腔機能の主観的症状と口腔機能低下症との関連についての横断研究. 老年歯学, 37(3): 239~245, 2022.

 

※参考書籍
 「GC CIRCLE Jan. 2023 No.184」 株式会社ジーシー

Q4 義歯性口内炎について教えてください。
A4

義歯性口内炎の分類

義歯性口内炎はTypeⅠ、TypeⅡ、TypeⅢの3つの異なったタイプに分けられます1)

 

TypeⅠ 局所型口蓋粘膜炎症

義歯による外傷によって生じる赤い斑点が見られ、口蓋粘膜の限られた範囲の炎症です。

 

TypeⅡ 全体型単純タイプ口蓋粘膜炎症

義歯床に覆われている口蓋粘膜全体に拡がる発赤、充血が見られます。その部の粘膜は委縮していて、表面はスムーズです。この種の義歯性口内炎は、通常は唾液の生理的な自浄作用によって洗われている口蓋粘膜部に義歯床が存在することによって微生物が集まり、微生物叢を形成することによって生じます。この口内炎は、慢性萎縮性カンジダ症、あるいは慢性紅斑カンジダ症と呼ばれることもあります。

 

TypeⅢ 顆粒あるいは乳頭タイプ

TypeⅡの状態に加えて口蓋中央部分の粘膜表面が顆粒状あるいは乳頭状になっているもので、苔が一面に生えているように見えるものもあります。この種の義歯性口内炎も、慢性紅斑カンジダ症の一種と考えることができます。

 

義歯性口内炎の治療

TypeⅠの症例については義歯床の粘膜面を精査して、外傷を生じさせる要素を取り除くことです。TypeⅡやTypeⅢの症例に対しては、まず、夜間はもちろんのこと日中もできるだけ長時間義歯をはずしておくことです。義歯性口内炎を生じさせる要素の1つは、義歯を夜間も装着していることだからです。義歯床の材料であるレジンは多孔性のため、義歯床の粘膜面には微細な空所があります。そのため、そこにカンジダを取り込んでいる可能性があり、それが感染の原因になり得ます。そこで、外した義歯は一晩中クロルヘキシジンの含嗽剤に浸しておくことが推奨されています。

 

1) Newton, A. V.: Denture sore mouth: a possible aetiology. Br. Dent. J., 112: 357 – 360, 1962

 

※参考書籍
 「ORAL MEDICINEの臨床」 飯塚 哲夫 著  株式会社ストマ

Q5 顎関節脱臼について教えてください。
A5

顎関節脱臼とは

顎関節脱臼とは下顎顆頭が関節窩から転位したままになることで、通常は顎関節隆起を越えて前方へ移動し、元に戻らないことです。歯科治療時の大きな開口や全身麻酔時の挿管時などにも生じますが、あくびとか大笑いといった日常の動作でも容易に生じることがあります。

 

顎関節脱臼の原因

関節靱帯あるいは関節包の緩みに焦点が当てられています1)。顎関節脱臼には全身的疾患、たとえばパーキンソン病、多発性硬化症、てんかんなどの神経筋疾患や、エーラス・ダンロス症候群などが原因で生じるものもあります1)

 

顎関節脱臼の治療

非外科的治療法の基本は顎関節脱臼を徹底的に回避することであり、その方法としては、物理的に開口制限をすることです。

 

1) Cohen. A. et al.: The influence of articular eminence morphology on temporomandibular joint anterior dislocations. OS.OM.OP.OR. 131: 9 – 15, 2021

 

※参考書籍
 「ORAL MEDICINEの臨床」 飯塚 哲夫 著  株式会社ストマ

Q6 口腔白板症について教えてください。
A6

口腔白板症とは

口腔白板症とは、一般的には「口腔粘膜の真っ白な病変で、臨床的および組織学的に他の白色病変とは異なるもの」と定義づけられています1)。そのほか、「口腔粘膜上の真っ白なパッチあるいはプラークで、それを拭い取ることができず、臨床的あるいは組織的に他のどんな疾患とも性格づけることができないもの」と定義づけられています2)、3)

そして口腔白板症は、紅板症や粘膜下線維腫を含むいくつかの潜在的悪性口腔疾患の1つと考えられています。つまり、口腔粘膜の白色角質病変のすべてが口腔白板症なのではなく、口腔粘膜に生じる白色病変の大多数は良性の摩擦性角化症、あるいは炎症状態からの角化症、たとえば口腔扁平苔癬などです4)

 

口腔白板症の治療

現在行われている治療法は、原因要素の除去、薬物療法、外科手術、レーザーによる摩滅などですが、いずれもそれによって口腔白板症の全てを治癒させることはできません5)

粘膜上の白色のパッチあるいはプラークの30%ほどまでは、原因要素の除去や、抗菌剤の抗炎症剤の投与といった薬物療法で明らかに軽減します。また60%ほどまでは、喫煙を止めると著しく軽減または消退します6)

 

1) Axell, T. et al.: Oral white lesions with special reference to precancerous and tobacco – related lesions: conclusion of an international symposium held in Uppsala, Sweden, May 18-21 1994. International Collaborative Group on Oral White Lesions. J. Oral Pathol. Med., 25: 49-54, 1996

2) Society of Oral Medicine, Chinese Stomatological Association: The definition and rating system of oral leukoplakia (interim provisions) Zbonghua Kou Qiang Yi Xue Za Zhi, 46: 579 -580, 2011

3) Barnes, L.: Pathology and Genetics of Head and Neck Tumours. IARC Pres s, Lyon, 2007

4) Villa, A. and Woo, S.B.: Leukoplakia – A diagnostic and management algorithm J. Oral Maxillofac. Surg., 75: 723-734, 2017

5) Chen.Q. et al.: Management of oral leukoplakia: a position paper of the Society of Oral Medicine. Chinese Stomatological Association. OS. OM. OP. OR., 132: 32 – 43, 2021

6) Scully, C.: Oral and maxillofacial medicine. Wright, Edinburg, 2004, P.299

 

※参考書籍
 「ORAL MEDICINEの臨床」 飯塚 哲夫 著  株式会社ストマ

Q7 口腔カンジダ症について教えてください。
A7

口腔カンジダ症とは

口腔カンジダ症とは真菌の一種であるcandida菌、特にcandida albicansによる口腔粘膜の感染症で、口腔の真菌症の中では最も多い疾患です。しかし、それほど頻度の高い疾患ではありません。

 

口腔カンジダ症の原因

candida albicansは健康な人の口腔からかなり高率に検出される口腔常在菌で、舌背の後部で最も容易に見いだされ、健康な人の約50%で培養検出できます1)。しかし、病原性は乏しく、感染が成立することはほとんどありませんが、免疫の不調がカンジダ症の臨床症状を発現させる原因になると考えられています2)。そのほか、白血病、悪性腫瘍、天疱瘡、糖尿病などの患者さんで抵抗力が減弱すると発症することがあります3)。AIDS患者にもしばしば見られます。したがって、一般に、成人の口腔カンジダ症では、それらの基礎疾患があるかどうかを考慮する必要があります。しかし、明らかな基礎疾患がなく、服薬の既往歴のない人でも、乳幼児や高齢者、妊婦などが稀に発症することがあります。

全身的な発症要因の他に、局所的な発症要因として、口腔乾燥症や口腔清掃の悪さ、慢性の粘膜外傷、抗生剤の局所使用、ステロイド剤の吸入や局所使用などがあります4)

 

口腔カンジダ症の症状

その臨床症状は、白色の点、あるいはパッチの苔状付着物が見られ、それはガーゼなどでこすると容易に取り除けます。そして、取り除いた後の粘膜面は紅潮している場合が多くあります。そのような白色の付着物は、頬粘膜や舌などに生じやすく口蓋にも見られますが、歯肉に生じることは稀です。

 

口腔カンジダ症の治療

商品名「フロリードゲル経口用2%」を口腔内にまんべんなく塗布、または口腔内に含んだ後に少量ずつ嚥下するという方法で使用されます。この薬剤は、ワルファリン服用者や妊婦には禁忌です。そのほか、全身的に投与する薬剤として、深在性真菌症治療薬であるフルコナゾールやイトラコナゾールも効果があります。

そのほか、0.2%のクロルヘキシジンの含嗽剤が効果的である場合があります。

 

1) Bork, K. et al.: Diseases of the oral mucosa and the lips. W.B. Saunders Co., Philadelphia, 1996, P. 152

2) Mackie, R.M. et al.: The relationship in chronic mucocutaneous parameters and response to therapy in resistant oral candidiasis. Br. J. Dermatol., 98: 344 – 348, 1978

3) 伊藤秀夫:口腔カンジダ症、In「口腔病変診断アトラス」医歯薬出版、東京、1980

4) Laskaris, G.: Color atlas of oral diseases. Diagnosis and treatment, 4th edition Thieme, Stuttgart, 2017

 

※参考書籍
 「ORAL MEDICINEの臨床」 飯塚 哲夫 著  株式会社ストマ

Q8 口腔灼熱症候群について教えてください。
A8

口腔灼熱症候群(BMS)とは

口腔灼熱症候群(BMS)とは、舌あるいは口腔粘膜の慢性の焼けるような疼痛あるいは不快感で、特定できる原因疾患がなく、他のどんな状態や疾患によって惹き起こされたものでもなく、少なくとも4~6カ月持続するものをいいます1)。その臨床的特徴は、焼けるような、ずきずきする、ちくちくする、あるいは不快なという症状として認識されています。ほかにも、「医学的、歯学的原因が見られない、口腔内の焼けるような感覚」2)と定義されており、「疼痛は舌に限局し、主観的な口腔乾燥、知覚異常、および味覚の変化などの症状と関連している」と注釈もつけられています。

 

口腔灼熱症候群(BMS)の症状

BMSの症状は、飲食によって悪化することはなく、多くの場合、患者さんの睡眠を妨げることもありません3)。しかしBMSの症状は、緊張、疲労、熱い食品などによって憎悪されます4)、5)。他方、睡眠、食事、気晴らしなどで緩和されます4)。また、飲食物摂取によって症状は消失あるいは緩和されるという報告もあります6)。患者さんは睡眠中も目覚めている時もしばしば疼痛に気づかないことがありますが、午後の遅い時間から夕方にかけて疼痛は徐々に大きくなります7)、8)

 

口腔灼熱症候群(BMS)の罹患率

BMSの罹患率に関する研究報告がありますので、参考にしてください。

  • BMSの罹患率は全人口の0.7%から5%で、その罹患率は診断の方法や研究が行われた地域などによって異なる8)、9)、10)、11)
  • BMSの罹患率は女性で4.2%、男性で0.8%、全体で2.6%である9)
  • BMS患者の大多数は50歳以上であり4)、12)、13)、中年以降の女性に最も頻発に見られる12)、14)、15)
  • 最も一般的な患者は、50歳代から70歳代の女性である4)、16)、17)
  • 通常は、月経閉止の3年前から12年後の間に現れる4)
  • BMSの症状が30歳前に現れることは稀である18)、19)

 

口腔灼熱症候群(BMS)の原因

BMSの発症はしばしば人生の大きな出来事とか、特にストレスに満ちた期間と関連しています5)

 

BMSの原因となる局所的要素としては、歯科治療、口腔粘膜疾患、真菌感染14)、15)、20)、21)、細菌感染、アレルギー12)顎関節症12)、22)、唾液腺異常9)、カンジダ症5)、などがこれまで挙げられてきています。

 

全身的要素として、ビタミン欠乏症やホルモン障害9)、13)、免疫障害、薬物の副作用などがBMSの症状を作り出すと考えられています23)

 

口腔灼熱症候群(BMS)の治療

BMSの治療はまず原因を考え、それに対する治療を行うことになります。すなわち、義歯の調整24)、25)、習慣のコントロール26)、27)、28)、アレルギーの管理26)、29)、30)、31)、32)、33)、カウンセリング24)などがこれまで行われてきています。クレンチングやグラインディングのようなブラキシズムや舌の悪習癖といった機能異常習癖の潜在的な有害効果の可能性もあります34)

しかし、原因として最も重要なものは心理的要素なので、治療に当たってはまずその問題を考える必要があります。

つまり、患者さんの訴えを良く話してもらい、安心感を得てもらうことが重要なのです。軽度のものはそれだけで治癒することもありますが、必要に応じて抗うつ剤の投与を行います14)。アミトリプチリンなどの抗うつ剤は、時にドラマチックな効果を示すことがあります35)。そのほか抗てんかん剤であるコロナゼパムが効果的な倍があります36)。特に睡眠障害を訴える患者さんにはクロナゼパムが推奨されます6)

薬物療法としては、そのほか、これまで、抗真菌薬14)、24)、37)、抗菌物質26)、37)、38)、副腎皮質ホルモン14)、唾液分泌促進薬14)、24)、26)、37)、ビタミン及びミネラル24)、26)、37)、39)、ホルモン40)、41)、42)、43)、抗ヒスタミン剤37)、などがそれぞれの原因に応じて用いられてきています。

 

1) Burning mouth syndrome. In “Classification of Chronic Pain. Descriptions of Chronic Pain Syndromes and Definitions of Pain Terms, 2nd edition, edited by Merskey,H. and Bogduk,N.” IASP Press, Seattle, 1994, P. 74-75

2) International Headache Society : The International Classification of Headache Disorders, 2nd ed., edited by Lance,J,W. and Olesen,J. Cephalalgia., 24 (Suppl. 1): 9 1 160,2004

3) Mendak – Ziółko,M. et al. : Evaluation of select neurophysiological, clinical and psychological tests for burning mouth syndrome. OS.OM.OP.OR., 114: 325-332,2012

4) Grushka,M. : Clinical features of burning mouth syndrome OS.OM.OP., 63 : 30-36,1987

5) Zegarelli.D.J. : Burning mouth: an analysis of 57 patients. OS,OM,OP., 58 : 34-38, 1984

6) Bruch.J.M. and Treister,N.S. : Clinical oral medicine and pathology. Humana Press, New York, 2010, P.137

7) Woda,A. et at. : A possible therapeutic solution for stomatodynia (burning mouth syndrome).  J. Orofac. Pain, 12: 272 – 278, 1998

8) Grushka,M. et at. : Burning mouth syndrome. Am. Fam. Physician ,65: 615 – 620, 2002

9) Basker,R.M. et al. : Patients with burning mouth. A clinical investigation of causative factors, including the climacteric and diabetes. Br.Dent.J., 145: 9-16,1978

10) Klausner,J.J. : Epidemiology of chronic facial pain : diagnostic usefulness in patient care. J.A.D.A., 125:1604-1611,1994

11) Grushka,M. and Sessle,B.J. : Burning mouth syndrome. Dent. Clin.NorthAm.,35 :171 – 184,1991

12) Lamey,P.J. and Lamb,A.B. : Prospective study of aetiological factors in burning mouth syndrome. Br.Med.J., 296 :1243 – 1246,1988

13) Main,D.M.G. and Basker,R.M. : Patients complaining of a burning mouth : Further experience in clinical assessment and management. Br. Dent.J., 154:206-211,1983

14) Gorsky,M. et al. : Burning mouth syndrome : a review of 98 cases. J.OraI Med., 42 :7-9,1987

15) Gorsky,M. et al. : Clinical characteristics and management outcome in the burning mouth syndrome. An open study of 130 patients. OS.OM.OP.,72 :192-195,1991

16) Lauria,G. et al. : Trigeminal small – fiber sensory neuropathy causes burning mouth syndrome. Pain, 115: 332-337,2005

17) Zakrzewska,J.M. : The burning mouth syndrome remains an enigma. Pain, 62: 253 – 257,1995

18) Bergdahl.M. and Bergdahl.J. : Burning mouth syndrome : prevalence and associated factors. J. Oral Pathol. Med., 28: 350-354,1999

19) van der Waal,l. : The burning mouth syndrome. Munksgaard, Copenhagen, 1990, P.5-90

20) Brooke,R.I. and Seganski,D.P. : Etiology and investigation of the sore mouth syndrome. Dent. J., 43: 5041 506,1977

21) Domb,G.H. and Chole,R.A. : The burning mouth and tongue. EarNoseThroatJ.,60: 310-314,1981

22) Jontell,M. et al. : An oral and psychosocial examination of patients with presumed oral galvanism. Swed. Dent. J., 9: 175 – 185,1985

23) Cibirka,R.M. et al. : Burning mouth syndrome : a review of etiologies. J.Prosthet.Dent., 78: 93-97,1997

24) Lamb,A.B. et al. : Burning mouth syndrome : psychological aspects. Br. Dent. J., 165: 256-260,1988

25) Ali, A. et al.: The burning mouth sensation related to the wear of acrylic dentures: an investigation. Br. Dent. J., 161: 444 – 447, 1986

26) L.amey,P,J, and Lamh,A.B. : Prospective study of aetiological factors in burning mouth syndrome. Br. Med. J., 296: 1243 – 1246, 1988

27) Thornson, J.C.: The load factor ill complete denture intolerance. J. Prosthet. Dent., 25: 4 – 11, 1971

28) Yenim,R.: Stress – induced muscle activity: a possible etiologic factor in denture soreness. J. Prosihet. Dent., 28: 133 – 140,1972

29) James,J. et al. : Mercury allergy as a cause of burning mouth Br. Dent. J., 159: 392,1985

30) Haustein,U.F. : Burning mouth syndrome due to nicotinic acid esters and sorbic acid. Contact Dermatitis, 19: 225 – 226,1988

31) Kaaber,S. et al. : Skin sensitivity to denture base materials in the burning mouth syndrome. Contact Dermatitis, 5: 901 96,1979

32) Van Joost,T. et al.: Contact allergy to denture materials in the burning mouth syndrome. Contact Dermatol., 18: 97-99, 1988

33) Sonnex, T.S. et al.: Mucosal contact dermatitis due to instant coffee. Contact Dermatol., 7: 298 – 300, 1981

34) Bender,S.D.: Burning mouth syndrome. Dent Clin. North Am., 62: 585-596, 2018

35) Cawson, R. A. and Odell, E. W.: Cawson’s essentials of oral pathology and oral medicine, 8th edition. Churchill Livingstone, Edinburgh. 2008. P.437

36) Greenberg,M.S. et al. : Burket’s Oral Medicine, 11th edition. BC Decker Inc., Hamilton, 2008, P.285

37) Kutscher,A. H. et al.: Therapy of idiopathic orolingual paresthesias. N.Y. State J. Med., 52: 1401 – 1405, 1952

38) Katz, J. K. et al.: Burning mouth sensation associated with fusospirochetal infection in edentulous patients. OS.OM.OP., 62: 152 – 154, 1986

39) Lamey. P.J. and Allam, B.F.: Vitamin status of’ patients with burning mouth syndrome and the response to replacement therapy. Br. Dent. J., 160: 81 – 84, 1986

40) Waidrop, R.W. et al.: Oral discomfort at menopause. OS.OM.OP., 67: 535-540,1989

41) Ferguson, M. M. et al.: Oral complaints related to climacteric symptoms in oophorectomized women. J. R. Soc. Med., 74: 492-498, 1981

42) Pisanty.S. et al.: The effect of steroid hormones on buccal mucosa of menopausal women. OS.OM.OP., 40: 346 – 353, 1975

43) Nathanson, I.T. and Weisberger, D.B. : The treatment of leukoplakia buccalis and related lesions with estrogenic hormone. N. Engl. J. Med., 332: 556 – 560, 1939

 

※参考書籍
 「ORAL MEDICINEの臨床」 飯塚 哲夫 著  株式会社ストマ

Q9 舌痛症の治療法について教えてください。
A9

舌痛症とは?

心身症は、精神や心理は正常であり、心理的要因によって起こる身体的異常のことです。身体のさまざまな部位に症状が現れる可能性があるため、その部位の医療を専門とする医師が担当する疾患です。

口腔心身症は、舌のヒリヒリ感やチクチク感が代表的なもので、舌痛症と呼ばれることがあります。そのほか味覚異常を訴える場合もあります。

何らかの感染症とか、その他考えられうる何らかの原因もないのに突然生じる味覚異常は、舌痛症と考えられます。

 

舌痛症の治療

マイナートランキライザーを3日ほど内服します。通常はクロールジアゼポキシドである商品名バランス錠(10mg)を1日3回服用します。舌痛症患者の90%ほどは、この内服で症状が著しく軽減あるいは消失します。

 

※参考書籍
 「ORAL MEDICINEの臨床」 飯塚 哲夫 著  株式会社ストマ

Q10 口腔顔面痛について教えてください。
A10

口腔顔面痛とは

口腔顔面痛(orofacial pain:OFP)とは、口腔顔面の局所的構造の疾患や異常とか、神経系の機能異常とか、園各部の疾患や異常などが原因で生じる口腔や顔面に感じる疼痛のことをいいます1)

 

口腔顔面痛の原因

原因は、筋性、顎関節内の異常、神経障害、偏頭痛、関連痛、心理学的異常など、さまざまですが、主なものは骨格筋系の疼痛である顎関節症の疼痛です2)。顎関節とそれに関連する筋の障害は骨格筋構成要素による口腔顔面痛であり、5%~12%の人に見られます1)。また、口腔顔面痛は一般に複数の症状、あるいは疼痛部位の特定が難しい疼痛であり、それらは複数の原因から生じるのが普通です。

 

口腔顔面痛の分類3)

(1)歯と歯槽骨構造やそれと解剖学的に関連する構造の異常や疾患に起因する口腔顔面痛

(2)筋筋膜性の口腔顔面痛

(3)顎関節の疼痛

(4)脳神経の傷害あるいは疾患に起因する口腔顔面痛

(5)識別できる原因のない頭痛の表現と類似した口腔顔面痛

(6)特発性の口腔顔面痛

 

口腔顔面痛の治療

口腔顔面痛は①筋骨格系の疼痛、②神経血管系疼痛、③神経病としての疼痛、の3つのカテゴリーで構成されているという報告があります4)。そしてこれらの患者さんの多くは、さまざまな併発症を示し、それがそれらの状態に影響を与えることになります。

口腔顔面痛の治療は、患者さんが3つのうちのどのカテゴリーに入るものかを慎重に診断して、適切に行います。

 

1) Heir,G .M. : Orofacial pain. the 12th specialty: The necessity. J.A.D.A., 151: 469-471, 2020

2) Fernandes,G. et al. . : Musculoskeletal disorders. Dent. Clin. North Am., 62: 553-564, 2018

3) international Classification of Orofacial Pain, 1st edition (ICOP) Cephalgia, 40: 129-221, 2020

4) Crandall, J.A.: An introduction to orofacial pain. Dent. Clin. North Am., 62: 511-523, 2018

 

※参考書籍
 「ORAL MEDICINEの臨床」 飯塚 哲夫 著  株式会社ストマ

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