糖尿病
Q41 | 糖尿病と骨密度の関係について教えてください。 |
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A41 | 骨は体内でも、最も硬い臓器であり、じっと固定しているもののようにみえますが、骨芽細胞という骨を作る細胞と、破骨細胞という骨を壊す細胞のはたらきにより常に新陳代謝しています。健康な状態では、これらがうまくバランスを取って新たな骨組織に置き換わることで、強さやしなやかさを保っています。しかし、糖尿病によりインスリン作用が欠乏する(インスリンがうまくはたらかない)と、この骨を形成する骨芽細胞の数や機能が低下してしまい、骨を作る作用より壊す作用が増え、骨の量が減ってしまいます。 また、インスリンはビタミンDを活性型にするはたらきに関与しています。全身のカルシウム代謝は主に副甲状腺によって制御されています。腸管からのカルシウム吸収には活性型ビタミンDが欠かせませんが、副甲状腺ホルモンがビタミンDを活性型にする酵素を刺激する際にインスリンが重要な役割を果たしています。そのためインスリンが不足すると、せっかく食べたカルシウムもうまく吸収できず、骨を作る材料が減ってしまい、十分な骨密度を保った骨を作ることが困難になります。 糖尿病は骨の質に影響します。骨には硬いミネラル成分だけではなくコラーゲンが豊富に存在して、しなやかさを保っています。高血糖状態に長期間さらされることで、たんぱく質に糖が結合した終末糖化物質(AGEs)という物質が作られます。これは骨芽細胞の分化や機能を阻害するだけではなく、コラーゲン繊維の間に本来はない結合を作ってしまいます。その結果、骨本来のしなやかさが損なわれ、外からの力にもろい、折れやすい骨になってしまいます。 このように糖尿病においては、骨密度の低下だけでなく、骨質の低下により骨粗しょう症になりやすい傾向があるのです。 ※参考書籍 |
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Q42 | 糖尿病で骨が弱くなるのはなぜですか? |
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A42 | 糖尿病の患者さんではどうして骨が脆くなるのでしょうか?キーワードとして「骨質の低下」があります。 骨密度検査では、骨の中のカルシウムの骨を測定しますが、骨はカルシウムだけでできているわけではありません。骨を形作る細胞やたんぱく質、ミネラルなどの無機質が十分に蓄えられ、また骨の細かい構造が健全な状態に保たれていることが、骨の強さにつながります。また、骨のしなやかさを保つためには、古い骨が取り去られ、新しい骨が作られるという、いわゆる骨の新陳代謝が行われなければなりません。 ところが、血糖値が高い状態が続くと、骨を新しく作る力が落ちてしまい、骨の新陳代謝を起こしにくくなります。また、骨の中に最も多く存在するコラーゲン線維が、高血糖により不健康になることが知られています。(表参照)
通常は、不健康なコラーゲン線維を含む骨は、新陳代謝の中で取り除かれますが、糖尿病の患者さんでは骨の新陳代謝が落ちているので、古くて質のわるい骨が長く残ってしまうことになります。これを糖尿病による骨質の低下と呼んでいます。骨質の低下した骨は、骨にカルシウムが十分に保たれていても(つまり骨密度が高くても)、外から加わる力に対して弱く、外から加わる力に対して弱く、簡単に骨折してしまいます。これが、糖尿病患者さんで骨折が増える大きな原因と考えられています。
表:糖尿病患者さんで骨折の危険が高くなる条件
(日本骨粗鬆症学会「生活習慣病骨折リスクに関する診療ガイドライン」2019年版より作成)
※参考書籍 |
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Q43 | インスリン療法での注意事項を教えてください。 |
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A43 | 低血糖時とシックデイ時についての理解と対策が必要となります。 低血糖低血糖はインスリン作用が相対的に過剰になったときに生じるもので、その症状は自立神経の活動の亢進による手足の震え、発汗、動悸、不安感、空腹感などがあり、血糖値の低下への警告症状ともいえます。人によってその症状は異なります。症状が進むと中枢神経症状が発現し頭痛、かすみ目、めまい、眠気、思考困難などがみられ、さらに異常行動、意識低下、傾眠を起こし最終的には昏睡となります。
シックデイシックデイとは、糖尿病患者さんが、糖尿病以外の病気にかかることを指します。発熱、かぜ(感染症)、下痢、嘔吐、外傷、骨折などの病気や食欲不振、食事摂取不足により血糖変動がみられます。インスリン注射での調整も難しくなり、血糖値が乱高下しやすくなります。 シックデイのとき、食事がとれなくても自己判断でインスリン注射を中断してはいけません。発熱、消化器症状が強いときや症状が改善する気配が感じられないときは必ず医療機関を受診しましょう。
ポイント低血糖、シックデイのときの対策については事前に主治医から指導を受けておき(インスリンや薬の量の調整なども)、その内容を糖尿病連携手帳やお薬手帳に記載し、医療関係者や家族などと情報を共有することが重要です。
※参考書籍 「月刊 糖尿病ライフ さかえ 2018年1月号」 日本糖尿病協会 |
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Q44 | オーラルフレイルと口腔の関係を教えてください。 |
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A44 | オーラルフレイルとはオーラルフレイルは老化に伴うさまざまな口腔(こうくう)環境(口腔衛生など)、歯数および口腔機能の変化、さらに心身の予備能力の低下も重なり、口腔の健康障害に対する脆弱性が増加し、最終的に食べる機能の障害へ陥る一連の現象および過程と定義されています。 齢になると仕事をリタイアするなどで活動量が減り、身体機能の低下も伴って意欲が低下します。意欲の低下は口腔の健康への関心を低下させ、定期的な歯科受診をしなくなったり、セルフケアがおろそかになったりします。これにより歯周病が悪化したり、う蝕(うしょく:むし歯)が増加したりすると、痛みなどのため咀嚼(そしゃく)しなくても済むような軟らかく、食べやすいものを食べるようになります。 また、会話や外食の機会も減少し、活舌の低下、食べこぼし、わずかなむせ、噛(か)めない食品の増加など、“口の衰え”が加速します。さらに、好物が食べにくくなったり、口の中に痛みがあったりすると、食欲が低下して必要な量の食事がとれなくなり、栄養のバランスもわるくなるなど栄養状態が悪化します。 このような状態が続くと、筋肉など身体組成や免疫、代謝といった機能も保つことが困難になってきて、さらに意欲が低下するという悪循環に陥ることになります。 つまり噛めないことで、軟らかい食事を摂取すると、砂糖や塩を摂取する割合が高くなり、糖尿病や高血圧症などが悪化してしまう可能性が高くなるだけではなく、たんぱく質やビタミンの摂取が減少し、筋肉や身体機能を維持できなくなる可能性があるのです。 ※参考書籍 |
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