糖尿病

Q1 糖尿病とは?
A1

糖尿病とは、生活習慣病のひとつで、血液中にブドウ糖が余り慢性的に血糖値が上がってしまう病気です。すい臓から分泌されるインスリンというホルモンが、細胞にブドウ糖を届ける働きをしているのですが、このインスリンが減ったり働きが悪くなるために、血液中のブドウ糖が細胞にうまく届かず、血液中にブドウ糖が余ってしまうのです。
症状としては、しきりにのどが渇く、多食、多尿、全身の倦怠感、体重の減少などがあります。
また、免疫反応が低下して炎症が起きやすくなったり、血流が悪くなって傷の治りが遅くなってしまいます。高血糖値の患者さんでは、治療して血糖値をコントロールしないと、狭心症、心筋梗塞などの心疾患や、腎不全、脳梗塞などの合併症が起きることも。
知らないうちになっていることもあるので定期的に検診を!

※参考書籍 「nico 2011.5 クインテッセンス出版株式会社」

Q2 糖質制限が糖尿病や歯周病に効果があるって本当ですか?
A2

糖尿病と歯周病は深い関係性があります。

最近では、糖質制限がこれらに有効であると言われています。

糖質制限について下記にまとめましたので、これまで考えられていた「カロリー」との違いも含め、正しい知識を身につけましょう。

■栄養学の常識は実は間違い

糖尿病に関して、これまでは次のように言われていました。

1.脂肪は体に悪い = 糖質、炭水化物は体によい
2.カロリーをたくさんとると太る = カロリーを減らすとやせる
3.コレステロールは体に悪い = コレステロールが多い食品は食べるな
4.和食は健康によい = 洋食は健康に悪い
5.和食が長寿のもとである = 洋食がメタボ、糖尿病のもとである

 

これらの説から導かれることとして、「炭水化物を60%、脂肪を20%、タンパク質を20%」の食事がバランスがいい食事と決めてしまい、全てこの枠で決めるのです。

しかし、これは「糖質制限を推奨する」という食事法から見れば、「強制糖質過剰摂取食」となってしまいます。

この食事バランスにはエビデンス、根拠はあるのかというと、じつは日本糖尿病学会でも、これには根拠がないということを認めています。

■糖尿病にとっての白米

お米はのど元過ぎたら砂糖と同じ」と言ったら、びっくりしますか?

栄養学的には、お米は砂糖と同じなのです。お茶碗1杯のご飯を150gとしますと、糖質量は55gで、これは角砂糖に換算すると17個分にあたります。

そういって説明しますと、拒否反応を示す方が多いことは、よくわかっています。

でも、これが真実です。

従来の糖尿病治療は、ごはんを食べ、砂糖をとって、薬を使え、ということです。

しかし、薬は使わなくとも、食事を「カロリー」ではなく「糖質量」で管理すれば血糖値は管理できるのです。

■糖質制限で食べてよいもの、注意すべきもの

肉類

食べてよい食品 牛、豚、鶏、羊、加工品
要注意食品   味付け缶詰

魚介類

食べてよい食品 魚、貝、甲殻類など
要注意食品   練り製品、佃煮など

乳製品

食べてよい食品 チーズ、バターなど
要注意食品   牛乳、ヨーグルトなど

※注意食品なし

豆類

食べてよい食品 大豆(ゆで)、大豆製品
要注意食品   きな粉、小豆など

野菜類

食べてよい食品 葉物など
要注意食品   かぼちゃ、にんじんなど

種実類

食べてよい食品 クルミ、ごまなど
要注意食品   栗、アーモンドなど

キノコ類

※注意食品なし

藻類

食べてよい食品 のり、わかめなど
要注意食品   佃煮類

調味料

食べてよい食品 醤油、みそ、塩、酢など
要注意食品   ソース、ケチャップなど

油脂類

※注意食品なし

嗜好飲料

食べてよい食品 焼酎、コーヒーなど
要注意食品   清酒、ビールなど

穀類・いも類

食べてよい食品 こんにゃく
要注意食品   米、小麦、いも類など

果実類

食べてよい食品 アボガド
要注意食品   果実全般、ジュースなど

菓子類

食べてよい食品 -
要注意食品   糖の入った菓子類

■糖質制限の効果

糖質制限は次のような様々な疾病・症状に対する治療法として確立されつつあります。

てんかん、アルツハイマー病、がん、糖尿病、肥満、メタボ、アトピー、アレルギー疾患、歯周病、認知症、加齢による変化への応用

とくに、1日15g以下の糖質制限食は「スーパーケトジェニック(ケトン食)」と呼ばれ、注目されています。

※参考書籍
 「ケトン体が人類を救う 糖質制限でなぜ健康になるのか」
 宗田 哲夫  株式会社 光文社

Q3 歯科治療と糖尿病の関係って?
A3

糖尿病になると、免疫反応が低下して炎症が起きやすくなったり、血流が悪くなって傷の治りが悪くなってしまいます。そのため歯科治療のなかでも、とくに抜歯、歯ぐきの手術などの外科処置をする際に、特別な配慮が必要となります。
糖尿病の患者さんは、日ごろから血糖値をコントロールするとともに、これまでの病歴について、問診表などでお教えください。現在の体調や、受けている治療について歯科医師から質問させていただくこともありますが、安心・安全な歯科治療をご提供するためとても大切なことですので、ぜひご協力をお願いいたします。   
糖尿病の患者さんは歯周病になりやすいうえその進行も早く、治りにくいことがわかっています。また、近年では歯周病が糖尿病に悪影響を与えていること、そして歯周病の治療をすることが糖尿病の改善にも役立つことも明らかになってきています。
ふだんから歯みがきをていねいにし、歯科医院で定期的にクリーニングを受けるなど、歯周病の予防を心がけていきましょう。

※参考書籍 「nico 2011.5 クインテッセンス出版株式会社」

Q4 糖尿病になっていますが、歯周病による口腔機能低下が及ぼす影響について教えてください。
A4

歯周病の進行による歯の喪失は、咀嚼機能を低下させます。また、重度の歯周病では、味覚障害の症状が出現します。それらの口腔機能の異常は、糖尿病や糖尿病合併症の悪化に関与します。詳細は下記をご確認ください。

1.歯の喪失が引き起こす食後高血糖

家族歴のある非肥満糖尿病や高齢者の糖尿病には食後高血糖が多くみられることは広く知られています。食後高血糖は、食事を摂取してすぐに分泌されるインスリン追加分泌が遅延するのが原因と考えられています。食事の際に、野菜やきのこ、海藻などの食物繊維を先に食べ、糖の吸収を緩徐にすることで、食後高血糖を抑えることができます。

歯周病によって残存歯の減少に伴う咀嚼障害を来たすと、硬めの食物である食物繊維や魚や肉の摂取が困難になるため、それらを最初に食べることが難しくなり、その結果、食後を中心とした血糖悪化を来しやすくなります。また、摂取できる食べ物も、容易に咀嚼できるうどんやおかゆなど炭水化物に偏るため、さらなる食後高血糖を惹起しやすくなります。食後高血糖は動脈硬化性疾患を促進することにも関与しているため、結果として心筋梗塞や脳梗塞の発症リスクを増加させることにもつながってしまいます。

2.歯の喪失が引き起こす味覚障害と低栄養

亜鉛欠乏が味覚障害を引き起こすことは広く知られています。動物性たんぱく質には、味蕾の再生の原料となる亜鉛が多く含まれています。残存歯の減少で、それらの食物の摂取が減少することは味覚障害が引き起こされる一因となる可能性があります。また、たんぱく質の摂取が不足することで、フレイル、サルコペニアを引き起こし、筋肉量低下や運動量低下に伴う血糖上昇を引き起こします。

3.味覚異常が及ぼす糖尿病合併症への影響

歯周病の悪化に伴う味覚障害が高度になると、食事の味付けを濃くし、塩分摂取量を増加させてしまいます。塩分摂取量の増加は糖尿病性腎症の悪化を引き起こし、透析増加のリスクにもつながります。塩分摂取量の増加は高血圧も助長するため、心筋梗塞や脳梗塞の発症リスク増加にも関係します。

 

※参考書籍
 「日本糖尿病協会登録歯科医 認定テキスト」
 公益社団法人 日本糖尿病協会

Q5 最近メタボリックシンドロームと糖尿病の関係性をよく聞きますが、詳しく教えてください。
A5

メタボリックシンドロームの起こり方

メタボリックシンドロームの起こり方

 

メタボリックシンドロームと内臓脂肪

肥満でメタボリックシンドロームに該当する人の体重を6か月間で3%減らすと、腹囲は2cmほど減るだけでなく、内臓脂肪が減るために血糖値や血圧、中性脂肪などの値が低下します。これが内臓脂肪減少の効果です。

 

メタボリックシンドロームと糖尿病

メタボリックシンドロームは心筋梗塞の危険因子ですが、糖尿病の危険因子でもあります。日本人の糖尿病の発症率は、メタボリックシンドロームであれば、そうでない場合より男性で約2.5倍、女性で約3.7倍高いとされています。

 

メタボリックシンドロームの治療法

メタボリックシンドロームの治療方針は、「1に運動、2に食事、3に禁煙、最後に薬」とされています。一口で言えば生活習慣の改善です。

 

※参考書籍
 「月刊 糖尿病ライフ さかえ 2022年4月号」
 公益社団法人 日本糖尿病協会

Q6 新型コロナウイルスに感染すると糖尿病も悪化するって本当ですか?
A6

新型コロナウイルスが流行して数年が経過しましたが、様々なデータが出てきました。

そのなかで、糖尿病のコントロールが悪いと重症化しやすいということが分かってきています。

 

※参考書籍
 「月刊 糖尿病ライフ さかえ 2022年4月号」
 公益社団法人 日本糖尿病協会

Q7 旦那がタバコをやめてくれません。受動喫煙が体によくないということは聞いたことがありますが、糖尿病にも関係してるって本当ですか?
A7

タバコを吸う人は吸わない人に比べて糖尿病のリスクが1.44倍、さらに1日1箱以上のタバコを吸うヘビースモーカーの人では、1.61倍まで上昇することが報告されています。

JAMA2007; 298: 2654-64.

また、喫煙によりインスリン抵抗性が高まって、自ら分泌したインスリンの効果が十分に発揮できない状態になったり、その状態を補うだけのインスリンが分泌されない状態になったりすることが知られています。

受動喫煙がある女性は、受動喫煙がない女性に比べて、糖尿病の発症リスクが1.23倍上がることが示されました。

タバコを吸わない女性の夫の喫煙状況と糖尿病発症リスクとの関係

J Diabetes Investing.2020; 11: 1352-8.

多目的コホート研究ホームページはこちら

 

これらのデータが示す通り、喫煙は旦那さんだけでなく、受動喫煙によって家族の健康に影響を及ぼすことになります。しっかり旦那さんにアピールして禁煙してもらいましょう。

 

※参考書籍
 「月刊 糖尿病ライフ さかえ 2022年4月号」
 公益社団法人 日本糖尿病協会

 

Q8 歯医者で抜歯することになりました。糖尿病でタバコも吸っています。注意点はありますか?
A8

手術が決まったら、手術をする外科領域の医師は、術前にさまざまな検査をします。その中には糖尿病があるかどうかの検査、すなわちヘモグロビンA1cや血糖値の測定も含まれています。

ただし、歯科医院内で血液検査をすることはできません。もし正確な数値が分かれば申告してください。

なぜなら、糖尿病があるかどうかは手術成績(結果)を大きく変えるからです。高血糖状態では、体内にウイルスや細菌が侵入したときに、それを取り囲んで食い殺す白血球の機能が低下します。免疫反応すなわち一度感染した病原体に対し、体内でその抗体が作られ、次に同じ病原体が体に侵入しようとしたときに、それを防ぐはたらきも低下しているため、細菌やウイルスに感染しやすくなるのです。

また、合併症が進行していて、細い血管で血液の流れが悪くなっていると、創傷治癒のための栄養や酸素、さらに薬物の局所への供給が阻まれます。神経障害により痛みなどの症状が分かりにくくなっていることで、さらに感染が重症化することなども考えられます。

一度、細菌などに感染すると、インスリンを効きにくくする物質(サイトカインなど)が多くなって、血糖値はさらに高くなり、感染を進行させてしまうという悪循環が生まれます。また、手術の傷(縫合部)の感染は、傷の縫合がうまくいかない縫合不全につながり、さらに全身状態の悪化などで手術後の回復が大きく遅れます。

このような背景からも糖尿病のコントロールは日ごろから良好にしておく必要があります。

喫煙している方については、たばこにより、種々の周術期合併症が増加し、術後の回復が遅延するため、手術前のいつの時点からでも禁煙を開始することには意義があるとされています。禁煙は糖尿病の合併症予防の点でも有益ですので、この機会にぜひチャレンジしましょう。

 

※参考書籍
 「月刊 糖尿病ライフ さかえ 2021年3月号」
 公益社団法人 日本糖尿病協会

Q9 インプラント治療後、糖尿病が発覚しました。影響ありますか?
A9

糖尿病の患者さんのインプラントメインテナンスで大きな問題となるのは、感染のコントールです。糖尿病の患者さんにインプラント周囲炎の発症が多いという根拠は今のところ示されていません。しかし、高血糖のため感染に対する抵抗力が弱く、健常者と比較して歯周病の有病率が高く、より重症化していることが明らかになっています。

Khader YS, et al: Periodontal status of diabetics compared with non-deiabetics: a meta-analysis. J Diabetes Complications, 20: 56-68, 2006.

Tsai C, et al: Glycemic control of type 2 diabetes and severe periodontal disease in the US adult population. Community Dent Oral Epidemiol, 30: 182-192, 2002.

 

※参考書籍
 「65歳以上の患者へのインプラント治療・管理ガイド」
 編著 窪木拓男、菊谷 武
 株式会社ヒョーロン・パブリッシャーズ

Q10 歯周病は治癒する病気でないって本当ですか?
A10

歯肉炎の段階であれば健口に戻ることができますが、ひとたび歯周炎を発症し歯周組織の破壊が起きると、もはや歯肉炎に戻ることはできません。すなわち、健口と歯肉炎は“可逆的”な関係にありますが、歯肉炎から歯周炎への進行は一方通行であり“不可逆的”なのです。

海外の学術団体であるEFPとAAPは、まさしく糖尿病と同じように、“歯周病は治癒する病気ではない”ことを宣言しています。「歯周炎患者は生涯にわたり歯周炎患者であるのだから、いくら状態が安定していても、隠れたリスクを過小評価してはいけない」と警鐘を鳴らしています。

※参考書籍
 「内科医から伝えたい 歯科医院に知ってほしい糖尿病のこと その2」
 にしだわたる糖尿病内科 西田 亙 著
 医歯薬出版株式会社

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