矯正治療

Q41 矯正治療をしています。歯と歯の間に黒い隙間が目立つようになってきました。どうしたら治りますか?
A41

歯と歯の間にできた黒い隙間を、ブラックトライアングルといいます。

ブラックトライアングルを改善したい患者さんに対しては、歯の形態修正や歯肉移植などの改善方法があります。

 

※参考書籍
 「これで解決!矯正トラブル」
 編著 末石 研二、野嶋 邦彦、片田 英憲
 クインテッセンス出版株式会社

Q42 矯正治療の後、歯がグラグラしているんですが、大丈夫でしょうか?
A42

歯の移動は歯周組織の変化の結果です。矯正力が消え咬合力に対し自然に反応できるようになると、3~4カ月後に歯周組織のリモデリングが完了し、歯の動揺はなくなります。ただし、歯肉線維は反応が遅いため、1年たっても歯の位置の不安定化の一因となります。

※参考書籍
 「咬合と矯正歯科治療」
 前田 芳信 監著 クインテッセンス出版株式会社

Q43 年を取ると下顎の前歯がでこぼこしてきたことに気づきました。なぜですか?
A43

矯正治療を受けていなくても加齢とともに20年で1.8mm、あるいは40年で1mmとわずかですが下顎の叢生(前歯の歯列が重なり合い、乱れている状態。でこぼこした歯並びの状態。)が増加するものと考えられます。

叢生を起こす因子は、筋圧や舌圧、咬合圧などの生理的なものであると考えられます。

※参考書籍
 「咬合と矯正歯科治療」
 前田 芳信 監著 クインテッセンス出版株式会社

Q44 矯正用インプラントを入れるのは痛いですか?
A44

いいえ、入れるときには麻酔をしますので強い痛みはありません。

Q45 なぜ保定治療が必要なの?
A45

次のような報告があります。

「全症例の2/3は前歯部に叢生を認めた。重度の叢生を呈した症例では、治療前よりも叢生量が減少していたが、軽度の叢生を呈した症例では、治療前よりも叢生量が増加していた。

下顎前歯部の排列における安定性と後戻り―エッジワイズ装置による第一小臼歯抜歯症例 Am J Orthod 1981;80(4):349-365.

そのため、矯正装置をはずしたあとはリテーナーを使って保定治療をします。歯の移動後には当分の間、歯の支持組織の変化が依然として続いている状態です。

おとなのかたの治療ではとくに治療前の歯並びや噛み合わせによる癖が強固に定着していることが多いので、保定を行わず歯が自由な状態に置かれると、せっかくきれいに並んだ歯が以前の位置に向かって後戻りしたり、思わぬ方向に移動したりすることがあります。

歯の移動が目的通りに完了したとしても、それで矯正治療が終わったわけではないのです。その傾向は切歯、特に下顎切歯で最も著しいといわれています。叢生矯正後の下顎切歯は、たとえ適切な保定を行っても矯正後の安定を得ることはなかなかむずかしいもので、成功裡に矯正を行った症例でも20%に顕著な後戻りが見られるといいます。

装置をはずしたあとの保定治療は通常1年半ほどで、きれいな口もとを維持していただくために、たいへん大切な治療期間です。リテーナーの使用を忘れないようにしましょう。保定治療の終了後は、半年~1年に一度の定期的メインテナンスを受けましょう。

歯並びや噛み合わせだけでなく、むし歯、歯周病の有無、そしてフィックスリテーナーの管理など、お口の状態のチェックを定期的に受けておくと安心です。また、きれいになった歯の健康を守るため、プロフェッショナルクリーニングもおすすめです。

きれいで快適になったお口を、ぜひ長く維持していきましょう。

※参考書籍
 「nico 2010.2 クインテッセンス出版株式会社」

 「矯正歯科の基礎知識」  飯塚 哲夫 著  愛育社

 「矯正歯科のための重要16キーワードベスト320論文」
 監修 小野 卓史/小海 暁
 クインテッセンス出版株式会社

Q46 取り外し式の矯正装置について教えて下さい。
A46

可徹式矯正装置とは、「自分自身で取り外し可能な矯正装置」のことです。

種類

狭義では口腔内に装着される装置(顎内装置 intraoral appliances)のみを指しますが、広義には次のようなものがあります。

1.アクティブプレート(床矯正装置)

1歯または2歯を移動するためにスプリングまたはスクリューをつけた床装置
前方拡大床装置、側方拡大床装置、スペースリゲーナ

2.機能的装置

アクチベータ
咬合挙上板
咬合斜面板
切歯斜面板
バイオネーター
Fränkel装置
ツインブロックス
リップバンパー

3.顎外装置

ヘッドギア装置(顎外固定装置)
上顎前方牽引装置
チンカップ装置

長所

1.アーチワイヤーなど鋭利な突起部がほとんどないので、固定式装置と比べて安全です。

2.装置使用中に痛みなどの問題が発生しても患者さん自身が装置を取り外し、応急対応することで問題を軽減または解決できます。

3.大事な会合などで装置が見えないようにしたいときに、患者さん自身が装置を一時的に外すことができます

4.装置の調節に要する治療時間(チェアタイム)が、固定式矯正装置に比べて短くなります

5.矯正力による組織の障害のリスクが低くなります

6.固定式矯正装置と比べて、口腔内を清潔に保ちやすくなります。

短所

1.口蓋が浅い場合や臨床歯冠高が短い歯、脱落の時期が近い乳歯を鉤歯にすると、装置の安定が得られにくくなります。その結果、矯正力が有効に歯に伝えられにくく、また固定を歯に求める場合には、固定の喪失(アンカレッジロス anchorage loss)が起こりやすくなります。

2.基本的には歯の傾斜移動しか期待できません。

3.効果は装置の使用時間に大きく依存しますので、患者さんの理解と協力が不可欠となります。

4.容易に取り外れるために紛失するリスクがあります。例えば、レストランで食事前に外したときにティッシュペーパーに包んでおいたところテーブルに置き忘れてしまった、愛犬がくわえて行ってしまったなどの事例があります。

 

※参考書籍
 「Elements of Orthodontics 高田の歯科矯正の学び方-わかる理論・治す技術-」
 高田 健治 編著  株式会社メデジットコーポレーション

Q47 歯周治療と矯正治療を同時に行っても大丈夫ですか?
A47

 歯周治療矯正治療を同時進行で行っても、歯周治療完了後に矯正治療を行っても、歯周組織の治癒に差異がなかった」という研究報告があります。

Eglė Zasčiurinskienė, Nomeda Basevičienė, Rune Lindsten, Christer Slotte, Henrik Jansson, Krister Bjerklin: Orthodontic treatment simultaneous to or after periodontal cause-related treatment in periodontitis susceptible patients. Part I: Clinical outcome. A randomized clinical trial. Journal of Clinical Periodontology, 45(2): 213-224, 2018.

※参考書籍
 「海外文献120編から読み解く ペリオの世界」
 関野 愉  株式会社デンタルダイヤモンド社

Q48 矯正装置を装着することで、長期にわたり一定の痛みや不快感が歯列・口腔などに生じますが、学業等に影響はないのでしょうか?痛みが強いと成績が落ちるのではないかと不安です。
A48

まず、患者さんの感受性に左右されるでしょう。痛みに対する感受性が強ければ勉強に限らず、精神の集中を要する作業は妨げられるおそれがあります。

次に、患者さんの動機づけの強さにも関係するでしょう。強い動機づけがなされた患者さんは(疼痛にかぎらず装置の使用なども含めて)相当の困難を克服するものです。動機づけの強さは患者さんのパーソナリティーと保護者の態度の影響を受けることがあります。

また、成績についての装置の影響には個人差があります。

 

※参考書籍
 「Elements of Orthodontics 高田の歯科矯正の学び方-わかる理論・治す技術-」
 高田 健治 編著  株式会社メデジットコーポレーション

Q49 矯正治療後の後戻りが心配なのですが・・・保定に必要な期間はどのくらいですか?
A49

歯を動かした後、歯の周りの骨が固まるまでの間は、歯が動く可能性があります。それを防ぐためには、リテーナー(保定装置)を入れていただく必要があります。リテーナーは、矯正治療が終わった後に夜間だけ(寝ている間)装着する装置です。

保定期間は歯の移動の量や種類や速度、新しい位置で歯に加わる力のタイプや程度などによって異なります。歯の移動の量が大きいときには保定期間が長くなりますし、また年齢によっても保定期間は異なり、成人の矯正では小児の場合よりも長期間の保定を必要とします。

このように保定期間は症例によって異なるものの、大幅に異なるわけではなく、特殊な場合を除いて通常は6~10ヶ月間程度の保定で十分であると考えられています。それは、歯の移動後6ヶ月ほど経過すると歯周組織が安定してくるからです。

※参考書籍  「矯正歯科の基礎知識」  飯塚 哲夫 著  愛育社

Q50 歯を矯正移動していると、歯の動揺が強くなるので、スポーツ(特に外力の加わるおそれのある種目、格闘技など)のクラブ活動を続けてもよいか不安です。
A50

結論から言いますと、どのスポーツでもとくに問題はないと考えられています。

格闘技の場合、確かに前歯の脱臼や歯折を起こすと、口唇・頬粘膜にアタッチメントがあたって、粘膜の断裂などが生じることもありえます。しかし、アーチワイヤーを装着した患者さんでは、そのような外傷は被っても、歯列が固定されているので、受傷後も歯はもとの位置にとどまっていることが多いです。

クラブ活動をしていて受傷する確率は同じで、エッジワイズ装置で矯正歯科治療を受けていない場合には、歯の脱落、喪失などもリスクとして考えられます。つまり、矯正治療をすることが不利とは言えません。甲子園を目指すほどの高校球児から、「矯正装置の装着で投球技術が影響を受けたことはない」という声もあったようです。

 

※参考書籍
 「Elements of Orthodontics 高田の歯科矯正の学び方-わかる理論・治す技術-」
 高田 健治 編著  株式会社メデジットコーポレーション

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