おとなの矯正治療
Q21 | 矯正治療により上顎前歯に歯根吸収が認められると言われました。どうしたらいいですか? |
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A21 | ある論文で、「歯根吸収の程度は4段階に区分される」という報告*)があります。 その分類に従って、本格矯正治療を行った動的治療の終了患者737名の上顎前歯部について、パノラマエックス線およびデンタルエックス線写真をもとに調査が行われました。 その結果、2mm以下の吸収を認めた割合が12.3%、歯根長の1/3以下の吸収を認めた割合が5.6%、1/3以上の吸収を認めた割合が1.4%だったということです。 治療開始前に、矯正治療には歯根吸収のリスクがともなうことを把握しておく必要があります。治療中、エックス線写真撮影により吸収を認めた場合は、治療メカニクスの変更や中断も検討しなければなりません。患者さんは自覚症状を感じることが少なく、他院でエックス線写真撮影を行った際に、指摘されることもあります。吸収を認めた際には、患者さん(保護者含む)に予知性や予後について十分に説明します。 *) Malmgren 0, Goldson L, Hill C, Orwin A, Petrini L, Lundberg M. Root resorption after orthodontic treatment of traumatized teeth. Am J Orthod 1982; 82 (6): 487 -491.
※参考書籍 |
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Q22 | 歯周病で歯が動いてしまい歯並びが悪くなって気になっています。こんな私でも矯正治療はできますか? |
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A22 |
矯正治療では歯周靭帯や骨が健康でなければなりません。 歯周病の治療をしっかりと受けて炎症のコントロールができているかたなら多くの場合、矯正治療は可能です。ただし、健康なお口の治療とくらべて特別な配慮が必要です。
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Q23 | 矯正治療中に急に前歯の色が変わってきました。大丈夫ですか? |
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A23 | そのような状況では、歯髄壊死が考えられます。歯髄壊死の原因は、傾斜移動などによって歯槽骨の範囲から歯根が出てしまった場合や、外傷歯、矯正の力が強い場合などが一般的に挙げられます。矯正治療中の歯髄壊死は予測できないことが多いため、完全に予防することは難しいです。
※参考書籍 |
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Q24 | 矯正治療をしています。歯と歯の間に黒い隙間が目立つようになってきました。どうしたら治りますか? |
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A24 | 歯と歯の間にできた黒い隙間を、ブラックトライアングルといいます。 ブラックトライアングルを改善したい患者さんに対しては、歯の形態修正や歯肉移植などの改善方法があります。
※参考書籍 |
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Q25 | 矯正治療の後、歯がグラグラしているんですが、大丈夫でしょうか? |
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A25 | 歯の移動は歯周組織の変化の結果です。矯正力が消え咬合力に対し自然に反応できるようになると、3~4カ月後に歯周組織のリモデリングが完了し、歯の動揺はなくなります。ただし、歯肉線維は反応が遅いため、1年たっても歯の位置の不安定化の一因となります。 ※参考書籍 |
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Q26 | 年を取ると下顎の前歯がでこぼこしてきたことに気づきました。なぜですか? |
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A26 | 矯正治療を受けていなくても加齢とともに20年で1.8mm、あるいは40年で1mmとわずかですが下顎の叢生(前歯の歯列が重なり合い、乱れている状態。でこぼこした歯並びの状態。)が増加するものと考えられます。 叢生を起こす因子は、筋圧や舌圧、咬合圧などの生理的なものであると考えられます。 ※参考書籍 |
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Q27 | なぜ保定治療が必要なの? |
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A27 | 次のような報告があります。 「全症例の2/3は前歯部に叢生を認めた。重度の叢生を呈した症例では、治療前よりも叢生量が減少していたが、軽度の叢生を呈した症例では、治療前よりも叢生量が増加していた。」 下顎前歯部の排列における安定性と後戻り―エッジワイズ装置による第一小臼歯抜歯症例 Am J Orthod 1981;80(4):349-365. そのため、矯正装置をはずしたあとはリテーナーを使って保定治療をします。歯の移動後には当分の間、歯の支持組織の変化が依然として続いている状態です。 おとなのかたの治療ではとくに治療前の歯並びや噛み合わせによる癖が強固に定着していることが多いので、保定を行わず歯が自由な状態に置かれると、せっかくきれいに並んだ歯が以前の位置に向かって後戻りしたり、思わぬ方向に移動したりすることがあります。 歯の移動が目的通りに完了したとしても、それで矯正治療が終わったわけではないのです。その傾向は切歯、特に下顎切歯で最も著しいといわれています。叢生矯正後の下顎切歯は、たとえ適切な保定を行っても矯正後の安定を得ることはなかなかむずかしいもので、成功裡に矯正を行った症例でも20%に顕著な後戻りが見られるといいます。 装置をはずしたあとの保定治療は通常1年半ほどで、きれいな口もとを維持していただくために、たいへん大切な治療期間です。リテーナーの使用を忘れないようにしましょう。保定治療の終了後は、半年~1年に一度の定期的メインテナンスを受けましょう。 歯並びや噛み合わせだけでなく、むし歯、歯周病の有無、そしてフィックスリテーナーの管理など、お口の状態のチェックを定期的に受けておくと安心です。また、きれいになった歯の健康を守るため、プロフェッショナルクリーニングもおすすめです。 きれいで快適になったお口を、ぜひ長く維持していきましょう。 「矯正歯科の基礎知識」 飯塚 哲夫 著 愛育社 「矯正歯科のための重要16キーワードベスト320論文」 |
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Q28 | 歯周治療と矯正治療を同時に行っても大丈夫ですか? |
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A28 | 「歯周治療と矯正治療を同時進行で行っても、歯周治療完了後に矯正治療を行っても、歯周組織の治癒に差異がなかった」という研究報告があります。 Eglė Zasčiurinskienė, Nomeda Basevičienė, Rune Lindsten, Christer Slotte, Henrik Jansson, Krister Bjerklin: Orthodontic treatment simultaneous to or after periodontal cause-related treatment in periodontitis susceptible patients. Part I: Clinical outcome. A randomized clinical trial. Journal of Clinical Periodontology, 45(2): 213-224, 2018. ※参考書籍 |
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Q29 | 矯正治療後の後戻りが心配なのですが・・・保定に必要な期間はどのくらいですか? |
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A29 | 歯を動かした後、歯の周りの骨が固まるまでの間は、歯が動く可能性があります。それを防ぐためには、リテーナー(保定装置)を入れていただく必要があります。リテーナーは、矯正治療が終わった後に夜間だけ(寝ている間)装着する装置です。 保定期間は歯の移動の量や種類や速度、新しい位置で歯に加わる力のタイプや程度などによって異なります。歯の移動の量が大きいときには保定期間が長くなりますし、また年齢によっても保定期間は異なり、成人の矯正では小児の場合よりも長期間の保定を必要とします。 このように保定期間は症例によって異なるものの、大幅に異なるわけではなく、特殊な場合を除いて通常は6~10ヶ月間程度の保定で十分であると考えられています。それは、歯の移動後6ヶ月ほど経過すると歯周組織が安定してくるからです。 |
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Q30 | 目立たない矯正装置を教えてください。 |
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A30 |
一般的には、歯に貼り付けるブラケットを白いセラミックやコンポジットレジン、透明のプラスチックなどを使うことでだいぶ目立たなくなります。 |
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