インプラント
Q61 | 私は糖尿病ですが、インプラントをしても大丈夫? |
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A61 | まだはっきりと「糖尿病はインプラント治療におけるリスクである」とは言えません。 糖尿病患者におけるインプラント治療は、さまざまな角度から検討したところ禁忌症とはいえず、十分に注意して行うことにより非糖尿病患者と同様にインプラント治療が行えるかもしれません。 しかし、創傷治癒不全や易感染性を甘くみてはならず、インプラント治療が重篤な併発症を引き起こすリスクとなりうることを否定することはできません。そのため、血糖値のコントロールをしっかりと行うことのできる患者にインプラント治療は行うべきであり、医科との連携を図りながら治療は行われるべきであると考えます。 抜歯や歯周外科処置を含む観血的処置の場合でも、休薬を勧める必要はないと結論づけられています。 日本口腔外科学会を含むガイドラインにおいても、International Normalized Ratio (INR)が3.0以下の患者であれば歯周外科治療においても術後の出血に有意差はなかったという報告もあり、インプラント治療も基本的には同様に考えられます。しかしながらINRが高値の場合には、侵襲を少なくする術式の選択が必要となる可能性があります。 一般社団法人日本有病者歯科医療学会、社団法人日本口腔外科学会、一般社団法人日本老年歯科医学会 編. 科学的根拠に基づく抗血栓療法患者の抜歯に関するガイドライン2010年版. 東京:学術社, 2010. ただし、インプラント周囲炎ではリスクが1.5倍高いと結論付けられています。 Monje A, Catena A, Borgnakke WS. Association between diabetes mellitus/hyperglycaemia and peri-implant diseases : Systematic re-view and meta-analysis. J Clin Periodontol 2017 ; 44(6) : 636-648 また、日本口腔インプラント学会が刊行している治療指針(2016年度版)は、空腹時血糖:140mg/dL以下、ケトン体(-)、HbA1c:6.9%(NGSP値)未満の者にインプラント治療は行われるべきであると示しています。 治療後の定期検診は必ず行くことをおすすめします。
※参考書籍 「インプラントの迷信と真実」 |
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Q62 | 被せもののひとつやふたつ、しなくてもいいでしょ? |
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A62 | お口の状態が健康かどうかで、人生は大きく変わります。 口の周りのささいな衰えのことを「オーラルフレイル」といいます。
オーラルフレイルの人は、そうでない人と比較すると、サルコペニア、要介護認定、総死亡のリスクが約2倍以上になることが報告されています1)。 また、補綴治療を行わないで欠損を放置している歯数が8歯程度になると死亡リスクが2倍に上昇することが知られるようになりました2)。 1)Tanaka T, Takahashi K, Hirano H, Kikutani T, et al. Oral frailty as a risk factor for physical frailty and mortality in community-dwelling elderly. J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 73(12), 1661-1667, 2018. 2)Maekawa K, Ikeuchi T, Shinkai S, Ohkawa S, et al. Number of functional teeth more strongly predicts all-cause mortality than number of present teeth in Japanese older adults. Geriatr Gerontol Int. 20(6), 607-614, 2020.
※参考書籍 |
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Q63 | 寝たきりの父がインプラントを入れており、痛みを訴えています。どうしたらいいでしょうか? |
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A63 | 原因療法としては、インプラントを除去するということになるでしょう。しかしながら、外科処置になりますので、多大な負担がかかります。患者さんができる方法は、急性炎症の緩和、病状の進行を阻止する対症療法となります。以下を参考にしてください。 1.ブラッシングの強化家族や介護者への口腔内(インプラントなど)の状況説明と口腔衛生方法の指導を行い、口腔内の清掃を強化します。 萩原芳幸, 森野智子, 関みつ子, ほか. 介護老人福祉施設における口腔ケアの実態:インプラント治療が施されている入居者への対応および口腔ケアの問題点の抽出. 老年歯医2012; 27; 104-113. 2.機械的クリーニング(CIST:A)インプラント周囲のプラークや食物残渣、歯石を除去します。 3.殺菌療法(CIST:B)抗菌薬を用いてインプラント周囲の局所洗浄を行います。 4.抗菌薬療法(CIST:C)抗菌薬の全身投与や徐放性抗菌薬の局所投与を行います。 5.インプラント周囲炎の深部波及が緩解しない場合外科処置、インプラントの撤去・スリーピング、インプラント補綴装置の改造(口腔衛生管理を行いやすい補綴装置への移行や改造)など訪問現場での対応は不可能となり、診療室での処置が望ましいです。 ※参考書籍 「日本口腔インプラント学会誌 2018.12 vol.31 No.4」 |
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Q64 | 歯が折れて抜かないといけないのですが、その後入れるものをブリッジかインプラントかで悩んでいます。前後の歯は問題ないと言われましたが、どうでしょうか? |
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A64 | 歯が折れてしまったなどの理由により、抜歯をすることになった場合、その後入れるものとしてブリッジかインプラントどちらがよいのでしょうか? 生存率から考えると、治療8年後ではインプラントが92.1%であるのに対し、ブリッジは59.3%であるという研究結果が報告されています。 また、欠損した隣の歯(ブリッジの支台歯)において、神経があるかどうかで状況が変わってきます。8年後のブリッジの生存率については、神経がある歯は94.0%、神経がない歯は54.1%という研究結果も報告されています。 Yamazaki S, Arakawa H, Maekawa K, Noda K, Hara ES, Minakuchi H, sonoyama W, Matsuka Y, Kuboki T. A retrospective comparative 8-year study of cumulative complications in teeth adjacent to both natural and implant-supported fixed partial dentures. Int J `rosthodont 2013; 26(3) :260-264.
状況によってはブリッジのほうが合併症が多いため、インプラントを用いた単冠の治療が望ましいとされています。 5年生存率と10年生存率
天然歯支持型ブリッジ、インプラント支持型ブリッジおよび天然歯の単冠の生存率および合併症の発生率の比較
前後の歯は問題ない(欠損部位の隣在歯は健全な状態)という場合、以下のようなデータがあります。 1歯欠損の症例についてブリッジの支台歯とインプラント補綴の隣在歯の経過を観察した報告
ブリッジのほうが数倍リスクが高い。 ・清木祐介, 他.インプラント部が残存歯に与える影響 第3報 中間欠損部に埋入したインプラントの隣在歯とブリッジ支台歯の予後について(5年経過症例). In : 第37回日本口腔インプラント学会学術大会 抄録集, 2007 : 341. ブリッジでは支台歯が負担を背負い、インプラントでは隣在歯の負担を軽減するというまったく正反対な補綴法であるために、上記の結果は至極当然といえます。 しかし、インプラントでは支持組織となる骨、そして対合歯の条件を考慮しなければなりません。 欠損の始まりであり咬合支持が十分にある1歯欠損においては、インプラント適用自体のリスクも小さい場合が多く、積極的に適用を推奨することができます。
※参考書籍 「エビデンス・ベースト・インプラントロジー」 「補綴・咬合の迷信と真実」 クインテッセンス出版株式会社 |
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Q65 | 奥歯が2本ありません。今まで入れ歯を入れていましたが、バネをかけていた歯が動いてきたような気がします。インプラントにするべきか考えています。教えて下さい。 |
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A65 | 遊離端欠損の症例についてインプラントと義歯を観察して比較した報告
義歯の鉤歯となりやすい隣接歯の喪失率は明らかに高い。 ・森野茂, 他.インプラントが残存歯に与える影響 第2報 遊離端欠損部隣接歯, 対合歯に関する臨床的検討.In : 日本口腔インプラント学会 第23回九州支部学術大会 抄録集, 2006 : 51. 義歯とインプラントでは経過中にいわゆるツケの回りどころが異なります。そのため、一概にインプラント補綴がすべてよいとはいえませんが、対合歯に配慮していくことができれば長期安定を望める可能性は高くなります。 多数歯欠損症例と捉えられている遊離端欠損においては、抑制効果はあるものの、崩壊原因を把握してリスクを考慮し慎重に適用を考えるべきです。さらに、咬合崩壊の進行にともなって残存歯の状態も安定度が低くなりやすく、かつ、インプラント適用に対しては骨量不足に陥りやすくなり、総合的にリスクが高まるために、患者さんと治療ゴールをよく相談して補綴法を選択しなければなりません。 ※参考書籍 |
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Q66 | 骨粗鬆症のため、ビスホスホネート製剤・骨吸収抑制薬(ARA)を飲んでいます。インプラント治療に関係はありますか? |
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A66 | まず、骨吸収抑制薬投与中の悪性腫瘍患者へのインプラント埋入は避け、骨粗しょう症患者の場合は医科歯科連携で十分協議のうえ、インプラント治療の可否を決定するとされています。 顎骨壊死検討委員会. 骨吸収抑制薬関連顎骨壊死の病態と管理:顎骨壊死検討委員会ポジションペーパー2016.
そして、悪性腫瘍の患者さんだけでなく、骨粗鬆症の患者さんでもステロイド投与、糖尿病や腎不全などを合併している場合もあり、インプラント治療を避ける選択が適当であると考えられています。 一方、他の全身的リスクがなく、骨吸収抑制薬(ARA)の飲み始め(=累積投与量が少ない)の骨粗鬆症の患者さんにおいてインプラント治療が最適である場合は、過剰にインプラント治療を避ける必要はありません。 顎骨壊死・顎骨骨髄炎(ARONJ)発症のリスクに比較して、骨吸収抑制薬を使用するメリットのほうがはるかに大きい場合が多いため、インプラント埋入後であることを理由に骨吸収抑制薬(ARA)を控えることはやめたほうがいいとされています。
また、ビスホスホネート製剤とインプラント治療の関係について、次のような論文もあります。 5年以下の経口BP内服患者においてBRONJは報告されておらず、経口BPの内服が5年未満の患者において、インプラント治療は安全な術式かもしれない。さらに、経口BPは短期間(1~4年間)のインプラント残存率に影響しなかった。 「全身投与されたビスホスホネートはインプラント治療にどのような影響を与えるか?システマティックレビュー」 他の論文では、「一般に、BRONJのリスクは、1万人中1人~10万人中1人であるが、抜歯後に300人に1人に増える可能性がある。BRONJ症例の大部分は、静脈内注射の患者である可能性が高い。補助因子は確立されていないが、喫煙、ステロイド使用、貧血、低酸素血症、糖尿病、感染症、免疫不全などが重要である。経口ビスホスホネート使用患者のBRONJはステージ2を超えて進展することはまれであり、多くの症例は経口薬の中止により改善する。抜歯は、BRONJのリスクを増価させる唯一の処置である。歯科用インプラントは、経口ビスホスホネート使用患者において注意して使用すべきである。経口ビスホスホネート使用の利点とリスクは、投薬の一時的または永久的停止の必要性を判断する前に、個別に処方医と協議の上、比較検討されなければならない。」という報告があります。 ビスホスホネート関連顎骨壊死の原因としての経口ビスホスホネート:臨床所見、リスク評価、および予防戦略
※参考書籍 「日本口腔インプラント学会誌 2019 年 32 巻 1 号 p. 20-26」 「開業医のための口腔外科 重要12キーワード ベスト240論文」 |
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Q67 | 今ビスホスホネート製剤(BP製剤)や抗RANKL抗体製剤を飲んでいます。抜歯さえしなければ、顎骨壊死(ARONJ)の心配はしなくていいでしょうか? |
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A67 | 顎骨壊死(ARONJ)の発症予防には「抜歯をできるだけ避ける」、やむを得ず抜歯するなら「骨吸収抑制薬(ARA)を抜歯前に休薬する」という対応がなされてきました。 しかし、抜歯を行わなくてもARONJは多く発生しています。抜歯の原因となる歯周病や根尖病変のような局所感染から進展したARONJ症例だけでなく、抜歯を避けることや、休薬している期間に局所感染が持続・悪化し、ARONJに至る症例も多いという報告があります。 また、抜歯前のARA休薬でARONJ発症を予防できるエビデンスはなく、休薬で待機中にも局所感染が持続し増悪することで骨髄炎に進展する可能性があるため、休薬すべきではありません。外科処置が必要な場合は、「飲み始める前に(=累積投与量が少ないうちに)」完了させておくことが重要です。
※参考書籍 |
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Q68 | 歯周病にかかっている人はインプラント周囲炎になりやすいってホント? |
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A68 |
インプラント周囲炎の発症率に関しては、歯周炎のグループが28.6%であったのに比べ、その他のグループでは5.8%と歯周病のグループが有意に高い。(Karoussis 2003) ※参考書籍 |
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Q69 | インプラント体は骨にどれくらいの面積ひっついているの? |
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A69 | 最初の1年間までは40%程度と低く、それ以降で70~80%と高くなり、周囲の骨が安定するには負荷後約1年が必要とされると言われています。 ※参考文献 |
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Q70 | 前から気になってたブリッジがついに壊れそこを治療することになりました。ブリッジをさらに延ばすかそれとも思い切ってインプラントか、すごく迷っています。治療のたびにブリッジが長くなっていくのは不安だし、インプラントも怖そうだし・・・。 |
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A70 | それはお困りでしょうね。どちらを選ぶにせよ、あとで後悔しないように、治療の特徴とメリット・デメリットを知るところから始めましょう。 インプラント治療のいちばんの特長は、埋入した骨にガッチリと結合し自立するということ。つまり、ほかの歯に負担をかけず、傷めずにすむということです。こうした治療は現状ではインプラント治療以外になく、そういう意味で、替えのきかない治療になっています。 ただし欠点もあります。手術が必要、治療期間が長い、予備治療に時間がかかることもある、そして自費診療である点です。ただ、信頼性の高い材料と機器・器具を使い、検査と治療計画を綿密に行い、感染対策を万全にして、専門的に訓練されたスタッフが治療するとなると、ある程度の費用が生じざるを得ない、というのが実情です。 もしインプラント治療に興味があるなら、知識を得てじっくり検討してみてください。不安なまま迷うのも、逆に最初から「インプラントしかない」と決め込むのも、どちらも残念なことだと思います。どの治療を選ぶにせよ、後悔をしないために、まず知ることからはじめましょう。 ※参考書籍 「nico 2018.1 クインテッセンス出版株式会社」 |
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