インプラント

Q51 インプラントの埋入を可能にする骨造成術後に注意することは何ですか?
A51

新しく造った歯槽骨は、術後2~3年までは徐々に変化していきます。また、強い力がかかったり、インプラントの周りが不潔になると減ってしまうたいへんデリケートなものです。
人工歯が入ってからも油断せず、十分にケアして歯槽骨を守っていきましょう。
硬くて丈夫な皮質骨ができてひとまず安心できるまでには2~3年はかかります。術後のCTで、いままで知られていなかったことが数多くわかるようになりました!

※参考書籍 「nico 2011.7 クインテッセンス出版株式会社」

Q52 なぜインプラントにはチタンを使うのですか?
A52

生体にやさしく骨と結合しやすく腐食せず硬くて丈夫だからです。

※参考書籍 「nico 2007.2 クインテッセンス出版株式会社」

Q53 インプラント治療の前にどんな治療が必要ですか?(期間と費用も)
A53
1. 費用(税込金額)

・GBR法:110,000円より
GBR法

・サイナスリフトラテラルウインドウ法:220,000円より
サイナスリフトラテラルウインドウ法

・サイナスリフトオステオトーム法:110,000円より
サイナスリフトオステオトーム法

2. 期間

どの処置についても、骨が硬化するまで6ヶ月以上が必要です。

※参考書籍 「nico 2007.2 クインテッセンス出版株式会社」

Q54 インプラント治療のほかに、よい治療法はありますか?
A54
インプラントのほかの治療法1 インプラントのほかの治療法2 インプラントのほかの治療法3
喪失歯1本につきインプラント1本の基本型治療 インプラントのブリッジで、埋入本数を減らす インプラントの総入れ歯。埋入本数を減らし入れ歯を固定する。(透視図)
  こうした補助的な使い方もできる
インプラントのほかの治療法1
喪失歯1本につきインプラント1本の基本型治療
インプラントのほかの治療法2
インプラントのブリッジで、埋入本数を減らす
※こうした補助的な使い方もできる
インプラントのほかの治療法3
インプラントの総入れ歯。埋入本数を減らし入れ歯を固定する。(透視図)
※こうした補助的な使い方もできる

※参考書籍 「nico 2007.2 クインテッセンス出版株式会社」

Q55 インプラントで維持された義歯(インプラントオーバーデンチャー)って本当にいいの?
A55

ある研究で、中年者の無歯顎患者に装着した下顎インプラントオーバーデンチャー通常の義歯の効果を比較したものがあります。患者満足度と機能を評価した研究です。

分析の結果、患者満足度は下顎インプラントオーバーデンチャーのほうが明らかに通常の義歯より高いことが明らかになりました。年齢、性別、結婚暦、そして収入は一般的な満足度との関連性を明らかにすることができませんでした。インプラント維持型義歯グループではさらに3つの補綴物の測定結果(快適性、安定性、咬みやすさ)において、はっきりとしたよい結果を得ることができました。

以上より、中年者の無歯顎患者における上顎総義歯に対する下顎の2本のインプラント維持によるオーバーデンチャーは、通常の下顎総義歯よりも治療満足度が高い結果となりました。

Awad MA, Lund JP, Dufresne E, Feine JS.(Int J Prosthodont 2003; 16(2): 117-122.)

※参考書籍
 「インプラントのための重要12キーワードベスト240論文」
 一般社団法人日本インプラント臨床研究会 編
 クインテッセンス出版株式会社

Q56 インプラント周囲粘膜炎、インプラント周囲炎ってどんな人がなりやすいの?どんな治療をするの?
A56

まず両者の違いを確認しておきましょう。

インプラント周囲粘膜炎は歯肉炎(歯肉に炎症を起こしているもの)、インプラント周囲炎は歯周炎(骨にまで炎症が及んでいるもの)のような状態のものです。

インプラント周囲粘膜炎、インプラント周囲炎になりやすい人の特徴として、

1.不良な口腔衛生
(プラークコントロール不良・清掃不良)

2.歯周病の既往

3.糖尿病

4.喫煙

5.咬合の過負荷

6.残留セメント

などがあげられます。

治療方法は、インプラント周囲粘膜炎については、非外科的治療によって炎症(BOP)を減らすことができ、さらに抗菌薬含嗽の付加的な使用が有効であることがわかっています。一方、インプラント周囲炎に対する外科的処置の一番の目的は、インプラント表面へアクセスし、汚染除去を行い、炎症病変を消失させることです。付加的な抗菌薬の全身投与がインプラント周囲炎を解決するという声もありますが、完全には立証されていません。また、再生療法が治療結果に有益な効果をもたらすという研究報告はありません。

Lindhe J, et al. J Clin Periodontol 2008; 35(8 Suppl): 282-285.

※参考書籍
 「インプラントのための重要12キーワードベスト240論文」
 一般社団法人日本インプラント臨床研究会 編
 クインテッセンス出版株式会社

 「インプラント周囲炎とレーザー
 一般社団法人 日本レーザー歯学会
 クインテッセンス出版株式会社

Q57 歯周炎の既往がある人は、既往がない人に比べてインプラント治療の予後はあまりよくないのはなぜですか?
A57

「歯周炎の既往歴がある患者に対してインプラント治療を行った場合、インプラントの生存率は非歯周炎患者に比べ低かった」という研究報告があります。

Heitz-Mayfield LJA, et al: History of Treated Periodontitis and smoking as Risks for Implant Therapy. Int J Oral Maxillofac Implants; 24 (suppl): 36-68, 2009.

 

また、多くの研究で歯周炎はインプラント治療のリスク要因の1つになるのではないかという報告があります。文献的に明らかであるように、歯周病の既往歴がある人がインプラント治療を受ける場合、治療結果に大きなリスクがあるといえます。

これまで数多くの研究がなされてきましたが、研究結果に基づいたインプラント周囲炎の治療法は確立されておらず、インプラント周囲炎に罹患しないように予防することが一番大切です。

治療順序を間違えないようにし、まず残存歯の歯周治療を徹底的に実施し、できるだけ歯周病原細菌を駆除した後にインプラントの植立手術をすることが重要です。

また、治療終了後は定期的なメインテナンス(SPT)による炎症のコントロールを実施し、少しでもリスクファクターを減少させることも大切です。喫煙などの環境因子がインプラント周囲炎のリスクを増加させることも分かっていますので、環境因子の改善にも努めましょう。

 

「10年間のメインテナンス中に慢性歯周炎によって歯を失った患者のインプラントは、歯周炎以外の理由で歯を失った患者のインプラントよりも、生存率が低く生物学的な合併症率も高かった。歯周炎に罹患した天然歯と同様に、臨床的に炎症兆候を示すインプラント部の歯肉炎下細菌叢は、健全なインプラント周囲で認められるものとは大きく異なる。すなわち慢性歯周炎で認められる細菌叢と、インプラント周囲炎で認められる細菌叢は酷似している。」

Karoussis IK, et al: Long-term implant prognosis in patients with and without a history of chronic periodontitis: a 10 year prospective cohort study of the ITI Dental Implant System. Clin Oral Implants Res 14(3): 329-339, 2003.

 

「歯周病原細菌であるグラム陰性嫌気性桿菌がインプラント周囲炎と関連があり、歯周疾患の既往がインプラント周囲炎のリスクファクターとなる。」

Leonhardt A, et al: Microbial findings at failing implants. Clin Oral Implants Res 10: 339-345, 1999.

 

「欠損がなく歯周病の既往のない歯列と比較して、歯周病の既往のある患者の口腔内に埋入したインプラントでは、3~6ヵ月後にインプラント周囲溝から高い確率で嫌気性の歯周病原性と思われる細菌が検出された。」

Mombelli A, et al: The microbiota of osseointegrated implants in patients with a history of periodontal disease. J Clini Periodontol 22: 124, 1995.

 

「慢性歯周炎の既往のある患者と歯周組織が健全である患者の間にはインプラントの短期、長期の生存率に統計学的な有意差はないが、慢性歯周炎の既往のある患者は長期にわたりプロービング深さ、辺縁骨の喪失、インプラント周囲炎の発症率が有意に高い可能性がある。」

Karoussis IK, et al: A comprehensive and critical review of dental implant prognosis in periodontally compromised partially edentulous patients. Clin Oral Implants Res 18(6): 669-679, 2007.

 

「非常に粗い表面のインプラントを使用した場合、もしくはSPT(サポーティブペリオドンタルセラピー)が行われなかった場合、歯周炎の既往歴がある患者群ではインプラントの喪失数がほぼ3倍になっていた。しかし、リスクファクター(喫煙、口腔衛生、糖尿病など)の評価がなされていないため、決定的な結論を出すことはできない。」

Heitz-Mayfield LJA, et al: History of Treated Periodontitis and smoking as Risks for Implant Therapy. Int J Oral Maxillofac Implants; 24 (suppl): 36-68, 2009.

 

「侵襲性歯周炎の既往歴がある患者(再生骨にインプラント埋入)10名と歯周状態が健全な患者10名とで比較をしたところ、3年後の生存率は100%であったが、侵襲性歯周炎患者群ではインプラント辺縁の骨吸収が大きかった。」

Heitz-Mayfield LJA, et al: History of Treated Periodontitis and smoking as Risks for Implant Therapy. Int J Oral Maxillofac Implants; 24 (suppl): 36-68, 2009.

 

「侵襲性歯周炎の既往歴のある患者へのインプラント治療は、より大きな骨吸収が起こる。」

Hänggi MP, et al: Crestal bone changes around titanium implants. Part I. A retrospective radiographic evaluation in humans Comparing Two Nonsubmerged Implant Designs With Different Machined Collar Length. Journal of periodontology 76: 129-140, 205.

 

「歯周病の既往のある患者へのインプラント失敗率はわずかに高い程度である。しかし、徹底したSPTを行っていくことで長期に機能しうる。臨床家は歯周炎とインプラント周囲炎の細菌叢が類似しているため、口腔内での歯周病原細菌の転移がインプラントの長期予後を危うくする可能性があることを考慮すべきである。」

Quirynen M, et al: Impact of supportive periodontal therapy and implant surface roughness on implant outcome in patients with a history of periodontitis. J Clin Periodontol 34(9): 805-815, 2007. Review.

 

※参考書籍
 「歯周病患者におけるインプラント治療の実践」
 特定非営利活動法人 日本臨床歯周病学会 編集  医学情報社

Q58 大口式インプラント法とは?
A58

インプラント治療とは、歯が無くなったとき、失われた部分に人工の歯根(インプラントを植え込み、その上に修復物を装着して機能を回復させる治療法です。

従来のインプラント治療では、ドリルで骨を削って人口歯根を植え込んでいましたが、大口式インプラント法では骨表面にとても小さな穴を開け、その穴を少しずつ広げて人工歯根を入れます。 骨を削る作業が少ないため、歯科特有の不快な音や痛みも少なく、より快適に治療が受けられます。

大口式インプラント法のメリット~ドリル式と比較して~

大口式インプラント法のメリット

大口式インプラント法手順

大口式インプラント法手順 小さなバー(直径0.5ミリ程度)でインプラントの位置決めをします。麻酔をしているので痛くなく、小さなバーを使用して1秒程度の作業です。 次に細いリーマー(針灸治療の針のようなもの)で専用器具の通り道をつくります。手動ですから音も殆どありません。 次から専用器具(※オーギュメーター)を使用して穴を広げます。細い骨でも少しずつ広げて太くします。 太さを代えてだんだん穴を大きくします。 必要な穴の大きさになるまで器具を取り替えながら徐々に広げていきます。手作業で丁寧な作業を行います。 骨とインプラント体が結合したら歯が入ります。
※オーギュメーターは、鍼灸治療に用いるような極細の針で、(株)メディカルエイベックスの取り扱い商品名です。

大口式インプラント法手順

大口式インプラントは、すべての症例に適用されるわけではごさいませんので、ご了承下さい。詳しくは当院スタッフまでお気軽にご質問下さい。

Q59 インプラント周囲からの扁平上皮癌について教えてください。
A59

口腔癌の原因の一つとして、慢性炎症が癌発生の温床となることが知られています。口腔癌のうち、扁平上皮癌は口腔悪性腫瘍の90%以上を占め、喫煙と飲酒の原因の75%にあたるとされています。口腔癌は口腔のどんな部位にも生じます。日本では舌が50%と多数を占め、ついで歯肉、頬粘膜、口底、口蓋と続きます。臨床的には、潰瘍や腫瘤を形成し、易出血性であり触診で周囲に硬結を触れるのが特徴です。CTによる骨吸収評価、MRIによる腫瘤の検出や進展評価が有効です。腫瘤の原発巣およびリンパ節転移の評価は造影CT、MRI検査が有効です。

 

治療方法

QOLも考慮した、三者併用療法(切除手術、放射線治療および化学療法の併用)による治療が、現在では主流です。リンパ節転移によって、予後が左右されます。口腔癌は容易にリンパ節転移を起こし、歯肉癌が下顎管へ浸潤すると5年生存率が25%以下に低下します。

 

※参考書籍

 「画像診断に学ぶ難易度別口腔インプラント治療」
 編集 金田 隆
 著者 阿部 伸一、金田 隆、矢島 安朝、加藤 仁夫、月岡 庸之
 永末書店

Q60 サイナスリフトとソケットリフトの違いは何ですか?
A60

上顎の歯槽骨(歯が埋まっている部分の骨)が吸収するとその上顎洞と呼ばれる鼻の空気の通り道(空洞)の底までの間の骨の量が少なくなってしまいます。そのためインプラントを埋め込むことが困難になります。この場合、埋め込む骨の厚みを確保するために上顎洞を持ち上げる方法をとらなければなりません。
具体的には空洞の底(骨)の表面の粘膜を骨からはがして持ち上げることで空間を作り、そこに骨移植を併用するなどして骨を作るよう誘導します。
上顎洞の横の壁からのアプローチが「サイナスリフト」で、歯槽骨頂からアプローチするのが「ソケットリフト」です。
骨の厚みが極端に少ない場合はサイナスリフト法をとりますが侵襲が大きく体に負担をかけやすいという点があります。
ソケットリフト法が負担が少なく手術も比較的簡単なのですが、骨の厚みが多い場合のみ適応できます。

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