インプラント
Q11 | 前歯を抜歯して2年経ちます。インプラントを入れたいのですが、そのままでは入れられないといわれました。どうしてですか? |
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A11 | 抜歯を行う際に何の処置もしないと、唇側骨は抜歯後6ヵ月では、幅が5割、高さが2割減るといわれています*)。さらには、臼歯部に比較して、前歯部に対する患者の審美的要求は高いため、歯科医師は審美性には細心の注意を払わなければなりません。 インプラントの審美性を担保するのに大切なのは、周囲の硬・軟組織のボリュームとインプラント埋入ポジションです。ただし、歯槽骨の吸収により、前歯部のインプラント治療においては、インプラントの理想的な埋入ポジションに十分な骨のボリュームがないことがほとんどです。硬・軟組織造成も、臼歯部であれば、インプラント機能維持のためにたいして障害にはなりませんが、前歯部であれば少しのボリュームの減少が命取りとなります。 これらの理由により、臼歯部のインプラント治療と比較し、前歯部の審美的なインプラント治療を行うことは大変難しいのです。 *)Tan WL, Wong TL, Wong MC, Lang NP. A systematic review of post-extractional alveolar hard and soft tissue dimensional changes in humans. Clin Oral Implants Res. 2012; 23 Suppl 5: 1-21. ※参考書籍 |
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Q12 | 70歳で入れ歯を使っています。下の入れ歯が動いて食事ができません。先生に相談すると、インプラントで支持されたIODという入れ歯がいいと言われました。どうでしょうか? |
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A12 | 全身的に健康な自立高齢者にとって、インプラントで支持された有床義歯(IOD:インプラントオーバーデンチャーおよびIA-RPD)は、従来の有床義歯と比較して生活の質を高める能力や咀嚼機能の回復力に優れています。特に従来型の入れ歯がうまく機能しないときに、より効果的です。
※参考書籍 |
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Q13 | インプラントをするかしないか、悩んでいます。慢性疾患をもっていますが、大丈夫ですか? |
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A13 | インプラント治療には、絶対的禁忌症と相対的禁忌症があります。 インプラント治療の絶対的禁忌症(手術危険度とほぼ一致)1.循環器疾患
A)不安定狭心症 最近3週間以内に新しく発症、または、発作が増悪している場合や発作時のニトログリセリンの効果が悪い B)心筋梗塞 6カ月以内の既往
意識消失、意識低下、動機などの症状がある場合
2.呼吸器疾患
発作時の対応困難症例
3.消化器疾患
非代償期:出血傾向
4.がん患者
5.その他
インプラント治療の相対的禁忌症(日本口腔インプラント学会編:口腔インプラント治療方針. 2012.) 1.循環器疾患
発作時の対応
2.呼吸器疾患
発作時の対応
3.消化器疾患
非ステロイド性抗炎症薬投与に注意
免疫機能低下、低タンパク血症による創傷治癒不全
4.腎疾患
易感染性、骨の異常
5.代謝・内分泌系疾患
術中の低血糖、過血糖に注意、易感染性、創傷治癒不全、オッセオインテグレーション阻害
初期固定不良やオッセオインテグレーション維持不能、ビスフォスフォネート(BP)製剤投与
6.自己免疫疾患
ドライマウス
7.出血性素因
専門医との連携
8.精神疾患
インフォームドコンセント
ドライマウス
9.がん患者
10.その他
※参考書籍 |
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Q14 | 私の母親が軽度の認知症にかかっています。口腔内にかなりの本数インプラントが入っています。これから重度認知症になるので心配です。それまでにまだ若干時間がありますが、歯医者でしていただけることはありますか? |
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A14 | 具体的には、患者さん自身による口腔内清掃が難しくなることを想定して、家族や介護者が口腔ケアを行いやすいシンプルな口腔内状況にします。 例えば、メインテナンスの容易さから、セメントで上部構造を合着するよりもネジ式の固定で上部構造を作った場合、いつでもネジを外してインプラントのケアをすることができます。また、インプラントは入れ歯を安定させるために利用することもできます。ただし、インプラントの中でもできるものとできないものがあるので、よく相談されてください。
※参考書籍 |
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Q15 | インプラント周囲炎・歯周病は持続性炎症と血管病とどのような関係があるのですか? |
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A15 | 全28本の歯(親知らずを除く)の全周に約5mmの歯周ポケットとよばれる潰瘍があると、この傷口は72㎠の名刺サイズの潰瘍面積となります。そして、日々細菌や内毒素など炎症性物質が血管系の中に入り続けて歯原性菌血症が起こります。その結果、慢性持続性炎症が生じ、腫れた歯肉から出る炎症性物質が血糖値を制御するインスリンの働きを阻害するので糖質代謝に悪影響を与えてしまいます。 また数年にわたって血管壁を傷つけ、アテロームと言うコブが作られ、血管が狭くなり、動脈硬化の原因にもなります。インプラント周囲炎予防や歯周病予防は、アンチエイジングの実践であり、血管を守る予防にもなるのです。歯科からの健康づくりのポイントは、お口の中を清潔に保つこと、そして生涯にわたって噛む機能を失わないことです。 ※武内 博朗先生のコメント引用 |
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Q16 | 噛む機能の大切さについて教えて下さい。 |
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A16 | 皆さんは補綴(入れ歯、インプラントなど)の有用性を噛めるようになる以外にどのように考えていますか?審美要素もありますが、ここでは糖質代謝との関連性についてお話しします。 例えば、奥歯を失ったことを考えてみましょう。奥歯がなくなると、軟らかい食材である糖質偏重食(炭水化物:ご飯、パン、麺類などの過剰摂取)となり、丸呑みによる早食い、食後の高血糖、カロリーオーバーによるメタボ、たんぱく質・ビタミン低栄養につながってしまいます。さらにたんぱく質低栄養により、骨格筋減少症(サルコペニア)や身体能力低下に陥ることになります。骨格筋減少症(サルコペニア)は低下したADLや寝たきりの初期要因です。 補綴治療はこうした状態を改善し、糖尿病などの代謝性疾患に対するきわめて初動的な領域を担っているのです。インプラント治療は顕著に咀嚼機能を向上させるため、数値管理された保険指導との組み合わせで糖質代謝および体組成の改善をすることができます。インプラントは、贅沢品ではなく、最優先医療ともいえます。 ※武内 博朗先生のコメント引用 |
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Q17 | ブリッジとインプラントを比較した場合、インプラントの利点は何ですか? |
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A17 |
ブリッジは歯のないところの前後などにある歯を利用して歯を入れる方法で、自分の歯に近い感覚で咬め、固定なので違和感も少なくなります。 |
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Q18 | インプラント周囲組織は天然歯の歯周組織とどこが違うのですか? |
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A18 | 解剖学的に以下のように異なります。 インプラント周囲組織の問題点一言で表すと、「感染に弱い!」という点です。 詳細は以下をご覧ください。 (図中の番号と一致しています)
1)上皮のかたちと接着能接着タンパク一部のみ発現→接着弱い→防御機能弱い 2)上皮ターンオーバー3倍も遅い→防御弱い 3)歯肉血管叢ない→歯肉溝滲出液もない→防御弱い 4)セメントエナメル境ない→上皮先端の位置は骨頂部で決まると考えられる 5)歯槽上線維群部分欠如→機械的障壁低い→防御弱い 6)歯根膜欠如→炎症・免疫応答遅い→防御弱い 骨吸収パターンと関連 ※参考 「下野正基ペリオセミナー」 |
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Q19 | 早く終わると楽なのになぜインプラント治療には時間がかかるのですか? |
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A19 | チタンと骨がガッチリ結合するためには生体の自然な治癒力を引き出しじっくりと待つという原理原則が不可欠だからです。 インプラント治療は、インプラント体を埋入してからあごの骨に結合するまでに(多くの因子・条件に左右されますが)おおむね1~4か月かかります。インプラントの改良により、この期間は徐々に短縮してきていますが、それでもこれだけ時間がかかるのにはわけがあります。 インプラント治療は、チタン製のインプラント体とあごの骨がガッチリと結合してはじめて機能しますが、この結合は接着材でつけたり部品をはめ込むのではなく、骨の生体反応によるものなのです。つまり、インプラント治療を成功させるには、骨の自然治癒力を見守りじっくりと待つことが不可欠です。治療に時間がかかるのはそのためです。 ※参考書籍 |
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Q20 | インプラントってどれくらいもちますか? |
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A20 |
残念ですがはっきりとは申し上げられません。患者さんの毎日の丁寧なセルフケアや歯科医院での定期的なメインテナンス次第です。 |
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