詰めもの・被せもの

Q1 CAD/CAM冠ってどんな被せものなんですか?
A1

金属を一切使わない白い被せもので、これまでの手作業だった設計や製造(削り出し)をコンピュータで自動化して作る被せもののことです。保険適応範囲も年々広がっていて、これまでは小臼歯と大臼歯(ただし条件付き)で可能でしたが、2020年9月には前歯も保険でできるようになりました。前歯や小臼歯は笑うと見えるので、白くて保険でできるCAD/CAM冠を希望される患者さんも増えてきています。ただし、材料は硬質レジン製(ハイブリッド型コンポジットレジンブロック)なので、セラミックやジルコニアほどの審美性はありません。

CAD/CAM冠のメリット・デメリット

メリット
  • メタルフリーの治療ができる。
  • 金属冠(銀歯)のように目立たない。
  • 歯ぐきに金属色が黒っぽく影響しない。

 

デメリット
  • 従来の金属を使う被せものより外れやすい。
  • 金属を使う被せものより歯を削る量が多い。
  • 長く使うといくらか変色する。
  • セラミックやジルコニアと比べると、審美性はそれほど高くない。

 

CAD/CAM冠の製作工程

1.患者さんの歯型(模型)を作製します。

CADCAM冠 製作工程 その1

2.歯型(模型)をスキャナーでスキャンして画像化します。

CADCAM冠 製作工程 その2

3.歯科技工士が被せものの設計をコンピュータ上で行います。

CADCAM冠 製作工程 その3

4,ミリングマシン(材料を削る器械)で削り出します。

CADCAM冠 製作工程 その4

5,CAD/CAM冠が硬質レジンブロックから削り出されました。

CADCAM冠 製作工程 その5

6,形を整え研磨してCAD/CAM冠の完成です。

CADCAM冠 製作工程 その6

※参考書籍 「nico 2020.12 クインテッセンス出版株式会社」

Q2 昨日歯科医院でかぶせを入れてもらいました。少し高いように感じますがなれますよね?
A2

上下の歯が咬み合う前に1歯ないし数歯が早期に当たる状態を早期接触といいます。Krogh-Poulsenら(1968)は、早期接触は咬合性外傷を惹起しやすく、関連筋群や顎関節への負担を憎悪させ、顎機能障害とくに関連筋群の機能障害の原因となる可能性があると指摘しています。つまり、その影響は処置をした歯牙以外にも咬み合う歯やそれぞれの周囲組織、咬み合わせるときに使う筋肉や、顎関節に現れる可能性がありますので、なるべく急いで調整に行かれてください。

Q3 今まで咬み合わせのなかった所に歯を入れ咬み合うようにしてもらいました。高さはちょうどいいのに物を咬むと違和感を感じるのはなぜでしょう?
A3

長い間咬合を失っている歯の歯周組織は、弱い荷重に対しても耐えられない、いわゆる機能低下の状態になっています。つまり、組織抵抗力が減少し動揺しやすくなっているということです。組織抵抗力が回復するまでは過度な荷重は避けてください。

Q4 詰め物を「大きいな」と感じるのはなぜですか?
A4

詰め物が入ったら、「治療前のむし歯よりだいぶ大きいな」と感じたことはありませんか?じつはそれには理由があるんです。

理由その1

詰め物の材料によっては穴を多少拡げないと耐久性を確保できない場合があるから。

歯と直接くっつくコンポジットレジン以外の詰め物は、詰め物を歯にはめ込んでセメントで固定させる方法をとります。しっかり固定させるには、うまくはまるように穴の形を拡げる必要があり詰め物が大きくなりがちです。

理由その2

傷みやすい場所をあえて詰め物でおおって歯を守ることがあるから。

奥歯の山(咬頭)の部分は、強い力がかかって傷みやすい場所です。そこで咬頭が傷んで崩れてこないように、大きな詰め物(アンレー)をつくり、あらかじめ咬頭のほうまで歯を覆って守ることがあります。

理由その3

むし歯は歯の内側で広がりやすく、実際は見た目よりも大きいことが多いから。

むし歯は、硬いエナメル質より、内側の軟らかい象牙質で広がりやすく、見た目は小さくても、じつは大きなむし歯であることがよくあります。そのため、「詰め物が想像していたよりも大きい」と感じがちなのです。

※参考書籍 「nico 2017.5 クインテッセンス出版株式会社」

Q5 詰め物が傷んでいるような気がします。どんなことに気をつければよいですか?
A5

どんなに上手な治療でも、毎日噛んで使っていればいつか壊れます。傷んだ詰め物を放っておくと思わぬトラブルの火種になります。

注意1

詰め物の下にむし歯ができた?!

詰め物と歯の間に段差ができてプラークがたまったり、詰め物の周りの歯が傷んで隙間ができ、むし歯が入り込んだのかもしれません。他の詰め物の下も大丈夫か、歯科医院で調べてもらいましょう。

注意2

わりとよく詰め物が取れる?!

夜中に歯ぎしりをしたり、日中に噛みしめたりしていませんか?噛む力の強い方は、詰め物の周りの歯質が傷みやすく、詰め物が取れやすいのです。就寝中にマウスガードを使うなど、歯科医院で対策を相談しましょう。

注意3

詰め物が取れて反対側で食べている?!

歯科医院に行かずに反対側で食べていると、偏った力が片方の歯に集中してかかるため、今度は反対側の歯の詰め物が取れたり痛んだりして、トラブルが拡大することがあります。放置せずに治療を受けましょう。

※参考書籍 「nico 2017.5 クインテッセンス出版株式会社」

Q6 昔入れた詰め物の下にむし歯ができてしまいました。歯医者さんの詰め方が悪かったのでしょうか?
A6

残念ですが、歯科医師がどんなに上手でも、詰め物の経年変化は避けられずいつかは段差ができたり隙間ができてしまいます。詰め物を長持ちさせるために、定期的にメインテナンスに通って治療箇所を補修してもらったりクリーニングや予防指導を受けて歯を守っていきましょう!

※参考書籍 「nico 2017.5 クインテッセンス出版株式会社」

Q7 私はすぐにむし歯になってしまいます。口のなかに詰めもの・被せものがたくさん入っていますが、それぞれどれくらいもつのか、教えてください。
A7

10カ所の一般歯科医院において修復処置後に再修復または抜歯の適応と診断された歯(3,577歯)を対象に、補綴修復装置の使用年数に関する疫学調査を行った論文があります。

その結果、平均残存期間は、レジン充填で5.2年、詰めもの(インレー)で5.4年、被せもの(クラウン)で7.1年、ブリッジで8年であったと報告されています。再治療の原因は、むし歯が最も多く、クラウンでは根尖性歯周炎、ブリッジでは歯根破折が多いのが特徴ということでした。

森田 学、石村 均、石川 昭、ほか. 歯科修復物の使用年数に関する疫学調査. 口腔衛生会誌 1995; 45: 788-793.

 

他にも、なんらかの理由で再来院した患者の奥歯(臼歯部)修復物(649歯)を対象に残存期間や再治療の原因を調査した論文があります。

平均残存期間はクラウンで9年、ブリッジで7年でした。5年残存率および10年残存率は、クラウンで74.8%、55.8%、ブリッジでは55.6%、31.9%でした。

青山貴則、相田 潤、竹原順次、ほか. 臼歯部修復物の生存期間に関連する要因. 口腔衛生会誌 2008; 58: 16-24.

 

※参考書籍
 「日本口腔インプラント学会誌 2022年6月 vol.35 No.2」
 公益社団法人 日本口腔インプラント学会

Q8 根っこの処置が終わり、土台の補強をすることになりました。前は型を採って作ったのですが、今回は直接口腔内で作りました。同じグラスファイバーを使った土台ですが、どういう違いがあるのでしょうか?
A8

支台築造における直接法と間接法の比較(*)という論文データがありますので、紹介します。

*小林 平:ファイバーポストを用いた直接レジン支台築造の有用性. 辻本恭久編著:日本歯科評論増刊/最新マテリアル・ツールを活用した臨床テクニック, 114-119, 東京, 2021.

直説法

利点
  • 歯質の削除量が少ない
  • アンダーカットが許容される
  • 治療ステップがシンプルである
  • 根管象牙質の汚染の危険性が少ない

 

欠点
  • 診療時間が長い
  • レジンの重合収縮が大きい
  • 防湿、形態付与が困難である
  • 操作が困難で術者間の差が大きい

 

間接法

利点
  • 多数歯でも対応が容易
  • 適合の良い支台装置が製作できる
  • 唾液や滲出液の影響を受けにくい
  • 適切な支台歯形態の付与が容易である

 

欠点
  • 来院回数が多い
  • 健全歯質の削除量が多い
  • 技工操作が必要で、製作過程が複雑である
  • 根管の汚染の可能性や仮着材の影響がある

 

※参考書籍
 「樋状根とRadix Entomolarisへの対応」
 辻本 恭久 編著 株式会社ヒョーロン・パブリッシャーズ

Q9 歯周病で抜歯しました。大ショックです。すぐにブリッジにしたいのですが、隣の歯も少しグラつくので、歯周病の治療が終わってから入れるそうです。すぐにブリッジが入らないものでしょうか?
A9 快適に使い続けられるブリッジにするには噛む力を支える支台歯がしっかりしていることが最低限の条件です。ブリッジをより長く快適に使うには支える歯の健康が最重要なのです。グラつく歯を支台歯にすると噛む力を支えられず、かえってこの支台歯まで傷めてしまいます。治療後に入れることをおすすめします。

※参考書籍 「nico 2009.9 クインテッセンス出版株式会社」
Q10 真ん中の前歯を2本失いました。そうしたら、隣の歯だけでなく犬歯まで削って土台4本分、計6本を連結する必要があるそうです。ずいぶん長いブリッジになってしまいます。いったいなぜこうなってしまうのでしょうか?
A10 歯の強さは、歯の種類ごとにさまざま。失った歯や支台歯になる歯の強度の指標をもとに、適正な耐久性のあるブリッジが設計されています。

※参考書籍 「nico 2009.9 クインテッセンス出版株式会社」

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