歯内療法

Q61 根の治療は終わったのですが、先生からは長期的評価が必要と言われました。どうしてですか?
A61

根尖性歯周病変が治療後に最終的に治癒する場合、エックス線写真上で骨形成の兆候は1年後に見られます。しかし、完全な治癒過程には4年以上かかることもあります。

根尖性歯周炎(神経の炎症により根の先が膿をもつ病変)をともなう歯の歯内療法の主な目的は既存病変の改善であって、その安定を目的とするものではありません。

 

※参考書籍
 「リクッチのエンドドントロジー」
 監訳 月星 光博  クインテッセンス出版株式会社

Q62 歯の中の神経が入っている空間(歯髄腔)の主要な解剖学的部位と名称を教えて下さい。
A62

歯髄腔の形態(根管、髄室、根尖孔、根尖分岐、髄管、側枝、根管口、髄床底、髄角、髄室蓋(天蓋))

 

※参考書籍
 「歯内療法 成功への道 臨床根管解剖 基本的知識と歯種別の臨床ポイント」
 木ノ本 喜史 著  株式会社ヒョーロン・パブリッシャーズ

Q63 上の奥歯って普段見えませんが、どんな形をしているのですか?
A63

ここにあるものが全てを網羅しているわけではありませんが、代表的な上顎の奥歯はこんな形をしていて、神経はこのように複雑に走行しています。

●例1 3根4根管の場合

上顎大臼歯標本

上顎大臼歯墨汁標本

●例2 3根3根管の場合

上顎大臼歯標本

上顎大臼歯墨汁標本

●例3 網状根管の場合

上顎大臼歯墨汁標本

※参考書籍
 「シリーズMIに基づく歯科臨床 治癒の歯内療法
 月星 光博・福西 一浩 著  クインテッセンス出版株式会社

Q64 根管治療後は歯が脆くなり歯牙破折が起こりやすくなるってホント?
A64

根管治療後すぐに脆くなるということはありません。

歯牙破折の原因に関するレビュー*では、歯牙破折の主な原因は、①歯質の喪失、②未分子水の喪失、③加齢によるもの、④修復物やその手順によるものと示されており、それを修飾する因子として、①根管治療時の洗浄や薬剤による影響や、②象牙細管内の最近の相互作用の影響や、③金属ポストによる生物学的腐食が挙げられています。

 

*Kishen A. Mechanisms and risk factors for fracture predilection in endodontically treated teeth. Endodontic topics 2006 ; 13(1) : 57-83.

 

根管治療を受けた歯への破折抵抗とその特徴に対するポスト材の影響
Pereira JR, do Valle AL, Shiratori FK, Ghizoni JS, Bonfante EA. The effect of post material on the characteristic strength of fatigued endodontically treated teeth. J Prosthet Dent 2014 ; 112(5) : 1225-1230.

 

インレーもしくはアンレーで修復した生活歯と根管治療歯の臼歯における負荷の分布:三次元有限要素解析
Jiang W, Bo H, Yongchun G, LongXing N. Stress distribution in molars restored with inlays or onlays with or without endodontic treatment : a three-dimensional finite element analysis. J Prosthet Dent 2010 ; 103(1) : 6-12.

歯牙破折を起こす原因

歯根破折のイラスト

破折の原因となる主たる要因
  • 歯の構造的な損失
  • 根管腔と歯の細管から遊離した結合していない水の喪失
  • 象牙質の加齢変化
  • 修復物および修復手技

 

破折の原因となる二次的な要因
  • 象牙質に対する歯内洗浄剤や薬剤の影響
  • 象牙質基質への細菌感染の影響
  • メタルポストコアの生物学的腐食

 

※参考書籍
 「補綴・咬合の迷信と真実」 クインテッセンス出版株式会社

Q65 根管治療ですが、貴院では、ラバーダムを使用されていますか。 また、根管治療に際、1人患者の1回当たりの治療時間はどのくらいかけていますか。
A65

ラバーダムについては、現在ほとんど使用できていません。

根管治療は1度に約30分の治療をかけており、数回にわたって実施しています。

Q66 叩いたり根っこを押さえたりすると痛いんですが、私の歯はどんな状態なんですか?
A66

打診痛や根尖部圧痛は、歯根膜や歯槽骨への炎症の波及を表しています。根尖性歯周炎、辺縁性歯周炎、垂直性歯根破折、咬合性外傷などでも打診痛が生じる可能性があります。

 

※参考書籍
 「再根管治療を見直す エンド専門医が伝える考え方・テクニック」(歯界展望 別冊)
 著 石井 宏 ほか  医歯薬出版株式会社

Q67 再根管治療において、症状がなくても根尖透過像があれば治療したほうがよいですか?
A67

可能であれば、過去の透過像のサイズと比較し、「大きくなっていれば治療介入」、「変化がなく補綴予定であれば予防的な根管治療」が望ましく、「縮小傾向がみられれば治療の必要性は低い」でしょう。

 

※参考書籍
 「再根管治療を見直す エンド専門医が伝える考え方・テクニック」(歯界展望 別冊)
 著 石井 宏 ほか  医歯薬出版株式会社

Q68 根尖透過像がない場合、既根管治療歯であっても補綴処置を行う際に再根管治療を行わなくてよいですか?
A68

補綴物を交換する際に、X線像で根尖部に透過像がなく、症状もない場合に再治療を行うか、非常に迷う先生方も多いと思いますが、結論からいうと、予防的な根管治療は行ったほうがよいといえます。なお、補綴処置を行う予定でなければ、経過観察でも問題はありません。

補綴物の交換時に予防的に根管治療を行うことは、将来的な根尖性歯周炎の予防につながるとともに、根尖性歯周炎が発症した際に治療のために再度新しい補綴物を作製しなくてはならないといった患者さんの負担を回避することにもなります。したがって、補綴物を交換する際に、X線像で病変や根尖性歯周炎の症状がない場合であっても、予防的に根管治療を行ったほうがよいといえるでしょう。

 

※参考書籍
 「再根管治療を見直す エンド専門医が伝える考え方・テクニック」(歯界展望 別冊)
 著 石井 宏 ほか  医歯薬出版株式会社

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