入れ歯
Q1 | 今回入れ歯をつくっていただいたのですが、日常生活での注意事項はありますか? |
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A1 | 日常生活での注意事項1.食事について大きいもの、固いものは慣れるまで控え、前歯では物を噛み切らず、中程から後ろの奥歯で噛むようにしましょう。
2.発音について総入れ歯を初めて使用する方でも数週間で馴染んでくることが多いようです。
3.お手入れについて毎食後外し、流水下でブラシなどを用いてよく洗浄するようにしましょう。その際、洗面台などに誤って入れ歯を落として破折させることのないよう、水の張った洗面器等の上で作業するようにしてください。また、一般的な歯磨剤には研磨剤の入っている製品もあり、入れ歯に細かな傷をつけるため、使用はおすすめしません。夜間の就寝中は外して専用の入れ歯洗浄剤に浸漬するようにしてください。そうすれば、細菌や真菌の増殖も抑えられ衛生的です。
4.保管について入れ歯は水中に保管しましょう。車などに置いたままにすると、熱で変形することがあります。一方、稀にあるトラブルとして入れ歯を紛失した、誤って捨ててしまった、という方がおられます。原因は、外出先などで人目に触れないようにティッシュなどで包んだりすることでゴミと勘違いして捨ててしまうことが多いようです。自宅ではコップなど専用の容器を使い、外出先ではハンカチなどで包むことで捨てられないようにしてください。
5.入れ歯の挿入方法最後まで左右の手指を使って定位置まで入れてください。噛んで入れることは決してしないでください。
※参考書籍 |
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Q2 | 義歯があるのは何のため? |
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A2 | 義歯は食事を摂るために必要なものであることは皆さんもお分かりでしょう。では、食べられなくなったとき義歯は必要なくなるのでしょうか? 私たちは1日に1.5lもの唾液を出し、飲み込んでいます。経口摂取していない人が、誤嚥性肺炎を繰り返し起こすのは、自分の唾液の嚥下や痰が処理できない口腔になっていることが大きな要因となっています。 義歯の役割●残っている歯を助ける 欠損部分を義歯で補い、上下の歯があることにより下顎のあるべき場所が確定します。そうして下顎が固定されることによって嚥下時に舌に力を入れやすくなり、その結果嚥下圧が高まり、誤嚥のリスクが低くなります。歯の欠損が多い場合に、義歯がこれを補っていないことが誤嚥のリスクを高めるのです。また、パーキンソン病や抗精神病薬が投与されている場合によく見られる常にモグモグするような顎の動きが、義歯がなく下顎が固定されない場合に出てくることがあります。歯がないと顎が落ち着く場所がわからず、様々な問題につながります。 また咀嚼できる歯があるからこそ、下顎が常に上顎を突き上げ脳への刺激にもなります。更に、よく噛むことは唾液を出し、消化を助け、舌や頬を使うことで機能維持や口腔内の自浄作用にもつながります。 そのほか部分義歯の場合は、装着することで残っている歯にかかる負担を減らすことができます。義歯がないと残りの歯に負担がかかり、そしてそれらの歯が徐々に駄目になり、義歯は更に大きくならざるを得ません。 このように義歯は食べることを助けるだけでなく、義歯を装着したら顔貌が整うことで若々しく見えるというのはよくある話で、言葉もはっきりし、体の平衡感覚が保たれ歩行の安定にもつながり、ひいては外出する気持ちが芽生えることも想像できますね。 つまりその人が、身体的にも精神的にも社会的にもその人らしくあるために、義歯は必要なのです。 |
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Q3 | 初めて総入れ歯を入れることになりました。これまでとどんなことが違いますか? |
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A3 | 総入れ歯を手に取ると、その硬さに気づくでしょう。柔らかい粘膜の上に硬いものを入れることになるため、痛みが発生します。 他にも、入れ歯が動いてうまく噛めないこともあります。 慣れないうちは、舌や頬を噛んでしまうこともあるでしょう。 構音障害が発生することもあります。 また、入れ歯が高すぎる場合は、土手に痛みを感じたり、嚥下しにくかったりします。 逆に入れ歯が低すぎる場合は、顎が突出したり、口角が落ちてへの字の口元になったりします。しわのせいで口角炎が発生することもあります。 もしそうであれば、歯科医院で早めに調整をするようにしてください。 ガムを食べることは控えましょう。 |
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Q4 | 歯が抜けても、入れ歯を作らないで済ますことはできますか? |
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A4 |
抜けた歯の部分をそのまま放置しておくと、さまざまな問題が生じます。 |
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Q5 | 新しい入れ歯を入れた直後はどんなことに注意すればよいでしょうか? |
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A5 |
新しい靴を履いたときには靴ずれが起きやすいように、作ったばかりの入れ歯も、慣れるまでにある程度の時間がかかります。新しい入れ歯を入れたときに注意しなければならないのは、「食べ物」です。できるだけ軟らかい食べ物から、徐々に硬い食べ物に移行していくとよいでしょう。当初は固形物を避け、おかゆのような流動食を食べてください。仮に固形物を食べるにしても、十分に煮込むなど、できるだけ軟らかくなるように調理しましょう。また、食べ物を小さく切って食べましょう。食べ物の形状にも注意が必要です。麺類は軟らかいのですが、入れ歯を入れてすぐの食品としては不向きです。麺類は細長いので、慣れるまでには時間がかかるからです。 |
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Q6 | 入れ歯を入れると痛いのは合っていないからでしょうか? |
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A6 | 「入れ歯を入れると痛い」という訴えは、とても多くあります。入れ歯の痛みには、さまざまな原因があります。その1つは噛み合わせが悪く入れ歯が動くと、特に食事のときに痛みがひどくなるというものです。歯ぐきが本来の形から変形していて、噛み合わせのときの圧力をうまく分散できないという場合もあります。あるいは歯ぐきがやせているなど、口腔内の構造が入れ歯を不安定にし、痛みの原因となっている場合もあります。ほかにも粘膜と接する入れ歯の部分が滑らかでなく、ザラザラしているために痛むこともあります。これは、入れ歯を十分に研磨していなかったことが原因です。 |
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Q7 | 入れ歯がゆるくなった気がするのですが・・・ |
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A7 |
入れ歯は長年使っていると、本人の口腔の状態が変化して合わなくなります。入れ歯がゆるくなった最も多い原因は、顎の骨が減り、歯ぐきがやせてきたことです。この場合、やせた程度によって対処法も変わってきます。 歯ぐきがそれほどやせていなければ、入れ歯の内側に同じ材料を裏打ちして適合をよくし、調整することができます。歯ぐきが相当にやせていれば、新しい入れ歯を作ったほうがよいでしょう。 また、長く使っている入れ歯は、噛み合わせのバランスが崩れてきます。そのため入れ歯がすり減ったり、金具が壊れたりして、ゆるくなる場合もあります。歯ぐきがやせることと、入れ歯がすり減ることが同時進行し、ゆるくなってしまうことも少なくありません。 ゆるくなった入れ歯を安定させる方法として、入れ歯安定剤を使っている人もいます。しかし入れ歯安定剤を長期間利用すると、歯ぐきに不均等な圧力がかかって顎の骨が吸収してやせたり、口内炎になったりするなどさまざまな問題があります。 |
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Q8 | 義歯洗浄剤の使用にあたって、ガラスコップのような食器を使ってもよいですか? |
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A8 | 要介護高齢者のなかには、義歯洗浄剤を食物や内服薬と誤って食べたり飲んだりする場合があります。また、義歯洗浄剤の溶解した液体を清涼飲料水と誤認して飲んでしまうことも考えられます。義歯洗浄剤の保管・管理には十分注意し、できれば義歯専用の洗浄保管容器の使用をおすすめします。 |
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Q9 | 入れ歯洗浄剤を使ったほうがよいのでしょうか?入れ歯の正しい洗い方を教えてください。 |
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A9 | 入れ歯を長持ちさせるためには、日々の洗浄がとても大切です。汚れたままの入れ歯を使うと細菌が繁殖し、口内炎や誤嚥性肺炎、感染性心内膜炎などの原因となることもあります。 つまり、日々の手入れが入れ歯を長持ちさせ、においを防ぐことにもなります。またカンジダ症や口内の炎症の予防にも役立ちます。 普段はブラシで洗浄し、2~3日に一度洗浄剤を使うとよいでしょう。洗浄剤を使う場合には、熱湯を使わず、洗浄後は必ず水洗いをしましょう。 ブラシ洗浄入れ歯を磨くときは必ず外して、専用のブラシを使い、流水で汚れを落とします。金具の部分を含め、入れ歯の隅々まで丁寧に磨くことが大切です。このとき歯磨き粉を使ったり、あまり強く磨くと入れ歯を傷つけ磨耗を早めてしまいます。 入れ歯洗浄剤入れ歯の洗浄には、専用のブラシで汚れを落とすほか、入れ歯洗浄剤を使います。入れ歯にはその構造上、ブラシでは届かない部分があります。ブラシだけでは落ちない汚れもあります。 こうしたことを避けるために、入れ歯洗浄剤を使うことは意味のあることです。洗浄剤とブラシによる洗浄を併行することで、より高い効果を得ることができます。 ただし、あまり洗浄力が強い洗浄剤は、入れ歯の素材を痛めてしまいかねません。さまざまな入れ歯洗浄剤が市販されていますが、その成分と効果をよく確認して購入しましょう。 入れ歯の素材によっては洗浄剤の成分の影響で、変色してしまうこともあるので注意が必要です。 入れ歯の保管洗浄した入れ歯は、乾燥しないように水の中に入れておきましょう。
※参考書籍 「入れ歯名人」 田中 久敏 監修 海苑社 |
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Q10 | 義歯の清掃は毎食後必要なんですか? |
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A10 |
不潔な義歯には、多くの微生物(誤嚥性肺炎・日和見感染症・心内膜炎起炎菌、MRSA、カンジダ菌、など)が存在します。免疫力の低下した高齢者にとって清掃不良の義歯は、生命を脅かすものになりかねません。義歯が汚れたままになっていると、微生物が繁殖しやすい環境になり、活発に活動するようになり、状況は悪くなるばかりです。 したがって、毎食後の口腔ケアの一環として義歯の清掃は必要不可欠なのです。視力の低下した高齢者には、鈎歯や孤立歯の周囲が不潔な場合が結構ありますので注意して下さい。 特に就寝時は、特別な場合を除いては義歯を外して清掃後、水に浸けておいた方が良いでしょう。また、定期的に義歯洗浄剤を使用することもお勧めします。 睡眠時は口腔内が乾燥し、微生物が繁殖しやすい環境となります。寝る前に水を飲むなどして唾液の分泌を促しましょう。ブラッシングのときに歯ブラシで歯ぐき・唾液腺をマッサージすることも唾液の分泌に有効です。電動歯ブラシの中には振動でマッサージ効果があるものもありますが、正しく使用しなければ粘膜の損傷など悪影響を及ぼすことにもなりかねません。歯科衛生士が磨き方のクセなどでうまく磨けていないところのチェックや患者さんひとりひとりに合ったケア方法を指導しますので、定期検診には必ずお越しください。 |
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