顎関節症

Q41 自分で首や肩の凝りを揉んでも楽にならないのはどうして?
A41

首や肩の凝りは、前方頭位等の姿勢の悪さや、顎の開閉運動のオーバーワークでも生じます。自分で首や肩の凝りを揉んでみたことは誰しもがあると思います。しかし他の人に揉んでもらうほど効果はありませんよね。

筋機能学書籍の著者である竹中正敏さんの話をご紹介しましょう。

『生来歯ぎしりの癖があるのに加えて、本書の原稿を書くときなど、ついつい紙面に近づきすぎて前方頭位姿勢になるため、首や肩が凝ってしまいます。そこで何とかしようと考えて、自分で肩を揉んでみるのですが、これが思いのほか効果がないのです。他の人に揉んでもらうと楽になるのに、実に不思議に感じます。

と、ある日、私の知人のセラピスト(柔道整復師)が仕事の打ち合わせにやってきた時、この疑問をぶつけてみました。

彼の答えは、「あははは・・・・・、先生その時の格好をして、鏡を見てもらえますか?楽な姿勢に見えますか?」

やってみました。わかりました。首や体軸が傾いた実に窮屈な姿勢で揉んでいるのです。こんな姿勢では、時間をかけてやればやるほど肩凝りが悪化しそうです。

皆さんにアドバイスです。肩凝りは、たとえ猫の手を借りても、自分の手では揉まないことです。』

肩もみ

※参考書籍
 「筋の生理から運動指導・手技療法まで 歯科臨床が変わる筋機能学こと始め」
 竹内 正敏  砂書房

 

Q42 習癖と態癖はどう違うの?
A42

 明確に定義づけられているわけではありませんが、次のように理解してもよいのではないかと思います。

●習癖

・無意識のうちについた癖

・そのなかでも口腔に関連したものを口腔習癖

・さらに、口腔の形態や機能に害を及ぼすとされるものを口腔不良習癖

●態癖

・顎口腔系に非機能的な力を継続的にかけ、さまざまな悪影響を及ぼす習癖

(筒井論文より)

習癖と態癖

※参考書籍
 「筋の生理から運動指導・手技療法まで 歯科臨床が変わる筋機能学こと始め」
 竹内 正敏  砂書房

Q43 顎関節症なのですが、やってはいけないことってありますか?
A43

いろいろな知見がありますが、そのなかから特に筋肉に関係の深いものをご紹介します。

1. すぐに噛み合わせの調整をしてはいけない

筋肉が緊張して下の顎が傾いたり偏ったりした状態で噛み合わせを調整すると、筋肉が緩み下の顎が元の状態に戻った時点で、噛み合わせに違和感が生じます。ここでまた噛み合わせの調整をするとイタチごっことなり、泥沼にはまってしまいます。噛み合わせの治療は筋肉や顎関節のコンディションを改善してから必要に応じて行うことが大切です。

禁忌(咬合調整)

2. 安易にガムを噛んではいけない

抵抗性をあげようとの発想からでしょうか。顎関節症の患者さんにガムを噛ませる指導がたまにみられます。しかし、これは逆効果です。顎関節症の患者さんの大半に、筋肉の過緊張や過用がみられます。ガムの利用は、治癒経過を見ながら慎重にすべきです。

禁忌(ガム)

3. 簡単に噛む側を変更してはいけない

急な噛む側の変更は、クラウンやインレーの脱落や歯牙破折、さらには顎関節症状の悪化などのトラブルを引き起こすことがあります。そもそも噛まない側は噛むのに適していない噛み合わせの状態にあることが多く、噛む側の変更はよく診査したうえで時間をかけてゆっくり行う必要があります。

禁忌(咀嚼側変更)

4. 長時間の歯科開口治療はしてはいけない

顎関節症状のある間は、大きな開口が必要な最後臼歯部の治療や長時間の開口が必要な治療は避けられた方が賢明です。もし、どうしてもおこなわなければならない場合には、頻繁にうがいをして顎を休ませたり、術後のアイシングなどを取り入れたりした方がよいでしょう。

禁忌(開口治療)

※参考書籍
 「筋の生理から運動指導・手技療法まで 歯科臨床が変わる筋機能学こと始め」
 竹内 正敏  砂書房

Q44 「あくび」は顎に悪いって本当ですか?
A44

今から15年ほど前にとある歯科医院で治療をおこなった顎関節症の患者さん49名に、あくびについてのアンケート調査をおこなった報告があります。(参考書籍の著者である竹中正敏さんの調査です。)
その結果、約20%の患者さんが、あくびが原因で顎関節症を発症したか、症状が顕在化したと自覚し、ほとんどの患者さんがあくびにより症状が悪化すると答えています。
ちょっと考えてみれば、あくびは安静が必要な顎関節を可動域一杯まで半不随意的に強制開口させるわけですから、症状悪化は当然といえば当然ですよね。

あくび

 

それでは、あくびの対策はどうしたらよいのでしょうか。あくびは注意をすればこらえることができます。顎関節症の患者さんでは特に、こらえることが肝要です。
また、顎関節に異常のない人でも、人前などでは失礼になるため、あくびはこらえたいところです。
その時には、手を口の前に持っていくとよいでしょう。

※参考書籍
 「筋の生理から運動指導・手技療法まで 歯科臨床が変わる筋機能学こと始め」
 竹内 正敏  砂書房

Q45 「親知らず」を抜いた後、顎の調子が悪いのですがなぜですか?
A45

親知らず抜歯の術後の痛みでは、多くの場合その外科的侵襲の大きいことから、患部の炎症性の痛みが第一に考えられます。しかし、数日後にも運動痛が残るようであれば、可動域を超えるような大きな開口や長時間の開口により、顎関節の捻挫や咀嚼筋のDOMS(遅発性筋痛)が生じた可能性も考える必要があります。

 ●DOMS(Delayed Onset Muscle Soreness:遅発性筋痛)

筋肉を長時間使用したり、普段使用しない筋肉を急に使用したり場合など、1~2日後に起こる筋肉痛です。

※参考書籍
 「筋の生理から運動指導・手技療法まで 歯科臨床が変わる筋機能学こと始め」
 竹内 正敏  砂書房

Q46 ガムを噛むと顎が痛くなるのですが・・・
A46

アメリカでは、ガムを長時間噛む若者がよくみられます。そのようなケースでしばしば発生するのが、chewingum headachといわれる側頭部の頭痛です。ガムを長時間噛む場合側頭にある筋肉がオーバーワークとなり筋肉痛を生じます。これが頭痛とよく似た症状を呈するため上記の名前がつきました。最近では日本の若者にも見られるようになってきました。

ガムは噛み方を間違えると害になります。以下のようなケースで注意してください。

1. 顎関節症状が強い間はガムを噛まない

→多くの場合、症状が悪化します。

2. 極端な前方位や後方位でガムを噛まない

→筋バランスがくずれて顎関節症を発症させます。

3. ガムを噛むときに口を開けたまま噛まない

→口腔不良習癖の一つである口呼吸を引き起こし、習慣づけてしまうことになります。

4. 長時間偏咀嚼をさせない

→顔貌の変化(ゆがみ)を生じさせることがあります。

5. 急激に習慣性咀嚼側の変更をおこなわない

→顎関節を痛めたり歯冠修復物の脱落が起こったりすることがあります。

※参考書籍
 「筋の生理から運動指導・手技療法まで 歯科臨床が変わる筋機能学こと始め」
 竹内 正敏  砂書房

Q47 母が耳が痛いと少し前から言っています。普段は痛くないみたいですが、何かを食べるときに激痛が走るみたいです。耳鼻科に行ったら耳は悪くないから口腔外科にいくように言われたそうです。口腔外科に行ったら、歯医者に行って入れ歯を削ってもらうように言われたそうです。入れ歯を削ってもらったみたいですがよくなっていません。何か他に原因があるか心配です。
A47

顎関節症は若い方に多いとされていますが、中高年の噛み合わせ、そして入れ歯に起因する顎関節症が最近増えています。さらに詳しい問診をすると、「肩がこる」、「腰が痛い」、「手足がしびれる」、「耳鳴りがする」、「偏頭痛がひどい」というような症状があります。中高年からの顎関節症の原因は、歯にかぶせてある銀歯や詰め物、入れ歯による噛み合わせのバランスがあっていないことが原因です。

入れ歯の噛み合わせは低すぎても高すぎても顎関節に影響があります。まずは、入れ歯を入れた状態で、噛み合わせの診断をし、原因を見つけることが必要です。そして、正しい噛み合わせの平面の入れ歯を作ることをおすすめします。

 

※参考書籍
 「美しい表情は噛み合わせから」 
 稲葉歯科医院顧問 元日本歯科大学教授 稲葉 繁
 稲葉歯科医院 院長 稲葉由里子

Q48 表情筋を鍛えると小顔になるというのは本当ですか?
A48

近年、審美やアンチエイジングの観点から表情筋のトレーニング(頭の体操)やマッサージが注目されていますが、残念ながらその根拠を証明するものはみつかりません。筋肉研究の専門家もその実証にトライしたということですが、表情筋はあまりに小さく薄いため、その測定が難しかったようです。
しかしながら、筋肉は使えば機能はベストに保たれ、使わなければ萎縮するという原則がありますので、この点からいえば鍛えることにより、顔貌はひきしまり、若さを保てるということになるでしょう。

※参考書籍
 「筋の生理から運動指導・手技療法まで 歯科臨床が変わる筋機能学こと始め」
 竹内 正敏  砂書房

Q49 顎のストレッチングをするとよけいに顎が痛むのですが・・・
A49

ストレッチング(Stretching)は字の如く伸ばすことですが、伸ばすのは筋肉だけではありません。関節も引き伸ばして緩めてやり、可動域を拡大することが大切です。一般にストレッチングの効用としては次の3つがあげられています。

1. 筋肉のリラクゼーション

2. 関節可動域の改善

3. 血液循環の改善

 

顎のストレッチングで知っておいてほしいことは、「大きな開口」イコール「顎のストレッチング」ではないことです。ストレッチングは筋肉を引き伸ばし、関節を緩めるためにおこなうものですが、無理にする大きな開口は、逆に関節を圧迫するような作用が生まれ、症状が悪化する可能性さえ出てきます。

 

※参考書籍
 「筋の生理から運動指導・手技療法まで 歯科臨床が変わる筋機能学こと始め」
 竹内 正敏  砂書房

Q50 顎・顎関節のストレッチングはどのようにやったらよいのですか?
A50

加藤歯科医院でオススメしているストレッチングをお教えします。

 1. 下の顎を前方に突き出す

ストレッチ1無理な開口運動をすると顎関節を痛めてしまうので、関節の動きをスムーズにさせるために下の顎を前方に突き出します。

 

 

 

 2. 口を広げる

ストレッチ2親指で上の前歯の裏側あたりを押さえ、反対の手の人差指・中指で下の顎の前歯の裏側あたりを押さえ、上下にゆっくりと開いて口を広げます。
痛くない程度で止めて、そのまま10秒保持します。

 

 

1、2を10回繰り返し、これを1セット。朝昼夜に1セットずつ実施しましょう。

顎のストレッチングでは呼吸も大切です。呼吸と筋力発揮には深い関係があり、筋肉は息を吐くことにより緩みます。顎のストレッチングをおこなう際には腹式呼吸でゆっくり息を吐きながら、顎全体を重力で下に落とすようなイメージ(蝶番運動をイメージするのはよくありません)でストレッチングをおこないます。

指を口腔内に入れるストレッチは場所を選ぶ必要があります。
ここでは、もうひとつ別の「顎運動可動化マッサージ」というものをご紹介します。

A、顎関節周辺のマッサージ(約60秒)

ストレッチ3

下の顎を自然な状態(安静位)にするか、1~2cm開けて顎関節が緩んだ状態にしたまま、マッサージを行ってください。

 

 

 

  B、顎関節の指圧とモビリゼーション

ストレッチ4次に、片方の母指を顎関節部に当て、軽い力でゆっくり押し込みながら顎関節を動かします。1ストローク10秒で実施して下さい。(押す2~3秒、動かす4~5秒、休み2~3秒)
左右交互に繰り返します。左右5~6回ずつ実施しましょう。
最初は拘縮してあまり動かなかった下の顎の関節部分も回を重ねるごとに大きく動くようになります。

A、Bを1セットとし、できればお口の開き具合を変えながら1度に2~3セット繰り返します。
できれば1日に4~5回行いましょう。

※参考書籍
 「筋の生理から運動指導・手技療法まで 歯科臨床が変わる筋機能学こと始め」
 竹内 正敏  砂書房

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