顎関節症
Q11 | 顎関節症の自覚的症状について教えてください。 |
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A11 |
次のようなものがあります。
※参考書籍 |
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Q12 | 顎関節症と間違えやすい疾患はどのようなものがありますか? |
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A12 | 次の3つの疾患がよく間違われます。 智歯周囲炎最も間違う頻度が高く、智歯周囲歯肉の圧痛、顎下リンパ節の圧痛で鑑別します。 根尖性歯周炎・歯髄炎自発痛、歯の打診痛、顎下リンパ節腫大や圧痛、X線所見で鑑別します。 関節突起骨折単純X線撮影では判定できない場合も、問診(外傷の確認)、下顎骨を押して疼痛が出現するか、などから鑑別します。 ※参考書籍 |
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Q13 | 顎関節症の関節痛に対して消炎鎮痛薬は有効ですか? |
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A13 | 顎関節症の関節痛がある場合、消炎鎮痛薬は有効です。
顎関節症の関節痛に対する消炎鎮痛薬診療ガイドライン(日本薬物療法学会)より ※参考書籍 |
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Q14 | 顎関節症患者に特有の生活習慣ってあるんですか? |
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A14 |
※参考書籍 |
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Q15 | 顎関節症の治療における生活指導について教えてください。 |
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A15 |
痛み、あるいは機能障害のある患者さんに、歯科医院が一方的に治療をしても患者さんが病気を治るように努力をし、注意をしていただかなくては、治療が長引いたり、不可能になってしまったりします。このため、生活指導は不可欠なものです。 1.開口量を制限してください。治療を開始してから2~3か月は大きく口を開けてはいけません。大きな食べ物は丸かじりせず、小さく切ってから、口の中に入れるようにしてください。もし、あくびが出始めたならば、すばやくコブシを下顎にあて、強く押し、口が開かないようにすることが必要です。
2.硬い食べ物を摂らないようにしてください。フランスパンやスルメ等の硬い食べ物は、顎関節や筋肉に大きな負荷を与えてしまいます。また、チューインガムも長時間に及んで顎に負担をかけてしまいます。普通の食事も長い時間をかけないように努めてください。
3.下顎を前に出すような動作をやめてください。下顎を前に出すと外側翼突筋が緊張するため、注意が必要です。下顎を前方に出すような、頬杖、前歯でカチカチする、舌の癖、口紅を塗る時に下唇を前に出す、などは避けてください。
4.正しい姿勢で寝てください。就寝姿勢により頭の位置が変化するとともに下顎の位置にも影響するため、どのような姿勢を取るかは重要です。背骨はまっすぐに伸ばし、枕は硬いもので直径15cm位のものを適当とし、首の正常な湾曲に沿った円筒形のものがよいでしょう。バスタオルを硬くまるめて、直径15cmぐらいにして、これを首の湾曲に沿って首の上がる角度が15度くらいになるような、仰向けで寝ることが理想的です。 あまり大きな枕で下あごが前に出るようなものは避けなければいけません。枕のあて方により下顎の位置が変化してくるため枕と頭の位置も考えなければなりません。うつ伏せで寝る習慣や枕を顎の下にあてることは禁止しないといけません。
5.ストレスを回避しましょう。身体の緊張は心の緊張と密接に関係しています。現代病の根源である欲求不満、情緒不安、焦燥、精神疲労、ノイローゼ、不眠、過緊張を回避する必要があります。
※参考書籍 |
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Q16 | 等尺性筋訓練法について教えてください。 |
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A16 |
等尺性機能訓練法はアイソメトリックトレーニングとして筋力低下のあるものに対して、その増強を目的として行うものであり、等尺性筋収縮により筋力が高まることが知られています。 トレーニングの目的・効果は3つに分類されます。 1.骨と靭帯はトレーニングによって可動性あるいは可動域の増大につながってくる。 (顎関節症においては、特に開口量と関係が深い。) 2.神経系は、与えられた刺激に対し可能な限りすみやかに反応する能力をつける。 3.循環系は長距離ランナーのように与えられた負荷においてできる限り長時間対応できる能力を養う。
これらは最終的には筋力に関係してきます。筋力の増強は筋力を日常使っている程度以上に出さなくてはいけません。日常使っている程度の筋力では一日何回繰り返しても筋力は増強できません。
日常使っている筋力以上に力を出してトレーニングする方法がアイソメトリックトレーニングです。 (強い力で筋肉を拮抗して力を連続的に入れるため、急性期の機能障害には適用できません。ある程度症状が軽減してから咀嚼筋の筋力増強のために行うべきです) トレーニング方法A.下顎を閉口しようとする動きに対抗して、下顎を引き下げる口のうちに指をかけ、閉じようとする動作に対し抵抗する力で下方に引っ張ります。
B.下顎を開口しようとする動きに対し、下方より突き上げる下顎を閉じ、顎にコブシをあて、開こうとする動作に対し、抵抗する力を加えます。
上記のA、Bを、10秒間ずつ10回繰り返して、1日に3セット行います。
※参考書籍 |
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Q17 | 咬耗の激しい患者に咬合挙上を行うときのポイントを教えてください。 |
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A17 |
●年齢の割に高度に歯が摩耗する原因は?年齢の平均よりも高度に摩耗した患者では、高度に摩耗する原因があります。この原因を無視して補綴をすると失敗する可能性がありますので、次に示すようないくつかの点に注意すべきです。 1.ブラキシズム(歯ぎしり)をしている可能性がある。 2.咬合力(咬む力)が強い。 3.固い食品が好き。 4.安静位空隙(顎の力を抜いたときの上下の歯の間に出来るすき間)が失われている。
1.咬合高径が低下している。 2.咬頭嵌合位が失われている。 3.顎位が前方に出ている。 4.顎関節に無理な力が加わっている。 5.顎関節のサイドシフト量が増加している。 などがあります。 ●咬合挙上時の注意点は?補綴物で咬合高径を挙上する場合には、次の点に注意する必要があります。 1.咬合高径を挙上すると、相対的に下顎が後退位になる。 2.筋肉位である中心咬合位と最後退位の距離が変化する。 3.安静位空隙が失われる可能性がある。 4.すべての歯を削るために元の顎位や顎運動情報が失われる。 5.すべての歯が補綴物になるので、咬合面の違和感が発生する。 このように患者さんは、すべての歯の咬合面形態や摩耗形態、咬合高径を変化させることによる咀嚼・発音・嚥下機能の変化が予想されるので、暫間被覆冠で十分に検討する必要があります。
1.挙上の量は、臨床歯冠長が少ないので、臼歯の咬合面を削合しなくてすむように決定する。大臼歯部で咬合面を削合しないで2~3mmの挙上が必要である。 2.安静位空隙があれば、これから2~3mm低下した位置に設定する。 3.咬合採得は患者固有の位置で採得するように心がけ、暫間被覆冠で咀嚼発音嚥下機能が確保されていることを十分に確認する必要がある。 ●補綴物の摩耗に対する注意点補綴をしても依然として咬耗の激しい患者さんでは補綴物が摩耗します。 1.摩耗を防ごうとして犬歯誘導にすると、咀嚼機能を阻害し患者には不評である。 2.摩耗を防ごうとして陶材で咬合面を製作すると、陶材は破折する。 3.咬合力のある男性は、臼歯部がパラジウム合金でも摩耗が進行するが、力のない女性では咬合面が軟らかい金合金(20K)を使用するほうが咬合性外傷が発生しにくいと思われる。 4.摩耗を許容する形にしないと、長期的には不調和が発生する可能性がある。 5.長期的には摩耗が進行し、再度補綴を行う必要性があることを患者さんに話しておく。 補綴物破壊防止のためにスプリントなどを使用すると、顎位が変化してしまうので使わないようにします。
※参考書籍 |
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Q18 | 顎関節症と耳症状は相関関係がありますか? |
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A18 | 「顎関節症患者は診断時、耳痛(65%)、耳鳴り(60%)、耳閉感(90%)を訴え、無症状患者のうち25%が耳鳴りを訴えた。耳症状は、顎関節部の筋肉や顎関節触診時の圧痛、口腔顔面症状と相関があった。」 顎関節症の耳症状と口腔顔面領域への口腔筋機能療法の効果 ※参考書籍 |
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Q19 | スポーツ時の顎関節症の予防について教えて下さい。 |
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A19 |
スポーツにおける噛みしめは無意識に行われています。そのため、回避することは難しく、顎関節・咀嚼筋を保護するためのマウスガード装着、噛みしめ後のケアが重要になってきます。 マウスガードの装着は外傷を著しく減少することができるため、スポーツにおいて過度に噛みしめる選手は歯、顎関節、咀嚼筋の保護を目的に、非義務化競技でもマウスガードを装着することが必要となってきます。 マウスガードを装着しても顎関節・咀嚼筋に負荷はかかるため、スポーツにおける噛みしめ後のケアとしては、徒手的開口訓練があります。 市販品のマウスガードは咬合や下顎位を考慮しておらず、顎関節症を発症することがありますので、歯科医院で専用のマウスガードを作ってもらうほうがよいでしょう。 ※参考書籍 「要説 スポーツ歯科医学」 |
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