歯根破折
Q1 | 根っこが割れて抜歯になってしまいました。神経を取った歯は弱いってホントですか? |
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A1 | 「神経を取った歯」というよりは、健康な歯質がより多く残っているかが重要です。たとえば、治療を繰り返している歯は健康な歯質が少なくなっているので、破折のリスクが増してしまうのです。 |
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Q2 | 何度も治療した歯はなぜ弱いのですか? |
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A2 | 大きなむし歯ができて治療した歯や治療を繰り返している歯は、健康な歯質が減っているため、歯に加わる力で傷みやすくなっています。その歯のもつ「治療の歴史」が歯の寿命を左右してしまうのです。治療が終わったからといって、その歯が以前より丈夫になるわけではありません。治療の繰り返しをどこかで止めて破折から救い出しましょう! |
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Q3 | 根っこが割れて抜歯になってしまいました。違和感があっただけでたいして痛まなかったし、「まだ使えたのでは?」って思うんですけど。 |
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A3 | 破折した歯は、細菌が入り炎症が起きてそのままでは遅かれ早かれダメになってしまいます。それどころか、放置すると、周囲の骨までダメージを受けて、つぎの治療の選択肢が狭くなってしまいます。おそらく、抜歯して正解だったのです。 ※参考書籍 「nico 2010.6 クインテッセンス出版株式会社」 |
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Q4 | 治療をした歯を使い続けるために、どんなことに注意したらよいですか? |
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A4 |
大切なのはまずは私たち歯科医師が可能なかぎり歯質を残した、よい治療をご提供することです。そして治療終了後は、その歯を傷めないように大切にケアして保存していきましょう。いくつか大切なポイントがあるのでお教えします。 1.むやみに硬いものを食べない。「治療が終わったから」と油断して、硬いもの、とくに噛みちぎって食べるようなものを食べるのは止めましょう。とくにスルメ、のしイカ、フランスパンなどは避けたほうが無難です。グッと噛みこむうえ、ちぎるときに引っぱる力が働き、歯根に強い負担がかかります。せんべえなど、パリッと割れてくれるもののほうが、まだしも負担が軽いというものです。残念ですが我慢してください。 2.歯ぎしり噛みしめにはマウスピースを。歯ぎしり、噛みしめは、自覚しにくいのが特徴です。でも、習慣的にしているかたの歯は、確実にそのダメージを受けています。そこで、歯科医院で歯ぎしりを指摘されたり、ご家族に指摘されたかたには、夜間、マウスピースの装着をおすすめします。歯を磨耗や力による被害から守ることができます。あなたの噛み合わせにピッタリのオーダーメイドのマウスピースを歯科医院で作ってもらいましょう。 3.むし歯を予防しよう。クラウンをかぶせた歯でも、歯根は天然歯ですのでむし歯になります。むし歯菌の多いお口は酸性に傾きやすく、その酸がクラウンの下に入り込んで歯質を溶かしてしまうのです。神経を取った歯は傷まないので、気付きにくいのも困る点です。そこで、毎日ていねいに歯みがきをして二次う蝕を防いでいきましょう。フッ素入りの歯みがき剤や、フッ素ジェルを使うと効果的です。 4.定期的なメインテナンスを受けよう。治療後、治療した歯に慣れしばらくは快適に過ごせても、使っているうちに噛み合わせがずれて、治療した歯に偏った力がかかっていることがあります。また、うっかりして歯みがきがおろそかになっていることも、めずらしいことではありません。そこで、定期的に歯科医院のメインテナンスを受け、噛み合わせやお口の状態をチェックしておくと安心です。 ※参考書籍 「nico 2010.6 クインテッセンス出版株式会社」 |
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Q5 | 歯根破折しているのではないか?と言われ、CTを撮影しました。しかし、撮影しても破折片が出てなかったようです。CTを撮る必要はあったのでしょうか? |
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A5 | 破折部の幅が0.2mm以上だと根管充填が施されていてもCBCTで破折の診断ができます。 Özer SY: Detection of vertical root fractures of different thicknesses in endodontically enlarged teeth by cone beam computed tomography versus digital radiography, J Endod, 36: 1245-1249, 2010. しかし、破折部の幅が0.03~0.1mmの場合にはCBCTでは確認できません。 Patel S, Brady E, Wilson R et al. : The detection of vertical root fractures in root filled teeth with periapical radiographs and CBCT scans, Int Endod J, 46: 1140-1152, 2013. 根管充填の既往のある歯におけるCBCTによる破折の有無の判定は信頼できるとはいえないと述べている論文もあります。 Chang E, Lam E, Shah P et al. : Cone-beam computed tomography for detecting vertical root fractures in endodontically treated teeth: A systematic review, J Endod, 42: 177-185, 2016. しかし、根管充填を施した抜去歯に実験的に垂直歯根破折を惹起した報告、 Hassan B, Metska ME, Ozok AR: Detection of vertical root fractures in endodontically treated teeth by a cone beam computed tomography scan, J Endod, 35: 719-722, 2009. Bechara B, McMahan CA, Noujeim M et al. : Comparison of cone beam CT scan with enhanced photostimulated phosphor plate images in the detection of root fracture of endodontically treated teeth, Dentomaxillofac Radiol, 42: 20120404, 2013. ならびに臨床の場で垂直破折が疑われる根管充填の既往歯の症例報告、 Bernardes RA, de Moraes IG, Húngaro Duarte MA et al. : Use of cone-beam volumetric tomography in the diagnosis of root fractures, Oral Surg Oral Med Oral Pathol, 108 : 270-277, 2009. Edlund M, Nair MK, Nair UP: Detection of vertical root fractures by using cone-beam computed tomography: A clinical study, J Endod, 37: 768-772, 2011. Kajan ZD1, Taromsari M: Value of cone beam CT in detection of dental root fractures., Dentomaxillofac Radiol, 41: 3-10, 2012. いずれにおいても、CTは垂直歯根破折の判定に非常に有効とされています。 歯周組織の破折防止のためには、口腔内所見やデンタル所見から垂直歯根破折が疑われる場合は、早急にCT撮影を行い、垂直破折の有無を確認することが必要です。 |
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Q6 | 根っこが割れていると言われました。痛みもないし、抜くしかないと言われましたが、本当に抜かないといけないのでしょうか?そもそもホントに破折しているんですか? |
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A6 | 垂直歯根破折は抜歯原因の第3位で、歯周病やむし歯が減少しているのに対して垂直歯根破折は増加傾向がみられています。これは歯根破折の原因が多様で、歯周病やむし歯と比較して予防が難しいためだと思われます。歯根が垂直に破折すると抜歯を選択される場合が多いです。 垂直歯根破折は歯頚部から破折が始まり根尖側に伸展していく症例と、根尖から破折していく症例が約半分ずつで、歯根中央部から破折が始まる症例は1%程度と報告されています1)。 破折が始まる部位が歯冠側であろうが根尖側であろうが、歯頚部から根尖部まで破折して時間が経過してしまえば同様の病態を示すことになります。 破折を見つける方法は、3つあります。 1つ目は、プロービングです。プロービングとは、プローブという器具を歯周ポケットに差し込み、その深さを検査することです。 スポーツや事故など大きな衝撃で歯根が破折した場合を除き、多くは疲労性に破折すると考えられます。初期には自発痛や腫脹は少なく、軽度咬合痛や根尖部の違和感に始まり、時間の経過とともに炎症が拡大し、歯周ポケットが深くなって歯根が分離していく症例が多いです。垂直歯根破折は限局的に1カ所のみ歯周ポケットが深くなり、他は正常であることが大きな特徴です。
2つ目は、歯肉を圧排しても歯根がみえない場合や、根尖からの破折を疑った場合には、破折線を確認するために歯肉弁を剥離して歯根を露出させるか、補綴物と根管充填材を除去して根管壁を観察することになります2)。
そして3つ目は、エックス線写真です。エックス線写真には、デンタルエックス線写真とCTがあります。 デンタルエックス線写真で破折線がみえるのは、破折間隙が相当に広がってからです。しかも破折線が頬舌側面にある場合で、さらにポストや根管充填剤と重なっていないことが条件となります。 CTは垂直歯根破折の診断に有効との報告があります3),4)。しかし、歯根に生じた破折線を直接観察するのは困難な場合が多いです4),5)。特に金属ポストや太い根管充填剤がある場合にはアーティファクトが強く出現します6)。そのため、このような症例では除去してからCTを撮影することが勧められています。
鑑別が誤りやすい疾患
1)Sugaya T, Nakatsuka M, Inoue K et al.: Comparison of fracture sites and post lengths in longitudinal root fractures, J Endod, 41: 159-163, 2015. 2)Moule AJ, Kahler B: Diagnosis and management of teeth with vertical root fractures, Aust Dent J, 44: 75-87, 1999. 3)Baageel TM, Allah EH, Bakalka GT et al.: Vertical root fracture: Biological effects and accuracy of diagnostic imaging methods, J Int Soc Prev Community Dent, 6: S93-S104, 2016. 4)前田宗弘, 五十嵐 勝: 垂直歯根破折歯の保存的治療について, 日歯内療誌, 42: 83-90, 2021. 5)Khasnis SA, Kidiyoor KH, Patil AB et al.: Vertical root fractures and their management, J Conserv Dent, 17: 103-110, 2014. 6)Chang E, Lam E, Shah P et al.: Cone-beam computed tomography for detecting vertical root fractures in endodontically treated teeth: A systematic review, J Endod, 42: 177-185, 2016.
※参考文献 |
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Q7 | 抜歯された歯のなかで歯牙破折が原因であるのは何%くらいですか? |
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A7 | 8020財団によって平成17年度に報告された「永久歯の抜歯原因調査」によると、破折が原因で抜歯になった歯は、抜歯された歯全体の11%程度であるとの報告があります。 ※参考書籍 |
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Q8 | 歯牙破折の診査はどのように行いますか? |
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A8 | 破折を確かめるステップとして、以下のものがあります。 1. 歯科的既往 2. 問診 3. 視診 4. 触診 5. 根尖部歯周組織の検査 6. 咬合圧検査 7. 歯髄生活性検査 8. ポケット検査 9. エックス線検査 10. 修復物の除去 11. 染色 12. 透過光検査 13. 楔力検査 この検査は、クラックが特定された後、追加的に行う検査である。目的としては、分離できる可能性がある歯片の存在を発見することである。患者には、この検査中にクラック音が聞こえるかもしれないこと、痛みを感じるかもしれないことを事前に知らせておく必要がある。 14. バンディング検査 咬合時に限定した疼痛を訴える歯に、きつめの矯正用バンドを巻いてセメント合着し、症状の変化を確認する。 15. 診断的外科処置 ※参考書籍 |
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Q9 | 歯牙破折の原因について教えてください。 |
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A9 | 考えられる原因は下記のようなものがあります。 1.修復時
2. 咬合性
3. 発生学的
4. その他
※参考書籍 |
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Q10 | 年齢を重ねると、歯の根っこが割れるとよく言われます。回避する方法はありますか? |
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A10 | 垂直歯根破折を起こさないためには、何よりも歯髄の保存が重要となります。 ※参考書籍 「日本口腔インプラント学会誌 2018.12 vol.31 No.4」 |
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