歯周病

Q121 受動喫煙は歯周病に影響するのですか?
A121

喫煙は明らかに歯周病の危険因子ですが、喫煙者と一緒にいることも危険因子となります。受動喫煙は、喫煙者が吐き出した煙や副流煙(たばこの先から出る煙)を吸い込むことで発生します。間接喫煙、不本意喫煙、二次喫煙などとも呼ばれます。衣服や髪、喫煙室の壁やカーテンのタールなどに付着したタバコ有害物質の吸引(三次喫煙)も健康に悪影響を及ぼすとされています。受動喫煙は歯周組織にも悪影響を与えるため、危険因子となります。

受動喫煙の影響

 

Nishida N, et al. Association between passive smoking and salivary markers related to periodontitis.
J Clin Peridontol 2006 ; 33(10) : 717-723. より引用改変

 

※参考書籍
 「あなたの知識は最新ですか?歯科衛生士のための21世紀のペリオドントロジーダイジェスト」
 天野 敦雄 著 クインテッセンス出版株式会社

Q122 私はお酒を飲むと顔が赤くなります。歯周病には関係ないですよね?
A122

お酒を飲むと、顔が赤くなり頻脈と動悸が起こり、ときに頭痛、発汗、めまい、眠気などが起こります。これは、アルコールが分解されてできるアセトアルデヒドの毒性によるものです。アセトアルデヒドの分解能力が低い人はこのような症状が出やすく、この能力は分解酵素の活性の高低により決まります。この酵素の中には、個人差が非常に大きいものもあり、酵素活性は遺伝的に決まっていることが分かっています。タイプ別に分類すると、活性型・不活性型・失活型があります。お酒を飲んで顔が赤くなるかどうかも歯周病リスク検査の一つであり、そのような方は飲酒を控えたほうがよいでしょう。

飲酒と歯周病の関係

雫石 聰, 永田英樹. 歯周病とライフスタイル. 医学のあゆみ 2010 ; 232(2) : 198-202.

※参考書籍
 「あなたの知識は最新ですか?歯科衛生士のための21世紀のペリオドントロジーダイジェスト」
 天野 敦雄 著 クインテッセンス出版株式会社

Q123 口臭から歯周病の状態を確認できますか?
A123

歯周炎に口臭はつきものであり、歯周状態を判定するための貴重な指標です。

口臭のほとんどの原因物質(口臭成分)は口腔細菌が産生します。歯周病に特有な臭いは、歯周ポケットに供給される栄養素を歯周病菌が代謝・分解する際に発生します。ほとんどの歯周病菌は口臭成分を産生します

つまり、強い口臭は歯周病菌が大量に口腔内に生息し、細菌の新陳代謝がさかんに行われていることを示しています。また、口臭成分の毒性は歯周炎をさらに進行させるので、口臭がなくならないかぎり、歯周炎は治まりません

※参考書籍
 「あなたの知識は最新ですか?歯科衛生士のための21世紀のペリオドントロジーダイジェスト」
 天野 敦雄 著 クインテッセンス出版株式会社

Q124 歯周病菌が出す口臭の原因物質の特徴を教えて下さい。
A124

臭いの原因物質は揮発性硫黄化合物であり、歯周病菌が産生する物質はメチルメルカプタンです。このメチルメルカプタンは、揮発性硫黄化合物のうちもっとも毒性が強く、歯周組織の破壊にもっとも関与していると指摘されています。

天野敦雄, 岡賢二, 村上伸也(監修). ビジュアル 歯周病を科学する. 東京:クインテッセンス出版, 2012.

メチルメルカプタンの特徴

1.毒物指定(毒物および劇物取締法)

2.毒性は青酸ガスに匹敵

3.歯肉の上皮組織の増殖・成長の阻害

4.歯肉の炎症を悪化させる

※参考書籍
 「あなたの知識は最新ですか?歯科衛生士のための21世紀のペリオドントロジーダイジェスト」
 天野 敦雄 著 クインテッセンス出版株式会社

Q125 歯周病と全身疾患はお互いに影響するのでしょうか?
A125

20世紀の末から歯周組織の慢性炎症や歯周病菌が全身に悪い影響を及ぼすという臨床研究が数多く報告され、歯周病と全身疾患は互いに影響し合うメカニズムが存在しているという考えが定着しました。

天野敦雄, 岡賢二, 村上伸也(監修). ビジュアル 歯周病を科学する. 東京:クインテッセンス出版, 2012.

 天野敦雄, 稲葉裕明. 歯周病と4つの全身疾患. 臨床薬理 2011; 42: 65-66.

歯周ポケット内面に形成された潰瘍面から歯周病菌が毛細血管に侵入し(菌血症)、全身を駆けめぐります。その結果、さまざまな全身疾患を発症させたり悪化させたりします。内臓肥満を基盤として発症するメタボリックシンドロームは高脂血症、高血圧、糖尿病などを進行させ、生活習慣病の原因となります。歯周病と肥満、あるいはメタボリックシンドロームとの関係も疫学調査から明らかになっています。

 

歯周病と全身疾患

※参考書籍
 「あなたの知識は最新ですか?歯科衛生士のための21世紀のペリオドントロジーダイジェスト」
 天野 敦雄 著 クインテッセンス出版株式会社

Q126 歯周ポケットからの出血は全身疾患に関係ありますか?
A126

歯周ポケットに潰瘍面が形成され、ポケット内に出血することが歯周病発症の大きなきっかけとなります。この潰瘍面形成により、全身疾患と歯周病の関係が始まります。

すべての歯に深さ5mmの歯周ポケットがあると、その潰瘍面積は手のひら大(72cm2)と言われています。この大きな傷口は24時間バイオフィルム(細菌の塊:大便と同じ)にさらされています。その結果、歯周病菌は毛細血管を通じて全身に運ばれ、全身疾患の原因となるのです。

天野敦雄, 岡賢二, 村上伸也(監修). ビジュアル 歯周病を科学する. 東京:クインテッセンス出版, 2012.

※参考書籍
 「あなたの知識は最新ですか?歯科衛生士のための21世紀のペリオドントロジーダイジェスト」
 天野 敦雄 著 クインテッセンス出版株式会社

Q127 口のなかをきれいにするには、どんな方法がありますか?
A127

口のなかの掃除には3つの手段があります。

まず1番目は、バイオフィルムを歯ブラシやデンタルフロスで除去していく物理的な方法です。

2番目は、殺菌性のある洗口液によって清掃する化学的な方法(ケミカルコントロール)です。

3番目は、乳酸菌などのプロバイオティクスの力で有害菌を追い出す生物学的方法です。

 

※参考書籍
 「臨床編 3DSセラピーができる本」
 花田 信弘 監修、浦口 昌秀 編集

Q128 3DSセラピーって何?
A128

物理、化学、生物学という順番で口腔清掃をするのが3DSセラピーです。

Q&A「口のなかをきれいにするには、どんな方法がありますか?」で紹介している口腔内清掃のうち、2番目の化学的な方法(ケミカルコントロール)の問題点は副作用唾液による希釈です。

洗口液などに含まれた殺菌成分は唾液により希釈されて有効濃度を維持できません。このようななか、有効濃度を維持するために高濃度の薬剤を入れると粘膜刺激や菌交代現象などの副作用が予想されます。

そこで、唾液によって薬剤が希釈されず、歯面バイオフィルムだけを狙い撃ちする方法が、3DSカスタムトレーです。薬剤スペースが適切に設計されたトレーの中に殺菌成分を含む薬剤を入れておけば有効濃度を必要な時間貼付できます。これが歯面薬剤輸送システムDental Drag Delivery System(3DS)です。

 

※参考書籍
 「臨床編 3DSセラピーができる本」
 花田 信弘 監修、浦口 昌秀 編集

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