歯周病

Q91 BOPって何ですか?
A91

BOPとはBleeding On Probingの略で、プロービング時の出血のことです。出血の有無により歯周ポケット底部の炎症状態を診ることができます。

Q92 プロービングって何ですか?
A92

プローブを歯肉溝内または歯周ポケット内に垂直的に根尖側方向へ挿入することです。挿入圧は25~30g程度が適性とされています。各歯の周囲4箇所または6箇所の決められた場所を測定します。この検査により、歯周病の有無組織破壊の程度を探査します。

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Q93 歯周炎で歯がグラグラしはじめてとても困っています。よい治療法はありますか?
A93

歯周治療を目的とした再生療法をおすすめします。以前なら抜いていた歯もかなりの確率で保存できるようになってきています。ただし、 再生療法にも欠点がありますのでよくご確認下さい。

再生療法の欠点

1.治療結果が分かるまで時間がかかります(8~12ヶ月)
2.すべての症例に適用できるわけでありません
3.術後の患者さんのお口のケアの状態や健康状態に治療結果が
 左右されやすいです
4.健康保険が適用されず費用がかかります

※参考書籍 「nico 2007.9 クインテッセンス出版株式会社」

Q94 歯内・歯周疾患が全身に及ぼすリスクについて教えて下さい。
A94

歯内疾患は、歯周疾患と比較して、その病巣の多くが閉鎖性であり、骨髄内に存在することから考えると、菌血症になる可能性は重度の歯周疾患に匹敵すると考えられます。両者では、病巣の大きさ、活動性および感染細菌種が違うため、全身に及ぼす影響が異なることも考えられますが、歯内疾患であっても宿主の抵抗性が低下している状態では、敗血症を引き起こす可能性も考えられています。

※参考書籍
 「エンド難症例 メカニズムと臨床対応」
 恵比須 繫之 編  医歯薬出版株式会社

Q95 糖尿病と歯周病の関係性について教えてください。
A95

糖尿病だと歯周病になりやすいことはご存知のかたも多いかと思います。

厳密にいうと、糖尿病に併発する歯周病は、糖尿病が原因で発症するものではありません。糖尿病による免疫系機能障害、末梢血管循環障害などが歯周病を引き起こします。

つまり、免疫機能が低下するため、細菌感染を起こしやすくなるからです。歯周病は細菌感染によって起こる病気で、そのため糖尿病のかたは歯周病になりやすいのです。

糖尿病になるとからだの抵抗力が落ちるため歯周病などの細菌感染が起きやすいのです。

最近の研究では、その逆で、歯周病で糖尿病が悪化しやすいことも解明されつつあり注目されています。
歯周病菌の出す毒素とからだの免疫機能が戦うと、インスリンの働きを鈍らせる物質が出て、血糖値のコントロールが難しくなるからだと考えられています。
どうやら、歯周病と糖尿病は双方向に悪さをし合っているようです。
運動しても食事療法をしても糖尿病がよくならなかった人が、歯周病の治療をしたら血糖値が下がったなど糖尿病のデータが改善した、という研究結果が出ています。
糖尿病のかたは歯周病の治療もお忘れなく!

歯周病を取りまく背景と、糖尿病を取りまく背景は酷似しています。
食事や運動、ストレス、喫煙などのライフスタイルは共通項です。
ですので、歯周病だけよくなって糖尿病は悪くなるとか、歯周病は悪化の一方だけど糖尿病はずいぶんよくなった、というようなことは起こりにくいのです。
つまり、“ライフスタイル”という視座に立つと、糖尿病と歯周病はよくなるときも悪くなるときも同じ方向を向いていると考えられます。

糖尿病と歯周病の関係性

糖尿病になると、歯周病の発症が2.6倍((1))、歯槽骨の吸収度が3.4倍((2))になると報告されています。

歯周病は糖尿病に限らず、心筋梗塞、動脈硬化などを悪化させることもわかってきています。
お口の健康はもちろん、全身の健康のためにも、歯周病の治療を早期にはじめましょう!

※参考書籍
 「nico 2013.4 クインテッセンス出版株式会社」
 「nico 2011.9 クインテッセンス出版株式会社」
 「ペリオバカ養成講座~学びの門戸を開くための100の質問~」
  山本浩正 著 医歯薬出版株式会社
 「nico 2011.5 クインテッセンス出版株式会社」
 「歯周治療の指針2015」
 特定非営利活動法人 日本歯周病学会

Q96 歯周病に伴う臭い対策を教えてください。
A96

あくまで歯周治療がベースであり、付加的に舌清掃や洗口を考えます。
口腔乾燥があればその対策は必須です。

歯周病に伴う臭い対策

※参考書籍 「ペリオバカ養成講座~学びの門戸を開くための100の質問~」
      山本浩正 著 医歯薬出版株式会社

Q97 歯周病はどこから感染するんですか?
A97

「歯周病菌の感染ルートは不明ではない」とは言えますが、「歯周病菌の感染ルートは明らかにされた」わけでもありません。
Aさんの口の中に歯周病菌が見つかったとしましょう。この歯周病菌は、どこからどのようにやってきたのでしょう。歯周病菌は嫌気性菌ですが、体の中で嫌気性の常在菌がいるところといえば腸内が最初にあげられます。実際、歯周病の原因菌として非常に有名なP.g.菌(Porphyromonas gingivalis)の親戚にあたるバクトロイデス属は、腸内細菌の半分を占める上得意様です。そのため、P.g.菌は腸内からやってきた、というようなストーリーも考えられますが、証明されていません。となると、Aさんと仲のよいBさんから歯周病菌が移った、というのはどうでしょうか?これは十分ありえることです。しかし、細菌の伝播は現行犯逮捕できません。AさんとBさんが「そんなことをしたら移るんじゃないの?」というのはあるかもしれませんが、それでも歯周病菌の伝播は目では見えません。そのため、AさんとBさんが全く同じDNAの歯周病菌をもっているかどうかを調べることになります。そういう調べ方をすると、2つのことがわかりました。1つは「歯周病菌はコンタクトする機会の多い人同士で共有することが多い」ということ。そしてもう1つは「歯周ポケット内で見つかる歯周病菌の多くが唾液でも見つかる」ということ。これで歯周病菌の感染ルートの1つに“唾液”が注目されるようになってきたのです。やっぱりAさんとBさんは怪しい・・・。

伝播 → 定着 → 感染

伝播は感染の前提条件です。伝播しても特定の部位で定着し、病原性を発揮しなければ感染に至りません。

※参考書籍 「ペリオバカ養成講座~学びの門戸を開くための100の質問~」
      山本浩正 著 医歯薬出版株式会社

Q98 歯周病は必ずかかる病気なのですか?
A98

歯周病は必ずかかるわけではありません。歯周病の多くは、原因であるプラークや歯石を日頃の歯磨きや、定期的な歯科検診などを受けることにより除去することで予防できます。

予防できない歯周病もありますが、遺伝性の病気など、非常に特殊な場合です。

※参考サイト 「日本歯周病学会」

Q99 歯周病菌が口の中にいると必ず歯周病を発症するのですか?
A99

細菌検査の検出感度が飛躍的に向上した結果、red complex(※後述参照)は予想されていたよりはるかに健康な、そして若い歯周組織に感染していることがわかりました。報告により大きくばらつきはありますが、15~40歳の健康な歯周組織からのred complexの検出率は20~50%程度です。近年の細菌検査法の精度の向上につれ、健康な歯周組織からのred complex検出率はさらに上昇しました。

この結果から、現在では、red complexは口腔常在菌と考えられるようになっています。歯周病菌が常在菌であるという事実には大きな意味があります。感染を受けていても発症しない人が少なからずいるということです。red complexは歯周病のリスクファクターですが、口腔内にred complexが定着しているからといって、必ずしも歯周病になるわけではないのです。実際、2010年に行われた中国人民解放軍・航空医学研究所の職員468人を対象とした調査では、歯周病患者の85.8%からP.gingivalisが検出されたが、62.2%の非歯周病患者からも検出されています。

T.forsythiaについては、歯周病患者の76.9%、非歯周病患者の77.3%から検出されています。「疾病の発症には特定病原体の感染が認められる」というコッホの条件を、歯周病は満たさないのです。細菌検査法の精度は今後さらに向上することが予想されます。もしかすると将来、「red complexは人類の大多数の口腔に定着している」という報告がなされるかもしれません。

※red complexとは

多数の細菌種の共生集団(microbial complex)の中でも、もっとも歯周病原性が高い集団を「red complex」といいます。

PCR法などの最新の細菌検査法を用いた報告でも、おおむね重篤な歯周病ともっともよく関連して検出される細菌種がred complexで、菌種はP.gingivalisT.forsythiaT.denticolaがあります。これら“要注意”3菌種は歯周細菌検査のターゲットとなっています。3菌種の中でもP.gingivalisがとくに歯周病原性が強いとされ、歯周治療後の歯周状態の改善と、歯肉縁下プラーク中のP.gingivalis菌数の大幅な減少には明らかな相関があることが報告されています。

一方、red complexの3菌種は、互いの病原性を高め合う性質をもち、細菌の代謝産物が他の細菌種の病原遺伝子の発現を促進し、相乗効果を発揮していると考えられています。しかし、そのメカニズムはいまだよくわかっていません。

※参考書籍
 「ビジュアル 歯周病を科学する」
 監修 天野敦雄 岡賢二 村上伸也 クインテッセンス出版株式会社

Q100 いろいろな歯みがき剤がありますが、効果はあるのですか?
A100

現在、歯みがき剤のなかにはさまざまな効用をねらった成分が配合されています。
“細菌をやっつけます”と抗菌薬が入っているもの
“タバコのヤニを取ります”と研磨剤がたくさん入っているもの
“歯石がつきにくくなります”とピロリン酸ナトリウムが入っているもの
“口臭予防”と塩化亜鉛が入っているもの
などなど、たくさんの歯みがき剤がありますが、どれも実験をすると多少の効果はあるようですが、確実に有効であるものはフッ化物です。
歯みがき剤に含まれるフッ化物はブラッシング中に出てくる唾液でどんどん薄められ、最後は吐き出されてしまうので、口腔内に残る量はごくわずかです。しかしながら、ブラッシング後2時間くらいまで0.1~0.05ppm程度の微量なフッ化物が残っていれば十分むし歯の予防効果があることがわかっています。
就寝前にフッ化物がお口の中に残っていると、寝ている間は唾液が出ないのでフッ化物濃度が相対的に高くなります。つまり、唾液の出ないハイリスクの時間にフッ化物が歯を守ってくれるのです。また、唾液で洗い流されない、唾液の影響が及びにくい部位にフッ化物が停滞してくれます。つまり、唾液の影響しにくい部位を守ってくれます。

※参考書籍 「ペリオバカ養成講座~学びの門戸を開くための100の質問~」
      山本浩正 著 医歯薬出版株式会社

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