歯の痛み
Q21 | 痛む場所が次々に移り、毎回痛いところが変わります。何が原因ですか? |
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A21 | そのような場合は、特発性歯痛が疑われます。 特発性歯痛とは、「歯または抜歯した後の部位に、数か月から数年以上にわたり慢性持続性の耐え難い痛みが生じているが、臨床的にも画像上でも痛みに見合うだけの異常は認められない」という場合に、除外診断で診断される非歯原性歯痛です。痛みは覚醒している間中持続し、通常、打診痛は伴いません。 有病率は不明ですが、大学病院受診患者で1.7%1)という報告があります。 9割が女性で、40~50代に多いとされています2)。自験例では約9割が女性で、平均受診年齢は55歳でした。複数の医療機関を巡り、正しく診断されるまでに平均4~5年かかっています2)。 特発性歯痛の特徴1.疼痛の日内変動痛みは起床後しばらく弱く、午後、とくに夕方から夜にかけて悪化します。 2.疼痛強度通常中等度~強度で、患者さんが抜歯を希望するほどです。 3.疼痛改善因子摂食時には痛みは改善または消失します。口の中に何かが入っているときには痛みは和らぐため、ガムや飴を常用している患者さんも多いです。 4.疼痛悪化因子感情や環境因子によるストレスがかかると疼痛は悪化します。 5.発症の契機7割が歯科治療が契機となって発症します3)。 6.精神疾患との関連3~4割にうつ病や不安症の既往があります4)。
特発性歯痛と通常の歯痛との鑑別法(参考文献5)を引用改変)
*特発性歯痛で抜歯が行われる場合、主治医の多くは歯根破折を疑っています。歯原性であれば局所麻酔で疼痛は消失するため、観月には歯根膜駐車を行って確認することが有効です。
治療について中枢性の痛みであるため、三環系抗うつ薬やSNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)による薬物療法と、痛みから注意をそらせる認知行動療法を併用することで改善が得られることが多いです。歯科治療は無効であるばかりか、繰り返すとむしろ悪化する傾向があります6)。
1)Wirz S, Ellerkmann RK, Buecheler M, et al.: Management of chronic orofacial pain: a survey of general dentists in german university hospitals. Pain Med. 11 (3): 416-424. 2)Ikawa M: Effectiveness of antidepressants for treatment of idiopathic orofacial pain, The Journal of Headache and Pain, 2013. 3)Ikawa M, Yamada K, Ikeuchi S: Efficacy of amitriptyline for treatment of somatoform pain disorder in the orofacial region: A case series. J Orofac Pain. 20 (3): 234-240, 2006. 4)Taiminena T, Kuusaloa L, Lehtinena L: Psychiatric (axis Ⅰ) and personality (axis Ⅱ) disorders in patients with burning mouth syndrome or atypical facial pain, Scandinavian Journal of Pain 2, 155-160, 2011. 5)Melis M, Secci S: Diagnosis and treatment of atypical odontalgia: a review of the literature and two case reports. J Contemp Dent Pract.; 8 (3): 81-89, 2007. 6)井川雅子, 山田和男: 口腔顔面部の特発性疼痛疾患 口腔内灼熱症候群と持続性特発性顔面痛. 日本頭痛学会誌, 46 (1), 70-79, 2019.
※参考書籍 |
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Q22 | 非定型歯痛って何ですか? |
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A22 |
原因不明の歯の痛みのことです。 歯以外が原因で起きる歯痛には、非定型歯痛の他にもさまざまな種類があります。 1.非定型歯痛リエゾン診療科・心療歯科・精神科 痛みが起こる神経ネットワークの異常によるものです。 2.筋・筋膜性歯痛歯科・口腔外科 筋肉の過度に収縮した部分からの信号を、脳が歯痛として感じます。(関連痛) 3.神経障害性歯痛脳神経外科・ペインクリニック 三叉神経痛や、帯状疱疹後の神経痛もこれに含まれます。 4.神経血管性歯痛神経内科・脳神経外科 片頭痛や群発頭痛の症状のひとつです。 5.心臓性歯痛内科・循環器科 狭心症や心筋梗塞の影響で歯に痛みが発生します。 6.上顎洞性歯痛耳鼻咽喉科・口腔外科 鼻炎や蓄膿症などによる痛みです。
他にも、メンタル面の可能性も考えられます。
※参考書籍 |
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Q23 | 非定型歯痛はどこから来るのですか?つらい痛みが続くのはなぜですか? |
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A23 |
痛覚をつかさどる脳内の神経ネットワークが、過去の不快な治療経験やストレスなどの影響でバランスを崩すことが原因とされています。脳の痛覚をつかさどる所と感情をつかさどる所はさかんに連絡を取り合っているために、不安な感情が痛覚を増幅するという説があります。 原因が分からないまま歯科治療を繰り返し受け、それでも治らずに不安が増すほど、痛む場所が広がっていくという悪循環に陥りやすいのです。 非定型歯痛は、歯科治療のストレスをきっかけに起こることもあります。しかし、だからといって「歯を治療すれば治るはずだ」と治療を繰り返していると、痛みをこじらせてしまいます。原因不明の痛みがある場合は、「もしかしたら痛みを感じる神経バランスが変わってしまっているのかな?」と疑ってみてください。
※参考書籍 |
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Q24 | なぜ歯科治療がきっかけで非定型歯痛になることがあるのですか? |
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A24 |
口はからだのなかでも感覚が特別に鋭敏な器官です。それだけに、歯科治療によるストレスは、情動に影響を与えやすいのです。疲れていたり、気苦労の多いところへ歯科治療のストレスが加わることによって、その人のストレスの許容量を超えてしまうと痛みの神経ネットワークのバランスが崩れて非定型歯痛が起きてしまうことがあります。
※参考書籍 「nico 2016.2 クインテッセンス出版株式会社」 |
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Q25 | 原因不明の歯痛は、耳鼻咽頭科や内科でも調べてもらうとよいと聞きました。なぜ医科での検査も必要なのですか? |
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A25 |
医科の病気にも、歯痛に似た痛みを引き起こすものがあるためです。本当の原因を見逃さないためのとても重要なステップです。
まず歯科で検査を受けます。STEP1 歯の検査を受け説明してもらおう!歯痛のある場所に炎症などがあるかどうか、エックス線検査でよく調べてもらい、検査結果について説明を受けましょう。また、筋・筋膜性歯痛(関連痛)の可能性についても診てもらいましょう。
STEP2 場合によってはセカンドオピニオン歯を削る治療をしたり、噛み合わせを替えてしまうと、もしも歯が原因でないとわかったとき元に戻せません。よほど原因らしき歯でなければ治療は控え、納得できないときはセカンドオピニオンを受けましょう。歯科用CTや顕微鏡でさらに詳しく調べてもらうのもよいでしょう。
歯科医院で原因が見つからなかったら・・・STEP1 上顎洞炎の検査耳鼻咽頭科・口腔外科 上顎洞に炎症が起きると、そのごく近くに上あごの歯根があるために歯痛が起きることがあります。耳鼻咽頭科で副鼻腔炎や蓄膿症などがないか検査を受けましょう。
STEP2 神経痛や心臓病、頭痛の検査内科・神経内科など 神経痛や頭痛が原因の歯痛、心臓病が原因の歯痛でないかどうかを、それぞれの専門家に調べてもらいます。その際、歯科医院からの紹介状を持参すると、受診意図がスムーズに伝わり安心です。
STEP3 非定型歯痛の検討歯科大学病院の心療内科・リエゾン診療科・精神科など ストレスが原因の歯痛の可能性について診察を受けます。歯科医院で紹介状をもらっておくと、受診意図がスムーズに伝わり安心です。睡眠を改善する薬や抗うつ薬などの処方、また、カウンセリングなどを受けながら経過を診ていきます。 ■抗うつ薬などの向精神薬は、医科で出してもらいます。
※参考書籍 「nico 2016.2 クインテッセンス出版株式会社」 |
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Q26 | 歯が痛いです。非定型歯痛かどうかわかりませんが、自分でチェックできますか? |
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A26 |
歯科でも医科でも原因不明な以下のような歯痛がありませんか?
症状1痛みのあるところの検査を受けても、むし歯や歯周病などのはっきりとした原因がない。 症状2「ここが原因?」という歯の治療を受けても痛みが数カ月以上消えない。 症状3経験したことのないような強い痛みがある。 症状4処方された鎮痛薬を飲んでも痛みが治まらない。 症状5冷たいものや熱いもの、食べ物などと触れたときの刺激痛ではないと思う。 症状6痛みが移動したり、本数が増えることがある。 症状7歯だけでなく顔面や首、肩まで痛いと感じることもある。
もしも思い当たる症状があったら、非定型歯痛の可能性がありそうです。歯科治療だけでなんとか治そうと頑張らず睡眠を取り、脳を休息させるための治療・セカンドオピニオンを優先的に始めましょう。
※参考書籍 「nico 2016.2 クインテッセンス出版株式会社」 |
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Q27 | 異所性痛って何ですか? |
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A27 |
異所性痛とは、痛みの原因となっている部位とは異なる部位に痛みが発生することで、3つの種類があります。 1.関連痛(Referred Pain)痛みの原因の部位を支配している中枢神経が同神経支配下にある別の場所で感じる痛みのこと。 痛みを感じる場所に麻酔や処置をしても痛みの程度に変化はなし。 2.投影痛(Projected Pain)痛みの原因部位にある神経の延長線上で感じる痛みのこと。 3.中枢痛(Central Pain)中枢神経に痛みの原因があり、その神経支配下の部位で感じる痛みのこと。 ※参考書籍 |
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Q28 | 痛みが急に出た時どうしたらいいですか? |
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A28 | 夜中に急に痛くなったりすると、すぐには病院に行けない場合もあると思います。 その時の応急処置は、 ・痛い側のほほをとにかく冷やす。 ・鎮痛剤を服用して下さい。 ・お風呂などには入らない。 体を温めると、血流が増し、痛みが増してきます。 そして、我慢しないで、早く歯医者さんへ行きましょう。 |
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Q29 | 口腔顔面痛とは、どんな病気なのですか? |
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A29 | あんどう歯科口腔外科 安藤彰啓院長 コメント
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Q30 | 口腔顔面痛になる原因は、何かありますか? |
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A30 | あんどう歯科口腔外科 安藤彰啓院長 コメント
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