歯の痛み
Q11 | 歯が原因で歯性上顎洞炎と言われましたが本当ですか? |
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A11 | 上顎洞炎の10~12%が歯性上顎洞炎であると言われてきましたが、コーンビームCT(CBCT)による診断が可能となった現在、その発生頻度は以下の報告のように高くなってきています。 ・慢性上顎洞炎の感染原因は40%以上が歯に起因する(Patel) ・上顎洞炎を有する患者の上顎小、大臼歯部をCBCTにより診査した結果、50%以上に根尖病変が認められた(Maillet) ・上顎洞炎と診断された52人の患者のうち、55.7%は根尖が上顎洞内に突出しており、それらの79.3%は上顎洞粘膜が2mm以上肥厚していた(Yildirim) 歯性上顎洞炎の原因を報告した論文は少なく、インプラントが原因の歯性上顎洞炎が37.0%、抜歯によるものが29.6%、根尖病変に起因するものが11.1%であった(Lee)という報告があります。 副鼻腔の炎症は、鼻閉、鼻漏、後鼻漏といった鼻症状に加え頭痛、頬部痛、顔面圧迫痛を伴うもので、患者さんのQOLに大きくかかわる疾患です。 歯性上顎洞炎の経過には急性と慢性がありますが、急性期には片側性の頬部痛や鼻閉を伴うことが多く、鼻症状の前に歯痛をきたすこともあり、歯髄炎と誤って抜髄することのないよう注意が必要です。 ※参考書籍 |
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Q12 | 歯が痛いのですが原因がわからないといわれ、歯科医院にいっても治りません。どういうことでしょうか? |
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A12 |
歯の痛みには、歯原性歯痛と非歯原性歯痛があります。 歯原性歯痛歯や歯周組織に生じた器質障害や炎症により、当該部位あるいはその関連部位に自覚される歯痛のこと 非歯原性歯痛歯や歯周組織以外に生じた痛みを、関連痛の一つとして歯や歯周組織に自覚される歯痛のこと
注意してほしいことは、非歯原性歯痛は主な原因が歯にないということであり、歯に問題がないということではないということです。 例えば、顔面痛で経過が長い場合は、しばしば知覚神経に可塑化を引き起こし、三叉神経痛様や帯状疱疹後神経痛様など、さまざまな痛みに姿を変えます。そこで、歯に何らかの問題があると、その歯を標的に顔面痛が非歯原性歯痛として現れ、歯痛化すると考えられています。 よく診査をしてみないとはっきりとしたことは言えませんが、もしかしたら非歯原性歯痛の可能性も考えられます。 ※参考書籍 |
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Q13 | 上の奥歯がすべて響いて痛いです。約2週間前に風邪をひいたころから、左側上顎臼歯部全体が響き、鈍痛があります。痛みはズキズキとしており、持続的に続いています。鼻閉、鼻漏、後鼻漏があります。前屈すると頭が重く感じ、階段を上がる際や歩くだけでも痛むときがあります。左側頬部圧痛もあります。食事時に違和感があり、全身倦怠感もあります。原因は何ですか? |
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A13 | このような場合、上顎悪性腫瘍、脳腫瘍、歯髄炎、う蝕、急性根尖性歯周炎、慢性辺縁性歯周炎急性化、非歯原性歯痛(筋・筋膜性歯痛)、非歯原性歯痛(上顎洞性歯痛)、突発性歯痛などが疑われます。 本症例では、
などの状態から、上顎臼歯部の上にある上顎洞炎に起因する「急性上顎洞炎による非歯原性歯痛」と思われます。
※参考書籍 |
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Q14 | 就寝中、上の歯の激痛で目が覚めてしまいます。1か月前から毎日、就寝中に左側上顎大臼歯部の根の奥と眼の奥を中心に顔面頬部に激痛が走り、飛び起きる日が続いています。痛み止めを飲んで1時間ぐらいすると少しずつ治まってきます。一昨年も同じ季節に同じような痛みが生じて耳鼻科を受診しました。とくに異常はないと言われ、1か月くらい続いて治まりました。今回は歯が原因ではないかと思って、かかりつけ歯科医を受診しました。歯を抜いてしまいたいほどに痛いのですが、日中はほとんど痛くなく、食事は通常通りできます。原因は何ですか? |
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A14 | このような場合、上顎洞癌、脳腫瘍、歯髄炎、上顎洞炎、群発頭痛、急性根尖性歯周炎、特発性歯痛などが疑われます。 本症例では、
などの状態から、「群発頭痛」と思われます。群発頭痛の好発年齢は30歳代であり、男性に多いですが、女性にも生じます。
他の疼痛と群発頭痛の比較については、下記の表を参考にしてください。
※参考書籍 |
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Q15 | 今まで一度も処置をしたことがなく、むし歯もないと言われましたが、歯が強く痛みます。原因は何ですか? |
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A15 | もしかしたら歯髄炎かもしれません。 歯髄炎を引き起こす因子として、
の3つが考えられます。 1.のう蝕(むし歯)はなく、また、治療もしたことがなく3.でもないということであれば、1.と3.は除外され、2.の外傷因子が疑われます。 最初に行うことは問診にて過去の外傷の既往を聞くことです。ただし、外傷はあくまでも歯髄炎を結果的に起こし得る因子にすぎません。 歯に外的な力が加わったことにより、歯冠あるいは歯根の一部または両方に破折が生じた結果、歯髄炎が惹起されるため、診査においては歯に破折線を確認する必要があります。 ただし、非歯原性(歯が原因でない)のものも考えられますので、早く歯科医院を受診してください。
※参考書籍 |
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Q16 | 根っこの処置が終わったのですが、痛みが続いています。原因は何ですか? |
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A16 | 次のような原因が考えられます。
※参考書籍 |
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Q17 | 義歯の調整を何度も行っていますが、全く痛みが軽減しません。他にどんな原因が考えられますか? |
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A17 |
TCH:Tooth contacting habit、継続的な歯の接触
※参考書籍 |
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Q18 | 抜歯部の痛みがおさまりません。抜歯窩は治っているのに、何が原因ですか? |
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A18 | 可能性としては次の4つが考えられます。 1.悪性腫瘍(初めに除外すべき疾患)癌腫(おもに扁平上皮癌、顎骨中心性癌)、造血器悪性腫瘍(おもに白血病、悪性リンパ腫)、肉腫(おもに骨肉腫)、多臓器がんの顎骨転移など
2.炎症(頻度の高い疾患であることが多い)ドライソケット、残根・異物・嚢胞・良性腫瘍などの感染、骨吸収抑制薬関連顎骨壊死(ARONJ)、骨髄炎、上顎洞炎、巨細胞性動脈炎、易感染性の有無(糖尿病などの基礎疾患、ステロイド・抗がん剤・免疫抑制剤投与)
3.抜歯後神経障害性疼痛2018年に公開された国際頭痛分類第3版(ICHD-3)では、外傷後有痛性三叉神経ニューロパチーに該当します。
4.非歯原性疼痛(ほぼ痛みだけの疾患)筋・筋膜性疼痛(顎関節症:咀嚼筋痛障害)、片頭痛、群発頭痛、三叉神経痛、舌咽神経痛
※参考書籍 |
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Q19 | 口腔内、歯肉粘膜全般に痛みがあります。どのような疾患が考えられますか? |
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A19 | 口腔粘膜の痛みを伴う疾患は次のようなものがあります。 全身疾患に伴う口腔粘膜の疼痛●内分泌疾患甲状腺疾患、糖尿病 ●栄養素欠乏ビタミン(B2、B6、B12、ナイアシン、葉酸)欠乏、鉄欠乏、亜鉛欠乏 ●自己免疫疾患SLE、ベーチェット病、シェーグレン症候群 ●アレルギー性疾患食物・薬剤性アレルギー(即時型・遅延型) ●ウイルス感染症HIV感染症 ●常用薬の副作用
口腔症状が主症状の口腔粘膜疼痛●歯肉炎●口腔扁平苔癬●口腔カンジダ症●天疱瘡●接触型アレルギー(歯科材料)●急性壊死性潰瘍性歯肉炎●アフタ性口内炎●ウイルス感染症単純疱疹、水痘帯状疱疹 ●口腔乾燥症生理的変化(加齢、閉経など)、環境の影響(口呼吸、ストレス、飲酒、喫煙)、病的変化(唾液腺疾患、放射線治療) ●バーニングマウス症候群(舌痛症)
※参考書籍 |
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Q20 | 風邪を引くと、上のすべての歯が浮いた感じになり、痛みが出ます。何が原因ですか? |
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A20 | 「上のすべての歯が浮いた感じ」という症状を生じる理由としては、上顎臼歯の根尖が上顎洞内に近接しており、炎症が直接的に根尖部に波及して歯根膜炎を生じるためと考えられています。また、歯痛は、副鼻腔の内圧亢進によって生じた痛みが関連痛として上顎の歯痛を生じたと想定されます。 急性鼻副鼻腔炎が原因の場合、歯痛が数日~1週間程度で急速に悪化することが多いです。急性鼻副鼻腔炎の典型的な症状は、鼻汁や後鼻漏、頬部圧痛、発熱などを伴います。
※参考書籍 |
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