歯・お口の状態について

Q41 むし歯にならない糖があると聞きました。本当ですか?
A41

代用甘味料は、細菌が栄養として代謝することができないため、酸産生性が全くないか、あっても低く、非う蝕原性(むし歯にならない)または低う蝕原性(むし歯リスクが低い)です。

中でも、キシリトールなどの糖アルコールは多くの製品で用いられています。糖アルコールは「〇〇トール」や「還元〇〇」という名称で表示されているので、買い物をするときの参考にしてください。

 

※参考書籍
 「カリエスブック」 伊藤直人 著 医歯薬出版株式会社

Q42 私、顎関節症なんですが痛みをとる方法を教えてください。
A42

急性の痛みと慢性の痛みで対応方法は異なります。

急性の痛みの場合

 冷やす・大きく口を開けない・硬いものを食べない・安静に

慢性の痛みの場合

 温める・開口訓練(リハビリトレーニング)

 

また、次のような論文があります。

「TMDの疼痛緩和に有効な治療法としては、オクルーザルスプリント、鍼灸、行動療法、顎運動、姿勢訓練、および薬物療法の一部が挙げられた。また、電気生理学的療法や手術の効果に関する科学的根拠は不十分で、咬合調整は効果がないとされた。」

TMDの管理:システマティックレビューおよびメタアナリシスによる科学的根拠
J Oral Rehabil 2010;37(6):430-451.

※参考書籍
 「開業医のための口腔外科 重要12キーワードベスト240論文」
 監修 河奈 裕正  クインテッセンス出版株式会社

  「顎関節症のリハビリトレーニング」
 木野 孔司 編著  医歯薬出版株式会社

Q43 削って詰めた歯はもうむし歯になりませんよね?
A43

 詰め物・被せ物をした歯こそ再発に注意しましょう!

削って詰めた歯は、「これでもう治った」と安心しがちですが、歯と詰め物との境目にプラークがたまると、そこから新たなむし歯ができてしまうことがあります。

歯科ではこれを「二次う蝕(むし歯)」と呼んでいます。歯科医師がうまく詰めても、人工物である詰め物や被せ物と天然歯はまったく違うものでできているので、ミクロの目で見るとどうしてもいくらか段差ができ、そこに細菌がくっつきやすいのです。

詰めた歯、被せ物をした歯は、いつも気にかけてよく磨くこと。そして、新たなむし歯ができていないか歯科医院で定期的にチェックしてもらいましょう。

※参考書籍 「nico 2017.5 クインテッセンス出版株式会社」

Q44 歯周基本治療の内容について教えてください。
A44

以下のものがあります。

1.応急処置

2.モチベーション

3.プラークコントロール

4.スケーリング・ルートプレーニング

5.歯周ポケット掻爬

6.不適合充填物・補綴装置の修正・除去

7.歯周治療用被覆冠・治療用義歯の装着(当面の咬合確保)

8.咬合調整

9.暫間固定

10.う蝕治療・歯内治療

11.悪臭癖の改善

12.矯正治療

13.保存不可能な歯の抜歯

※参考書籍 「日本歯科医師会雑誌 2017 Vol17 No.5」

Q45 保険の歯周治療の流れを教えてください。
A45

下記のフロー図を参考にしてください。

慢性歯周炎患者に対する歯周治療の流れ

参考:日本歯科医学会. 歯周病の治療に関する基本的な考え方(令和2年3月).
日本歯科医学会ホームページより

歯周治療の流れ

注1:歯周基本治療の内容の例
  1. 口腔衛生指導(OHI)(プラークコントロール)
  2. 非外科的歯肉縁上・縁下デブライドメント(スケーリング)
  3. テンポラリークラウン、プロビジョナルレストレーション(ブリッジや可撤式補綴装置も含む)の製作
  4. 部分的なう蝕除去と一時的な仮封
  5. 不適合/不適切補綴装置の張り出しやマージン部の削合
  6. 早期接触部や咬合干渉部の必要性に応じた咬合調整(急ぎでなければ歯周組織の炎症消退後が望ましい)
  7. 歯の動揺が著しいとき(脱臼寸前もしくは患者が噛みにくい場合)の歯の固定(暫間固定)
  8. 根管治療
  9. ホープレス歯や抜いたほうがよいと判断された智歯などの抜歯
  10. 急性炎症に対する対応(切開排膿処置、抗菌薬の処方など)
  11. 口腔粘膜疾患、顎関節症などへの対応

 

注2:歯周病重症化予防治療(P重防)

スケーリングやSRP後、あるいは歯周外科治療後の歯周病検査の結果、歯周ポケットは4mm以下に改善したが、歯肉に炎症または出血が認められる場合に、歯肉炎から歯周病への移行や歯周炎の重症化を抑制するために行う継続管理。歯肉炎(G病名)でも保険適応可能。

 

注3:歯周病安定期治療(SPT)

サポーティブペリオドンタルセラピー。SRP後あるいは歯周外科治療後の歯周病検査において4mm以上の歯周ポケットが散在するが、歯肉に炎症が認められない場合、あるいは出血が認められない場合に病状安定と判定し、この状態を維持するために行う継続管理。

 

※参考書籍
 「保険のペリオを極める」
 編著 大月基弘、牛窪建介 クインテッセンス出版株式会社

Q46 口腔乾燥症について教えてください。
A46

口腔乾燥症は「ドライマウス」とも呼ばれています。

■口腔乾燥が進むとこんな症状があらわれます

・味覚異常

味を感じる味蕾(みらい)は、水に溶けるものを味として感じます。このため唾液分泌が低下すると、味覚の低下や味覚異常を引き起こすことがあります。

・食物摂取困難、嚥下困難

乾燥すると舌や頬粘膜を動かしにくくなり、さらに唾液量が低下すると咀嚼した食物の食塊を作ることが困難となり嚥下障害へつながります。

・義歯がガタつく

義歯は、唾液により義歯と粘膜の間の空気をなくすことで吸着しています。口腔が乾燥すると、適合の良い義歯でもガタつくことがあります。その他、舌苔の増加や虫歯、歯周病、口腔粘膜疾患が増えます。

・舌が痛い

唾液には抗菌作用や自浄作用があり、口腔内の細菌のバランスを保つ役割を果たしています。しかし、唾液が不足すると、カンジダ菌をはじめとする細菌類が増殖し、舌にピリピリとした痛みをもたらしたり、口角が切れたりします。

■口腔乾燥の原因は何だろう?

近年の研究では、従来言われていた加齢による唾液分泌低下が主要因ではなく、
・抗うつ剤や降圧剤、抗コリン剤などの薬剤性のもの
・飲水量の低下による脱水
・経管栄養摂取による唾液分泌減少
であることが明らかになってきました。

この他、口呼吸や挿管されている場合、十分な唾液量があっても口腔が乾燥している場合があります。またストレスや糖尿病、唾液性疾患、シェーグレン症候群等の疾患も原因となります。

普段からお茶やコーヒーなどのカフェインが含まれる飲みものを頻繁に飲んでいる場合は、カフェインの利尿作用によって脱水し、唾液分泌が抑制されている可能性があります。近年、若年者に人気があるエナジードリンクは、カフェインの含有量が非常に高いため注意が必要です。その他には、常にマスクをしていたり、鼻炎の影響で口呼吸になっている場合もあります。また、緊張やストレスが続いていたり、更年期障害によるホルモンバランスの乱れからも口の渇きを感じることがあります。

唾液腺の組織障害の原因のひとつに活性酸素がありますが、これに対して抗酸化物質が有効であることがわかっています1)。ビタミンCは身近な抗酸化物質として手軽に摂取できます。他にも、アスタキサンチンやコエンザイムQ10も強い抗酸化作用があり、ドライマウスの改善に効果があったという研究結果が出ています2),3)。さらに近年では、ポリフェノールの一種であるフラボノイド”ケルセチン”が唾液分泌を増やす効果に期待できるという報告もあります4)

■口腔乾燥症の見分け方はどうするの?

・舌の下に唾液が溜まっていない
・舌の上に唾液が見られず乾いている
・唾液が泡立ったり、ネバネバしたりしている
・口腔粘膜がツルツルしている
・水分摂取量や尿量の低下(脱水が疑われる時)
・義歯が外れやすくなる
などの症状があったら口腔乾燥症の可能性があります。

■栄養面でのアドバイス

・カフェイン(コーヒーや緑茶など)飲料の摂取を控え、水を飲む。

・服用薬を副作用の少ないものに変更できるか、主治医に相談する。

・こまめに水を摂取する(フレーバーのついたミネラルウォーターは糖質が含まれている可能性があるため避ける)

・緊張やストレスを取り除く。難しい場合は、マグネシウムやビタミンB群を摂取する。

マグネシウムの多い食材:あおさ、のり、わかめ、ココア、ナッツなど

ビタミンB群の多い食材:豚肉、鶏肉、カツオ、レバー、ニンニクなど

・唾液腺を活性酵素の攻撃から守るため、ビタミンC、アスタキサンチン、コエンザイムQ10などのサプリメントを活用する。

コエンザイムQ10はワルファリンの作用を弱める可能性があるため、服用している方は別のものを利用しましょう5)

ビタミンCの多い食材:柑橘類、ブロッコリー、ピーマンなど

アスタキサンチンの多い食材:サケ、いくら、エビなど

コエンザイムQ10の多い食材:牛肉、鶏肉、ニシンなど

・ケルセチンの多い食材を摂取する。(玉ねぎ・とくに外皮、ブロッコリー、サニーレタス、リンゴなど)

 

■対症療法

口腔の症状やその関連症状を緩和することが対症療法です。口腔乾燥症(ドライマウス)の症状が進むと口臭も強くなる傾向にありますが、唾液の分泌が促進されれば症状が和らぐことが多いため、よく用いられるのが「唾液腺マッサージ」を含むお口のストレッチです。その他、日頃のちょっとした心がけで唾液の分泌が促進され乾燥も緩和します。以下にそれらを対策としてまとめました。これらは、要介護者や寝たきりの方にはなかなか当てはめにくい項目ですが、少しでも実践を心掛けて頂ければ、看護の現場での口腔ケアや非経口摂取の方のドライマウス対策につながります。口腔ケアは難しいことではありません。歯科専門職と上手く連携して習慣化しましょう。

【対策】

1.口腔ケアを(用品を含め)全体的に見直す!

口腔ケアをすると多くの場合唾液分泌が増えます。歯磨剤の泡立ち成分(ラウリル硫酸ナトリウム等)や洗口液に含まれているアルコールは、口腔粘膜を刺激し口腔乾燥を進行させると言われています。従って、これらの成分を含まない製品がおすすめです。また歯ブラシは自分に合ったタイプを選び、歯と歯肉の境目をマッサージするように磨いて唾液分泌を促進しましょう。電動ブラシを使用すると、その振動が刺激となり唾液分泌促進に効果的な場合があります。また、口腔内が汚れやすい胃ろう等の経管栄養摂取者には口腔ケアが特に重要となります。

2.良く噛むこと!

唾液腺を刺激して活性化させるためには、何よりも噛むことが大事です。柔らかいものばかり食べていると唾液がだんだんと出にくい状況になり、顎や口の筋力も低下します。健康な状態の時から、介護が必要になってもできる限りよく噛んで食べる(柔らかいものでもよく噛みましょう)、柔らかめの煮物や味噌汁の具などは小さく切りすぎず少し大きめ(一口大)にする、水分で流し込むような食べ方をしない、歌を歌うなどしてはっきり口を動かす機会を作る、表情豊かに暮らす…、など生活自体を変えていきましょう。食べにくいだろうから細かくしてあげよう、歩けるけれど危ないから車椅子に乗りましょうというような行き過ぎた気配りは、過介護と同じなのです。
ガムの噛める方は、ガムを噛むことによる刺激で唾液分泌を促進することができるのでお奨めです。

3.規則正しい生活を送る!

唾液の分泌は自律神経でコントロールされています。規則正しい生活を送ることは自律神経のバランスを保つためにも大切です。喫煙やアルコール類も控えめに・・・。

4.鼻で呼吸する(口呼吸の回避)!

口を開けている状態が長いほど口は乾燥しやすくなります。鼻が詰まってなくても習慣的に口で呼吸をする方がいらっしゃいますが口を軽く閉じて鼻呼吸の習慣化に努めましょう。

5.定期的に歯科検診を受ける!

唾液は口の中を殺菌消毒する重要な働きがあります。そのため唾液分泌の少ない方は、よく歯を磨いていても虫歯や歯周病になりやすく、歯垢のチェックなど専門的な口腔ケアが欠かせません。口臭対策も兼ね3ヶ月に1回程度は、歯科医院でチェックしてもらいましょう。

6.ストレッチ・体操リハビリ!

唾液腺マッサージや舌のストレッチが効果的です。「舌の突出を繰り返す」「上下左右に動かす」など口腔体操の実施や、会話を増やす、歌う等も有効なストレッチとなります。 特に、舌であめ玉をつくる訓練(舌で頬の内側を押して、頬にあめ玉を含んでいるようにする)が非常に有効です。簡単にできるようになったら、舌で頬にあめ玉をつくりながら舌尖を片側ずつ上下・左右に動かしたりすると、さらに効果があります。その際、唾液が出たらゴックンと嚥下につなげましょう。
また、ただ何となく動かすのではなく、音楽に合わせて動かしてみると効果的。毎回同じ曲に合わせて行うことで、舌の動かしやすさや舌の持久力などの変化を感じることができ、評価につなげることが可能です。
その他、歯磨き時に歯ブラシで舌や頬を動かすように刺激するのも有効です。受動的な訓練しかできない場合には、口腔ケア時に積極的に歯ブラシや指で舌や頬に触れ、刺激していくとよいでしょう。開口したままの状態では口腔内はいっそう乾燥します。また閉口するための口輪筋への刺激もお忘れなく。
訓練のほか、唾液腺マッサージを行う場合は、耳周辺や下顎周辺を軽く圧迫するように触れていきます。方法は皆さん自身が自分の顔に触れてマッサージするときに、気持ちよい力加減や動かし方で行えば大丈夫です。

7.お口の保湿ケア!

水分補給に加え、うがいの回数を増やしたり、スポンジブラシ等で粘膜を湿潤させ、保湿してください。唾液腺マッサージやお口のストレッチ、及び上記の1.と2.を行ってもあまり効果がない場合は、その方のお口の乾燥状態に合った口腔保湿剤(口腔化粧品質)を必要に応じて使用します。ジェルやリキッドを使い分けて保湿し、症状を緩和させます。例えば、「夜、口が渇いて目が覚める」などの症状には、就寝前に保湿リキッドでのうがいを習慣化させることなどが効果的です。

●口腔保湿剤の使い分け

口腔保湿剤には色々なタイプがあり、使い方を誤ると症状が改善しない場合があります。一般的に販売されている口腔保湿剤には、ペーストジェル液状の3タイプがあります。

ペースト

(特徴と使用上の注意)
・定められた適量を調整しやすい。

(適応できる症状や使い方)
・乾燥の状態が強く、帯状の痰の付着が顕著な場合など。
・乾燥部に停滞し易いので、塗布後は暫く放置し、強固に付着した痰を柔らかくして除去する。

ジェル

(特徴と使用上の注意)
・少量でよく拡がる。
・量が多過ぎると咽頭に貯留しやすく誤嚥の危険がある。

(適応できる症状や使い方)
・頬粘膜や舌に乾燥した痰がからみついている場合など。
・スポンジブラシ等になじみやすいので、口腔内全体にまんべんなく塗布しながら、からみついた痰を除去する。

液状

(特徴と使用上の注意)
・ガーゼ等に含ませ清拭する。
・誤嚥の傾向のある方には不向きである。

(適応できる症状や使い方)
・オブラート状の痰の除去など。
・口腔乾燥の度合いによって量を調節しながら使用する。
・強い乾燥状態への使用には適していない。

口腔保湿剤は、口腔乾燥の日々の状態によって、上記のタイプを上手く使い分けると、早く改善する傾向にあります。また、含まれている成分によっても効能が若干異なるので、歯科専門職とうまく連携し、その時々に必要な対応を行いましょう。口腔乾燥は長期に渡っての対応が必要です。口腔ケアのプラニングを確立し改善を図りましょう。

 

唾液によって口腔内が潤うと、味も感じやすくなり、食事のおいしさが一層増します。
おいしく食べて楽しく語り、表情も豊かな生活はその方のQOLの向上そのものです。

 

1)Liu X, et al: Mitochondria-targeted antioxidant protects against irradiation-induced salivary gland hypofunction. Scientific reports, 11 (1): 7690, 2021.

2)Koufuchi R, et al: Effects of coenzyme Q10 on salivary secretion. ClinBiochem, 44(8-9): 669-674, 2011.

3)Yamada T, et al: Evaluation of Therapeutic Effects of Astaxanthin on Impairments in Salivary Secretion. Journal of clinical biochemistry and nutrition, 47(2): 130-137, 2010.

4)高橋絢子, 中山亮子, 葉阪彩加, 伊藤由美, 梁 洪淵, 櫻井 孝, 栗原 毅, 井出文雄, 三島健二, 井上裕子, 斎藤一郎:唾液分泌障害に対するケルセチンの効果の検討. 第14回抗加齢医学会総会, 2014.

5)Heck AM, et al: Potential interaction between alternative therapies and Warfarin. Am J Health Syst Pharm, 57(13): 1221-1227, 2000.

 

※参考
 口腔乾燥症 (PDF形式 847KB)
 ドライマウス(口腔乾燥症)について – その2 (PDF形式 807KB)
 
ドライマウス(口腔乾燥症)について – その3 (PDF形式 795KB)
 
口腔乾燥の改善のためにできること (PDF形式 227KB)
 ライオン歯科材株式会社ホームページ

※参考書籍
 「歯科でできる実践栄養指導」
 監修 山本義徳、著 山本典子 デンタルダイヤモンド社

Q47 親知らずを抜きたいのですが、どのくらい費用がかかりますか?
A47

親知らずの抜歯は保険対応です。費用はケースによって異なりますが、初診か再診かでも金額は変わりますし、レントゲンの種類によっても違います。例えば、安全な抜歯のために埋伏した親知らずの歯根の形状と下歯槽管との位置関係を正確に把握する必要がある場合にはCT撮影を行います。例えば、保険適用でCT撮影は3,500円程度です(3割負担の場合)。また、上顎よりも下顎の親知らず抜歯のほうが高額になる場合もあります。

1.まっすぐ生えている親知らず

3,000~4,000円

2.斜めに生えている親知らず

5,000~6,000円

3.埋まっている親知らず

7,000~10,000円

個人差や医院ごとに差がありますが、保険適用で3割負担の場合は上記金額程度だと思っていただけるとよいでしょう。

Q48 親知らずは必ず生えてくるんですか?
A48

親知らずとは、智歯とも呼ばれ、歯の一番奥に生えてくる永久歯の事で、およそ20才前後で生えてきます。しかし、それには個人差があります。30才前後で生えてくる人も少なくありません。もともと親知らずの無い人(先天性欠損といい、発育段階から形成されずに歯が存在しないこと)、4本が揃っていない人もいます。

また、まっすぐに生えず、斜めに生えてしまったり、横向きで埋状したままになっている方もいます。その場合はケアがしにくいなどの不便さが起こる事がありますので、抜かれる事をおすすめします

Q49 唾液の役割を教えて下さい。
A49

唾液は、食べる、飲む、話すといった人間にとって欠かすことのできない機能を営むうえで次のような重要な役割を果たしています。

1.抗菌作用

口は空気や食べ物などの入り口であり、常に外界の雑菌にさらされています。唾液には、細菌増殖を抑える「抗菌作用」があります。うまく作用しないと、むし歯歯周病にかかりやすくなるだけでなく、口からの細菌感染により、風邪を引きやすくなり、気管支炎肺炎を起こすこともあります。

2.消化作用

ごはんやパンなどのデンプン質を糖に変える「消化作用」もよく知られている唾液の効用です。唾液中に含まれるアミラーゼという酵素が、デンプンを分解して麦芽糖に変え、体内に吸収しやすくしてくれます。よく噛みしめて唾液で消化することは重要で、ここでの消化がすすまないと胃に負担がかかることにもつながります。

3.粘膜保護作用

唾液には「ムチン」というネバネバとしたタンパク質が含まれています。フランスパンやクッキーのような硬い物が接触しても傷がつかないように、口の粘膜をコートしていますムチンが少なくなると、口に傷がつきやすくなります。

4.食塊形成作用

水だけでは食べ物をまとめることができず、誤嚥してしまったご経験のある方もおられると思います。唾液の粘り気であるムチンがうまく働くと、食塊がまとまりやすく、気管のほうへ流れずに、食道の入り口に入り、嚥下がスムーズになります。唾液のムチンは、食塊形成、摂食・嚥下に重要な働きをしていて、少なくなると誤嚥の原因にもつながります。

5.中和作用

食後にゲップが出て、酸っぱい胃酸を感じたことはありませんか?胃の粘膜は強い胃酸に対しても安定で、食物の消化を行っていますが、口や食道の中は、もともと中性で酸に対しては強くありません。唾液は天然の胃薬のような作用があり、胃酸を中和することができます。また、むし歯の菌が産生する酸を中和することも知られています。唾液が少なくなったり、なんらかの原因で胃酸の逆流が起こると、食道や喉の粘膜を痛めたり、歯を溶かすこともあります。

6.修復作用

唾液には、傷を治す上皮成長因子(EGF)や、脳神経の老化を防止する神経成長因子(NGF)などが含まれていますが、これらは口の中だけでなく、体全体を守る意味でも重要な役割を果たしています。EGFは、上皮細胞の成長を促進させる働きがあり、1986年のノーベル賞で脚光を浴びたことで有名になり、最近ではアンチエイジングに効果があるということで、化粧品にも加えられています。動物が傷口をなめるのは、抗菌作用だけではなく、修復を促進させる働きも関連していると考えられています。また、NGFは、神経細胞の分化、維持に関与しています。海外ではアルツハイマー型認知症の治療へ応用する研究も進められています。

唾液が少なくなると、口の傷が治りにくくなり、神経の回復が遅くなることにもつながってきます。

 

ほかにも、お口を清潔に保ったり、味を感じさせたりする役割もになっています。このように、唾液は単なる水ではなく、身体の機能維持に重要な働きを有しています。

さらに最近では、全身の健康維持にも重要なことがわかってきました。

からだへの唾液の働き

  1. 感染症を予防する
  2. 食道の粘膜を保護する
  3. 胃の粘膜を保護する
  4. 消化を助ける

 

 

※参考書籍
 「ドライマウス 今日から改善・お口のかわき」
 阪井 丘芳 著  医歯薬出版株式会社

 「nico 2018.6 クインテッセンス出版株式会社」

Q50 お口の渇きがツライので、どうにかしたいんですが・・・。
A50

こんな症状はありませんか?

  1. 唾液が出ない
  2. お口のなかが焼けるように痛い
  3. お口のなかがネバネバ、ベタベタする
  4. コケが生えたように舌が白くなる
  5. 口臭が気になる
  6. お口の渇きで夜中に目が覚める
  7. 味がしない
  8. 話しにくい
  9. 飲み込みにくい(食事のときに飲み物が必要)
  10. 舌がひび割れやすく、口角炎を起こしやすい
  11. むし歯や歯周病になりやすい

 

もし該当する症状があった場合、それはドライマウス(口腔乾燥症)かもしれません。

ドライマウスの基本的な予防法

1.こまめに水分補給をする

唾液の元は水です。こまめに摂取しましょう。

2.よく噛んで食べる

よく噛むことで唾液の分泌が促されます。

3.こまめに歯みがきをする

歯みがきによる刺激でも唾液の分泌は促されます。

4.唾液腺をマッサージする

耳下腺、顎下腺、舌下腺などの大唾液腺をマッサージで刺激すると、唾液の分泌が促されます。

大唾液腺の場所

マッサージ方法の詳細はこちら

 

※参考書籍 「nico 2020.11 クインテッセンス出版株式会社」

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