歯・お口の状態について
Q421 | 歯周病に対する抵抗力について教えて下さい。 |
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A421 |
同じ歯周病菌がいるからといって、バイオフィルムの病原性は同じとは言えません。歯周病はバイオフィルムの病原性の変化で発症します。また、歯周組織の抵抗力の個人差も関係しています。つまり、バイオフィルムと歯周組織の間の共生関係が崩れると発症すると言われています。 天野敦雄, 岡賢二, 村上伸也(監修). ビジュアル 歯周病を科学する. 東京:クインテッセンス出版, 2012. ※参考書籍 |
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Q422 | 常在菌って何ですか? |
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A422 |
いくらキレイ好きな人でも、人体にはたくさんの細菌が住みついています。これらは常在菌と呼ばれていて、実に多くの種類の細菌が皮膚、口腔、消化管などに定着しています。身体に生息する常在菌集団の菌種は、場所によって大きく異なっています。また、個人間でも大きな差がみられ、各個人が固有の特徴をもっています。細菌といえば悪いというイメージが強いのですが、悪玉菌はほんの一握りにすぎません。常在菌は、ヒトにとってプラスでもマイナスでもない、あるいはプラスに働くものがほとんどです。 Pennisi E. Body’s Hardworking Microbes Get Some Overdue Respect. Science 2010 ; 330 : 1619. 人体の常在菌の数※参考書籍 |
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Q423 | マイクロビオームって何ですか? |
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A423 |
21世紀になって、常在微生物は予想以上にわれわれの健康を大きく左右していることがわかってきました。たとえば、腸内細菌叢は代謝性疾患、炎症性疾患、がんなど実にさまざまな病気の発症や進行に関係しています。ヒトの健康と全身の常在微生物との関係を研究するため、人体の常在微生物叢を、マイクロビオームと呼ぶことになりました。 このようにマイクロビオームはヒトと共生し相互利益を得ていますが、共生関係が破綻すると常在菌による感染症が発症します。 Pennisi E. Body’s Hardworking Microbes Get Some Overdue Respect. Science 2010 ; 330 : 1619. ※参考書籍 |
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Q424 | 歯周病は完治するのですか? |
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A424 |
歯周病は完治しません。 歯周治療によって歯周病菌の量が減ってくると、出血が止まったり、歯周ポケットが浅くなる、など歯周組織の状態は改善してきます。しかし、これは歯周病菌と歯周組織の共生関係が取り戻されただけであって、歯周病菌が口腔から完全に駆逐されたわけではありません。常在菌である歯周病菌は駆逐できません。生き残った歯周病菌は、バイオフィルムや歯周組織に潜伏し歯周病の再発を狙います。歯周病の原因を駆逐できないということは、歯周病には再発の危険がつきまとい、完治はないということです。 ※参考書籍 |
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Q425 | 歯周病は唾液で感染するの? |
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A425 |
虫歯菌は母親の唾液を介して子供に感染します。歯周病菌も唾液感染によってうつります。しかし、歯周病菌の感染経路は、はっきりとはわかっていません。歯周病菌が家族から感染したと推測されるケース(食べ物についた唾液を介した日常的な間接感染)は50%にも満たないと言われています。他に考えられる感染経路は、キスなどによる直接感染か、他人との食物を介した偶発的唾液感染が挙げられます。 歯周病感染予防の観点からは、自分の唾液の付いた箸(直箸)で皿に盛りつけられた料理を分け合う行為は好ましくありません。日本では直箸はマナー違反とされていますが、中国や韓国では取り箸の習慣がなく、むしろ友好の証とされ、格式の高い席でも直箸で取り分けられます。歯周病菌の感染経路がもっとはっきりすれば、効果的な予防法が考えられるようになると思います。 ※参考書籍 |
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Q426 | 歯周病はいつ発症するのですか? |
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A426 |
歯周病菌は常に発症のチャンスを狙っています。 18歳以降に歯周病マイクロビオームが完成しても、すぐには歯周病の症状は現われません(不顕性感染)。感染を受けた人(宿主)の年齢が若いせいもあって、長年にわたって歯周組織の健康な状態が続くことが多いと思います。しかし、歯周病菌は絶えず宿主の状態を観察しています(日和見)。口腔清掃不良や加齢などの理由で、歯周組織と歯周病マイクロビオームとの拮抗バランスが崩れ共生関係が破綻したとき、歯周病は発症します(日和見感染)。一方、生涯にわたって発症しない不顕性感染のままの人もいます。 Darveau RP. Periodontitis : a polymicrobial disruption of host homeostatis. Nat Rev Microbiol 2010; 8: 481-490. 歯周病になる人・ならない人※参考書籍 |
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Q427 | 消毒、殺菌、滅菌の定義を教えて下さい。 |
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A427 |
消毒ヒトに害のない程度まで細菌を殺すことです。 殺菌消毒よりも強い作用に用いられます。 滅菌すべての微生物を殺すことです。 おまけ除菌・抗菌という言葉も聞いたことがあると思います。これらは専門用語ではなく、どの程度まで病原菌を駆除できるかという曖昧な言葉です。 除菌と聞くと、菌を除去する、すべて駆逐する、というふうに聞こえますが、実際は消毒と除菌は同じ程度と思っていたほうがいいと思います。除菌よりも効果が高い場合は殺菌になります。除菌・消毒・殺菌、いずれにおいても、菌は生き残り、10分から数時間で2倍に増殖できるのが細菌です。90%の細菌を殺しても、1~10時間後には元に戻ってしまいます。 抗菌は細菌の増殖を阻害するという意味ですので、除菌よりも弱い効果です。抗菌スリッパには菌がいないのではなく、菌が繁殖しにくいというだけです。 ※参考書籍 |
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Q428 | 抗生物質はバイオフィルムに効果がありますか? |
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A428 |
バイオフィルムの中には、抗生物質や殺菌液もほとんど侵入できませんので、あまり効果を示しません。 しかし、アジスロマイシン(商品名:ジスロマック)はバイオフィルムへの浸透性が高い抗生物質で、歯周病菌に対する静菌作用があります(静菌:細菌増殖を抑えること。殺菌ではない)。アジスロマイシンの単独投与の効果は一時的ですが、歯周基本治療と併用するとバイオフィルム中の歯周病菌の量を減らす効果(除菌効果)があり、歯周状態は改善します。 アジスロマイシンには歯周病菌を死滅させる効果(滅菌効果)はありませんので、歯周病菌を駆逐することはできず、完治させることはできません。アジスロマイシンへの過度の依存には注意しましょう。 天野敦雄, 岡賢二, 村上伸也(監修). ビジュアル 歯周病を科学する. 東京:クインテッセンス出版, 2012. ※参考書籍 |
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Q429 | マウスリンスや含嗽剤(うがい薬)は使用したほうがいいですか? |
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A429 |
マウスリンスやうがい薬の効果には限界があります。まず、これらの消毒薬はバイオフィルムの内部深くには浸透できないので、バイオフィルムの一部の細菌にしか効果はありません。しかし、唾液中の浮遊細菌には50~90%の菌を殺す効力があると言われています(殺菌効果はメーカーやブランドによって異なります)。しかし残念なことに、浮遊細菌は30分~3時間で2倍に増殖します。30分で2倍に増殖する菌は90%の殺菌をされたとしても、2時間もしないうちに元の菌量に戻ってしまいます。ですから、マウスリンスやうがい薬には、あくまでも補助的な効力しかありません。 ※参考書籍 |
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Q430 | 抗生物質で歯周病は治せますか? |
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A430 |
抗生物質だけでは歯周病を治すことはできません。抗生物質の投与で休眠細菌以外への効果は期待できます。しかし、投与期間が終わると、休眠細菌が目を醒まし増殖して、いずれバイオフィルムは抗生物質投与前に戻ってしまいます。現代の科学ではバイオフィルム中の歯周病菌を駆逐(滅菌)することはできないのです。 ※参考書籍 |
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