歯・お口の状態について
Q411 | 歯周病菌が口の中にいると必ず歯周病を発症するのですか? |
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A411 |
細菌検査の検出感度が飛躍的に向上した結果、red complex(※後述参照)は予想されていたよりはるかに健康な、そして若い歯周組織に感染していることがわかりました。報告により大きくばらつきはありますが、15~40歳の健康な歯周組織からのred complexの検出率は20~50%程度です。近年の細菌検査法の精度の向上につれ、健康な歯周組織からのred complex検出率はさらに上昇しました。 この結果から、現在では、red complexは口腔常在菌と考えられるようになっています。歯周病菌が常在菌であるという事実には大きな意味があります。感染を受けていても発症しない人が少なからずいるということです。red complexは歯周病のリスクファクターですが、口腔内にred complexが定着しているからといって、必ずしも歯周病になるわけではないのです。実際、2010年に行われた中国人民解放軍・航空医学研究所の職員468人を対象とした調査では、歯周病患者の85.8%からP.gingivalisが検出されたが、62.2%の非歯周病患者からも検出されています。 T.forsythiaについては、歯周病患者の76.9%、非歯周病患者の77.3%から検出されています。「疾病の発症には特定病原体の感染が認められる」というコッホの条件を、歯周病は満たさないのです。細菌検査法の精度は今後さらに向上することが予想されます。もしかすると将来、「red complexは人類の大多数の口腔に定着している」という報告がなされるかもしれません。 ※red complexとは 多数の細菌種の共生集団(microbial complex)の中でも、もっとも歯周病原性が高い集団を「red complex」といいます。 PCR法などの最新の細菌検査法を用いた報告でも、おおむね重篤な歯周病ともっともよく関連して検出される細菌種がred complexで、菌種はP.gingivalis、T.forsythia、T.denticolaがあります。これら“要注意”3菌種は歯周細菌検査のターゲットとなっています。3菌種の中でもP.gingivalisがとくに歯周病原性が強いとされ、歯周治療後の歯周状態の改善と、歯肉縁下プラーク中のP.gingivalis菌数の大幅な減少には明らかな相関があることが報告されています。 一方、red complexの3菌種は、互いの病原性を高め合う性質をもち、細菌の代謝産物が他の細菌種の病原遺伝子の発現を促進し、相乗効果を発揮していると考えられています。しかし、そのメカニズムはいまだよくわかっていません。 ※参考書籍 |
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Q412 | いろいろな歯みがき剤がありますが、効果はあるのですか? |
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A412 | 現在、歯みがき剤のなかにはさまざまな効用をねらった成分が配合されています。 ※参考書籍 「ペリオバカ養成講座~学びの門戸を開くための100の質問~」 |
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Q413 | 口腔顔面痛の主な症状は、どのようなものでしょうか? |
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A413 | あんどう歯科口腔外科 安藤彰啓院長 コメント
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Q414 | 上顎洞口腔瘻の所見や症状にはどのようなものがありますか? |
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A414 | 症状は瘻孔の大きさによって異なります。抜歯直後は抜歯窩に局在する痛みが続きますが、後に炎症が落ち着いてくると、瘻孔は痛みを伴わなくなります。痛みが強い場合は、感染など他の要因が疑われます。抜歯窩が空洞になっているか、抜歯窩を通して上顎洞粘膜が口腔内に脱出している可能性があります。 最も特徴的な症状は、飲食時における口腔から鼻腔への液体の漏入や、鼻をかむ時の期待や液体の口腔への流入です。上顎洞内に侵入した唾液や食物、細菌が上顎洞炎を誘発し、症状は炎症の程度によって異なります。片側の鼻閉、膨満感、上顎骨の痛みや圧痛が典型的な症状です。 ※参考書籍 |
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Q415 | 40歳以上の日本人の半数以上が歯周炎って本当ですか? |
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A415 |
2001年、ギネスブックに「全世界でもっとも蔓延している病気は歯周病である。地球上を見渡してもこの病気に冒されていない人間は数えるほどしかいない」との記載がなされました。歯周病は人類史上最大の感染症であり、いまだに現代人を悩ますやっかいな病気です。日本においても成人の8割は歯周病と言われ、40歳以上の日本人の半数以上は歯周病に羅患しています。この歯周病との闘いに挑み、患者さんを救うことこそ21世紀の歯科医療関係者の責務であるといえます。
※参考書籍 |
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Q416 | 歯周病の主原因について教えて下さい。 |
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A416 | バイオフィルムと歯周組織の均衡関係が破綻する原因は、バイオフィルムの高病原性化と歯周組織の抵抗性の低下です。 バイオフィルムの高病原性化には、いくつかの理由があります。バイオフィルムに棲むさまざまな細菌たちはお互いに助け合ってバイオフィルムの病原性を高めているのです。(バイオフィルムが低病原性から高病原性へとシフトする変化を“microbial shift”と呼びます)。 一方、歯周組織の抵抗性の低下は、老化、喫煙、生活習慣、不十分なブラッシングなどにより起こります。特に、喫煙は歯周病の最大のリスク因子といわれています。 歯周病発症のきっかけバイオフィルムの病原性が高まり、歯周組織の抵抗性との均衡が崩れたとき、歯周病が発症します。この破綻にはバイオフィルム高病原性化を進める因子と、歯周組織の抵抗性を低下させる因子が影響しています。 ※参考書籍 |
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Q417 | 上の親知らずはいつでも抜けると言われて抜いたんですが、下の親知らずは朝一か、昼一番じゃないといけないと言われました。なぜですか? |
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A417 | 骨の構造上、上の歯は軽石みたいにスカスカです。なので、血液の流れがよく骨にたまることがありません。したがって、腫れも少なく、出血も少ないといわれています。 加藤 |
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Q418 | バイオフィルムの病原性を左右するものについて教えて下さい。 |
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A418 |
バイオフィルムの病原性は量より質で決まります。 Genco RJ, Mergenhagen SF(編), 浜田茂幸ほか(訳). 歯周病の科学. 東京:医歯薬出版, 1984. ※参考書籍 |
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Q419 | 歯周病の感染時期について教えて下さい。 |
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A419 | 歯周病菌の原因菌は、レッドコンプレックスです。P.gingivalis, Tannerella forsythia(T.forsythia), Treponema denticola(T.denticola)の3菌種があります。1) 歯周病菌は、思春期前後に感染します。T.forsythiaとT.denticolaは小中高生の頃に感染し、P.gingivalisは18歳以降に感染します。 1)Amano A. Periodontol 2000 52, 7-11, 2010. ※参考書籍 |
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Q420 | 歯周病は一歯単位で起こるんですか?口腔全体で起こるんですか? |
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A420 | 歯周病菌に部位特異性はありません。 高感度になった細菌DNA検査によって、歯周病菌の感染には、部位特異性はないことが示されました1)。歯周病菌は唾液によって、すべての歯の歯周組織に運ばれ定着します。 1)Amano A. Periodontol 2000 54, 9-14, 2010. ※参考書籍 |
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