歯・お口の状態について
Q11 | 睡眠時ブラキシズムは危険だと聞きました。そのままにしておくとどういうことが起きるのですか? |
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A11 | 睡眠時ブラキシズムは、様々な症状を引き起こす可能性があるため、注意が必要です。 睡眠時ブラキシズムが引き起こす可能性のある症状(文献1)より)
睡眠障害国際分類第3版2)によると、睡眠時ブラキシズムは『睡眠関連運動異常症』に分類され、「食いしばりや歯ぎしりあるいは下顎の強張りや突出しのような特徴のある反復性の顎筋活動」と定義されています。また、日本睡眠歯科学会では「顎口腔機能系に為害作用を及ぼす、睡眠中の持続的な、あるいはリズム性の咀嚼筋活動による顎運動(歯ぎしり、食いしばり等)」と定義されています3)。
ここで注意すべきは、睡眠時ブラキシズムは、睡眠中の生理学的咀嚼筋活動である律動性咀嚼活動(Rhythmic Masticatory Muscle Activity; RMMA)4,5,6)が基準値を超えた場合の診断名(病名)であり、現象(筋活動あるいは顎運動)一つひとつのことを指すものではないということです7)。そして、一般集団の約8%が睡眠時ブラキシズムに罹患しており、健常成人でさえ約60%がRMMAを行っていると報告されています4)。
1)中野雅徳、坂東永一:咬合学と歯科臨床-よく噛めて、噛み心地の良い咬合を目指して. 医歯薬出版, 東京, 2011. 2)American Academy of Sleep Medicine: ICSD-3 International Classification of Sleep Disorders 3rd ed. Diagnostic and Coding Manual. American Academy of Sleep Medicine, 2014. 3)猪子芳美 他:睡眠歯科の用語集 日本睡眠歯科用語検討ワーキンググループ. 睡眠口腔医学、5(1):12-15, 2018. 4)Lavigne GJ et al: Sleep Medicine for Dentists: A Practical Overview. Quintessence Publishing, 2009. 5)Lavigne GJ et al: Genesis of sleep bruxism: motor and autonomic-cardiac interactions. Arch Oral Biol, 52 (4): 381-384, 2007. 6)Rompré PH et al: Identification of a sleep bruxism subgroup with a higher risk of pain. J Dent Res, 86 (9): 837-842, 2007. 7)鈴木善貴:睡眠時ブラキシズムの基礎と最新の捉え方. 睡眠口腔医学, 3(1):10-21, 2016.
※参考書籍 |
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Q12 | 歯の正しい磨き方って、どんな磨き方ですか? |
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A12 | そもそも、歯垢を完全に除去することは物理的に不可能なことであり、また歯周病治療にはそこまで行う必要もないことなのです1)。なぜなら歯磨きの効果が上がっているかどうかは、歯周組織の健康状態とリンクさせて判断すべきものだからです1、 2)。その磨き方によって歯周組織の健康が維持されたり健康を回復したりしなければ、その刷掃は不適切だと考えるべきです1、 2)。 歯周炎の原因がプラーク(dental plaque)であることは、現在では定説になっていますが、プラークが存在するからといって、すべての人々のすべての歯周組織に歯周炎が生じるわけではないのです。これまでに発表された多くの論文は、プラークに対する感受性は各個人ごと各部位ごとに大きく異なることも示しています1)。 「正しい歯の磨き方」 で一番重要なことは磨き残しがないことではなく、歯周組織が健康になるかどうかや、健康が維持できるかどうかであり、「磨き残し」があるかどうかではありません。プラークコントロールの効果を評価するための唯一の意味ある基準は、歯周組織の健康状態なのです1、 2)。
歯周病を防ぐ歯磨き5か条
1)飯塚哲夫:歯周病はなぜ治らないのかどうすれば治るのか 愛育出版、東京、2017 2)飯塚哲夫:歯周療法の基礎 第5版 株式会社ストマ、埼玉、2018 p133 -162
※参考書籍 |
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Q13 | なぜむし歯になってしまうのですか? |
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A13 | 歯についたプラークや食べカスにむし歯の元となるミュータンス菌が住みつき、糖分を栄養として酸を出します。 歯は唾液に守られていて、ほんの少し溶けただけなら唾液が修復してくれます(再石灰化)が、酸が多くて修復が間に合わないと、むし歯になってしまいます。 酸による被害を少なくするためには、食習慣など注意すべきポイントはいくつかありますが、まずはむし歯菌を減らすこと。 虫歯菌を減らすと、むし歯になるリスクはぐっと減ります。つまり、唾液による修復が間に合う程度にお口の環境を維持できれば、むし歯の進行を止められるのです。 日本人の約90%以上がむし歯に罹患しているといわれ、軽く見られがちですが再石灰化が不可能なレベルに達したむし歯は自然のままでは元に戻りません。
むし歯発生のメカニズム19世紀以降、むし歯の病因についてさまざまな説が唱えられてきました。 例えば、化学説(食物からできた化学物質によりむし歯は発生する)、細菌説(むし歯の病巣に認められる細菌がエナメル質を侵し、続いて象牙質を崩壊させる)、タンパク質分解説(細菌がまず歯の有機成分を侵し、生じた酸が歯の無機質を脱灰してむし歯が発生する)などがあります。 これらは現在受け入れられているむし歯の病因論の基礎となる考えです。 そして、現在では「宿主、食餌、細菌、時間の4因子がすべて合わさることにより、むし歯は発生する」とされています。 それに対する対策は、次のようなものがあります。 1.細菌因子:プラークコントロールブラッシング指導、フロッシング指導、PMTC(Professional Mechanical Tooth Cleaning) 2.食餌因子:スクロースの摂取制限食事指導、間食指導 3.宿主因子:歯質の強化、むし歯を形成しやすい歯の形態の改善、唾液の分泌フッ化物の応用、予防填塞(シーラント)、口腔機能改善(あいうべ体操など) ※参考書籍 「nico 2009.2 クインテッセンス出版株式会社」 |
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Q14 | 睡眠時ブラキシズムにはボツリヌス菌を打つといいと聞きました。本当ですか? |
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A14 | 無毒化ボツリヌストキシン(BTX)はボツリヌス菌が産生する複合体の毒素で、末梢部の神経筋接合部等でアセチルコリンの放出を阻害する働きにより、筋弛緩および鎮痛作用をもっています。 近年、BTXを用いた研究が数多く実施されてきており、睡眠時ブラキシズムの治療として有効であると報告されています。 ただし、睡眠時ブラキシズムの頻度が減少しているわけではなく1)、BTXの副作用である咬筋の収縮力の減弱が報告されており2)、使用には十分な注意が必要です。 1)Kumar A et al: Bruxism- is botulinum toxin an effective treatment? Evid Based Dent, 19(2): 59, 2018. 2)Shim YJ et al: Effects of botulinum toxin on jaw motor events during sleep in sleep bruxism patients: a polysomnographic evaluation. J Clin Sleep Med, 10 (3): 291-298, 2014.
※参考書籍 |
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Q15 | むし歯は治る病気ですか? |
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A15 | むし歯の原因菌は常在菌なので、完治はありません。 むし歯治療とは、むし歯ができる環境にならないように口腔内を管理することです。管理不十分だと、むし歯は起こります。だから、むし歯に完治はないのです。
※参考書籍 |
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Q16 | 甘いものをたくさん食べているから、むし歯になるんですよね? |
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A16 | 「量」より「食べ方」が問題です。 甘いものを控えているはずなのに、むし歯になってしまう。それは甘いものの「食べ方」に問題があるのかもしれません。 飲食後、お口のなかでは、細菌の生み出す酸や飲食物の酸により歯の成分が溶け出し(脱灰)、その後、時間をかけて唾液が成分を歯に戻していきます(再石灰化)。溶かす力が戻す力を上回る状態が長期間続くと、むし歯になります。 このとき、甘いものの「量」以上に、食べる「頻度や時間」が問題となります。ひっきりなしに甘いものがお口のなかにあると、唾液が歯を修復する時間が取れません。ですから、のどあめを絶えず舐めていたり、ドリンクをチビチビ飲んでいたりすると、むし歯になりやすいのです。野菜ジュースやスポーツドリンクなど、ヘルシーなイメージのものにも意外に砂糖は入っていますのでご注意を。
※参考書籍 「nico 2020.5 クインテッセンス出版株式会社」 |
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Q17 | 歯みがきをしっかりやっていれば歯周病は大丈夫ですよね? |
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A17 | 歯ブラシだけでは落としきれない汚れがあります。 歯ぐきの溝のなかはプラーク(細菌のかたまり)がたまりやすい場所で、たまったプラークは歯周病の原因になります。そのため、この部分を歯ブラシで注意してみがいているかたも多いでしょう。 ですが、歯ブラシでは溝のなかのプラークは完全には取り切れません。しかも、無理に溝のなかにブラシの毛先を入れてみがくことを続けると、歯ぐきが傷つきやせ、むし歯になりやすい歯の根面が露出してしまいます。 歯ぐきを傷つけずにきれいにプラークを取り除くみがきかたを、歯科医院で教えてもらいましょう。歯ぐきの深い溝や歯周ポケットのなかの掃除も歯科医院におまかせください。 歯と歯のあいだをデンタルフロスや歯間ブラシでみがくことと、むし歯予防のためにフッ素入り歯みがき剤を使うこともお忘れなく。
※参考書籍 「nico 2020.5 クインテッセンス出版株式会社」 |
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Q18 | 毎日歯磨きをしていても、どうしてむし歯になるのでしょうか? |
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A18 | 毎日の歯磨きはむし歯予防にはとても良いのですが、残念なことにどんなに丁寧に磨いても、むし歯や歯周病の原因であるプラーク(歯垢)は全て取り除く事はできません。 毎食後きちんと歯磨きをしているつもりでも、奥歯の溝、歯と歯の間には歯垢が溜まり、除去しきれないところからむし歯の原因になってしまいます。 毎日の歯磨きに加え、歯科医院で専門的なクリーニングを受け、お口の衛生管理をしっかり行っていくことが大切です。 |
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Q19 | ブラッシングは食後30分後が歯に優しい、ブラッシング後は口をすすがなくてもいいと聞きました。本当ですか? |
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A19 | 「食後すぐ」が正しいブラッシングです。 むし歯予防のブラッシングの目的は、酸を産生する細菌のエサとなる発酵性糖質を取り除くとともに、プラークを取り除いて、酸を出させないようにすることです1)。 以前は食後すぐにブラッシングをするとエナメル質を傷つけるという話もありましたが、「酸性飲食物摂取直後に歯を磨いた場合」と「10~240分の間隔をあけて歯を磨いた場合」の間に摩耗の程度に有意な差はみられなかったという論文があります2)。つまり、酸性飲食物を摂った後であっても、ブラッシングを待つことによる歯質摩耗予防のメリットはないのです。
また、フッ化物入りの歯磨剤を使った後はすすがないほうがいいでしょう。 歯磨剤に含まれたフッ化物の効果を最大限に発揮させるため、歯面のフッ化物が流れ落ちないように、スウェーデンのイエテボリ大学ではブラッシング後のすすぎは行わないことを推奨しています。ブラッシング後は歯磨き剤の泡を吐き出すだけで、水ですすがない、日本でもその方法がよいとされています。すすがないと気持ちが悪いという人には、少量の水で1回だけのすすぎを日本歯科医師会は勧めています3)。
1)公益社団法人日本小児歯科学会. 食後の歯みがきについて. https://www.jspd.or.jp/recommendation/article09/ (2023年4月9日アクセス) 2) Hong DW, et al. Does delayed toothbrushing after the consumption of erosive foodstuffs or beverages decrease erosive tooth wear? A systematic review and meta-analysis. Clin Oral Investig. 2020 Dec;24(12):4169-4183. 3)日本歯科医師会. 歯とお口のことならなんでもわかるテーマパーク8020. 歯磨き後のうがいは1回?https://www.jda.or.jp/park/knowledge/index40.html (2023年4月9日アクセス)
※参考書籍 |
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Q20 | 遺伝的にむし歯になりやすい人はいますか? |
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A20 | 唾液中の細胞片に含まれるゲノム遺伝子の多型解析によって、むし歯のリスクに関与する遺伝子が多数報告されています。まだ現状では遺伝子診断は行われていませんが、遺伝的な影響を受ける因子も含めたむし歯のリスクの評価が実用化されています。
※参考書籍 |
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