フッ素
Q1 | ブラッシング時の歯磨き粉はあまりつけなくていいという先生、たくさんつけたほうがいいという先生がいます。歯磨き粉の量はどうしたらいいのでしょうか? |
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A1 | むし歯に関わる4学会(*)が、2023年1月に新しい「フッ化物配合歯磨剤の推奨される利用方法」を発表しました。 *)一般社団法人 日本口腔衛生学会、公益社団法人 日本小児歯科学会、特定非営利活動法人 日本歯科保存学会、一般社団法人 日本老年歯科医学会 4学会はフッ化物配合歯磨剤について対象年齢を、①歯が生えてから2歳、②3~5歳、③6歳~成人・高齢者の3段階に分けて、それぞれ歯磨剤のフッ素濃度、使用量および使用方法を公表しました。 これまで小中学生(6~14歳)について、フッ素として1000ppmFのNaF配合歯磨剤(1cm程度)を推奨していたのを改め、6歳以上成人・高齢者を一括りに1500ppmF歯磨剤(1.5~2cm程度)を推奨としました。6歳未満についても、1000ppmFが推奨されることとなりました。(詳細は下記参照) このように、「用法×用量×歯磨剤」を考えることが大切です。 4学会合同のフッ化物配合歯磨剤の推奨される利用方法(2023年)①歯が生えてから2歳【1000ppmF 2回/1日】 米粒程度(1~2mm)
②3~5歳【1000ppmF 2回/1日】 グリーンピース程度(5mm程度)
③6歳以上【1450ppmF 2回/1日】 ブラシ全体(15~20mm程度)
(参考)EAPD(ヨーロッパ小児歯科学会)の推奨(2019年)
(*)個別リスクにより1000ppmF以上
※参考書籍 |
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Q2 | フッ化物について知りたいんですが・・・。 |
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A2 | フッ素は反応性の高い元素で、自然界では基本的に単体で存在することはなく、他の元素と結合してフッ化物として存在します。私たちが日常で摂取している飲食物(お茶、海藻、魚や野菜など)にも、フッ化物は多く含まれています。 世界中でむし歯のコントロールに多大な貢献をしているフッ化物ですが、歯科の歴史においては、歯のフッ素症(斑状歯)の原因として登場しました。山の岩石にはフッ化物が多く含まれ、それが溶け出た川の水を飲んでいた子供たちの萌出歯に、褐色の斑点が見つかったのです。しかし、その子供たちを調べてみると、むし歯の発生が少ないことがわかりました。 そのため、しばらくはフッ化物を体内に摂取することがカリエスコントロールにつながると考えられ、塩、小麦粉、錠剤や水道水などでのフッ化物摂取が推奨されました。現在は、フッ化物を配合した歯磨剤などを使用することにより、常にフッ化物が口腔内に存在することがカリエスコントロールに重要であり、体内に摂取する必要はないことが明らかになっています。 それどころか、体内で永久歯が形成される幼児期にフッ化物を過剰摂取すると歯のフッ素症を引き起こし、歯の結晶がもろくなってしまいます。またフッ化物は塩と同様、過剰摂取すると急性中毒を起こしますので、注意が必要です。 フッ化物に対する正しい知識を得て、カリエスコントロールに有効活用しましょう。
※参考書籍 |
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Q3 | フッ化物の働きを教えてください。 |
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A3 | フッ化物には、う蝕(むし歯)を防ぐ4つの働きがあります1)。 1.再石灰化の促進脱灰されたハイドロキシアパタイトにフッ化物が作用すると、再石灰化が促進されます。 脱灰した時にF–が存在すると、不足するOH–の代わりとなり、歯面にミネラルが戻りやすくなるため、再石灰化を促進します。 2.脱灰の抑制酸による脱灰の際にフッ化物が低濃度(0.05ppmF以上2))で存在すると、ハイドロキシアパタイトの結晶にフッ化物がゆるく吸着して溶解しにくい構造となり、脱灰を抑制します3), 4)。 3.結晶性の改善再石灰化の際、フッ化物は部分的に溶解したハイドロキシアパタイトに優先的に吸着し、カルシウムイオンを引き寄せることで、耐酸性のある結晶を構成します。 4.細菌の代謝阻害フッ化物は、細菌が糖を代謝して酸を作る過程で用いる酵素反応を阻害したり、細菌が細胞内から酸を排泄する働きを阻害します5), 6)。 1) Buzalaf MAR, Pessan JP, Honório HM, Ten Cate JM. Mechanisms of action of fluoride for caries control. Monogr Oral Sci. 2011; 22: 97-114. 2) Margolis HC, Moreno EC, Murphy BJ. Effect of low levels of fluoride in solution on enamel demineralization in vitro. J Dent Res. 1986; 65(1): 23-29. 3) Buzalaf MAR(ed). Fluoride and the oral environment. Monogr Oral Sci. 2011; Vol. 22. 4) Arends J, Christoffersen J. Nature and role of loosely bound fluoride in dental caries. J Dent Res. 1990; 69(Spec): 601-605; discussion 634-636. 5) Koo H. Strategies to enhance the biological effects of fluoride on dental biofilms. Adv Dent Res. 2008; 20(1): 17-21. 6) Hamilton IR, Bowden GH. Response of freshly isolated strains of Streptococcus mutans and Streptococcus mitior to change in pH in the presence and absence of fluoride during growth in continuous culture. Infect Immun. 1982; 36(1): 255-262.
※参考書籍 |
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Q4 | フッ化物利用はがんを誘発しますか?また、骨肉腫が発病しやすくなりますか? |
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A4 | 1945年、米国グランドラピッズ市で水道水フロリデーションが開始されて以降、動物実験や人を対象とした疫学調査が多く報告されましたが、フッ化物応用が発がん性のリスクを高めるという結論は認められていません。世界の多くの国の保健専門機関と団体が科学論文を広範囲に再評価しても、適正なフッ化物応用とがん発生との間に全く関係がない、また骨肉腫との間に明瞭な関連を認めていないと結論づけています。 ※参考書籍 |
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Q5 | むし歯の予防法を教えてください。 |
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A5 | むし歯予防には、正しい歯磨きとフッ素洗口(フッ化物洗口)! 1.歯みがきフッ素入りの歯みがき剤(歯みがき粉)を使って歯みがきをしてください。 A)歯科用歯ブラシの半分の長さに歯みがき剤をのせる。※どのくらいのせるかは歯みがき剤のチューブの出口の大きさで変わりますので、小さい出口のものの場合は、歯ブラシのヘッドの長さと同じくらいの量を目安にしてください。(約0.5gと言われています) B)口腔内をしっかりブラッシングC)ブラッシング後、軽く吐き出し、洗口は1回だけ<洗口方法> a.ブラッシング後、歯みがき剤を吐き出します。 2.フッ素洗口フッ素洗口とは、フッ化物水溶液を用いてブクブクうがいをすることで、歯のエナメル質表面にフッ化物を作用させて、むし歯を予防する方法です。歯を磨いた後にフッ素洗口をすることで、より効果的にむし歯を予防できます。 A)フッ素洗口液のう蝕予防効果フッ素洗口液のう蝕予防効果は、フッ素配合歯磨剤と比較して高いと言われています。例えば、小学校において6年間実施した場合、30~50%のう蝕予防効果が得られ、その効果は中学3年生、あるいは20歳まで持続することが確認されています。保育園/幼稚園(4歳)から中学校(14歳)まで継続実施した場合、効果はさらに高く、70~80%のう蝕抑制率が得られることが確認されています1)。 この理由として、 ・フッ素洗口剤 フッ素物濃度 225~900ppmF ・フッ素配合歯磨剤 フッ素物濃度 1,000ppmF ※出典 B)家庭応用と集団応用このフッ素洗口は、どのくらいの頻度で行われているのでしょうか。フッ化物洗口には、毎日法と週1回法があります。毎日法では通常フッ素濃度225~450ppmFの洗口液を使用します。この方法は、家庭で個人が実施する「家庭応用」に適した方法で、毎日の歯磨き習慣と組み合わせることで、フッ素洗口の習慣化を図ることができます。一方、週1回法では、フッ素濃度900ppmFの洗口液を使用します。この方法は、小中学校などの集団で実施する「集団応用」に適した方法です。 このように二つの洗口方法がある「フッ素洗口」ですが、その実施状況について調べてみました。学校などで実施されている「集団応用」の実施状況は、直近10年間で急激に実施人数が増えています2)。 集団応用の特長は、 一方、「家庭応用」とは、歯科医師の指導に基づいて、家庭で洗口する方法ですが、その特長は、歯科医師による、患者さん個人の口腔リスクに合わせた、きめ細やかな指導が可能であるということです。例えば、その患者さんにあったフッ素濃度や洗口量、洗口方法、洗口する時間帯、他の予防法との組み合わせなどの指導が可能です。そこで、使用される洗口液は、市販されている粉末を水に溶かして作ることが主流です。今後、患者さん個人個人の口腔状態に合わせたオーダーメイドの医療が伸展することを考えると、家庭におけるフッ素洗口の普及の可能性は非常に高いと考えています。お母さんのむし歯予防に関する関心も、昔と比べると格段に上がっており、家庭での普及拡大の大きな要因になると考えられます。 C)翌朝起床時の唾液中のフッ素濃度の測定データ洗口後にどれくらいフッ素が口腔内の残るかについて神奈川歯科大学の荒川先生らが行った実験データ3)があります。 ・実験方法 ・結果 ※参考文献 |
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Q6 | フッ素が歯にいいと聞きました。いつから始めればいいですか? |
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A6 |
乳歯でも永久歯でも生えて間もない時はフッ素の効果は高く、歯質を強化します。できるだけ早い時期から始めましょう。 河口 |
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Q7 | フッ素がむし歯予防に大切だということはわかるのですが、どのように使っていけばいいですか? |
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A7 |
フッ素物配合歯磨剤の成人の使用法の「イエリボリ法」では、次のように言われています。 ・歯ブラシに2cmの歯磨剤をつける ・歯磨剤を歯面全体に広げる ・2分間歯を磨く ・歯磨剤による泡立ちを保つ(途中で吐出しない) ・終了後歯磨き剤を吐出せず10mlの水を含む ・30秒間洗口し、吐出する ・最低2時間は飲食しない
日本人向けの効果的なフッ化物配合歯磨剤の使用方法は次のように推奨されています。 1回の使用量成人で0.5g以上、6歳未満時は0.25gとし、年齢に応じて適宜増減
使用後の洗口約15mlによる約5秒間の洗口を1回
使用回数と時期1日2回以上、朝食後と就寝前は必ず
その他・ブラッシング中の途中吐き出しはできるだけ少なめに ・使用直後(使用後2時間を目安)の飲食や洗口を避ける ・継続使用する (フッ化物濃度は1000ppm近く、6歳未満児は500ppmでもよい)
また、ブラッシング時に歯磨剤を用いたくない、あるいはブラッシング後に十分洗口して、汚れを口腔外に排出したいという方のためには、ダブルブラッシング法というものがあります。 ファーストブラッシング1回目のブラッシングでは歯磨剤をつけない、あるいはつけて(フッ化物無配合歯磨剤でも可)ブラッシングして十分に洗口する。
セカンドブラッシング歯ブラシにフッ化物配合歯磨剤(できればジェルかフォームのように分散性の高い剤型のもの)をつけて歯面に適用(歯面に延伸する)し、15mlによる約5秒間の洗口を1回行う。
※参考書籍 「日本歯科医師会雑誌 2017 vol.69 No.10」 |
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Q8 | 歯みがきのあと、口のなかからフッ素が流れてなくなっちゃうと思うのですが、どうやったら口のなかに残りやすいですか? |
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A8 |
たしかに、歯みがき剤のフッ素がなるべく口のなかに残ったほうが再石灰化の効果は上がりやすいです。ちょっとした工夫をお教えしましょう。
※参考書籍 「nico 2015.6 クインテッセンス出版株式会社」 |
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Q9 | 私はむし歯のできやすいたちですが、フッ素で予防できるのでしょうか? |
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A9 | 歯みがき剤を毎日使うのはもちろん、ほかにもフッ素の利用法がありますので、フッ素ジェル、フッ素洗口、フッ素塗布などいくつかの方法を組み合わせ、リスクに合わせて予防していきましょう。 ※参考書籍 「nico 2015.6 クインテッセンス出版株式会社」 |
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Q10 | フッ素の働きを教えてください。 |
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A10 | フッ素には大きく分けて3つの働きがあります。 1.唾液のなかに溶け出しているカルシウムイオンやリン酸イオンが結晶化しやすくなり、 ※参考書籍 「nico 2007.2 クインテッセンス出版株式会社」 |
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