歯ぎしり
Q31 | ブラキシズムはどのくらいの力がかかるのですか? |
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A31 |
歯ぎしり・食いしばりの力は、平時の噛む力に対して約6倍になります。 |
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Q32 | 歯がなくなると身体運動に何か影響がありますか? |
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A32 |
人の身体運動の中で、動きを停止するなど関節を固定したい時に、筋は等尺性の筋活動(筋力=負荷の状態)を行います。このようなとき、歯を噛みしめることによって顎の関節は固定され、この固定感が等尺性の筋活動を行いやすくさせます。 上腕二頭筋(屈筋)を例にした図
①短縮性筋活動(concentric muscle action)筋の発揮する力>外部の力 筋長が短縮する ②等尺性筋活動(isometric muscle action)筋の発揮する力=外部の力 筋長には変化が生じない ③伸張性筋活動(eccentric muscle action)筋の発揮する力<外部の力 筋長が伸ばされる
もし、歯が全部なくなると、足を踏んばる、重いものを持ち上げるなど、ゆっくりとした力発揮に悪影響がでます。また、片顎の歯列が失われた場合には、左右の平衡感覚が低下します。しかしながら、このような影響はすべての人に現れるわけではありません。というのは、等尺性筋力発揮時に噛みしめのかわりに、顎を前方位や開口位で固定する人が1/3ほどいるためです。
※参考書籍 |
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Q33 | 噛みしめると力が出るというのは本当ですか? |
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A33 |
噛みしめは静的筋力を増強し、動的筋力を低下させます。 噛みしめの筋生理学的本態は筋の共縮であるため、ウェイトリフティングの初動や綱引きのパワーホールドなどスポーツ動作において身体を固める(一定の姿勢を強く保持する)場合などの、静的筋力を発揮する時には有用です。
しかしながら、それ以外のスポーツ動作では、 1.拮抗筋を収縮させて競技スピードの低下を招く2.呼吸リズムを乱してスキルを落とす3.筋の弛緩を妨げ過緊張を誘発するなど、動的筋力の発揮にはマイナスの影響を及ぼします。
日本歯科医師会の広報誌のインタビュー記事の中で、世界陸上大会やオリンピックで金メダルをとったハンマー投げの室伏広治選手は「渾身の投げの基本は歯をくいしばらないこと」と言っています。
また、強い噛みしめは体幹の筋肉を緊張させて関節を固定するため、身体の柔軟性を低下させるということもわかっています。
他にも、噛みしめは高齢者や女性では役に立つこともあります。 詳しくはこちらのQ&Aを参照して下さい。
※参考書籍 |
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Q34 | 歯ぎしりってやってはいけないの? |
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A34 |
歯ぎしりや食いしばりはストレス回避の一環として必要な反応であることが解明されています。 |
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Q35 | 歯ぎしりによるストレスで影響をうけるものはどんなものがあるの? |
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A35 |
1. 顎関節 ※参考書籍 |
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Q36 | 舌に痕がついているのですが、これは何でしょうか? |
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A36 |
歯ぎしりや食いしばりにより、舌を歯の内側に強く押し当てている可能性があります。 河口 |
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Q37 | マウスガードは何のために必要なのでしょうか? |
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A37 | マウスガード装着には様々な効果があります。 1.スポーツ外傷の軽減・予防日本スポーツ歯科医学会の研究から、マウスガードの装着はスポーツ時の口腔外傷の発生を抑制できることが明らかになっています。スポーツ時のマウスガード装着が選手の安全と健康維持に有効となることを知っておきましょう。 (安井利一ほか:マウスガードの外傷予防効果に関する大規模調査について-中間報告. スポーツ歯学, 17(1):9-13, 2013.) 2.強い噛みしめによる咬耗の予防スポーツ選手は、競技中に歯を強く噛みしめている場合があり、歯に著しい咬耗を誘発して徐々に下顎位が側方へ偏位していくことがあります。そのまま放置していると、臼歯が破折し抜歯することになったり、顎口腔系筋群や顎関節に障害をもたらしたりすることがあります。マウスガードの装着により、強い噛みしめによる歯の咬耗を防止し、下顎位や歯の損傷を予防することができます。 3.相手選手に対する傷害の防止コンタクトスポーツの競技時には、相手選手との接触で自身の前歯が相手選手の顔面や眼球、頭部などを損傷する場合があります。マウスガードを装着することによって、自身の前歯が適度な粘弾性を備えた材料で被覆されていれば、相手選手に傷害を負わせることを予防・軽減することができます。相手選手の安全を保つためにも、マウスガードを装着するように心がけましょう。 4.衝撃吸収と分散マウスガード材料が持つ粘弾性は、加わった外力の衝撃を吸収することができます。また、マウスガードは歯列全体を被覆しているので、衝撃力を局所的に集中させることなく分散する効果も発揮し、傷害を効果的に防止・軽減できます。 スポーツ時の接触により生じる衝撃力を吸収と分散により緩和し、歯冠部の破折、歯根部・歯槽骨の破折、歯の脱臼、下顎骨骨折、脳震盪、頸椎損傷などを予防・軽減できる可能性があります。ただし、過大な衝撃力が加わると傷害を予防しきれないことも認識しておきましょう。 5.顎関節の保護スポーツ時の接触により下顎へ加わった衝撃力が顆頭を介して顎関節に伝搬され、下顎頭頸部骨折や顎関節円板転位、外側靭帯損傷などの顎関節障害が生じる場合があります。これらの障害を防止・軽減する効果があり、二次的な問題となる咬合異常の発生も予防することができます。 6.顎位の安定マウスガードを装着すると噛みしめ時の顎位が安定し、頭や首、腰の位置を適正に保ち、身体バランスを良好に維持することができます。ただし、マウスガードに付与した咬合調整が不適切で安定していない場合は、顎位も不安定となってしまい、身体バランスが不良になるだけでなく、相手選手との接触時に衝撃力の吸収や分散機能が発揮されず、かえって局所的に力が集中して傷害を予防できないことがあります。このようなこともあることから、市販品のマウスガードではなく、咬合関係を適正に調整することができるカスタムメイドのマウスガードを使いましょう。 7.脳震盪の予防・軽減マウスガードを装着することで下顎に加わった衝撃力を緩和して頭蓋・脳へ伝達することができ、脳震盪の予防、脳への障害を軽減する可能性があることが研究によって示唆されています。 Hickey JC, et al : The relation of mouth protectors to cranial pressure and deformation. J Am Dent Assoc, 74(4) : 735-740, 1967. 武田友孝:マウスガードの装着ならびに咬合状態の相違が顎顔面頭蓋の安全性に及ぼす影響. 歯科学報, 103(9):705-713, 2003. 住吉周平ほか:マウスガードのスポーツ外傷予防効果―オトガイ部打撲を想定した有限要素解析. 日口外誌, 42(12):1192-1199, 1996 . 8.心理的効果他の選手との接触で本人が傷害を負ったり、他の選手に傷害を負わせてしまったりというような不安や恐れを、マウスガードの装着によって大幅に軽減することができます。このことから、リラックスした状態で安心して競技プレーに専念でき、集中力と積極性が増して伸び伸びプレーすることができます。選手本来の実力を発揮できるという心理的効果も期待できます。 9.スポーツパフォーマンス身体のバランスが良好に維持され、その結果、選手本来のスポーツパフォーマンスを安全に発揮することができます。 10.経済的効果マウスガードの装着で外傷を予防できれば、疼痛などの苦痛や治療期間の審美障害、治療のための時間的損失などを免れられるだけでなく、治療費もかからず、経済的効果も大変高くなります。 ※参考書籍 |
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Q38 | マウスピースは上顎・下顎、どちらに装着するか基準はありますか? |
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A38 |
通常上顎です。
※参考書籍 |
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Q39 | 顎関節症治療のマウスピースを装着しても痛みがなくならないのですが・・・。 |
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A39 |
マウスピースにも症状によって様々なタイプのスプリントがあります。ただ、噛み合わないようにするのがスプリントではありません。症状にあったスプリントを装着し、痛みがやわらいだところで、原因を診断し、治療することをおすすめします。
※参考書籍 |
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Q40 | 22歳の女性です。先日歯科口腔外科を受診して、顎関節症と診断されました。でもそのお医者さんは、完治することはない、一生マウスピースを装着しなければならないと言っていました。治療に時間はかかってもいいので完治させたいです。一生マウスピース生活は嫌です。 |
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A40 |
マウスピースで上下の歯を接触させないようにすると症状はとれますが、根本的な噛み合わせの原因は解決できていません。一生マウスピース生活ではなくても、きちんと診査診断をして原因を見つければ解決できるので大丈夫ですよ。
※参考書籍 |
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