Question

睡眠中のブラキシズムはなぜ起こるのですか?ストレスのせいなのでしょうか?

Answer

睡眠時ブラキシズム(SB)が起きる原因については、中枢性、咬合性またはそれらの混合した因子だと言われていますが、残念ながらまだ解明されていません。ストレス発散のために睡眠時ブラキシズムを行っているという見解もありますが、証明はされていません。

ただ、どんなときにブラキシズムが起こるかはすでに明らかになっています。眠りが浅くなるとブラキシズムがおきるのです。

臨床観察からの考察

ブラキシズム評価用オクルーザルスプリントを使用した臨床で観察を実施した報告があります。

「2週間ごとに使用したスプリントの咬合面に形成されたファセット(咬耗)を観察してみると、ファセットが強いタイプの人はいつもファセットが強く形成され、中程度の人はいつも中程度に、弱いタイプの人は弱く発現していました。

つまり、ファセットの強いタイプの人は、ストレスからの開放の有無に関わらずファセットが強く発現し、弱いタイプの人はストレスを受けても、多少の変化が見られますが、弱いままであるということです。

以上から、睡眠時ブラキシズムの原因はストレスではないと考えることができます。」

文献からの考察

咬合性因子が睡眠時ブラキシズムの原因であることについての論文がありますが、否定的な意見が多くを占めている一方で、研究者の間でも一致した見解は見られていません。

「0.5~1.0mmの高い冠を人工的に作って被験者に装着させ、歯ぎしりが起こるかどうかの実験が行った。この実験では睡眠時ブラキシズムは起こらず、この結果から、睡眠時ブラキシズムの原因は咬合性因子ではなく、中枢性因子であると考えられる。」

Rugh JD, Solberg WK: Electromyographic studies of bruxist behavior before and during treatment.
J Cam State Dent. Assoc. 3: 56-59, 1975.

 

「歯をわずか0.1mm高くして咬合の不調和を作り出す実験を行った。咬合のわずかな不調和によって歯ぎしりが起こっている。噛み合わせのわずかな不調和が上位中枢に興奮を惹起させ、睡眠時ブラキシズムを起こすと考えられる。」

武田悦考:ヒトの睡眠中のBruxismに関する臨床的研究-実験的咬合干渉付与前, 除去後における筋電図, 脳電図, 眼球運動図, 心電図, 呼吸曲線, 精神内分泌の反応, ならびに臨床所見の経日的比較検討-. 歯学. 71 (2): 276-337, 1983.

 睡眠時ブラキシズムにおける咬合性因子の影響

「睡眠時ブラキシズムにおいて、咬合性因子が影響を及ぼしているかどうかを検討するために、睡眠時ブラキシズムの評価が安定している人に、咬合の不調和を与えるようにスプリント上に早期接触を作り、そのスプリントを2週間使用してもらった。咬合の不調和を与える前の評価と比較して、咬合の不調和の睡眠時ブラキシズムへの影響を調査した。

睡眠時ブラキシズムのファセット変化

被験者85人のうち50.6%が咬合の不調和によって睡眠時ブラキシズムが増加し、44.7%の人が変化せず、4.7%の人は減少した。睡眠時ブラキシズムの原因はわからないが、咬合性因子への影響のある人は55.3%(50.6%+4.7%)であるので、この人たちは咬合性因子が睡眠時ブラキシズムの影響があるのではないかと考えられる。」

菅原哲夫, 池田雅彦, 加藤 熈: 夜間のブラキシズムに与える咬合性因子と中枢性因子の役割に関する研究. 日歯保存誌, 43: 1220-1227, 2000.

 

※参考書籍
 「nico 2014.3 クインテッセンス出版株式会社」

 「月刊 ブラキシズムは治る!1,600症例から見えたこと」
 池田 雅彦 著  デンタルダイヤモンド社

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