Question
なぜ保定治療が必要なの?
Answer
次のような報告があります。
「全症例の2/3は前歯部に叢生を認めた。重度の叢生を呈した症例では、治療前よりも叢生量が減少していたが、軽度の叢生を呈した症例では、治療前よりも叢生量が増加していた。」
下顎前歯部の排列における安定性と後戻り―エッジワイズ装置による第一小臼歯抜歯症例 Am J Orthod 1981;80(4):349-365.
そのため、矯正装置をはずしたあとはリテーナーを使って保定治療をします。歯の移動後には当分の間、歯の支持組織の変化が依然として続いている状態です。
おとなのかたの治療ではとくに治療前の歯並びや噛み合わせによる癖が強固に定着していることが多いので、保定を行わず歯が自由な状態に置かれると、せっかくきれいに並んだ歯が以前の位置に向かって後戻りしたり、思わぬ方向に移動したりすることがあります。
歯の移動が目的通りに完了したとしても、それで矯正治療が終わったわけではないのです。その傾向は切歯、特に下顎切歯で最も著しいといわれています。叢生矯正後の下顎切歯は、たとえ適切な保定を行っても矯正後の安定を得ることはなかなかむずかしいもので、成功裡に矯正を行った症例でも20%に顕著な後戻りが見られるといいます。
装置をはずしたあとの保定治療は通常1年半ほどで、きれいな口もとを維持していただくために、たいへん大切な治療期間です。リテーナーの使用を忘れないようにしましょう。保定治療の終了後は、半年~1年に一度の定期的メインテナンスを受けましょう。
歯並びや噛み合わせだけでなく、むし歯、歯周病の有無、そしてフィックスリテーナーの管理など、お口の状態のチェックを定期的に受けておくと安心です。また、きれいになった歯の健康を守るため、プロフェッショナルクリーニングもおすすめです。
きれいで快適になったお口を、ぜひ長く維持していきましょう。
※参考書籍
「nico 2010.2 クインテッセンス出版株式会社」
「矯正歯科の基礎知識」 飯塚 哲夫 著 愛育社
「矯正歯科のための重要16キーワードベスト320論文」
監修 小野 卓史/小海 暁
クインテッセンス出版株式会社