Question
根っこが割れていると言われました。痛みもないし、抜くしかないと言われましたが、本当に抜かないといけないのでしょうか?そもそもホントに破折しているんですか?
Answer
垂直歯根破折は抜歯原因の第3位で、歯周病やむし歯が減少しているのに対して垂直歯根破折は増加傾向がみられています。これは歯根破折の原因が多様で、歯周病やむし歯と比較して予防が難しいためだと思われます。歯根が垂直に破折すると抜歯を選択される場合が多いです。
垂直歯根破折は歯頚部から破折が始まり根尖側に伸展していく症例と、根尖から破折していく症例が約半分ずつで、歯根中央部から破折が始まる症例は1%程度と報告されています1)。
破折が始まる部位が歯冠側であろうが根尖側であろうが、歯頚部から根尖部まで破折して時間が経過してしまえば同様の病態を示すことになります。
破折を見つける方法は、3つあります。
1つ目は、プロービングです。プロービングとは、プローブという器具を歯周ポケットに差し込み、その深さを検査することです。
スポーツや事故など大きな衝撃で歯根が破折した場合を除き、多くは疲労性に破折すると考えられます。初期には自発痛や腫脹は少なく、軽度咬合痛や根尖部の違和感に始まり、時間の経過とともに炎症が拡大し、歯周ポケットが深くなって歯根が分離していく症例が多いです。垂直歯根破折は限局的に1カ所のみ歯周ポケットが深くなり、他は正常であることが大きな特徴です。
2つ目は、歯肉を圧排しても歯根がみえない場合や、根尖からの破折を疑った場合には、破折線を確認するために歯肉弁を剥離して歯根を露出させるか、補綴物と根管充填材を除去して根管壁を観察することになります2)。
そして3つ目は、エックス線写真です。エックス線写真には、デンタルエックス線写真とCTがあります。
デンタルエックス線写真で破折線がみえるのは、破折間隙が相当に広がってからです。しかも破折線が頬舌側面にある場合で、さらにポストや根管充填剤と重なっていないことが条件となります。
CTは垂直歯根破折の診断に有効との報告があります3),4)。しかし、歯根に生じた破折線を直接観察するのは困難な場合が多いです4),5)。特に金属ポストや太い根管充填剤がある場合にはアーティファクトが強く出現します6)。そのため、このような症例では除去してからCTを撮影することが勧められています。
鑑別が誤りやすい疾患
- セメント質剥離破折
- 咬合性外傷
- 歯周炎
- 根尖性歯周炎
- 穿孔
- 骨壊死
1)Sugaya T, Nakatsuka M, Inoue K et al.: Comparison of fracture sites and post lengths in longitudinal root fractures, J Endod, 41: 159-163, 2015.
2)Moule AJ, Kahler B: Diagnosis and management of teeth with vertical root fractures, Aust Dent J, 44: 75-87, 1999.
3)Baageel TM, Allah EH, Bakalka GT et al.: Vertical root fracture: Biological effects and accuracy of diagnostic imaging methods, J Int Soc Prev Community Dent, 6: S93-S104, 2016.
4)前田宗弘, 五十嵐 勝: 垂直歯根破折歯の保存的治療について, 日歯内療誌, 42: 83-90, 2021.
5)Khasnis SA, Kidiyoor KH, Patil AB et al.: Vertical root fractures and their management, J Conserv Dent, 17: 103-110, 2014.
6)Chang E, Lam E, Shah P et al.: Cone-beam computed tomography for detecting vertical root fractures in endodontically treated teeth: A systematic review, J Endod, 42: 177-185, 2016.
※参考文献
菅谷勉. 垂直歯根破折の早期診断. 日歯内雑誌 43(2): 69~75, 2022.
(日本歯内療法学会雑誌 第43巻 第2号 令和4年5月 一般社団法人 日本歯内療法学会)