Question
う蝕(むし歯)はどこにできるんですか?
Answer
エナメル質に初めてできたう蝕(原発性う蝕)を考えてみましょう。
口の中のpHはおおよそ7.0(中性)ですが、飲食によって糖が口腔内に入り、歯面に付いたバイオフィルムに取り込まれると、バイオフィルム中の細菌が糖を代謝して酸を出し、pHが低下していきます。
バイオフィルム中のpHが臨界pH(エナメル質pH5.5、象牙質pH6.0)を下回ると、バイオフィルムと接している歯の表面からカルシウムやリン酸などのミネラルが溶け出します。この現象を脱灰といいます。
一方、唾液によって酸が中和され、バイオフィルム中のpHが臨界pHを上回ると、溶け出していたカルシウムやリン酸が歯面に戻る再石灰化が起こります。
バイオフィルムと歯面の境界では脱灰と再石灰化が繰り返されていて、脱灰している時間が長くなるとう蝕になります。バイオフィルムがあるからといって必ずしもう蝕になるわけではありませんが、バイオフィルムなしにう蝕ができることはないのです。
むし歯による脱灰と再石灰化の流れ
1.バイオフィルムの成熟
種々の細菌がバイオフィルムとして段階的な成熟を遂げ、歯面を覆う。
2.脱灰
細菌が糖を代謝して産生された酸(H+)により、歯面からミネラルが溶け出ていく。
3.再石灰化
唾液の緩衝作用により酸が中和されると、ミネラルが歯面に戻っていく。
※参考書籍
「カリエスブック」 伊藤直人 著 医歯薬出版株式会社