Question
2才の子をもつ母ですが、うちの子にむし歯ができてしまいました。罪悪感でいっぱいです。どうすればいいのでしょうか?
Answer
あなたは悪くありません。フッ素を活用しましょう。
養育者は子どもの口にう蝕ができることを自分の歯磨き不足のせいであると考え、子育て上の失敗であると認識してしまいがちです。
3歳以下の子どものう蝕の発生と仕上げ磨きの関連性を調査した研究では、
- 「う蝕発生と仕上げ磨きは関係性が低い」(1987年)1)
- 「う蝕発生と仕上げ磨きは優位ではないが関連がある」(2003年)2)
- 「う蝕発生と仕上げ磨きは関連がある」(2004年)3)
と、現在に近づくにつれてその関連性が高くなる傾向が見られます。
この理由の一つとしてフッ化物入りの歯磨剤の普及率が2000年前後に急速に上昇した4)ことが関係していると考えられます。
日本におけるフッ化物配合歯磨剤のシェア
(ライオン歯科衛生研究所ホームページのデータを基に作成)
WHOが指針の中で「う蝕抑制のためのブラッシングはフッ化物入り歯磨剤を用いると効果的でありその効果はブラッシングそのものというよりむしろフッ化物の活用によってもたらされているものである」5)と述べているように、フッ化物入り歯磨き剤を用いた仕上げ磨きはう蝕予防に高い効果があります。
こうして時代とともに「仕上げ磨きを行わないこと」つまり「フッ化物入り歯磨き剤の使用などフッ化物応用の習慣がないこと」とう蝕発生との関連が上昇する要因となったと推測しています。
一方で、含糖飲料の摂取とう蝕の発生の間には、いずれの研究でも仕上げ磨きとの関連性以上に非常に高い関連性が認められています1)~3)。
以上からう蝕予防に関しては、含糖飲料を乳幼児期である早期から摂取することはう蝕の発生リスクを大いに高めるため避けたほうがよいでしょう。仕上げ磨きとう蝕の発生については養育者が恐れるほどでもないので安心してください。う蝕発生のリスクが比較的高い場合にはフッ化物入り歯磨剤やジェルの使用がリスクの軽減に役立ちます。
1)佐久間汐子, 他:3歳児う蝕罹患状況に関わる多要因分析および歯科保健指導の効果に関する研究. 口腔衛生会誌, 37(3): 261~272, 1987.
2)溝口恭子, 他:関東都市部における1歳6か月時から3歳時にかけてのう蝕発生と授乳状況ならびに関連する要因の検討. 日本公衛誌, 50(9): 867~878, 2003.
3)阿部晶子:2歳6ヵ月児のう蝕発病と関連要因の追跡調査. 口腔衛生会誌, 54(1): 17~27, 2004.
4)米満正美:う蝕の疫学. 岩医大歯誌, 37(2):63~73, 2012.
5)石井俊文, 他:口腔疾患の予防方法と予防プログラム-WHOの指針-初版, 22, 口腔保健協会, 東京, 1986.
※参考書籍
「日本歯科医師会雑誌 2021 vol73 No.12」 日本歯科医師会