Question
根面う蝕にフッ素が効くって本当ですか?
Answer
根面う蝕にこそフッ化物を応用しましょう。
市販の歯磨剤のフッ化物濃度の上限が1,000ppm(容器の表示は980ppm)から1,500ppm(容器の表示は1,450ppm)に引き上げられました。また、フッ化物含有洗口剤(フッ化物濃度225ppm)がドラッグストアでふつうに買えるようになり、以前と比べてフッ化物利用の環境が良くなってきています。う蝕治療ガイドラインでは、活動性の根面う蝕の再石灰化療法に、セルフケアでのフッ化物応用を強く推奨しています1)。
フッ化物配合歯磨剤(フッ化物の濃度が1,100~1,400ppm)とフッ化物配合洗口剤(フッ化物濃度が250~900ppm)を、毎日併用することにより永久歯の活動性根面う蝕が回復します。
初期の根面う蝕であれば(ICDAS Code 1)、フッ化物濃度1,450ppmの歯磨剤の使用だけでも再石灰化の可能性があります。ちなみに米国歯科医師会は、根面う蝕予防にフッ化物濃度900ppmの洗口剤の毎日使用か、あるいはフッ化物濃度5,000ppmの歯磨剤を使って1日2回、イエテボリ法2)で歯ブラシすることを推奨しています。日本ではフッ化物濃度900ppmの洗口剤は週に1回使用に限定され、フッ化物濃度5,000ppmの歯磨剤にいたっては認可されていません。日本のフッ化物応用に関する消極性は、以前からWHOなどに指摘されています。
フッ化物濃度とう蝕抑制効果は用量反応関係にあり、濃度が増すごとにう蝕抑制効果が高くなります2)。しかし、どれほどの人が、配合濃度でむし歯予防効果に違いがあり、500ppm未満ではう蝕予防効果が報告されていないこと2)を歯科医療者から教わっているでしょうか。本来フッ化物の配合濃度は高いほうがよく、うがいできるのであれば、6歳未満の小児でも1,000ppmを使うべきとの見解を示す専門家もいます。ちなみに、米国で人気の子ども向け歯磨剤(Crest® Frozen, P&G)はフッ化物濃度1,500ppmです。6歳以下はエンドウ豆サイズで使うよう、2歳以下は歯科医師に相談、と容器に書いてあります。
1)日本歯科保存学会 編:う蝕治療ガイドライン 第2版.(最終アクセス日:2021年2月21日 )
2)日本口腔衛生学会フッ化物応用委員会 編:う蝕予防の実際 フッ化物局所応用実施マニュアル. 社会保険研究所, 東京, 2018年.
※参考書籍
「日本歯科医師会雑誌 2021 vol73 No.12」 日本歯科医師会