Question
もう人生後半を迎えました。今から口のなかがネバネバになることはないだろうとタカをくくっています。実際はどうなんでしょうか?
Answer
むし歯リスクは生涯にわたり変化します。
田上順次、花田信弘、桃井保子 編:う蝕学 -チェアサイドの予防と回復のプログラム-. 永末書店, 東京, 2008年.
その様子を健康日本21の人生の6段階ごとに表したものが次の表です。
年齢(歳) | 人生の6段階 (健康日本21) |
むし歯リスクが高くなる特徴的な要因 | 口腔健康の目標 |
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0~4 | 幼年期 育つ |
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養育者が日常生活の中でむし歯予防を実践し、健全な乳歯列を完成させる。 |
5~15 | 少年期 学ぶ |
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学校歯科医とかかりつけ歯科医の連携で、健全な永久歯列を完成させる。 |
16~24 | 青年期 巣立つ |
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自己管理能力を身に着けさせる時期として非常に重要。つづくライフステージへの波及効果が高い。 |
25~44 | 壮年期 働く |
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健全な永久歯列を維持し働き盛りを支える。口腔健康の獲得は健康ではつらつとした高年期への導入として重要。 |
45~64 | 中年期 熟す |
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健全な永久歯列を維持し働き盛りを支える。口腔健康の獲得は健康ではつらつとした高年期への導入として重要。 |
65~ | 高年期 実る |
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咬合崩壊の防止を考える。 |
要介護 |
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特に、壮年期・中年期、そして高年期は注意が必要です。
壮年期・中年期
社会的使命が最も求められる時期です。
口腔内に修復物や補綴物が多くなり、歯根露出が始まれば口腔内環境は一変します。また喫煙や飲酒、運動不足などの生活習慣が続けば歯周疾患のリスクも高くなります。
この時期に良好な口腔環境を整備しておくことは、はつらつとした高年期への導入として重要です。
高年期
加齢による唾液分泌量の低下、根面の露出、義歯の使用などがむし歯のリスクを高めます。
その一方、高齢者ではエナメル質や根面象牙質の石灰化度が高くなっているために、口腔環境を整えさえすれば、むし歯の進行は若年者に比べてはるかに緩慢となります。また、唾液量が少ないことは、一方で、口腔内でフッ化物イオン濃度が高いまま維持されることになるため、フッ化物の有用性を高めることにつながります。
高齢者に特有の根面のむし歯は、不用意に切削するとかえって歯の寿命を短くしてしまいます。対処には、非侵襲(非切削)で、活動性のむし歯を非活動性にし、むし歯の重篤化を回避することが有利な場合が多いです。
※参考書籍
「日本歯科医師会雑誌 2021 vol73 No.12」 日本歯科医師会