Question
歯医者で抜歯することになりました。糖尿病でタバコも吸っています。注意点はありますか?
Answer
手術が決まったら、手術をする外科領域の医師は、術前にさまざまな検査をします。その中には糖尿病があるかどうかの検査、すなわちヘモグロビンA1cや血糖値の測定も含まれています。
ただし、歯科医院内で血液検査をすることはできません。もし正確な数値が分かれば申告してください。
なぜなら、糖尿病があるかどうかは手術成績(結果)を大きく変えるからです。高血糖状態では、体内にウイルスや細菌が侵入したときに、それを取り囲んで食い殺す白血球の機能が低下します。免疫反応すなわち一度感染した病原体に対し、体内でその抗体が作られ、次に同じ病原体が体に侵入しようとしたときに、それを防ぐはたらきも低下しているため、細菌やウイルスに感染しやすくなるのです。
また、合併症が進行していて、細い血管で血液の流れが悪くなっていると、創傷治癒のための栄養や酸素、さらに薬物の局所への供給が阻まれます。神経障害により痛みなどの症状が分かりにくくなっていることで、さらに感染が重症化することなども考えられます。
一度、細菌などに感染すると、インスリンを効きにくくする物質(サイトカインなど)が多くなって、血糖値はさらに高くなり、感染を進行させてしまうという悪循環が生まれます。また、手術の傷(縫合部)の感染は、傷の縫合がうまくいかない縫合不全につながり、さらに全身状態の悪化などで手術後の回復が大きく遅れます。
このような背景からも糖尿病のコントロールは日ごろから良好にしておく必要があります。
喫煙している方については、たばこにより、種々の周術期合併症が増加し、術後の回復が遅延するため、手術前のいつの時点からでも禁煙を開始することには意義があるとされています。禁煙は糖尿病の合併症予防の点でも有益ですので、この機会にぜひチャレンジしましょう。
※参考書籍
「月刊 糖尿病ライフ さかえ 2021年3月号」
公益社団法人 日本糖尿病協会