Question
歯周病で歯を失いました。インプラント治療は可能でしょうか?
Answer
可能ではありますが、歯周病は多因子性疾患であり、不良なプラークコントロールだけでなく、喫煙1)や、肥満2)、糖尿病3)などがリスク因子となる生活習慣病の側面を合わせもちます。だからこそ歯周病の治療に際しては、単に原因因子を除去するだけでなく、患者さん自身の生活習慣から見直し、改善する必要があります。
適切な歯周治療を行った後にインプラント治療へと移行したとしても、インプラントの成功率が有意に低く、インプラント周囲炎の罹患率が有意に高いことが示されています4)。
歯周病はインプラント治療の成功を妨げるリスクファクターの一つと考えられています。しかし、歯周病の患者さんに対し行われたインプラントの治療成績については、適切な歯周病治療およびメインテナンスプログラムを受けることにより、インプラントの残存率は歯周病既往のない患者さんと同等レベルを保つことができます。対して、歯周病既往のある患者さんは健常者に比べて、インプラント治療の成功率は有意に低下することが示されています5)。
このように、日本人がインプラント治療を行った論文においても、歯周病の既往はインプラント周囲炎の罹患リスクを高めること、また、術前の歯周病治療、術後のメインテナンスを適切に行うことで歯周病のリスクが軽減されることが示唆されました。
1)Swierkot K, Lottholz P, Flores-de-Jacoby L, et al. Mucositis, peri-implantitis, implant success, and survival of implants in patients with treated generalized aggressibe periodontitis : 3-to 16-year results of a prospective long-term cohort study. J Periodontol 2012; 83: 1213-1225.
2)Chaffee BW, Couch ET, Ryder MI. The tobacco-using periodontal patient: role of the dental practitioner in tobacco cessation and periodontal disease management. Periodontol 2000 2016; 71 :52-64.
3)Amar S, Zhou Q, Shaik-Dasthagirisaheb Y, et al. Diet-induced obesity in mice causes changes in immune responses and bone loss manifested by bacterial challenge. Proc Natl Acad Sci USA 2007; 104: 20466-20471.
4)Sousa V, Mardas N, Farias B, et al. A systematic review of implant outcomes in treated periodontitis patient. Clin Oral Implants Res 2016; 27: 787-844.
5)Klokkevold PR, Han TJ. How do smoking, diabetes, and periodontitis affect outcomes of implant treatment? Int J Oral Maxillofac Implants 2007; 22(Suppl) : 173-202. Review. Erratum in : Int J Oral Maxillofac Implants 2008; 23: 56.
※参考文献
岩野義弘:重度歯周病患者におけるインプラント治療:歯の保存の可否とインプラント治療介入のタイミング:日本口腔インプラント学会誌 2020.9 vol.33 No.3 22-246
伊藤太一、法月良江、小田由香里、守源太郎、小笠原龍一、喜田晃一、古谷義隆、矢島安朝:日本人歯周病患者におけるインプラント治療の予後評価に関する臨床症例対照研究:日本口腔インプラント学会誌 2020.9 vol.33 No.3 63-287,64-288, 65-289