Question

現在透析を行っていますが、歯科治療は可能ですか?可能な場合、どのタイミングで行ったらよいですか?

Answer

まず、透析を受けている場合に歯科治療はできるのか?について説明します。

歯周治療では抗菌薬を投与することがあり、抗菌薬の種類によっては体内からの排泄速度に影響を与えるものがあります。そのため、歯周治療に伴う抗菌薬などの投与に関しては、主治医に相談し、適切なものを選択する必要があります。また、透析日は抗凝固剤服用の可能性があるため、観血的な歯周治療は避けるなどの対応が必要になります。

次に、歯科治療のタイミングについて説明します。

移植前(血液透析時)は、ヘパリンなどの抗凝固薬を服用しており止血困難が予想されます。また、免疫機能の低下により、易感染性です。抜歯などの観血的な歯科治療は、血中の老廃物の除去や電解質補正が行われている透析の翌日に行います。感染予防に対して1時間前に抗菌薬の投与を行い、血中濃度を上昇させておきます(*)。抗菌薬は、腎機能が低下していると血中濃度が上昇し、有害事象が起こりやすくなったりするため、クレアチニンクリアランスに応じて、投与の減量や投与回数の減少を行わなければなりません。

腎移植の術後6カ月以降は、観血的処置を含めた通常の歯科治療は基本的に可能となります。

*椙山加綱. 慢性腎臓病患者の歯科治療. In: 西田百代 監修. 椙山加綱 著. 有病高齢者歯科治療のガイドライン 上. 東京: クインテッセンス出版, 2013: 228-247.

 

腎移植前(血液透析患者)の歯科治療時の注意点

1.易感染性

観血的処置は、術前1時間前に抗菌薬の投与を行う。

 

2.易出血性

ヘパリンなどの抗凝固薬を使用しているため、十分な止血を行う。抜歯時などは止血用シーネの作製や縫合を行う。

 

3.血圧

血圧が高いこともあるため、必要に応じてモニタリングを行う。血圧は、シャントを造設している反対側の腕で測定する。

 

4.歯科治療の時期

透析の翌日に行う。

 

5.抗菌薬の投与

腎排泄性の薬剤は、投与量の減量や投与感覚の延長を行う。

 

6.鎮痛薬の投与

非ステロイド性鎮痛薬(NSAIDs)は避け、アセトアミノフェンを用いる。

 

※参考書籍
 「歯周治療の指針2015」
 特定非営利活動法人 日本歯周病学会


 「周術期等口腔機能管理の実際がよくわかる本」
 編著 梅田正博/五月女さき子  クインテッセンス出版株式会社

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