Question
糖尿病と骨密度の関係について教えてください。
Answer
骨は体内でも、最も硬い臓器であり、じっと固定しているもののようにみえますが、骨芽細胞という骨を作る細胞と、破骨細胞という骨を壊す細胞のはたらきにより常に新陳代謝しています。健康な状態では、これらがうまくバランスを取って新たな骨組織に置き換わることで、強さやしなやかさを保っています。しかし、糖尿病によりインスリン作用が欠乏する(インスリンがうまくはたらかない)と、この骨を形成する骨芽細胞の数や機能が低下してしまい、骨を作る作用より壊す作用が増え、骨の量が減ってしまいます。
また、インスリンはビタミンDを活性型にするはたらきに関与しています。全身のカルシウム代謝は主に副甲状腺によって制御されています。腸管からのカルシウム吸収には活性型ビタミンDが欠かせませんが、副甲状腺ホルモンがビタミンDを活性型にする酵素を刺激する際にインスリンが重要な役割を果たしています。そのためインスリンが不足すると、せっかく食べたカルシウムもうまく吸収できず、骨を作る材料が減ってしまい、十分な骨密度を保った骨を作ることが困難になります。
糖尿病は骨の質に影響します。骨には硬いミネラル成分だけではなくコラーゲンが豊富に存在して、しなやかさを保っています。高血糖状態に長期間さらされることで、たんぱく質に糖が結合した終末糖化物質(AGEs)という物質が作られます。これは骨芽細胞の分化や機能を阻害するだけではなく、コラーゲン繊維の間に本来はない結合を作ってしまいます。その結果、骨本来のしなやかさが損なわれ、外からの力にもろい、折れやすい骨になってしまいます。
このように糖尿病においては、骨密度の低下だけでなく、骨質の低下により骨粗しょう症になりやすい傾向があるのです。
※参考書籍
「月刊 糖尿病ライフ さかえ 2020年3月号」
日本糖尿病協会