Question
息子の口臭が気になり、口の中を見ましたが、舌が白っぽくなっています。これは何でしょうか?
Answer
それは舌苔です。
■舌苔とは
舌表面に付着した細菌叢や剥離上皮、食物残渣、白血球などの総称です。
この舌苔が口臭症の一因と考えられるのは、その位置的関係が咽頭、鼻腔と接近しており、舌背部、舌根部に付着した舌苔が直接匂いの原因となるからです。その舌苔を取り除くことにより、う蝕、歯周疾患および口臭の予防と改善、同時に味覚の回復にもつながると考えられています。ちなみにカンジダなどの真菌類も舌苔中に存在しているため、ブラッシングの必要がないとされる総義歯の患者さんの場合も、舌ケアと義歯の清掃が不十分であれば、カンジダ菌による義歯性口内炎を発症させるのです。
■舌苔を形成する要因
舌の機能は、唾液の清掃作用、咀嚼の機械的作用、正常細菌叢および適当な栄養によって、正常に保たれていますが、口腔環境の変化、種々の疾病、薬物の常用などにより、この機能バランスが崩れることがあります。このような事態になると、瞬く間に舌苔が形成されます。
具体的な原因として、
1.唾液の分泌量の不足
2.咀嚼が不十分な時
3.経管栄養で口腔をほとんど使わない時
4.舌運動の麻痺
5.正常粘膜の保持に必要なビタミンの不足
などが考えられます。
■その他の口臭の原因
口臭の原因は必ずしも舌苔だけにとどまりません。う蝕、歯垢、歯周疾患、その他多くの口腔環境が、その原因となっています。胃腸障害などの消化器疾患に罹患した時、独特の口臭があることは、よく知られています。またその他の疾患でも、特有の口臭を放つことがあります。例えば、口腔、鼻咽頭器官の感染症、あるいは腫瘍、気管支拡張症あるいは肺腫瘍、肝臭を伴う肝硬変、糖尿病などです。
このような疾患によって生ずる口臭は、局所を原因としていないため、完全に取り去ることは難しいです。だからと言って舌ケアを諦めるのではなく、舌を清潔に保つという本来の目的を継続し、含嗽剤を利用することによって、口腔内の清潔を維持していかなくてはなりません。
■舌ケア用品の種類
数年前に比べると舌ケア用品の種類も増え、どこの店でも入手できるようになりました。ブラシ型、ヘラ型、板型などに分けられますが、使用感はそれぞれ異なるため、舌苔の付着部位やそのつき方により自分に合ったものを選びましょう。実際に使用してみると、使いやすさや使用感の違いが分かります。
1)ブラシ型
舌表面には極小の乳頭が存在するため、それらの細かな溝を清掃するのに適した形です。メーカーによりブラシの形状や厚み、植毛状態、毛の硬さなど数種類あります。耐久性は歯ブラシよりも長く、毎日使用した場合、約2ヶ月です。
2)ヘラ型・板型
舌背部の表面に付着した舌苔をはがし取るといった感じで、舌苔特有の滑りを除去するのには大変効果的です。しかし、乳頭の細かな溝には届かないため、舌の状態、滑りの有無などによりブラシ型と使い分けるとよいでしょう。
※参考書籍
「月刊 小児歯科臨床 2003.5」 東京臨床出版株式会社