Question

うちの娘は歯ぐきにメラニン色素が沈着しています。どうしたらよいでしょうか?

Answer

広島大学大学院医歯薬学総合研究科 小児歯科学研究室教授 香西 克之

同 学内講師 光畑 智恵子

■メラニン色素について

生体がメラニン色素を生成するのは紫外線から自己を守るための生理的な防御反応であり、可逆的反応(元に戻る)と言われています。しかし、酸化が進むことによって皮膚ではシミとなり、歯ぐきでは黒褐色の色素沈着が見られるようになります。

歯ぐきのメラニン色素の沈着は、成人だけでなく小児にもしばしば見られるということが知られています。さらに色素沈着の広がりや濃度の状態は個人差があり、また同じ子どもであっても加齢とともに沈着度は変化します。

近年、禁煙推進運動のキャンペーンでは、受動喫煙が子どもの歯ぐきの色素沈着を誘発することが取り上げられています。しかし多くの小児の患者さんを診ていると、歯ぐきのメラニン色素の沈着があっても周りに喫煙者がいないことも多いです。逆に明らかに受動喫煙環境下にいる小児でも健康的なピンク色の歯ぐきをしており、親への禁煙の動機付けにならないこともあります。

このことに関して調査した研究では、次のような報告があります。

「色素沈着のある子どもの70%が『親が喫煙者』である一方、色素沈着のない子どもでもその35%が『親が喫煙者』であった」

小児の歯肉メラニン色素沈着と 親の喫煙との関係

 

埴岡 隆:子供の口腔内へのタバコによる健康影響, 小児歯科臨床, 61:397-404, 2008

■メラニン色素が沈着している子供への対応

1)色素沈着に対する処置

まず歯ぐきのメラニン色素の沈着は、歯ぐきが病的な状態であるのではなく、紫外線から体を守る防御反応であることを知っておきましょう。その上で審美的な観点から除去を希望する子どもに処置をします。歯ぐきのメラニン色素沈着は粘膜表面から0.2mm程度の深さに多く分布するため、この厚みの組織を除去しなければなりません。主にレーザーによる沈着部の組織除去や歯ぐきの漂白法などが行われていますが、メラノサイトができなくなるわけではないため、歯肉沈着の原因を取り除かない限り、再び色素沈着を繰り返すことになります。

2)メラニン色素沈着を防ぐための対策

臨床的には日焼け、口腔乾燥(口呼吸)、受動喫煙(副流煙)、アスコルビン酸不足などの対策をするしかありません。

この中で受動喫煙の除去は、もしそれが主な原因である場合は大きな効果をもたらしますが、最初にメラニン色素沈着の誘因がなんであるかを明確に評価することが先決で、その次に関係する誘因因子を取り除いていくべきです。

※参考書籍
 「月刊 小児歯科臨床 2011.10」 東京臨床出版株式会社

 

 

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