Question
睡眠時ブラキシズムには「自己暗示法」という治療法があるそうですね。どのように実行したらよいのでしょうか?また、本当に効果があるのでしょうか?
Answer
自己暗示法の実行
1.イメージング
イメージングとは、「入眠直前に、顎のリラクゼーションした状態をイメージする」ことであり、その後、「唇は閉じて歯は離す(Lips together, teeth apart)という言葉を20回声に出して唱えることが、実行の方法です。このとき発する言葉は、「唇は閉じて、歯は離そう」ではなく、「唇は閉じて、歯は離す」であることが重要です。未来のことであるものの、あえて断定的な言葉を使用することが重要なのです。
2.声に出す意味
実際にあった話を紹介します。
あるとき、ある患者さんにいつものようにこの方法を実行するように伝えていたところ、効果はあったものの、通常よりも効果が認められたのが遅かったため、どのように実行しているかを尋ねました。すると、自己暗示法を実行する際に、声に出して行っていなかったことがわかりました。その理由をうかがうと、その方は、隣にご主人が寝ているので、声に出すのが恥ずかしかったとのことでした。再度、声を出すようにアドバイスしたところ、それからは声を出すようになって暗示効果が高まりました。
このように、声に出して暗示法を実行することがとても大切なのです。他にも、たとえば、スポーツ選手が「頑張るぞ」などと声を出しながらプレーをすると、脳に刺激を与え、より集中度を高めることに繋がることが分かっています。
心で思ってその言葉が脳に伝わることと、声を通じて耳からもその言葉が脳に伝わることは違いがあり、声を出すことはとても大切なのです。
効果
さて、この自己暗示法でどのくらい効果があると思いますか?
なんと96%の成功率です!本人にやる気があれば、誰でも成功します。必ず成功します。早期に成果が現れなくても焦らずに行えば、人間のもっている能力を使用するので誰にでも効果があり、それは通常ゆっくりと出ることが多いです。
これで無意識のコントロール法を身につけることができ、これは今後のあなたの人生にとって貴重な体験になります。
詳細なデータは以下をご覧ください。
<自己暗示法の効果と持続>
B-1からB-3まで睡眠時ブラキシズムの強さによって3つのグループに分けて調査した。
B-1:睡眠時ブラキシズムが弱い
(インクが軽度に剥げている状態から、ファセットが光っている状態まで)
B-2:睡眠時ブラキシズムが中程度
(ファセットが削れた状態)
B-3:睡眠時ブラキシズムが強い
(ファセットが著しくえぐれている状態)
自己暗示法が必要な50人に実施した結果、96%(48人)に効果が認められた。
SBの強さ別調査
B-2:睡眠時ブラキシズムが中程度
効果があった者 97%
(大きく効果があった者47%、わずかに効果があった者50%)
B-3:睡眠時ブラキシズムが強い
効果があった者 93%
(大きく効果があった者86%、わずかに効果があった者7%)
大きく効果のあった割合は、睡眠時ブラキシズムの強いB-3のほうに多く認められた。
暗示の効果の持続
どのくらい持続するか、6ヶ月間で効果判定を行った。
B-2、B-3においても大きく効果のあった患者に、効果の持続が見られた。なお、B-2では、わずかに効果のあった患者は効果があまり持続しない傾向がみられた。
以上より、睡眠時ブラキシズムの治療に熱心な患者の暗示の効果の持続は、効果が出たときの暗示が維持されており、睡眠時ブラキシズムの治療へのモチベーションの低いものは、効果が薄れていく傾向がみられた。
菅原哲夫、池田雅彦:Bruxismの治療法-自己暗示法について-.第98回日本歯科補綴学会学術大会抄録, 34, 1997.
※参考書籍
「月刊 池田雅彦 ブラキシズムは治る!1,600症例から見えたこと」
池田 雅彦 著 株式会社デンタルダイヤモンド社