Question
歯は抜かずに残したほうがよいと思います。何よりも「抜かない」治療が最優先ではありませんか?
Answer
抜歯したほうがいいこともあります。
歯周病が進行してしまった歯を残しておくと、その歯を支えている歯槽骨だけでなく、隣の歯や周辺の骨にまで悪影響を及ぼします。骨がかなり溶けて、すでに噛む機能を果たしていない歯を残していても何の役にも立ちません。
歯周病の炎症は、歯石の表面などに付着した歯周病菌などが、毒素を出し体内に入り込もうとするのを防ぐために生じています。さらに歯肉の奥にある骨は、近づいてくる歯周病菌に感染するのを防ぐために、自ら溶けて逃げ、細菌との距離を保とうとするのです。歯の周囲の骨がすべてなくなった状態は、もう歯が体の一部ではなく「歯周病菌に侵された異物」と判断されたということで、体のために抜歯する必要があります。
このような場合は無理に残しても、結局抜かざるを得なくなるケースがほとんどで、かえって抜いた後の状態が悪くなって入れ歯を入れるのが難しくなったり、腫れや痛みが生じたりするなど不快な症状を繰り返す原因にもなります。
歯を残したいという患者さんの気持ちも理解できます。ただ、歯科医師も必要があるから抜歯をするのです。主治医の説明に納得できないときは、他の歯科医師を受診して意見を聞くのもいいでしょう。
■抜歯後は歯を補う治療が必要
抜歯した場合、そのままにしておくと食べ物が噛みづらいだけでなく、スペースを埋めるように隣の歯が寄ってくるので噛み合わせが悪くなります。また、歯と歯の隙間が広がってむし歯にもなりやすくなるので、失った歯を補う治療が必要となります。歯の欠損を補う治療はブリッジ、インプラント、入れ歯、移植の4つがあります。しっかり歯科医師と相談して治療を進めましょう。
※参考書籍
「日本人はこうして歯を失っていく」
日本歯周病学会 日本臨床歯周病学会
朝日新聞出版