Question
顎関節症の治療における生活指導について教えてください。
Answer
痛み、あるいは機能障害のある患者さんに、歯科医院が一方的に治療をしても患者さんが病気を治るように努力をし、注意をしていただかなくては、治療が長引いたり、不可能になってしまったりします。このため、生活指導は不可欠なものです。
1.開口量を制限してください。
治療を開始してから2~3か月は大きく口を開けてはいけません。大きな食べ物は丸かじりせず、小さく切ってから、口の中に入れるようにしてください。もし、あくびが出始めたならば、すばやくコブシを下顎にあて、強く押し、口が開かないようにすることが必要です。
2.硬い食べ物を摂らないようにしてください。
フランスパンやスルメ等の硬い食べ物は、顎関節や筋肉に大きな負荷を与えてしまいます。また、チューインガムも長時間に及んで顎に負担をかけてしまいます。普通の食事も長い時間をかけないように努めてください。
3.下顎を前に出すような動作をやめてください。
下顎を前に出すと外側翼突筋が緊張するため、注意が必要です。下顎を前方に出すような、頬杖、前歯でカチカチする、舌の癖、口紅を塗る時に下唇を前に出す、などは避けてください。
4.正しい姿勢で寝てください。
就寝姿勢により頭の位置が変化するとともに下顎の位置にも影響するため、どのような姿勢を取るかは重要です。背骨はまっすぐに伸ばし、枕は硬いもので直径15cm位のものを適当とし、首の正常な湾曲に沿った円筒形のものがよいでしょう。バスタオルを硬くまるめて、直径15cmぐらいにして、これを首の湾曲に沿って首の上がる角度が15度くらいになるような、仰向けで寝ることが理想的です。
あまり大きな枕で下あごが前に出るようなものは避けなければいけません。枕のあて方により下顎の位置が変化してくるため枕と頭の位置も考えなければなりません。うつ伏せで寝る習慣や枕を顎の下にあてることは禁止しないといけません。
5.ストレスを回避しましょう。
身体の緊張は心の緊張と密接に関係しています。現代病の根源である欲求不満、情緒不安、焦燥、精神疲労、ノイローゼ、不眠、過緊張を回避する必要があります。
※参考書籍
「美しい表情は噛み合わせから」
稲葉歯科医院顧問 元日本歯科大学教授 稲葉 繁
稲葉歯科医院 院長 稲葉由里子