Question
ドライマウスへの対処方法を教えてください。
Answer
1.薬を変える
薬は必要があって服用しているのですから、原則的にはドライマウスがあっても、飲むのを止めるというわけにはいきません。3~5種類程度のどうしても内服せざるをえない循環器系の薬剤や脳血管障害に関する薬剤に関しては、変更や減量が不可能な場合が多いと思います。その場合は、唾液腺を刺激するなどの対症療法がメインとなります。
しかし、高齢者の場合、過剰な服用をしている場合もよく見られます。薬を飲むことで、かえって健康を損ねてしまっては困ります。大切なことは、不必要な薬を飲んでいないかのチェックをしてみることです。複数の病院への通院、多数の薬を投与されている場合には、特に確認が必要となります。必要な薬の場合は、どのくらいドライマウスの状態が辛いか、改善の希望の度合により、主治医と相談するか、対症療法だけにするのかを決めていきます。
2.保湿剤を使う
原因によらず、ドライマウスに対しては保湿剤の使用をおすすめします。保湿剤を配合した洗口液、ジェル、スプレー、人工唾液など、さまざまな会社から保湿作用をもった製品がありますが、保湿作用のあるものであれば、どれでも構いません。
これらの商品、特に保湿ジェルを使うときは、まず、うがいをするか、水やお茶でお口を潤してください。いきなりジェルを舌の上に乗せて口の中で転がすようにして、それを飲み込んでしまうという方も多いようですが、効果的な使い方ではありません。お口を潤したら、しっかりとマッサージしてください。ジェルをつけるだけでは効果は限られます。マッサージによって唾液腺を刺激して、天然の保湿剤である唾液で口腔粘膜のコートをすることが大切です。
3.唾液腺・口腔粘膜マッサージ
唾液腺マッサージについては色々方法が紹介されており、頬や顎、首のあたりを刺激するものがほとんどです。しかし、解剖学的な知識をもたずに顎下腺周辺の頸部をむやみに押さえるのは、脳梗塞などを誘発する恐れがあります。(頸動脈プラークの蓄積度から脳梗塞発症を予知できることが示唆されています)特に脳血管障害後の要介護者の顎下腺マッサージには注意が必要です。
そこで、比較的安心で、軽い刺激でも反応する唾液腺・口腔粘膜マッサージをおすすめします。
●マッサージ1
1.うがいなどをして、十分に口の中をしめらせます。
2.保湿ジェルを人差し指あるいは中指の先に少し取ります。(1~2cm程度)
3.舌の表面、舌背をゆっくりとマッサージします。
4.舌の奥、付け根のところにも小唾液腺があるので、刺激するつもりでマッサージします。
嘔吐反射の強い方は、無理をしない程度の強さでよいのです。1回に5~10秒ぐらいかけて、2~3回繰り返してください。乾燥で舌の表面が固くなっている場合は、10回ほど繰り返してもよいでしょう。
5.口蓋部(上顎の内側)もゆっくりとマッサージします。
口蓋部には、口蓋腺という小唾液腺があります。また、口蓋部だけでなく、口蓋も1回に5~10秒ぐらいかけて、2~3回繰り返してください。
6.舌の下の部分をていねいにマッサージします。
舌の下には舌下腺があり、舌下小丘と舌下ヒダという唾液腺の開口部があります。
●マッサージ2
耳下腺を押さえながら、頬粘膜をゆっくりとマッサージします。
頬粘膜は、耳下腺乳頭部という唾液腺開口部や、頬線などの小唾液腺があります。左手で頬部から耳下腺を押すようにして、右手で頬粘膜をマッサージします。反対側も同じようにマッサージします。耳下腺からは漿液性のサラサラとした唾液が出るので、ていねいに刺激をしてください。1回に10~20秒ぐらいかけて、5~6回繰り返してください。ドライマウスの症状が強い方は、回数を増やして行ってもかまいません。
●マッサージ3
1.上口唇を内側からゆっくりとマッサージします。
2.下口唇を内側からゆっくりとマッサージします。
上下口唇には口輪筋という筋肉があります。口輪筋と粘膜の間に口唇腺があるので、小唾液腺を1つずつ刺激するつもりで、唇と歯の間(口腔前庭)に指を入れて、上下それぞれを30秒間ほどかけて、ゆっくりとマッサージします。かわいて唇がひっつくような方には効果的です。
※参考書籍
「ドライマウス 今日から改善・お口のかわき」
阪井 丘芳 著 医歯薬出版株式会社